1.猫のユリ中毒とは
1-1.猫にユリ科の植物が危険って知っていますか?
1-2.ユリ中毒の原因
1-3.ユリ科の植物・食べ物一覧
2.猫がユリを食べてしまったら
2-1.ユリ中毒の症状
2-2.できるだけ早く動物病院へ
3.猫のユリ中毒の治療
4.他に気を付けたい植物
4-1.ユリ科以外にも気を付けよう
4-2.インテリアには最大限の工夫を
5.まとめ
猫のユリ中毒とは
猫は長い歴史の中で、より優れた肉食動物として進化するために、体の構造に様々な変化をもたらしてきました。
私たち人間からしてみると、肉だけを食べるといった食生活は消化が悪く、体に負担がかかりそうな気もしますが、それは人間が雑食動物となり、猫と体の構造が異なる故に出てくる疑問とも言えるでしょう。
肉食動物である猫の体の構造は、雑食動物や草食動物のような消化器官を持ち合わせていない上に、歯の構造も噛み千切ることに長けたものとなっているので、自然と植物への耐性の効かない体へと進化したとも言えます。
また、より肉類の栄養吸収を高めていったのと同時に、植物や薬物に対しての中毒を起こしやすく進化してしまったことも否めません。
猫が中毒を起こしやすい植物は700種類以上存在するとも言われており、その理由として「グルクロン酸抱合(ほうごう)」と呼ばれる酵素といった、代謝経路(肝臓での解毒作用)の一部が欠損していることが挙げられます。
この酵素が備わっていないことによって、猫は植物などで中毒症状が出てしまうことが多くある上に、その中でもユリは強い中毒性を持っていることが知られているので、必然的に猫に対してユリは危険といった認識が広がっていったと言えるでしょう。
◆猫にユリ科の植物が危険って知っていますか?
しかし、実際にユリがどれぐらい猫にとって危険なのか、しっかりと理解しておかないと、普段の生活の中でユリの花を生ける機会があるかもしれないので、知識として持っておくに越したことはありません。
一般的に言われている猫のユリ中毒は、ユリ科の植物全般に対して中毒症状が出ると言われています。
ユリは春から夏にかけて咲く花ではありますが、日本では仏花として親しまれていることからも、一年を通して花屋さんなどでも入手が可能です。
馴染み深いテッポウユリや山ユリ、オニユリやスカシユリといったユリの花だけでなく、原種は100種類以上が北半球に分布し、日本では約15種類が自生しているとも言われているので、日常的に猫の身の回りに危険が潜んでいるといっても過言ではありません。
愛猫の命を守れるのは飼い主さんだけとなりますので、猫の居るご家庭ではユリ科の植物は絶対に部屋の中に置くことはやめるようにしましょう。
◆ユリ中毒の原因
猫にとって猛毒となるユリ科の植物ですが、ユリのどの成分が原因となって中毒を起こすのかは、はっきりと分かっていないのが現状です。
ユリに含まれる何かしらの成分が作用して、猫の体に猛毒性を発揮することが知られています。
したがってユリの花弁(花びら)や葉、花粉やユリ根など、植物全体に対して注意しなくてはいけません。
そしてもっとも注意すべき点は、ユリを生けていた花瓶の水も危険だということではないでしょうか。
このことからもユリの有害物質は、水溶性と考えられているようです。
もし猫が誤って飲んでしまったら、花瓶の水を交換するときに少量の水がこぼれてしまい、その水が猫の体に付着して猫がグルーミング時に舐めとってしまったら…。
このような不安は家の中にユリ科の植物が置かれているだけで、ずっと付きまとってしまう不安要素となるので、猫と一緒に暮らすご家庭にユリはご法度ということを覚えておくようにしましょう。
◆ユリ科の植物・食べ物一覧
前述した通り、ユリ中毒はユリ科全般の植物で発症すると言われていますので、ユリ科すべての植物に普段から気を付けておくに越したことはありません。
私たちの身近なユリ科の植物として有名なのは、チューリップやホトトギス、カタクリなどが知られています。
そして、猫が食べると危険と言われている食べ物の中に、ネギやにんにくといったネギ属の野菜があることをご存知でしょうか?
実はネギ属の野菜はユリ科の植物ですので、毒性が元々強く猫にとって危険と言われる所以となっています。
ネギ属の野菜はネギやにんにく以外にも、玉ねぎやニラ、らっきょうやアスパラガスなどもありますので、それらの野菜が入っている料理なども猫に食べられないような注意が必要です。
猫がユリを食べてしまったら
ユリの花弁はとても大きく、好奇心旺盛な猫ちゃんであればおもちゃに見立てて遊んでしまうかもしれません。
とくに子猫の場合は安全か危険かを匂いで判断することが難しく、好奇心が勝って花びらや葉をかじってしまうことも否めませんよね。
ユリ中毒は命にも関わることがある上に、猫にとって大事な臓器である腎臓に多大な影響を及ぼすことが分かっています。
もし愛猫がユリを食べた可能性がある場合、どのような症状が現れるのでしょうか?
