【掲載:2023.01.04 更新:2025.02.25】
猫の耳毛には名前がある

猫の耳毛について、どのくらい知っていますか?
実は、猫の耳毛には部位に応じて名前が付いています。猫の飼い主さんでも、耳毛の名前までは知らなかったという方も多いのではないでしょうか。
せっかくの機会なので、是非覚えていただければと思います。
◆耳の中の毛「タフト」
一般的に、多くの猫に生えているのが「タフト」(taft)と呼ばれる毛です。
耳の内側から外側に向かって、少し硬めの毛が、耳の穴を覆い隠すように、うっすらと生えています。
中には、耳から飛び出すような長いタフトを持つ猫もいます。
それぞれに個性があって、とても可愛らしいですよね。
みなさまが「猫の耳毛」と聞いてまず思い浮かべるのが、このタフトのことではないでしょうか。
◆耳の上の毛「リンクスティップ」

一方、耳の上(先端)に、上に向かってちょこんと生えている、少し長めの毛は「リンクスティップ」(Lynx tips)と呼ばれています。
リンクス(Lynx)とは英語で「オオヤマネコ」のことで、リンクスティップは「オオヤマネコの耳毛」という意味になります。
主に長毛種のメインクーン、ノルウェージャンフォレストキャット、サイベリアン、ペルシャなどの種類で、リンクスティップが生えていることが多いようです。
とはいえ、リンクスティップの有無には個体差がありますので、同じ猫種でも全ての猫に生えているわけではありません。
もしかすると、長毛種の飼い主さんでも「リンクスティップを見たことがない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
また、その他の猫種やミックス(雑種)猫でも、リンクスティップが生えていることがあります。
短毛種の猫でも、よく見るとこの部分の毛だけが周りの毛よりも少し長くなっていることがあるようです。
あなたのおうちの猫ちゃんはどうでしょうか?猫ちゃんの耳の先端を、注意深く観察してみて下さいね。
猫の耳毛の役割
今まであまり意識する機会がなかったかもしれない、猫の耳毛。
目立たないようですが、実はとっても大切な役割を果たしているのです。
◆ごみが入らないようにする役割
耳毛(タフト)には、耳にごみやホコリ、虫などの異物が入るのを防ぐという大切な役割があります。
人間の顔に「まつ毛」や「鼻毛」が生えているのと似ていますね。
猫は五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の中でも、特に聴覚に優れている動物です。
猫の聴覚は人間の5倍とも言われており、周囲の様々な音を聞き分けて、危険を察知したり、獲物を認識したりすることができます。
暑いときには、耳から放熱して体温を下げる体温調節の機能もあります。
また、不安を感じているときや、イライラしているときに見られる「イカ耳」など、様々な感情表現にも耳が使われることが多いです。
そんな重要でデリケートな器官である耳を守るために、耳毛は大切な役割を担っているのです。
◆狩りのためのアンテナの役割
耳毛(リンクスティップ)には、狩りをする際の「アンテナ」の役割もあったと言われています。
厳しい野生の環境下で狩りに成功するには、いち早く危険を察知し、獲物の居場所や動きを正確に見極めることがとても重要であったと思われます。
前述の通り、元々聴覚が優れている猫ですが、耳の上にリンクスティップが生えていることによって、より高精度に周辺のわずかな音や、空気の変化を感じ取ることができたと考えられています。
◆自分の顔をより大きく見せる役割
また、一説によると耳毛(リンクスティップ)には、猫同士の縄張り争いのために自分の顔を大きく見せる「飾り毛」の役割もあったと言われています。
メインクーンなどの大型猫にふさふさと立派なリンクスティップが生えている姿を見ると、顔がより多く見え、ワイルドで強そうな印象を受けますよね。
猫の耳毛は切った方がいい?

