【獣医師監修】最近愛猫がよくものにぶつかる!猫も失明することってあるの?

2021.07.31

【獣医師監修】最近愛猫がよくものにぶつかる!猫も失明することってあるの?

五感の中でも目で見るといった「視覚」は、とても重要な感覚となり、今まで見えていたものが見えなくなったら…と考えると、とても不安な気持ちになってしまいますよね。 歳を重ねるにつれて「失明」のリスクが上がるかもしれないと思うと、目のケアは日頃から怠らないに越したことはありません。 猫の場合、もともと視力が弱いので、失明のリスクは人間よりも低い気がしますが、実際のところはどうなのでしょうか。 そしてもし愛猫が失明してしまった場合、飼い主としてどんな心掛けが必要なのかを考えてみました。

猫も失明することがある?

横向きの猫

猫の目は常にキラキラとして、吸い込まれそうなほどの美しさを保っており、もしこの目に光が届かなくなってしまったら…と思うと、とても辛い気持ちになってしまいますよね。

もともと猫は動体視力が優れているものの、静止視力は弱く、人間のおよそ10分の1程度とも言われています。

しかし猫は視力が弱い分、ほかの感覚が優れているので、普段の生活に支障が出ることはほぼないと言えるでしょう。

そんな猫が何かしらの原因により失明したとすれば、さすがに普段の生活にも何かしらの支障が出そうな気がしますよね。

猫の視力は0.1~0.2程度とも言われており、ここまで視力が低いのであれば、視力を失うといった失明することは無いような気もしますが、猫でも失明することはあります。

猫が失明する場合は、どのような原因により、視力を失ってしまうのでしょうか。


猫の失明の原因

猫が失明する原因はさまざまですが、一般的に以下のような理由から視力を失うことが多いようです。

◆病気による失明

猫の失明で一番多い原因として考えられるのが、感染症などの病気による失明です。

失明の原因となる病気は、以下の通りとなります。

・結膜炎
・角膜炎
・ブドウ膜炎
・緑内障
・白内障
・眼瞼内反症
・網膜剥離
・高血圧性網膜症
・脳疾患

ケンカや引っ掻き傷で眼球が傷つくことや、猫風邪といったウイルス感染により発症する一般的な猫の目の病気といえば、結膜炎結膜炎角膜炎を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

軽症であれば数週間で治る病気ではありますが、重篤化してしまえば失明する可能性も否めません。

ほかにも猫エイズFIP(猫伝染性腹膜炎)などが原因となるブドウ膜炎や、眼圧が高まる緑内障も油断できない病気と言えるでしょう。

また、長毛種(ペルシャヒマラヤン)に見られる眼瞼内反症や、網膜が剥がれる網膜剥離といった病気は、瞳孔が開いたままとなり、徐々に視力を失って失明することも。

目に直接関係ない病気でも失明することがあり、腎臓病などによる高血圧が原因となって発症する高血圧性網膜症や、眼振の症状が出る脳疾患なども油断ができません。

猫の失明は先天性の疾患や、高齢によって引き起こされる疾患が原因となることがあるので、注意が必要となります。

◆事故などによる失明

車との接触事故や、カラスに目をつつかれるなど、思わぬ事故によって猫は失明することがあります。

タイミングが悪ければ、どの猫ちゃんでもそのような事故に遭う可能性はありますので、イエネコの場合は完全室内飼いを徹底するなどの工夫が必要と言えるでしょう。

◆カメラのフラッシュによる失明

諸説ありますが、カメラのフラッシュも失明するまではいかなくとも、何回も目に強いダメージを与えることによって、目の機能を傷つけ、視力を低下させる要因になるようです。

私たち人間ですら、暗闇でのフラッシュは眩しく感じるのに、猫は何も感じないという訳がありませんよね。

科学的根拠はないとしても、愛猫を失明させたくないのであれば、撮影をする際にはフラッシュの使用は止めておくようにしましょう。


猫の失明の兆候

もし愛猫が何かしらの原因で失明してしまったら、飼い主さんはちゃんと気付いてあげられるか心配になってしまいますよね。

何も見えない暗闇は、猫にとって未知の世界となりますし、不安な気持ちでいっぱいなことでしょう。

猫が失明した場合、以下のような兆候が見られることがあるので、少しでも様子がおかしいと感じたら、失明を疑ってみてはいかがでしょうか。

◆瞳孔が開いたままになっている

猫は暗い場所と明るい場所で瞳孔の大きさが変わりますが、明るい場所でも瞳孔が開いていたままになっていたら、猫の目に何かしらの異常が起きている証拠です。

瞳孔は光の量を調節するためのものなので、暗い場所や興奮しているとき以外に開いているとしたら、対光反射(瞳孔が小さくなる)が消失している可能性も否めません。

猫の目の前に手などをかざして、まばたきをするようであれば威嚇反射はできる状態となりますが、何の反応もない場合は失明している可能性が高いと言えるでしょう。

◆家具や壁にぶつかる

普段はスムーズに行き来ができた家の中でも、愛猫が家具や壁などにしょっちゅうぶつかるようであれば、急激に視力が低下した可能性があります。

そして飼い主さんの足などにぶつかり、優しく触ってあげた場合でも驚くことや、名前を呼んでも視線が合わない場合は、飼い主さんのことが見えていないのかもしれません。

猫は勘の良い動物ですし、もともと視力が弱いので、耳や鼻を使ったり、ヒゲでバランスを保ったりしますので、そこまで日常生活に支障が出ることはありませんが、やはり失明していたとなると飼い主さんの不安は大きいことでしょう。