◆ユリ中毒の症状
ユリ中毒はユリの摂取量によって現れる症状が個体によって異なりはしますが、代表的な症状として挙げられるのは、「よだれを垂らす」「嘔吐」「元気消失」「食欲不振」などの症状です。
これらの消化器症状はある程度時間が経過すると、症状が徐々に回復に向かうので、そこで飼い主さんは安心し、動物病院の受診を見送ってしまうことがよくあります。
しかし、猫の体内ではユリの有毒成分が腎臓の機能を滞らせ、尿毒症や急性腎不全といった病気を引き起こす原因になりかねません。
最悪の場合短時間で死亡するケースや、死亡を免れたとしても腎臓に障害を抱えたまま余生を過ごさせなくてはいけないので、上記の症状が出た際には早急の治療が望ましいと言えるでしょう。
◆できるだけ早く動物病院へ
ユリ中毒を発症した猫が助かるためには、飼い主さんの迅速な判断で早急に動物病院へ連れていくこと、ただそれだけです。
ユリを摂取してから48時間以内に、体外へ有毒成分を排出させることが推奨されていますので、飼い主さんは落ち着いて愛猫を動物病院へと連れていってあげてください。
そして、「いつ」「どれぐらいのユリを」「その後出た症状」などの明確な情報を獣医師さんへと伝え、適切な治療を行ってもらうようにしましょう。
猫のユリ中毒の治療
時間が経過すればするほど、ユリの猛毒は全身に広がっていく上に、解毒剤のような特効薬が現時点では存在していないので、対処療法を行って様子をみるしかありません。
ユリ中毒が疑わしい場合には、催吐剤(さいとざい)を用いて胃の内容物を排出させ、毒物のさらなる吸収を防ぐために活性炭などの吸着剤を併用して、胃洗浄を行います。
体の表面にユリの成分が付着している場合には、これらの治療に併せて体の洗浄が行われることもあるようです。
初期治療が終了した後には、尿カテーテルを挿入し、おしっこの状態をモニタリングします。
早期発見とはいかず治療を行うタイミングが遅れ、急性腎不全を発症している場合には、血液透析や腹膜透析などの治療が行われます。
早急を要するもこれらの治療は、小さな動物病院では対応が難しい場合も多く、専門的な救急病院を案内される可能性も否めません。
飼い主さんにできる唯一の予防は、お住いの敷地内にユリ科の植物を入れないこととなります。
大切な愛猫が命を落とさないためにも、どんな事情があってもユリをはじめとしたユリ科の植物は敷地内に入れないことが一番です。
他に気を付けたい植物
ユリ科の植物を身近に置かなければ、安心と思われる飼い主さんは多いことかと思いますが、猫が中毒を起こしやすい植物は700種類以上もあると言われており、ユリ科だけ気を付けておけば安心というわけではありません。
しかし、700種類以上もある危険な植物を、一つも間違わず把握できる方はいらっしゃらないと思いますので、どのようにして危険な植物から愛猫を守るべきなのでしょうか?
◆ユリ科以外にも気を付けよう
猫は猫草といったイネ科の植物を好む傾向があることから、少なからず植物は猫にとって害が少ないと思っている飼い主さんもいらっしゃるはずです。
しかし、猫は猫草の味を好んで食べているわけではなく、食べることによって胃を刺激して、溜まった毛玉を体外へ吐き出すことを本能的に知っています。
ほかにもイネ科の植物には、麦やトウモロコシといったペットフードの原料になっている植物もありますが、これらの植物以外は何が危険要因になるか分かりかねないので、予防としても室内に持ち込まないことが無難と言えるでしょう。
◆インテリアには最大限の工夫を
どうしてもお部屋に何かしらの植物を取り入れたいのであれば、事前に猫にとって安全かどうかを徹底的に調べるように癖付けるようにしてください。
何で中毒症状を起こすか分からないのであれば、家の中に持ち込まないだけで危険を回避できますし、原因が分からずに猫を苦しめてしまうこともありません。
愛猫の安全を第一に考えるのであれば、花や観葉植物を室内に飾るのではなく、造花などを取り入れて生活に彩りを添えてみるのもおすすめです。
そして、花や植物を贈り物として頂いた場合は、設置場所に配慮して猫が危険に晒されない工夫を最大限に心掛けてあげてくださいね。
まとめ
腎臓が壊死する危険性のある恐ろしいユリ中毒ですが、知識がなければ美しい花としての認識しか持ち合わせていないことがほとんどなので、何かしらの理由により自宅に飾ってしまう方も多くいらっしゃることでしょう。
ツイッターなどといったSNSを見ていると、獣医師さんによる警告がある反面、猫にユリが危険ということを知らない方が、まだまだたくさんいらっしゃることも事実です。
「たかが一つの花で」と思うかもしれませんが、そのたかが一つの花で命を落とす事例がある以上、愛猫だけは例外という認識を持ってしまうと、いつか後悔してしまう日が来てしまうかもしれません。
愛猫を守るためには正しい知識を持ち、ユリ科の植物を家の中に持ち込まないようにして、安心して毎日を過ごせる環境を普段から整えておくようにしましょう。
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