1.猫の貧血とは?
2.貧血の種類
2-1.失血性貧血
2-2.溶血性貧血
2-3.非再生性貧血ー
3.猫の貧血が引き起こされる原因について
4.感染症にも注意を
5.貧血になりやすい猫の特徴って?
6.貧血の予防方法
7.猫の貧血チェック
7-1.口の中の色をチェック
7-2.目の粘膜の色チェック
7-3.行動チェック
8.猫の貧血の検査と治療方法について
8-1.検査
8-2.治療
9.さいごに
猫の貧血とは?
猫の貧血で一番多い症状が「元気がない」「食欲がない」「口の中が真っ白になる」といった症状です。
そのほかには全身が酸欠状態になるため、普段はピンク色であるはずの鼻が白くなる、疲れやすくなるなどの症状が現れます。
そして赤血球は、酸素を体の隅々に運ぶ役割があるため、その数が少ない状態である貧血になると、体内の酸素濃度の低下がおこり、それに伴い早い呼吸をするようになります。
愛猫が横になりながら荒い呼吸をしてだるそうにしていたら要注意です!
白目や口内粘膜が黄色になる黄疸という症状が出たり、尿の色が異常に濃くなったりする猫もいます。
また、人の貧血であれば、立ちくらみや卒倒、失神するイメージがありますよね。
実はこの症状、猫の貧血ではまれなことなのです。そして猫は貧血の初期症状が現れにくいという特徴もあります。
そして人間は「体質」で貧血になりやすい場合が多いことに対して、猫は「病気」によって貧血が起こりやすいという特徴があります。
人間のように栄養不足で貧血になることはあまりないのも特徴です。
最近飼育されている犬や猫は栄養バランスの整ったフードを食べているケースが多いので、鉄分不足による貧血ということはあまりありません。
しかし手作り食で鉄分やたんぱく質、葉酸が不足し、栄養が偏っている場合はこの限りではありません。
それでも、猫の貧血のほとんどは病気が裏に隠れていることが高いので、甘く見てはいけない病気です。
貧血の種類
猫の貧血には大きく分けて3つの種類があります。
◆1.失血性貧血
失血性貧血とは、血液が血管の外に漏れ出して止まらなくなってしまうことが原因の貧血です。
原因としては、怪我の傷や手術、腫瘍の破裂、血小板の減少などによって止血に異常がある場合が挙げられます。
◆2.溶血性貧血
猫の赤血球の寿命は約90日です。人間の赤血球の寿命は約120日と言われているので約3分の2の期間になります。
溶血性貧血とはその90日の寿命よりもはやい時期に赤血球が破壊され、新しく作られる赤血球の数が追いつかなくなってしまうことが原因で起こる貧血が溶血性貧血です。
原因としては、免疫の疾患や中毒などがあります。
◆3.非再生性貧血
非再生性貧血は、骨髄が何らかの原因によって血液を生産できない、またはごく少量しか生産できなくなってしまうことが原因で起こる貧血です。
原因としては、慢性腎臓病、骨髄疾患、免疫性疾患などの病気が原因として引き起こされます。猫の場合はだいたい約70%が非再生性貧血の場合が多いと言われています。
猫の貧血が引き起こされる原因について
猫の貧血が引き起こされる代表的な病気は「ウイルス性感染症」がまず挙げられます。
ウイルスによって骨髄での血球成分の生成が阻害されてしまうことで起こります。
有名な病名としては「猫白血病ウイルス感染症」という病気があります。
感染経路は、おもに感染した猫とのケンカによる感染ですが、猫同士の食器の共有などによって唾液を介して感染してしまうこともある恐ろしい病気です。
そして「内臓疾患」が隠れている場合も多いです。
疾患により、内臓の動きが鈍り、血液の生産性が低下してしまうことがあるからです。
猫に多いのが「腎臓病」でのホルモン不足による貧血です。
猫は腎臓疾患にかかりやすい生き物のため、この疾患での貧血も多いようです。
また病気以外の原因で多いのは「寄生虫」「中毒」「怪我」があげられます。
人間ではありえないことですが、犬や猫に多い「ノミ」の寄生で体の表面や内部に寄生した際に吸血されて貧血になってしまう場合があります。
小さなノミが原因で貧血に陥るというのは、にわかには信じられないかもしれません。
しかし、ノミは寄生してから短時間で大繁殖する能力があるため、放っておくと一度で大量に寄生するため意外と貧血になりやすいのです。免疫が少なく、体がまだ弱い子猫がノミに寄生されてしまった場合は特に注意が必要です。
そのほかには、猫がネギを食べてしまったり、人間の頭痛薬や鎮痛薬に含まれる「アセトアミノフェン」を摂取してしまったりすることで「中毒」になり、貧血が起こってしまうこともあります。
ネギや人間の薬を猫が口にしてしまうと貧血だけでなく、赤や茶色の尿などがみられることもあります。そのほかにも呼吸困難、顔面浮腫、低体温、嘔吐がみられ、重症になると衰弱、昏睡し、死に至ってしまうということもあるため、注意が必要です。
ネギのエキスが入っているスープやネギを触った手からなどでも引き起こされるため、少量でも与えてはいけません。これらの症状は、食べてからすぐに見られるものではなく、食べてから半日〜数日後に発症することが多いです。
そして大きな怪我や手術で大量に出血してしまうと、必要な血液が体外に流れてしまい急に貧血になってしまうこともあります。
感染症にも注意を
外で大きな怪我をした場合は、ほかの感染症のリスクもあるため注意しましょう。
また非常に稀な病気でありますが、猫自身の免疫で赤血球を攻撃してしまう「免疫介在性溶血性貧血」という病気もあります。貧血は急性に起こり、進行することで死に至る可能性もある、緊急性の高い疾患です。犬では少なくない病気ですが、猫では稀な病気で、発生頻度は0.1%以下ともいわれています。そのため、猫の「免疫介在性溶血性貧血」はわかっていないことも多いです。
貧血になりやすい猫の特徴って?
