1.そもそも「問題行動」とは何か
2.問題行動とされる例
2-1.トイレ以外での排泄
2-2.爪とぎ
2-3.噛む
2-4.過剰グルーミング
3.問題解決には習性と原因の理解がカギ
3-1.トイレ以外で排泄をする理由
3-2.爪とぎをする理由
3-3.噛む理由
3-4.過剰なグルーミングをする理由
そもそも「問題行動」とは何か
「問題行動」とは、そもそもどのような行動を指すのでしょうか?
猫の行動を種類分けしてみると、猫にとって本能的な「正常行動」と本来行うことのない「異常行動」に分けることができます。
実は何か決まった行動が「問題行動」と呼ばれているのではなく、一般的には「人間が猫と一緒に暮らすうえで困ったと感じる行動」が「問題行動」と呼ばれています。
例えば、猫が家でマーキングをしたり、壁や家具で爪とぎをしたりするのは猫にとって必要な正常行動です。しかし、飼い主からすると、その行為は家中に臭いや汚れがついてしまったり、家具がボロボロになったりする可能性があり、困ってしまいます。このように、猫にとっては当たり前のことでも、人間にとっては困る行動であることがしばしばあります。
繰り返しますが、あくまで猫にとっては必要な行為ですので、なんでも問題行動と一括りにしてしまうのはよくありません。
まずは猫の習性をしっかりと理解することが大切です。そのうえで、猫にとっても人間にとっても暮らしやすいように、対策を考えていきましょう。
また上記に挙げたこと以外には、健康上の問題から体に痛みを感じている猫は、触ろうとすると攻撃してくることがあります。このような攻撃行動も問題行動として捉えられます。
問題行動は、状況や内容によっては猫の健康やストレスの指標にもなりうるので、「我慢すればよい」と放置せずに動物病院へ相談することが大切です。
問題行動とされる例
猫の問題行動には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?おうちによって困っているさまざまな問題行動がありますが、よくみられる問題行動をいくつか紹介していきます。
◆トイレ以外での排泄
猫の問題行動で特に多いのが、「排泄」に関する問題行動です。
突然トイレ以外の場所で排泄するようになったり、家中に強烈なニオイのするオシッコをひっかけたりする問題がよく起こります。猫はトイレのしつけをあまり必要としないことが多く、突然トイレ以外で排泄するようになると、うまく対処できず戸惑いますよね。
ちなみに、高齢の猫においては、筋肉の衰えや認知症の症状としてトイレ以外での排泄がみられるようになります。
◆爪とぎ
「爪とぎ」も猫の問題行動としてよく見られます。壁も床も所かまわず、家中に爪とぎをされて困っている方は少なくないでしょう。特に、和室は障子や畳が爪とぎのターゲットになって、ボロボロになりやすいため注意が必要です。
◆噛む
物を噛むクセのある猫は、噛むことで家具などを傷つけることがあります。また、飼い主の手を噛むこともあり、悩んでいる方も多いでしょう。さらに、コードを噛んでしまうこともあり、猫にとって危険な場合もあります。
◆過剰グルーミング
グルーミングは猫の正常行動であり、「する」のも「される」のも猫同士の重要なスキンシップの手段となっています。また、自分で行うグルーミングは自己ヒーリング方法の一つでもあります。
しかし、グルーミングが過剰に行われると、被毛が切れ、薄毛となり、最後には脱毛状態となってしまいます。特に、猫のお腹が過剰グルーミングではげてピンク色になってしまっているというのは、意外と多くみられます。
過剰グルーミングはストレスが原因であることが多いですが、放置すると口腔内の菌が感染して皮膚病にもつながる危険性があります。
問題解決には習性と原因の理解がカギ
猫の問題行動を解決するためには、まず猫の習性を理解しておく必要があります。
人間にとって困った行動であるからといって、猫には必要な行動を無理やりやめさせることは、現状を悪化させて、さらなる問題行動につながる恐れがあります。
猫がなぜその問題行動をしてしまうのか、原因を見つけることで改善することが大切です。猫の問題行動を解決するためには、猫を叱ったり無理強いしたりすることなく、まずは猫の習性と行動の原因を理解していきましょう。ご紹介した猫の問題行動について、その理由を解説していきます。
◆トイレ以外で排泄をする理由
猫のトイレ以外での排泄には、マーキングとしての「スプレー行為」と「不安や病気」が原因となって行う2つの排泄行為があります。
スプレー行為は、排泄行為ではなく、マーキング(におい付け)といって、自分の存在をアピールするために本能的に行っている行為です。壁やカーテンに立ったまま、強烈なニオイのおしっこを少量ひっかけて行います。未去勢のオスによく見られ、去勢をすることが解決策となりますが、習慣化している場合や多頭飼育の場合は去勢だけで治らないことがあります。
また、本能的なものでなく、環境の変化による「不安」や他の猫からの「刺激」が原因となり、スプレー行為を行うパターンもあります。そのような原因のスプレー行為をやめさせるには、まずは原因となっている不安要素を取り除くことが重要です。
不安や病気による不適切な排泄は、おしっこだけでなく、うんちもトイレ以外にしてしまいます。確かに、本来猫はトイレの場所を1カ所に決めず、なわばりのあちこちで排泄し、砂や枯れ葉など排泄物を隠しやすい場所をトイレとして好みます。しかし習性についてきちんと理解し、室内にその条件を満たすトイレを用意すれば、失敗することはあまりありません。
猫はトイレに対するこだわりをもっていることが多く、気に入らないトイレには行きたがりません。トイレの場所、容器、猫砂を変えただけでトイレに行かなくなることもあります。まずは、なにか変更したことがないか確認してみましょう。もしこれから変更する場合は、突然変えるのではなく、少しずつ変えて猫を慣らしてあげましょう。
