1.猫の腸閉塞の原因
1-1.異物の誤飲
1-2.グルーミングで飲み込んだ毛
1-3.腫瘍
1-4.ヘルニア
2.猫の腸閉塞の診断
2-1.症状
2-2.レントゲン検査
2-3.腹部エコー検査
3.猫の腸閉塞の治療
3-1.開腹手術
3-2.投薬治療
3-3.異物が胃にある場合
4.猫の腸閉塞の予防
4-1.誤飲に繋がるようなものはしまう
4-2.おもちゃは遊び終わったら片付ける
4-3.完全室内飼いをする
5.まとめ
猫の腸閉塞の原因
腸閉塞とは「イレウス」とも呼ばれ、何かしらの原因によって腸管の流れを阻害してしまう状態を指します。
腸閉塞には腸管の中が塞がってしまう「機械的閉塞」と、腸管が正常に機能しなくなる「機能的閉塞」とがありますが、人間だけでなく猫にも見られる病気となっています。
猫の場合はどのような原因で、腸閉塞を患う場合が多いのでしょうか?
◆異物の誤飲
猫の場合、異物の誤飲がもっとも多い腸閉塞の原因としてあげられるでしょう。
狩猟本能を持ち合わせている猫は、たとえイエネコであったとしても、獲物を捕まえる際に前足の鋭い爪と、噛むことによって獲物が身動きをとれなくなるようにして捕えます。
この本能が根付いているので、たとえ獲物の対象がおもちゃであったとしても、必死に掴んで力いっぱい咥えて簡単に放そうとはしませんよね。
必死に遊んでいれば、その過程で誤飲をしてしまっても不思議ではありませんし、おもちゃ以外にも興味を示すものがあれば、触れたり噛んだりして安全を確かめる子も居ますので、注意が必要となります。
◆グルーミングで飲み込んだ毛
綺麗好きな猫にとって、グルーミングは欠かせない日課となるので、たくさんの舐めとった被毛を体内に取り込むことになりますよね。
猫の毛は体内で消化されませんが、通常であれば便と一緒に排出されますし、たとえ毛玉になってしまったとしても、吐き戻すことによって体外に排出します。
ですがこの一連の流れがスムーズに行えない理由のある猫ちゃん(老猫や長毛の猫など)の場合、体内に被毛が溜まってその毛同士が絡まり合い、どんどん大きな毛球となって便や嘔吐で体外へ排出ができなくなることも。
この毛球が胃で拡大すれば猫は嘔吐で吐き出すことができず、胃の先の小腸で詰まってしまえば腸閉塞を起こし、激しい腹痛や嘔吐を繰り返し食欲不振となります。
さらに症状が悪化した場合には、腸の血行が悪化して腸管に穴があき、腹膜炎を起こして最悪の場合死亡してしまうケースもあるようです。
◆腫瘍
猫にも腫瘍ができることがあり、その腫瘍がさまざまな機能障害を起こすことは広く知られていますよね。
腫瘍の種類には良性と悪性がありますが、どちらにしても腸管内に発症してしまえば、正常な腸管の機能を奪い、内容物の通りを悪くして最終的には腸を塞ぐといった流れになることでしょう。
猫の場合は腸管にできる腫瘍は、「胃腸管型リンパ腫」といった腫瘍が7割を占めるとも言われていますので、高齢の猫に発症しやすい病気となるので注意が必要です。
◆ヘルニア
猫もヘルニアを患うことがあり、ヘルニアが原因で腸閉塞を引き起こすことがあります。
ヘルニアとは体内の臓器が本来あるべき場所から脱出した状態を指すので、よく知られているのは臍(へそ)ヘルニアや鼠径(そけい)ヘルニアなどが挙げられますよね。
いわゆる臍ヘルニアは「でべそ」、鼠径ヘルニアは「脱腸」ですが、猫もこれらのヘルニアを患うことがもちろんあります。
先天的に臍ヘルニアを患っている猫ちゃんや、交通事故などで強い衝撃を受けるなどをしてお腹付近にヘルニアを患った場合などに、腸の一部がヘルニア門に挟まってお腹に戻らなくなってしまうこともあるそうです。
このような状態を「嵌頓(かんとん)」と呼びますが、放置すれば血流が悪くなり、腸閉塞を患って腸が壊死するケースもあるので、早期の診断や治療が必要と言えるでしょう。
猫の腸閉塞の診断
猫の腸閉塞は、早期の診断こそが重要となってきます。
猫は我慢強い動物ですので、判断が難しいところではありますが、毎日よく愛猫のことを観察していれば、病気のサインを見逃さずに済むはずです。
腸閉塞の傾向がある猫には、どんな症状が見られるのでしょうか?
