1.猫の目の仕組み
1-1.視力は悪い
1-2.色の識別が苦手
1-3.暗闇でも行動できる
2.なぜ猫の瞳孔が変化するの?
2-1.レンズのような役割を持つため
2-2.長円瞳孔を調整する筋肉
2-3.猫特有の大きな目
猫の目の仕組み
猫の瞳孔がなぜ変化をするか知る前に、猫の目がどのような仕組みとなっているのか、まずは確認してみましょう。
◆視力は悪い
とても美しい猫の目ではありますが、その目にじっと見つめられると、様々なものを見透かされている気分になりませんか?
それぐらい猫はじっくりと相手を見つめてきますが、どれぐらいの視力があるのかも気になるところですよね。
しかし、目を器用に使うイメージの強い猫ではありますが、視力は私たち人間よりも悪いと言われています。
猫の視力は人間の10分の1ほどしかなく解像度も低いため、静止しているものが霞んで見えるといった特徴を持っています。
静止視力は劣る猫ではありますが、その分動体視力が優れており、動くものに対しては敏感に反応するようになっているため、私たちにはない能力を持っていると言えますよね。
秒間に4ミリメートルの動きを感じ取れることからも、窓の外の鳥や虫、ねこじゃらしなどのおもちゃにも激しく反応することが分かります。
◆色の識別が苦手
視力がそれほど良くない猫ではありますが、色はどのように見えているのか、という点も気になるところですよね。
猫の目と人間の目の構造はほぼ同じとなりますが視界は異なり、静止視力が劣るだけでなく猫は色の識別が苦手となります。
私たちは光の3原色と呼ばれる、「赤」「緑」「青」といった3色を識別し、この3色の組み合わせによって、さまざまな色を認識しています。
猫の場合は赤色を識別する網膜を持ち合わせていないため、緑と青のみを認識しますので、赤いおもちゃやキャットフードを与えたとしても、灰色のような薄暗い色として識別されているようです。
一昔前までは猫は色の識別ができず、モノクロの世界で生活をしていると考えられていましたが、最近の研究によって色がしっかり認識できていることが知れたことは、猫好きの方々にとっても嬉しい情報となったのではないでしょうか。
◆暗闇でも行動できる
猫の驚くべき習性と言えば多くの方が、暗闇でも行動ができることを思い浮かべることかと思います。
暗闇で光る猫の目はとても神秘的に映りますが、暗いから目が光っているというわけではなく、わずかな光を反射させていることをご存知でしょうか。
夜行性動物特有の目の構造をしている猫は、人間の目と比べて7分の1ほどの光量で十分なため、月明りなどのわずかな光を効率よく取り込んで、暗闇でも行動ができるようです。
猫の目には網膜の裏側に「タペタム(輝板)」と呼ばれる、薄い反射板のような膜があり、光が網膜を通過した際にタペタムが鏡のような役割を果たして反射させ、再度網膜が光を取り込むことによって光の量を2倍に増やします。
このように猫はわずかな光量でも行動ができるため、お留守番の時間帯が夜であっても室内の電気を付けていく必要はありませんし、カメラのフラッシュのような強い光は苦手であることを覚えておきましょう。
なぜ猫の瞳孔が変化するの?
まだまだ謎の多い神秘的な猫の目ではありますが、瞳孔が小さくなったり大きくなったり、変化する姿を見かけたことはありませんか?
眼球の色がついている部分を「虹彩(こうさい)」と呼びますが、その真ん中にある黒目の部分を「瞳孔(どうこう)」と呼びます。
猫の場合は人間のように白目(眼球結膜)がなく、虹彩が大きな割合を占めていますが、その中心にある瞳孔が自由自在に変化するため、猫の目に不思議な魅力を感じる方は多いことでしょう。
哺乳類の動物をよく観察してみると、容姿が似ている動物であってもまったく異なる瞳孔の形をしていることや、似ても似つかない動物なのに同じような瞳孔の形をしていることがあります。
そんな中で猫の瞳孔は特定の形に留まらず、何かしらのきっかけにより変化をするわけではありますが、なぜ瞳孔が形を変えていくのでしょうか。
◆レンズのような役割を持つため
猫の瞳孔はカメラのレンズでいう「絞り(F値)」のような役割を持ち、周囲の明るさによって素早く開閉します。
特に獲物を狙う際には猫の縦長の瞳孔は有効で、絞りを絞る(瞳孔を細める)ことにより、背景をぼかして獲物を立体的に見せ、対象物との距離を正確に捉えます。
小さな身体でも野生時代から生き残ってきたのは、待ち伏せ型の捕獲スタイル、猫特有の瞳孔による構造のおかげとも言えるのではないでしょうか。
また、人間の7分の1程度の光量で事足りる猫となりますから、眼球に入ってくる光を常に微調整することによって、瞳孔が変化していくことはとても自然なことですよね。
