1.ヤマネコってどんな猫?
1-1.イエネコとの違い
1-2.ヤマネコの生態
1-3.日本にヤマネコはいる?
2.ヤマネコの種類
2-1.ツシマヤマネコ
2-2.イリオモテヤマネコ
2-3.ベンガルヤマネコ
2-4.マヌルネコ
2-5.オオヤマネコ
2-6.リビアヤマネコ
3.ヤマネコを守ろう
3-1.頭数が減り続けているヤマネコ
3-2.観光の際には車の運転に注意!
3-3.日本の固有種を大切にしよう
4.まとめ
ヤマネコってどんな猫?
ヤマネコと聞くと、山で暮らしている野生の猫(野良猫)を指すようなイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
「ヤマネコ」には、どんな定義があるのかを考えていきましょう。
◆イエネコとの違い
ヤマネコを知りたいのであれば、まずはイエネコについての理解を深めなければなりません。
「イエネコ」とはその名の通り、家の中で暮らす猫を指します。
狭義では食肉目ネコ科ネコ属に分類される、猫の先祖と言われているリビアヤマネコが家畜化されたことが始まりとされています。
イエネコは動物学上では「Felis(ネコ属) silvestris(森の) catus(ネコ)」といった通称で呼ばれ、家畜化された愛玩動物であることから「ドメスティックキャット」と呼ばれることもあります。
日本を含め世界中で猫は、犬と並ぶ代表的なペットとしても親しまれていますよね。
猫を飼育されている方であればご存知の通り、知能が高く自由気ままな性格が魅力的な動物です。
集団ではなく単独行動を好む動物ではありますが、愛情を注げば注いだ分だけ返してくれるのが、イエネコの最大の特徴と言えるでしょう。
人間と暮らすことによって、柔軟な性格に進化してきたイエネコではありますが、その反面ヤマネコは人間になつくようなことはなく、強い警戒心を持っています。
身体的に大きな違いがないことからも、イエネコとヤマネコの違いがイメージしづらい要因となっているのかもしれません。
◆ヤマネコの生態
見た目的にイエネコと大差がないヤマネコですが、ヤマネコもイエネコ同様、食肉目ネコ科ネコ属に分類されています。
ヤマネコを指す意味を細かく分類していくと、以下の種類に分けられると言われています。
・イエネコを除いた小型の野生の猫の総称
・野生化したイエネコ(野猫)の別称
現在ヤマネコは世界中に、約29種もの野生種が生息しており、このようなことからもイエネコや野良猫を除いた小型の野生の猫を、ヤマネコと呼ぶことが一般的なようです。
ヤマネコは南極、オーストラリア、ニュージーランド、セレベス、フィリピン、マダカスカルなどの寒帯から熱帯地域をはじめ、日本本土でも生息が確認されています。
ほとんどのヤマネコは体長が35~110cm前後、尾長が10~60cm前後となり、体色は猫の先祖であるリビアヤマネコより暗い灰色や茶褐色で、斑紋やキジ模様が全体的に広がっています。
また、ネコ科の動物によく見られる「虎耳状斑(こじじょうはん)」が野生種のヤマネコにも多く見られます。
そして猫と同じく夜行性で木登りが得意となり、主に森林で生息するネズミや鳥類、ウサギやイタチなどの哺乳類、カエルやトカゲ、昆虫などを捕食して生活しています。
◆日本にヤマネコはいる?
前述した通り、日本にも野生のヤマネコは存在しています。
日本では2種類のヤマネコが確認されており、長崎の対馬に生息する「ツシマヤマネコ」と、沖縄の西表島に生息する「イリオモテヤマネコ」です。
どちらもベンガルヤマネコの亜種となり、国の天然記念物にも指定されています(イリオモテヤマネコは特別天然記念物に指定)。
ですがその反面でIUCN(国際自然保護連合)では、絶滅の危険性がもっとも高いとされる、絶滅危惧IA類にどちらも分類されているようです。
このような過酷な状況にある2種類のヤマネコが、現在も日本で生存ができている理由として、どちらも独立した人口の少ない島が生活拠点になっていることが挙げられるでしょう。
数が減少し絶滅の危機があるものの、その陰で生態を守るために活動している方々がいらっしゃるので、これから先も野生種が安全に暮らしていけるような、環境づくりを心掛けていきたいものですよね。
ヤマネコの種類
約29種もの野生種が世界中に広く分布されているのであれば、実際にどんなヤマネコたちが居るのかも気になることではないでしょうか。
いくつかのヤマネコを抜粋して、ご紹介していきたいと思います。
◆ツシマヤマネコ
長崎県の対馬のみに分布する「ツシマヤマネコ」ですが、1971年に天然記念物、1994年に国内希少野生動植物種に指定された哺乳類となります。
イリオモテヤマネコほど知名度は高くはありませんが、日本を代表するヤマネコと言えるでしょう。
灰褐色で小さな斑点模様を持つ体色は、キジトラ猫を彷彿させ、大きさもイエネコと大差はありません。
ですがツシマヤマネコには、耳の裏に白い斑点があり、特徴的な太い尻尾を持っているので、よく観察してみると違いが分かるはずですよ。
◆イリオモテヤマネコ
日本でもっとも認知度の高いヤマネコと言えば、「イリオモテヤマネコ」を思い浮かべる方も多いことでしょう。
1977年に特別天然記念物、1994年に希少野生動植物種に指定されています。
1965年に西表島で劇的な発見をされたイリオモテヤマネコは、独立種として注目を集めましたが、遺伝子の分析により、ベンガルヤマネコの亜種であると判断されました。
形態は全身斑点模様が入っていますが、アゴが白く、太い尻尾はツシマヤマネコともよく似ています。
◆ベンガルヤマネコ
多くの亜種に分けられる「ベンガルヤマネコ」は、東南アジアをはじめとした、幅広い地域で生息が確認されているヤマネコです。