◆症状
一般的に腸閉塞を猫が患うと、何度も嘔吐を繰り返すことが挙げられます。
腸が完全に塞がっていない場合には、元気や食欲があったとしても嘔吐の回数が増えるので、そこまで気にとめない飼い主さんも多いことでしょう。
また、異物などで腸が塞がってしまった場合は、その部分の血流が悪くなって腸の壊死が始まりますので、腸には穴があき、激しい腹痛や嘔吐が見られます。
そして消化管が機能しなくなるので、便が出ない、または粘液が少し出る程度の症状が見られるようです。
◆レントゲン検査
上記の症状が見られる場合には、すぐに動物病院に連れていき、原因の追究をしなくてはいけません。
まずは獣医師が触診で異物が詰まっているかの確認し、その後腸の内容物を確認するためにレントゲン検査をするのが一般的です。
もし飲み込んだ異物が金属や鉱物であれば、猫の臓器よりもはっきりとレントゲンに写りますので、この時点で原因が判明すれば治療へと進んでいきます。
そして猫のおもちゃや毛玉などは、レントゲンでは写し出されないので、バリウムを用いて異物の輪郭をレントゲン上に写し出す、造影検査を行うこともあります。
しかしながら猫にバリウムを飲ませることや、時間の経過とともに何度もレントゲンを撮るのは難しいので、造影検査を行うかどうかは猫ちゃんの体力と獣医師の判断によることが多いようです。
◆腹部エコー検査
レントゲン検査では原因が判明しなかった場合、腹部エコー検査(超音波検査)で原因を探ることがほとんどです。
腹部エコー検査は腸の動きを確認でき、尚且つ腸内の液状物や層構造も確認できる上に、レントゲンには写りにくい異物(毛球やひもなど)も確認できるので、腸閉塞には有効な検査と言えるでしょう。
そこまで腹部エコー検査が優秀なのであれば、レントゲン検査は必要ないようにも感じますが、猫のお腹にガスが溜まっている場合には、うまく腸内を確認できないので、検査を併用して原因の追究をすることが一般的なのかもしれません。
猫の腸閉塞の治療
検査を行ったあとは、愛猫を辛い症状から一刻も早く解放してあげたいものですよね。
動物病院では腸閉塞に対して、どのような治療が行われていくのでしょうか。
◆開腹手術
腸閉塞の原因により治療法は異なりますが、異物や毛球が原因なのであれば、手術で腸を切開して異物を摘出する必要があります。
また、腸に壊死した箇所や穴があいた箇所がある場合は、その部分を切除して健康な腸同士をくっつけて縫うといった、大掛かりな手術となることも。
腫瘍が原因となっている場合は、腫瘍だけでなく切除する範囲が広くなることも多く、回復に時間がかかり再発のリスクが高まるのも事実です。
◆投薬治療
検査の結果、腫瘍が原因で開腹手術が難しいと獣医師が判断した場合、抗がん剤を用いた化学療法を行うことが一般的となります。
腸にできる猫の腫瘍で大半を占めるのがリンパ腫となりますので、全身に広がっていくリンパ腫は、手術で取り除くことが難しいとされているからです。
原因によって治療法が異なりますので、愛猫の負担を軽減するためにも、適切な治療法を獣医師さんと相談して決めていくようにしましょう。
◆異物が胃にある場合
仮に異物が腸ではなく胃で留まっている場合は、開腹手術のような大掛かりな手術ではなく、嘔吐を促す治療法が用いられることがあります。
検査で食道をスムーズに異物が通れると獣医師が判断した場合は、点滴や注射で催吐剤を使用し、強制的に嘔吐を促します。
