【獣医師監修】猫にアルコールは絶対与えないで!気をつけたいのは誤飲だけじゃない?

2021.04.11

【獣医師監修】猫にアルコールは絶対与えないで!気をつけたいのは誤飲だけじゃない?

猫には、アルコールを絶対に与えてはいけないことをご存じでしょうか?動画共有サイトなどでは、お酒を飲んで酔っぱらった猫の動画が投稿されていますが、これは非常に危険な行為です。猫にとって有害な食べ物はいろいろありますが、アルコールの危険性については認知度が低いようです。今回は、猫にとってアルコールが危険な理由と摂取した場合の症状をご紹介するとともに、アルコール消毒のリスクにも触れていきます。

猫にアルコールは絶対NG!

日本酒

最初に、大前提として、猫にアルコールは絶対に与えてはいけないということを理解しておきましょう。
では、何故、猫にアルコールが危険なのでしょうか?

◆「お酒に酔う」とはどういうこと?

まず、お酒(アルコール)に酔うということについて、確認しておきましょう。
人間の場合、摂取したアルコールの約20%が胃で、約80%が小腸で吸収されて、血液中に溶け込みます。
アルコールは、肝臓でアルコール脱水素酵素により分解されて、アセトアルデヒドに変化します。
アセトアルデヒド脱水酵素がさらに分解することで無害になっていきますが、すぐに全てが分解されるわけではありません。
アルコールを含んだ血液は、心臓から全身へ行きわたり、脳まで達することでいわゆる「酔っ払い」の状態になります。
次第に肝臓でのアルコール分解が進み、酔いがさめていきますが、完全にお酒が抜けるには約10時間かかると言われています。

◆猫はアルコールを分解できない

では、猫ではどうなるのでしょうか?
お酒のまわり方自体は人間と同様ですが、猫の肝臓にはアルコールを分解する酵素がありません。
猫がアルコールを摂取すると、分解されないため、体内に有害物質として蓄積していきます。
血液中のアルコール濃度も、なかなか下がらないので、その間ずっと酩酊状態が続きます。
二日酔いが3日も続いた猫の例もあるそうです。
猫には、そもそもお酒を飲む習慣はなく、人間とは体の仕組みそのものが異なることを理解しておいてください。

◆アルコールの致死量

猫におけるアルコールの致死量は、どのくらいかについても押さえておきましょう。
人間でも、体格によってお酒の酔い方は異なり、同じ量を飲んでも、体格が小さい人の方が酔いやすい傾向があるとされます。
これは、血液中のアルコール濃度が高くなりやすいかどうかの差です。
人間では、血中アルコール濃度が0.41~0.50%以上になると、脳への影響や死に至る可能性があると言われています。
猫の場合、アルコールの致死量は、体重1kgあたり5.6mLとされています。
仮に猫の体重が4kgの場合、致死量は22.4mLとなります。
ちなみに、おちょこ一杯は多めに見積もって約18mLです。
お酒のアルコール度数により、含まれるアルコール量は異なるため、それぞれで致死量も異なります。
参考までに挙げると、致死量は下記の通りです。

・度数5%のビール110mL
・度数15%の日本酒37mL
・度数40%の日本酒14mL

気をつけたいのは、これらの値はあくまで致死量であることです。
人間でも致死量まで飲まなくても深刻な状態になる場合があるように、猫でも致死量に至らなくても重篤な状態になる可能性があります。
猫ががぶがぶとお酒を飲むことは考えにくいですが、致死量以下だから問題がないというわけではないのです。

◆アルコールを摂取した場合の症状

猫は、アルコールを少量摂取しただけでも、中枢神経に影響が及び、酩酊状態になります。
体が小さく、分解酵素を持たない猫の場合、人間にとってひと口程度のお酒でも、重度の中毒症状(急性アルコール中毒)になる確率が高いのです。
二日酔いのような状態から、意識を失うレベルにまで至る可能性もあります。
具体的には、下記のような症状が見られます。

・嘔吐
・下痢
・震え
・呼吸数が低下する
・意識が朦朧とする(意識障害)
・昏睡状態に陥る
・心肺機能が鈍くなる

嘔吐した場合、吐しゃ物が喉に詰まり窒息する危険性もあります。
重篤な状態に陥った場合、命を取り留めても、肝臓を中心とした内臓にダメージが残ることがあります。
内臓のダメージが、後々、病気を促進したり、寿命を縮めたりすることにもなり得ます。
症状が出るまでの時間は、摂取した直後から数時間です。

◆またたび酒もNG

またたびと聞くと猫を連想するためか、またたび酒であれば与えても良さそうに思いがちです。
しかし、人間用のまたたび酒にはアルコールが含まれているので、与えてはいけません。
「猫にまたたび」と言われるためか、ラベルに猫の描かれたものもあるので、勘違いしないように気をつけてください。

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◆米麴からできた甘酒はOK

栄養価の高い甘酒は、「飲む点滴」とも呼ばれています。
猫の健康にも良さそうで、与えてみたいと思われるかもしれません。
甘酒には、酒粕から作るものと米麴からできたものがあります。
酒粕から作られたものにはアルコールが含まれるため、猫に与えてはいけません。
米麹は、蒸し米にコウジカビを繁殖させて作ったもので、猫に与えても大丈夫です。
米麴の甘酒は、ウェットフードなど柔らかい食事に混ぜて与えると、歯の弱くなったシニア猫の健康サポートにもなります。


猫がアルコールを舐めてしまったら

故意にお酒を飲ませることは虐待ともいえる行為ですが、家庭でのお酒の席では、うっかりこぼしたお酒を猫が舐めてしまうようなケースは起きる可能性が十分あります。
では、愛猫がアルコールを舐めてしまった場合には、どう対処すればよいでしょうか?