◆猫の耳毛はそのままで大丈夫
猫の耳毛の長さや量には個体差があります。
耳毛が長い猫の場合、暑さや蒸れが心配で「切った方がいいかな?」と心配になることもあるかもしれません。
犬の場合は、耳毛をそのままにしておくと蒸れや汚れから炎症を起こしてしまう場合があります。
そのため、耳毛が生える犬種ではトリミングの際に、カットしたり抜いたりしてお手入れをすることも多いようです。
しかし、猫の場合は、犬に比べて耳のトラブルはそれほど多くはないため、基本的にはそのままで大丈夫です。
◆耳毛もその子の個性の一つと考える
現代の猫は原則として、室内で飼育することが推奨されていますので、耳にゴミや異物が侵入するような場面は少ないです。
また、飼い猫であれば、毎日飼い主さんからキャットフードをもらうので、野生のヤマネコのような厳しい環境下で命懸けで狩りをすることもありません。
それなら耳毛は不要なのでは?切ってしまってもいいのでは?と思われる飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
しかし、人間から見るとただの不要な毛であっても、猫にとっては大切な体の一部です。
また、耳毛もその猫ちゃんの個性、チャームポイントの一つであるとも言えると思います。
特段の事情がなければ、わざわざ耳毛を切らずに、そのまま大切に残してあげる方がよいのではないでしょうか。
また、繰り返しですが耳毛の量や長さには個体差がありますので、「ふさふさ」の耳毛を持つ猫ちゃんもいれば、短い耳毛の猫ちゃんもいるものです。
耳毛が短いからといって、身体機能に異常があるわけではないので、どうか安心して下さいね。
◆場合によっては切った方がいいこともある
猫の耳毛は基本的にはそのままで大丈夫です。
しかし、場合によっては切った方がいいこともあります。それは、猫の耳にトラブルが発生している場合です。
具体的には、耳に関係する病気になってしまった場合や、耳の周囲にケガをしてしまった場合、毛にカビやダニが繁殖してしまった場合などです。
このような場合は、治療の妨げにならないように耳毛を切らざるを得ない場合や、衛生上の理由から耳毛を切ることが望ましい場合もあります。
その際は自己判断で切るのではなく、かかりつけの獣医師さんと相談の上、動物病院でカットをしていただいた方が安心なのではないでしょうか。
耳のお掃除はこまめに
あなたは普段、猫の耳掃除をしていますか?
私たち人間も、普通に生活しているだけで耳垢が溜まるものですが、それは猫も同じです。
耳垢の色や形状には個体差がありますが、猫の耳垢は通常茶色っぽい色をしていることが多いようです。
耳の汚れが気になったときは、コットンやガーゼで拭き取ってケアをしましょう。必要に応じて、猫用のイヤークリーナーを使うのも良いでしょう。
とはいえ、耳は猫にとって大変デリケートな部位でもありますので、汚れていないのに頻繁に耳掃除をすることや、猫が嫌がっているのに耳掃除をすること、手の届かない奥の方まで無理に耳掃除をすることは控えたいものです。
耳掃除の頻度は、猫の耳の状態を見ながら決めるのがよいと思います。
普段から飼い主さんが耳の様子をよく観察するようにしていれば、病気のサインの早期発見にも繋がることでしょう。
まとめ
猫の耳毛には、耳の内側に生えている「タフト」と、耳の先端に生えている「リンクスティップ」があります。
どちらかというと長毛種の猫に、リンクスティップが生えていることが多いようですが、他の猫種やミックス(雑種)猫でも生えていることがあります。
猫の耳毛には、耳にゴミや異物が入るのを防ぐという大切な役割があります。
その他に、狩りをするときに周囲の状況を察知するアンテナとしての機能、自分の体を大きく見せる飾り毛としての役割があると言われています。
耳毛の量や長さには個体差があり、どんな耳毛もその猫ちゃんの個性の一つと言えますから、基本的にはそのまま切らずに残してあげたいものです。
ただし、耳の病気やケガ、カビやダニなど、耳に関するトラブルが発生している場合には切った方がよいこともあります。
その場合は自分で切るのではなく、かかりつけの獣医師さんに相談してカットしてもらった方が安心です。
猫の耳掃除は毎日する必要はありませんが、耳垢の状態などを観察しつつ、適切な頻度で掃除をしてあげることも大切です。
普段はあまり意識していなかったかもしれない猫の「耳毛」の話、参考になったでしょうか?
耳毛に対しての印象が少し変わった方もいらっしゃるかもしれません。
この記事が、猫の耳毛を切らなくて大丈夫かな?と考えている飼い主さんのお役に立つことができれば嬉しいです。