催吐剤での誘発が難しい場合は、内視鏡手術を行うことがあり、この手術であれば開腹する必要がないので、体を傷付けずに済むので安心ですよね。
しかし全身麻酔を使用しなくてはいけませんし、内視鏡手術でも異物を取り除くことが難しければ、切開手術は必要になってきますので、普段から誤飲をしないように予防しておくことこそが大切です。
猫の腸閉塞の予防
軽症でも重症だとしても、腸閉塞は猫に苦痛を与える病気ということが分かりました。
猫が辛い思いをしないためにも、飼い主さんは普段からどんな対策法を用いて、予防を心掛ければ良いのでしょうか。
◆誤飲に繋がるようなものはしまう
猫ちゃんの中には「異嗜(いし)」といって、食べ物ではない物(特定の物質や素材など)に対して執着し、噛んだり食べたりする子も居ます。
何かに執着するということは、ひとり遊びができる証拠として受け止める飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、そんな生温いことではなく立派な異常行動として捉えてください。
遺伝性も要因していると考えられる異嗜ですが、引き金となるのはストレスや葛藤といった不安定な気持ちです。
飼い主さんの目の届く範囲内で行動するのならまだしも、留守中に誤飲をしてしまっては大変です。
異嗜の原因となりそうな物は部屋に出しっぱなしにはせず、誤飲につながるような物は常に片付けるように意識しましょう。
◆おもちゃは遊び終わったら片付ける
猫の身近な物で誤飲しがちな物といえば、まずはおもちゃが挙げられますが、おもちゃにはひも状のものが装飾されている商品も多く、猫にとって狩猟本能をくすぐられるアイテムでもあります。
風に揺れるカーテンや、ほつれた洋服の繊維などは、ゆらゆらと揺れて遊びたい気持ちが勝ってしまっても仕方がないことなのかもしれませんよね。
普段飼い主さんが一緒に遊んでくれるおもちゃであれば、ひとりでお留守番のときにも、飼い主さんと遊んだ記憶や自分のニオイが染みついていれば、そのおもちゃに執着するのは当然とも言えるでしょう。
寂しい時間を紛らわすためにひとり遊びをする子は多いので、飲み込めるサイズのおもちゃは猫の留守番時には向いていません。
誤飲ができるようなサイズのおもちゃは、遊んだあとには片付けるようにし、留守番時には誤飲の危険性が低いおもちゃなどを設置するなどの対策をしてください。
◆完全室内飼いをする
交通事故やケガなどを避けるためには、安易に愛猫を外に出さないことも大切です。
愛猫の寿命を延ばす意味合いでも、猫と一緒に暮らす際には完全室内飼いを心掛けるようにしましょう。
完全室内飼いであれば交通事故などのリスクも減らせますし、感染症などの病気を患うリスクも軽減できますよね。
猫が生活する環境を整えれば、完全室内飼いであっても猫は落ち着いてのんびりと暮らせますので、猫が喜ぶ生活環境を目指して、快適な空間づくりを目指しましょう!
まとめ
猫が飼い主さんの前で異物を誤飲してしまったり、原因不明の嘔吐を何度も繰り返したりしていたら、腸閉塞を疑わなくてはいけません。
しかし腸閉塞の進行具合は見た目では判断することが難しいので、いかに早く動物病院を受診できるかが鍵となってきます。
愛猫にいつまでも健康で長生きしてもらうためにも、普段から誤飲しないように気をつけて、異常を感じた場合にはすぐに動物病院へ連れていってあげましょう。
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