イエネコに形態が近いヤマネコとなり、美しい斑点模様は血統種の猫「ベンガル」を彷彿とさせます。
天然記念物に指定されているヤマネコではありますが、イエネコとの交雑が認められているので、猫のベンガルが誕生したのは、このヤマネコのおかげとも言えるでしょう。
◆マヌルネコ
動物園でも人気の「マヌルネコ」ですが、モウコヤマネコといった別名を持っている通り、ヤマネコの一種となります。
ここまでこちらの記事で紹介してきたヤマネコとは異なり、個性的な見た目をしていますが、そのインパクトの強さからも魅了されてしまう方が多いようです。
モフモフで大型のヤマネコに見えるマヌルネコですが、マヌルとはモンゴル語で「小さい野生猫」を指します。
その意味の通り大型に見えるのは、全身を厚い毛が覆っているからであり、実際の大きさや体重はイエネコと大差がないといった、チャーミングな一面を持っているヤマネコです。
◆オオヤマネコ
ヤマネコの中でも大型で、広い範囲で分布が確認されているのが「オオヤマネコ」です。
体長は最大で150cm前後で体重は最大30kg前後と、大型犬や小柄な女性ほどの大きさがあります。
オオヤマネコは分布している地域によって呼び名が異なり、アメリカに生息するオオヤマネコは「カナダオオヤマネコ」、ユーラシア大陸に生息するオオヤマネコは「ユーラシアオオヤマネコ」などと区別することがあるようです。
そして日本が陸続きだった遠い昔の時代には、北海道から九州まで生息していたとも言われていますが、既に日本では絶滅しており、その理由も不明と言われています。
◆リビアヤマネコ
言わずと知れた、イエネコの起源である「リビアヤマネコ」は、もっとも歴史の古いヤマネコとなります。
イエネコの近縁である「ヨーロッパヤマネコ」と同じく、大きさは違えど形態はキジトラによく似た、別種とは思えないような見た目をしています。
このヤマネコが存在し、人間との共有を許容してくれたからこそ、今の猫たちが居ると考えれば感謝しかないので、野生種が根絶しないことを願うばかりですよね。
ヤマネコを守ろう
遠い昔にはツシマヤマネコやイリオモテヤマネコ以外のヤマネコが、日本にたくさん居たという記録が残っていますが、その理由は明確には分かっていません。
ですがその理由はもしかしたら、人間に都合が悪い理由ばかりだから、あやふやにされている可能性も否めませんよね。
もちろん日本だけでなく海外に生息するヤマネコの中にも、頭数が減っているヤマネコは複数居ますので、私たちはどのようにして守っていくべきなのでしょうか。
◆頭数が減り続けているヤマネコ
まずはヤマネコがどれぐらいの頭数現在が生存しているのかを、理解しておかなくてはいけません。
現在日本に生息している野生種のツシマヤマネコやイリオモテヤマネコは、どちらも推定100頭前後しか確認されていないと言われています。
自然豊かな島に生息していたとしても、たったそれだけの頭数しか存在していないのなら、現在を生きている個体をなんとしてでも、守ってあげたいと思ってしまいますよね。
そして海外ではヨーロッパヤマネコの一種である「スコットランドヤマネコ」が、2019年の時点で35頭しか残っておらず、実質的に絶滅した種として呼ばれています。
野生種を保護して交配に成功したようですが、急激にたくさん増えるわけではないので、長い目で見て彼らが暮らしやすい環境を整える必要があるのではないでしょうか。
◆観光の際には車の運転に注意!
私たちが普段から意識してできることは、観光地に行った際に彼らの生活を脅かさないことです。
とくに西表島や対馬へ旅行に行った際には、島を巡るのにレンタカーを借りて観光をする方は多いと思います。
現代のヤマネコの死因は車との接触による事故がほとんどですので、常に安全運転を心掛けてあげる必要がありますよね。
そして野生種のヤマネコを見つけたとしても、餌付けをしないことも大切です。
一時的な優しさで食べ物を与えてしまえば、その味を覚え、敢えて危険な道路沿いが行動範囲となってしまうからです。
この貴重な命を守るためにも、人間と野生種の適切な距離感を保ち、生態系を崩さない配慮を常に心がけるようにしましょう。
◆日本の固有種を大切にしよう
日本にはヤマネコ以外にも、日本だけに存在する固有種がたくさん生息しています。
このような生物は日本の宝となりますので、知恵と知識を持った人間が、適切な環境を整えて守っていかなくてはいけません。
もちろん絶滅危惧種だけでなく、すべての生物と共存していくことが望ましいので、まずは自然を守るといった、意識を持つことからはじめてみてはいかがでしょうか。
まとめ
普段の生活で関わることのないヤマネコではありますが、猫の歴史を知っていく上で、ヤマネコの存在はとても貴重であることが分かりました。
その貴重なヤマネコが、世界各国で絶滅の危機にさらされているのも事実です。
そこにはやはり人間の身勝手な生活が深く関係していますので、もっと深くヤマネコについて知りたい方は、なぜ絶滅の道を歩んでしまっているのか、そのような情報が掲載されている記事を探してみるのもおすすめです。
まずは興味を持つこと。これがなによりも大切なのではないでしょうか。
一人一人が固有種を守りたいといった意識を持てば、世界各国で問題視されている環境問題も改善に向かう糸口が見つかるかもしれません。
結果が分かるのは当分先にはなってしまうかもしれませんが、今私たちができることを意識し、自然の中で暮らすヤマネコをはじめとした、貴重な生物を守っていく気持ちを持つことからはじめていきましょう。
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