また、猫が2頭以上いる多頭飼育の場合、トイレの数は「猫の数+1」が理想だと言われています。十分な数を用意できない場合でも、できるだけの数でそれぞれの位置を離してあげることが大切です。
猫は落ち着いて排泄できる状態でないとトイレを使用しなくなります。落ち着かない場所や嫌な思い出があるような場所では不安を感じるため、安心できるトイレを提供してあげましょう。
原因が「トイレへの不満」でも「不安」でもない場合は「病気」が原因かもしれません。
病気による排泄問題では、膀胱炎、尿石症などの泌尿器系や下痢、便秘、腸炎など消化器系の病気が疑われます。このような病気によって、排泄したときに痛みを伴うと、トイレを「痛くなる場所」と結び付けてしまいます。
そして、トイレを避けたり、トイレに間に合わなくなってしまったりすることもあります。様子を見ながら、早めに動物病院で診てもらいましょう。
◆爪とぎをする理由
爪とぎは猫にとって自然な習性であり、主に「爪のメンテナンス」「マーキング」「転移行動」の役割を持ちます。
猫は本来狩りをするために鋭い爪をもっており、外で過ごす猫は走ったり木で爪とぎをしたりすることでその鋭さを保っています。家にいる猫は、自然に爪とぎをする機会が減るため、余計に家中で爪とぎをしてしまうのです。
また、爪とぎはマーキング行為の役割も担っています。これは、爪とぎをして足の裏にある「臭腺」からニオイを出し、そのニオイを縄張りにつけてアピールしているのです。
さらに、爪とぎは気を紛らわせるための「転移行動」にもなっています。この行動によって、気持ちを落ち着かせるとともに、自分のニオイを充満させて安心しているという説もあります。
◆噛む理由
猫が家具などを噛むのは、遊びや探索に対する欲求と考えられます。また、飼い主の手などを噛んでくる場合は、じゃれていることもありますが、これは「不安」や「病気・けが」が原因のこともあります。激しく噛んでくる場合、または、タイミングや触る場所によって行動にパターンがある場合は、注意深く観察して動物病院に相談してみてください。
◆過剰なグルーミングをする理由
過剰なグルーミングをしてしまう理由として、「皮膚トラブル」や「ストレス」が挙げられます。猫は、皮膚に何かトラブルがあり、「かゆみ」や「痛み」を感じているときグルーミングで和らげようとします。具合的には、ノミやダニなどの寄生虫、細菌やカビなどの感染症、さらにはアレルギーやアトピー性皮膚炎が原因となっています。
また、猫の過剰グルーミングは「心因性ストレス」によって引き起こされている場合も多くあります。猫のグルーミングには、体を清潔に保つとともに、自分の心を落ち着けるという役割もあります。
猫というのは、ちょっとした環境の変化でもストレスを感じやすい生き物。ストレスの原因が取り除かれない限り、繰り返し舐めて過剰なグルーミングをしてしまいます。新しい猫が増えた時や生活環境が変化した時には要注意です。環境に慣らしてあげるように、変化がある場合は少しずつ猫に受け入れてもらえるような配慮が必要ですね。
猫と遊ぶ時間を増やしたり、十分なスキンシップをとってあげたりすることで、ストレスを発散しやすい環境づくりも効果的です。猫によっては、たくさん触られると逆にストレスを感じてしまう子もいるので、グルーミングを始めたら触るのをやめるなど、様子をみながら撫でてあげましょう。
原因を知って未然に防ぐ
猫が問題行動をする原因を知ることで、未然に防ぐことも可能です。今は困っていない状態でも、これから問題行動がおこることもあり、あまり気にならなかった行動が悪化して問題行動になることもあります。早めの対策で、猫も飼い主もストレスがないよう未然に対策していきましょう。
◆問題行動に繋がるものなくす
猫の問題行動の多くはストレスや不安が原因となっています。そのような原因を取り除くように、問題行動につながるものをなくしていくことが大切です。
例えば、狭いトイレを替えてみたり、猫が気に入っていない爪とぎグッズを替えてみたりすることが挙げられます。また、室内外の場合、野良猫の気配を感じることがストレスや不安につながるため、高い位置に窓を設置したり、猫除けをしたりすると猫が安心できるでしょう。
◆問題にならないように対策する
猫の問題行動は、猫が本来もっている習性であることもあります。
その場合、行動をやめさせることはできないため、爪とぎする場所に爪とぎシートを貼るなどの対策をしていきましょう。マーキングに困っている場合は、その場所を素早くキレイにして、猫が嫌いなニオイをスプレーすることが対策になります。また、猫はキレイな場所でご飯を食べるため、ご飯を置くようにすることも対策になります。
問題行動における重要な対策は、「猫がストレスを溜めないような環境作り」、そして、「ストレスを発散することができる環境作り」も大切です。猫としっかり遊んでストレスを発散させ、急な環境の変化は避けるようにしましょう。
まとめ
猫の問題行動は、完全にやめさせることは難しいですが、猫の習性を理解して原因を見つけることで解決することができます。
飼い主さんが困っているように、猫ちゃん自身もなにか悩んでいる場合が多い問題です。しかし、問題行動は多岐にわたり、原因もさまざまであるため、解決できない場合は早めに動物病院へ相談してみましょう。問題行動の専門病院もあるので、一人で抱えずにじっくりと話してみることをお勧めします。問題行動は病気のサインかもしれないので、日頃からしっかりと猫ちゃんを観察してあげることが大切ですね。
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