◆すぐに動物病院へ!

猫がアルコールを摂取した場合は、すぐに動物病院に連絡をして、獣医師の指示を受けてください。
摂取して時間が経っていなければ、胃洗浄や催吐処置が有効です。
その後は、アルコールを体外に排出するための点滴などが行われます。
ネット上では、吐かせる方法などが掲載されていることもありますが、専門的な知識がない人が行うのは非常に危険です。
吐しゃ物の誤嚥や、窒息を招く可能性もあります。
素人判断での応急処置は行わず、獣医師の指示を仰いだうえで、すぐに動物病院を受診しましょう。
その際、いつ頃、どんなお酒を、どの程度の量飲んだかを伝えられるようにしておくと、診察や治療がスムーズに行えます。
夜間などで診てくれる病院が見つからない場合には、体温の低下を防ぐため毛布などで包んで保温し、安静にさせてください。

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◆夜でも診てもらえる動物病院を調べておく

お酒の誤飲などは夜に起こりやすいので、夜間でも診療している動物病院や24時間対応、休日対応をしてくれる病院を、事前に調べておきましょう。
お酒にまつわることだけでなく、夜間や休日の病気の際にも安心です。
地域によっては、夜間の診療を当番制で行っている場合もあるので、調べておくといいですね。


アルコール消毒にも注意!

アルコール消毒

ここまでお酒の誤飲によるアルコール摂取について、解説してきました。
しかし、アルコールは、お酒だけではなく、消毒用のスプレーやウェットティッシュなどにも使用されているため、注意が必要です。

◆アルコールスプレー

猫はよく吐く動物なので、吐いたあとを片づける際に、アルコールスプレーなどで消毒する飼い主さんも少なくないと思われます。
また、トイレの掃除の際に使ったり、おもちゃの消毒をしたりすることもあるでしょう。
アルコールの付着した場所を舐めてしまうと危険ですし、空中に漂うアルコールも危険です。
吸引してしまうだけではなく、猫の体に付着して、それをグルーミングで舐めてしまう可能性があります。

◆ウェットティッシュ

ウェットティッシュや除菌シートには、アルコールが含まれているものが多いです。
成分表では、「エタノール」と表記されています。
ウェットティッシュなどで拭いた場所を猫が舐めてしまうと危険なので、使用しないようにするか、完全に乾くまで猫が触れられないようにしましょう。
また、アルコールの入ったウェットティッシュなどで猫の体を拭くこともやめておきましょう。
猫は、濡れたり異物がついたりした場所を舐めて毛づくろいするので、体内にアルコールが取り込まれてしまいます。
また、除菌シートを多用すると、皮膚に存在する常在菌も除菌するため、皮膚炎を引き起こすことがあります。
常在菌の中には、存在することで「悪玉菌」の活動を抑制して皮膚を守っている菌が含まれているからです。

◆汚れが付いたときは猫用のものを使用する

トイレや吐いた跡、猫の体の汚れを取りたい場合には、猫用の商品を使用しましょう。
その際も、成分表を必ず確認してください。
猫用、ペット用として販売されているものでも、猫にとっては有害な成分が少量であれ含まれている商品があります。
保存料として使われる安息香酸ナトリウムや、保湿剤として使用されるプロピレングリコール(PGと表記)のほか、香料も気をつけたい成分です。

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◆人間の消毒にも気をつける

飼い主さんが、手指をアルコール消毒する機会も少なくありません。
この場合、消毒した部分が乾いてから、1分程度経過するまでは猫に触らないようにしましょう。
アルコールが揮発して手が乾いた後も、少しの間、成分や臭いが手に付着しているからです。
この成分やにおいが体につくと、猫はこれらを消すために毛づくろいをして、アルコール成分を摂取してしまう危険性があります。


まとめ

猫にアルコールを与えるのは、非常に危険な行為なので、絶対にやめてください。
猫の肝臓には、アルコールを分解する酵素がないため、有害物質として体内に蓄積していきます。
最悪の場合、命にかかわりますし、助かっても内臓に受けたダメージが、後々、病気を促進したり、寿命を縮めたりするリスクがあります。
お酒の誤飲だけではなく、パウンドケーキなどのお菓子や加熱していないパン生地などの誤食にも気をつけましょう。
また、アルコールスプレーやウェットティッシュなどの使用にも、十分注意が必要です。
猫用の商品を利用するようにしてください。
さらに、アルコールで消毒した飼い主さんの手を舐めさせない、乾いてから1分程度経つまで猫に触らないなどの注意も必要です。
お酒以外のアルコールにも十分気をつけて、万一、愛猫が舐めてしまった場合には、必ず、すぐに動物病院を受診してください。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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