猫の種類によってかかりやすい病気などがありますが、貧血は種類によって、かかりやすい、かかりにくいはないようです。
しかし、やはり子猫や持病をかかえている猫、老猫は貧血にかかりやすいです。
先ほどから何度も述べているように猫の貧血の原因としては病気が関連しているケースがもっとも多いため、持病のある猫に貧血は多く見られます。
また、免疫が少なく体が未熟な子猫や、内臓の働きがにぶっていている老猫も貧血起こしやすいです。
また寄生虫予防をしていない野外に出る猫もかかりやすいです。
しっかり予防薬や駆除薬を活用するようにしましょう。
貧血の予防方法
猫の貧血の原因は多岐にわたっています。
そのため予防方法もさまざまですが、
・ノミなどの吸血生物や消化管内寄生生物に寄生されないよう駆虫薬や予防薬を使用する、
・疾患の早期発見につとめる(定期的な健康診断等)
・野良猫と触れ合わせない工夫。できるだけ外に出さないなど(感染症予防のため)
などがあげられます。
すぐに起こりうる原因として考えられるのは、怪我で大量に出血をした時か、ネギ類を誤って食べてしまった時でしょう。玉ねぎやネギを好んで食べる猫はあまりいないと思いますが、玉ねぎの入っている料理に興味をもって食べてしまう猫もいるはずです。放置したり、猫の手の届く場所に置いたりしないようにしましょう。日頃からの対策や適切な観察を行うなどして、愛猫の貧血を予防するようにしましょう。
猫の貧血チェック
猫の貧血をカンタンにチェックできる方法をご紹介します!
愛猫ちゃんの健康のために、ぜひ実践してみてください!
◆口の中の色をチェック
愛猫の口の中の色の変化をまず見てみましょう。
舌や歯茎などのピンク色は、赤血球の色です。
もし、猫が貧血の場合は、このピンクの部分が青白いピンクのはずです。
これで、まずはカンタンに口の中の色で貧血かどうかをチェックすることができます。
◆目の粘膜の色チェック
舌や歯茎の色と同様に、目の結膜の色でも貧血かどうかを判断できます。
猫のまぶたを上に引っ張ることで確認ができます。
◆行動チェック
呼吸はあらくないかどうか、元気が出なかったり食欲がなかったりといった症状はないかなども日ごろからしっかりチェックしてあげましょう。
猫の貧血の場合は基本的に栄養不足というわけではないため、食事で改善などは難しい部分です。
貧血をしっかり治すには、まず貧血の原因を突き止めて、治療を行う必要があります。
もしなにか異変が見られたら早めに動物病院に連れて行きましょう。
猫の貧血の検査と治療方法について
もし、愛猫が貧血の可能性がある場合、どんな検査を受けるのでしょうか。
猫も大事な家族。どんな検査をうけてどんな治療をするのか気になりますよね。
ここでは治療方法についてもご紹介します。
◆検査
動物病院では、最初に身体検査をして、歯茎や目などの粘膜のチェックをします。その後、血液検査で貧血であるかどうかを調べます。
しかし、血液検査だけでは「貧血である」ということまでしかわからないため、原因を突き止めるために様々な検査を行います。
猫が貧血を起こす原因はたくさんあるためです。
血液検査、身体検査、レントゲン検査や超音波検査、尿検査、便検査で腫瘍や他の疾患がないか調べたり、猫免疫不全ウイルスや猫白血病ウイルスのウイルス検査やPCR検査を行なったり、麻酔下で骨髄検査を行うことがあります。
特にこの骨髄検査はかなり猫に負担がかかるため、状態を考えながら慎重に検査を進めなければならない検査です。
このように猫にとっては検査自体が多少なりとも負担がかかるため、できるだけ予防に努めたいですね。
◆治療
もし、貧血と診断された場合は原因や症状に応じて様々な治療が行われます。
猫の貧血も不治の病というわけではないため、貧血の原因をきちんと突き止められて、その原因に合った治療をすることができれば貧血は改善されます。
しかし、猫白血病ウイルスにより骨髄の機能が鈍化してしまった場合は、回復が難しいことが多いです。
また、あまりにも貧血がひどい場合には輸血をすることがあります。
さいごに
人間と同様、猫の貧血の症状もとても辛そうなものが多いようですね。
貧血が重症化する前に気付いて、はやめに治療してあげることが大切です。
なにより貧血にならないように予防をしっかりしてあげることが肝心です。
愛猫とできるだけ長く一緒にいたい。
そう願うからこそ、愛猫の健康状態には常に気を配りたいものですね。
実は今回紹介した疾患や原因のほかにも、貧血の原因には腫瘍や骨髄疾患といったものもあります。猫の貧血の原因は多数あることがおわかりいただけたかと思います。
猫は犬と比べると、疾患にかかっても体調に変化が起きにくい動物です。
また猫は我慢強く、しんどかったり、つらかったりする様子を出しにくいですが、ささいな変化は飼い主さんが注意深く観察することで見えてくる部分もあると思います。
少しでも、なにか愛猫に気になる症状があるのであれば、自己判断をするのではなく、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
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