明るい場所では余計な光が入ってこないように、瞳孔を細めて調節をし、暗い場所ではたくさんの光を取り込むために、瞳孔を大きく開いて光を集めていきます。
◆長円瞳孔を調整する筋肉
私たち人間のような円形瞳孔とは異なり、猫やキツネといった縦長の長円瞳孔は、円形の瞳孔よりも素早く開閉でき、より大きく開けるという特徴を持っています。
この長円瞳孔を調節するためには、虹彩の中を走る「瞳孔括約筋(どうこうかつやくきん)」と呼ばれる小さな筋肉が活躍し、この筋肉が上下に収縮することによって、縦長の瞳孔に変化していくようです。
一方瞳孔を大きくするときは、「瞳孔散大筋(どうこうさんだいきん)」が働きます。
猫の瞳孔幅は平均すると最小で1ミリメートル、最大で14ミリメートル、面積が最大で160平方ミリメートルとなり、人間では最小2ミリメートル、最大8ミリメートル、最大面積が50平方ミリメートル程度と言われている時点で、猫の瞳孔がずいぶんと大きく変化することがうかがえます。
◆猫特有の大きな目
大きくてぱっちりとしている目を持つ猫はとても可愛らしいですが、ただ容姿を可愛らしく見せるだけでなく、私たちよりも瞳孔の拡大を大きくして、光をたくさん取り込むといった役割を持っています。
視力が低くても生き抜くために備わった機能でありますが、その機能が現代では「可愛い」と言われていることに、なんとも不思議な気持ちになってしまいますよね。
猫の瞳孔が変化する理由はさまざまではありますが、猫特有の理由があることが分かれば、さらに猫の目について知りたいと考えてしまうことでしょう。
瞳孔は気分や感情も関係している
猫の瞳孔は光量によって変化することが分かりましたが、瞳孔を操る瞳孔括約筋はリラックス状態に優位となる、副交感神経の支配を受けていることも分かっています。
その反面、瞳孔散大筋は緊張状態のときに優位となる、交感神経の支配を受けているため、猫自身の気分や感情によって瞳孔は変化していくようです。
光の影響に関わらず瞳孔が変化している場合には、猫ちゃんの自律神経が大きく関係していることがあるため、愛猫の目をよく観察し、どんな気持ちで居るのかを悟ってあげるようにしましょう。
◆瞳孔が丸い時
瞳孔が大きく丸い時は、外が暗かったり光の量が少なかったりすることがほとんどですが、感情的には興奮や緊張しているといった気持ちでいることが考えられます。
動物病院へ連れていった時や、人見知りの猫ちゃんが居るお宅に来客が来た時など、想定外のことが起こったときに瞳孔が大きくなる傾向が見られるようです。
そして、大好きなおもちゃに夢中になるといった興奮状態のときにも、瞳孔は丸くなりますので、愛猫の表情を見ながら興奮なのか、緊張なのかを見分けるようにしてください。
◆瞳孔が細長い時
瞳孔が細長いときは、外が明るく光の量が多いときが考えられますが、リラックスしている時がほとんどです。
リラックス状態の時には敢えて光を多く取り込んで、視野を広げる必要はありませんし、眠る時間の多い猫は基本的に、瞳孔は常に縦長で嫌な気持ちにはなっていないことがうかがえます。
しかし、攻撃態勢に入ったときは瞳孔が細長くなることがあり、瞳孔を極力小さくすることによって、獲物に狙いを定めていることが考えられます。
同じような細長い瞳孔でも、リラックスと攻撃する瞬間といった真逆の感情が隠されていますので、攻撃態勢のときは気持ちを逆なでないようにすることも大切です。
◆瞳孔の大きさが左右違う時
猫の瞳孔は筋肉や自律神経に支配されていることが分かっている通り、左右対称で変化することが基本です。
瞳孔の大きさが左右非対称になっている場合は、正常な状態とは言えません。
数日程度で瞳孔の大きさが左右対称に戻るようであれば、何かしらの刺激や瞳孔付近の炎症によることがほとんどのため、そこまで心配する必要はないと言えるでしょう。
数日経過しても治らず、長期間瞳孔の大きさが異なっている場合は、ホルネル症候群などの病気の可能性が疑われるため、すぐに動物病院を受診して適切な治療を進めてもらってください。
まとめ
私たち人間と同じような仕組みである猫の瞳孔ですが、形が自由自在に変化することや、暗闇でも目が見えるといった特徴は、猫ならではのものであることがうかがえます。
視力の低さや色の識別が苦手な部分は、日常生活の中で不便に感じるような気もしますが、その分猫は嗅覚や聴力などが優れているため、多少目が悪かったとしても生活に困ることがないのです。
まだまだ謎の多い猫の生態ではありますが、その片鱗を垣間見ることにより、もっと猫のことを知られるきっかけになることでしょう。
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