1.猫のノミとマダニとは
1-1.原因
1-2.マダニとは
1-3.ネコノミとは
1-4.ノミとマダニの寄生による感染症
1-5.人間にも影響があるのか
3.猫のノミとマダニの予防・駆除方法
3-1.外に出さない
3-2.ノミダニの駆除薬を投与する
3-3.室内を清潔に保つ
4.猫のノミダニの薬の投与期間
4-1.投与期間
4-2.投与を始めるタイミング
5.猫のノミダニの薬の付け方
5-1.滴下(スポット)薬
5-2.飲み薬
猫のノミとマダニとは
はじめに、ネコノミとマダニについて見ていきましょう。
◆原因
「うちは完全室内飼育をしているから、大丈夫」と思われる飼い主さんも、少なくないでしょう。しかし、完全室内飼育の猫でも、ノミやマダニに寄生される危険性はあります。
ノミやマダニは、野外では草むらや茂みに潜んでいます。外出した人の服や靴に、ノミやマダニがくっついて、家の中に入ってくることは少なくありません。
また、犬と同居している場合、お散歩で草むらなどに近づいたときに犬の体にくっついたノミやマダニが、室内に持ち込まれる場合もあります。
◆マダニとは
マダニは、種類によって異なりますが体長が未吸血時で4~7mmほどで、吸血後は、1~2cmほどにもなります。生息している草むらなどの近くを宿主となる動物や人が通ると、体表面に付着して血を吸います。
マダニは、顔の周りを中心に寄生しますが、噛まれてもかゆみや痛みは軽度なので、ほとんど症状が出ない場合もあります。しかし、大量に寄生されると、吸血量が多くなり、貧血症状を引き起こすこともあります。また、皮膚炎やアレルギーの原因となる場合もあります。
◆ネコノミとは
ネコノミは、体長が2~3mm程度です。被毛の間をすり抜けながら活発に動き回るのが特徴で、気温20~30℃、湿度50~80%の環境を好みます。
ネコノミは、猫の全身のどこにでも住み着き、環境が整っていると爆発的に増殖することもあります。
皮膚に針を刺して吸血し、この時に出す唾液が体内に入り、強い痒みを引き起こします。このため、体をしきりに掻いたり、被毛を噛むような仕草をしたりします。
◆ノミやマダニの寄生による感染症
ノミやマダニに吸血されると、かゆみなどを生じるほか、瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)、猫ヘモプラズマ感染症、ライム病、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など感染症を媒介するため注意が必要です。
◆人間にも影響があるのか
ノミやマダニは人にも寄生して吸血し、かゆみなどを生じるほか、人間も感染する病原体を媒介することがあります。
特に、マダニが媒介するSFTSウイルスは非常に危険で、注意が必要です。現在のところ、SFTSの治療法は対症療法のみで、有効な薬やワクチンはないとされています。
日本では、2021年7月までに約640人の患者が報告されており、うち80人が亡くなっています。猫から人への感染も確認されており、また獣医療従事者のSFTS感染例も複数認められていることから、猫をはじめとする感染動物からの感染の可能性も考えられます。
愛猫を守るためだけではなく、飼い主さん自身を守るためにも、ノミダニの防除は必要です。
ノミダニが寄生しやすい猫の特徴
完全室内飼育であっても、ノミダニが家の中に入ってくる可能性があることはお伝えしました。
しかし、外へ出る猫ちゃんの場合、寄生されるリスクが非常に高くなります。猫が、ノミやマダニが生息している草むらや茂みに入って、寄生される可能性があるからです。また、他の猫や犬と接触することでうつされる場合もあります。野良猫は寄生されている確率が高く、野良猫が集まる場所ではノミやダニが多いと考えられます。
猫のノミダニの予防・駆除方法
◆外に出さない
前述の通り、外に出るとノミやダニに寄生されるリスクが高まります。庭やベランダでも、そのリスクに変わりはありません。
予防の第一は、愛猫を外に出さないことです。
◆ノミダニの駆除薬を投与する
ノミは、吸血を始めてから24~48時間で1日当たり20~50個の卵を産み、13℃以上の気温であれば活動ができます。飽血状態のマダニは、3,000~4,000個の卵を産むと言われています。つまり、室内にノミやマダニが持ち込まれると、あっという間に増えてしまうということです。
どんなに注意をしていても、外から侵入することを完全に防ぐのは大変困難です。したがって、愛猫が寄生されないようにすることが大切です。もし吸血されても産卵前に死滅させられるよう、ノミダニの防除薬を定期的に投与するようにしましょう。
◆室内を清潔に保つ
日頃から、掃除機をまめにかけ、粘着テープなども併用して、ノミダニが繁殖しない環境を保つようにしましょう。また、換気や温度・湿度の調節も大切です。
猫のノミダニの薬の投与期間
◆投与期間