さらに失明しているか否かを知りたいのであれば、フードやおやつを目の前に差し出したときにちゃんと目で追えるか、音の鳴らない物(ティッシュなど)を落とした際に目で追うかを確認してください。

◆活発に動かなくなった

徐々に視力が低下していくよりも、ある日突然失明してしまったら、いくら勘の良い猫でも不安な気持ちになってしまいますよね。

普段から活発に行動していた子であれば尚更、動くことに恐怖を感じているかもしれません。

ジャンプをして高い場所への上り下りや、部屋の中を全力疾走するなどの行動ができなくなり、家の中でじっとしている時間が自然と増えていくはずです。

「元気がなくなった」「いつも同じ場所でじっとしている」といった様子が突然現れたのであれば、猫の目が機能しているかの確認をし、機能していないのであれば早急に何かしらの対処をしてあげるようにしましょう。


愛猫の失明を疑ったら

大切な愛猫が失明しているかもしれないと思ったら、飼い主さんはどんな行動をとるべきか落ち着いて考えなくてはいけません。

飼い主さんが落ち着きなくパニックになってしまえば、その焦りの気持ちはきっと猫ちゃんにも伝染してしまうはずです。

愛猫を不安にさせないためにも、まずは何をしてあげるべきなのでしょうか。

◆まずはかかりつけの動物病院に相談を

普段から行っているかかりつけの動物病院があるようであれば、そこの獣医師さんに相談することがおすすめです。

とくに毎年定期的に猫ちゃんが健康診断を行っているようであれば、すぐに状況を把握してもらえますし、何か失明になるようなヒントを探ってくれることでしょう。

何度か通院したことのある動物病院であれば、視力が低下した猫ちゃんも匂いで思い出してくれるかもしれないので、初めての場所よりは多少安心できるかもしれません。

◆危なくない部屋作りをする

失明で愛猫が視力を失ってしまった場合、飼い主さんは相当なショックを受けるかもしれませんが、案外猫は飼い主さんが思っているほど、不自由に感じていない場合もあるようです。

もともと視力が弱いせいもあって、ほかの感覚が優れていますし、部屋の構図や家具の配置もしっかりと覚えている猫ちゃんが多いようです。

愛猫にとって障害物となるような物がお部屋にある場合は片付けるようにし、壁伝いに歩けるように部屋を常にキレイにしておくと良いでしょう。

そして高い場所にお気に入りのスペースがあるようでしたら、上らなくても行ける場所に設置してあげると、怖い思いをさせることがないので安心です。

目が見えなくなった分、さらに聴覚や嗅覚が発達して、今までは興味のなかったことにまで興味を示す可能性もあるので、強い香りのする物の扱いに注意し、大きな音を立てないような生活を心掛けてあげましょう。

◆いっぱい話しかけてあげる

失明で視力を失ったとしても、猫はちゃんと飼い主さんの声や温もりを覚えているので、今まで以上にスキンシップを図ってあげたいところですよね。

しかし突然愛猫の名前を読んだり、触れたりすると驚かせてしまうので、話しかけるときは優しい声で話しかけ、たくさんお話をしてあげてください。

そして触れるときは必ず話しかけながらということを意識し、怖い思いをさせない工夫を習慣づけるようにしましょう。

また、目が見えないことで飼い主さんの動向が掴めなくなることも、猫にとっては不安要素となってしまいます。

目が見えない分、声を出して要望を伝えてくる機会が多くなるはずなので、その気持ちを汲み取ってあげるためにも、たくさんお話しすることを心掛けましょう。


まとめ

猫はもともと視力の弱い動物ではありますが、病気や事故などによって失明する可能性も否めませんので、猫と一緒に暮らす方であれば、普段から猫が生活しやすい環境を整えておくことに越したことはありません。

飼い主さんからしてみたら、愛猫の失明はものすごくショックな出来事となりますが、案外猫自身はそこまで不便に感じることなく、今まで通りの生活が送れる子はたくさん居るようです。

大切なのは愛猫が失明したとしても、愛猫との距離感は変えず、今まで以上にスキンシップの時間を増やすことではないでしょうか。

もちろん生活環境への工夫も必要となってきますが、しっかりと愛猫の観察をしつつ、より信頼関係を深めていってくださいね。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

<<コジマ動物病院 獣医師が監修した記事一覧はコチラ>>



– おすすめ記事 –

・猫の視力はどれくらい?意外と知らない瞳の秘密について知りたい!
・猫の好きな音ってどんな音?聴力から見えてくる好みを考えてみた
・猫はなぜ高い所が好きなの?本能から見え隠れする5つの理由とは?
・光を追いかける姿が可愛い!猫用ポインターの安全性と遊び方について


focebookシャア
ツイート

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

関連するキーワード


記事に関するお問い合わせはこちら