薬を投与する期間は、ノミダニが活発になる期間です。野外でノミやダニが活発に活動をする時期は、地域により異なりますが、概ね4月~12月です。この時期には、防除薬を定期的に投与する必要があります。具体的な期間は、かかりつけの動物病院で確認してください。
ただし、現代の住環境では冬でも活動できる場合も多く、通年で防除することを勧めている獣医師さんも少なくありません。
◆投与を始めるタイミング
温度が13℃程度になるとノミやマダニが活動をし始めるので、気温が13℃以上になる前には投与を始めましょう。
また、子猫の場合、薬によりますが、生後4週齢~8週齢以降しか使えない場合が多いです。動物病院で相談しながら投与を始めるようにしてください。
猫のノミダニの薬の付け方
ノミダニの薬には、滴下するスポット薬と飲み薬があります。ここでは、それぞれの投与方法について、ご紹介します。
◆滴下(スポット)薬
猫の首筋の後ろ側(肩甲骨の前)に薬剤を垂らして使用します。猫の舌が届かず、舐めることができない場所なので、舐めてしまう心配はありません。ただし、完全に乾くまでは、投与部位に触らないようにする、多頭飼育の場合には他の猫が舐めないようにするなどの注意が必要です。
皮膚の1ヶ所に薬を全部滴下することで、薬が垂れて舐めてしまうことを防ぐことができます。
◆飲み薬
錠剤は、本来そのまま飲ませるものですが、口に入れるのが難しかったり、一旦入れられても吐き出されてしまったりします。また、細かく砕いてフードに混ぜて与えることもできますが、匂いで気づいて食べてくれないことも多々あります。難しい場合には、滴下薬を検討するとよいでしょう。
錠剤は、喉に引っかかって食道炎の原因になることもあるため、投与後すぐに、最低でも6mLの水をシリンジなどで飲ませてください。
猫におすすめの駆除薬
◆フロントラインプラスキャット
動物病院で処方されるノミマダニ駆除薬として主流の滴下薬で、有効成分は、フィプロニルとs-メトプレンです。
フィプロニルは、皮膚表面の皮脂層に広がり、24時間以内に全身をカバーします。寄生したノミ成虫が接触すると、ほぼ24時間でほとんどの成虫が駆除されます。
s-メトプレンは、ノミの卵の孵化・発育を阻止する成分で、寄生しているノミだけではなく、その繁殖や再寄生を予防します。
駆除薬の投与後48時間以内に、ほとんどのマダニを駆除します。
さらに、ネコハジラミも約48時間で駆除することができます。
成分が全身に拡散した後は、皮脂腺から皮脂とともに少しずつ体表に成分が補われるため、シャンプーやシャワー、雨などの影響をほとんど受けません。
その他の猫に寄生するダニ
ネコノミやマダニ以外にも、猫に寄生するダニもいます。
これから紹介するダニの寄生が認められた場合、まずはかかりつけの動物病院に診てもらいましょう。
ヒゼンダニ
「疥癬虫」(かいせんちゅう)とも呼ばれ、体長は約0.4mmと非常に小さく、感染経路は主に感染動物の接触や、ヒゼンダニが付着したものとの接触だと言われています。
激しい痒みが特徴で、皮膚が硬く固まり、やがてフケ状になって、剝がれていきます。
人の皮膚にも寄生し、お腹や胸部、太ももの内側などに激しいかゆみを生じます。
ミミヒゼンダニ
ミミヒゼンダニは、いわゆる「耳ダニ」のことで、猫の耳に寄生します。体長は0.5mmほどですが、多数寄生している場合、よく見ると動いているのを捉えることができます。一生を、主に犬猫やフェレットの外耳道で過ごします。
寄生されると激しいかゆみが生じて、耳を頻繁に搔いたり、壁や床に耳をこすりつけたり、頭を激しく振ったりする仕草を見せます。また、耳ダニの糞が耳垢に混ざり、黒くて独特の刺激臭のある耳垢が溜まり、外耳炎になる可能性もあります。
ネコツメダニ
体長は0.4~0.6mmと小さく、鋭い爪が特徴です。爪で皮膚を傷つけて体液やリンパ液を吸います。
寄生されると、かゆみやただれ、かさぶたといった症状のほか、大量のフケが発生します。
まとめ
ノミやダニは、吸血するだけではなく、感染症の病原体を媒介します。感染症の中には人に感染するものもあり、ノミダニの駆除は愛猫の健康のためだけではなく、飼い主さんの安全のためにも重要です。
ノミやダニは暖かくて湿度が高い環境を好み、活動が活発になるのは、地域差がありますが、概ね4月~12月です。この時期には、定期的に駆除薬を投与する必要があります。現代の住環境では、冬でも活動する場合も少なくないので、通年で投与すると、より安心でしょう。
防除薬には、動物病院で処方される医薬品と市販の医薬部外品があり、市販薬の方が安価です。しかし、価格の差は効果の差と言えます。十分な防除効果を得るためには、医薬品を使うことをおすすめします。
ノミダニの予防・防除をしっかりと行い、人も猫も安心な暮らしをしましょう。
– おすすめ記事 –
・【獣医師監修】猫の耳ダニってどんな病気?こんな症状が出ていたら要注意!! |
・【獣医師監修】猫の毛に白い粉?それはシラミかもしれません!症状や予防法は? |
・【獣医師監修】猫に寄生するダニの見分け方と駆除・予防の仕方? |
・【獣医師監修】猫が痙攣を起こしたらどうすれば良い?何が原因なのか知りたい! |