1.猫のしっぽの役割
1-1.バランスをとる
1-2.コミュニケーションをとる
1-3.保温性を高める
2.猫のしっぽに骨はある?
2-1.猫のしっぽの構造
2-2.しっぽの長さは何で決まる?
2-3.鍵しっぽの骨はどうなっている?
3.猫のしっぽの骨に関わるトラブル
3-1.骨折
3-2.猫ふんじゃった症候群
3-3.猫のしっぽの骨に異常を感じたら
4.まとめ
猫のしっぽの役割
猫のしっぽが持つ役割は、1つだけでなく複数あると言われています。
長尾から短尾まで猫のしっぽの種類にはいろいろありますが、まずは猫の体においてどんな役割を果たすパーツなのかを知ってみましょう。
◆バランスをとる
猫は、自分の目線よりもかなり高い位置にある場所へとジャンプしたり、よじ登る能力に長けた動物です。
また、高いところからでも上手に着地し、狭い足場の通路も難なくするりと歩くことができますが、こういった猫らしい動きをする際のバランス補整に役立っているのがしっぽです。
猫がジャンプする前に姿勢を整えている時にしっぽが上がっていたり、獲物(おもちゃ)を追うために素早く走っている最中、急な方向転換が必要な場面で左右にしっぽを傾けて、転ばないようバランスをとっているのを見たことがある人は多いでしょう。
こういったしっぽの使い方は、野生に生きるチーターやヒョウなどの他のネコ科動物の狩りの場面を見るとより分かりやすいはずです。
このように、猫のしっぽは、人間にはなかなかできない行動を支えるツールの1つとなっています。
◆コミュニケーションをとる
猫のしっぽには、同じ猫同士や、他の動物とのコミュニケーションツールとしての役割もあります。
しっぽのその時々の動きや形状をよく見てみると、猫が相手に対して表現したい・伝えたいと思っている気持ちを読み取ることが可能です。
例えば、猫のしっぽの振り方や形状の違いが表すサインは、以下のようなものが代表的ですね。
・お腹の横や下に沿わせてじっとする:緊張、不安、恐怖
・ピーンとまっすぐ上に立てる:ご機嫌で甘えたい
・寝転んだり、目を細めながら左右にゆっくり振る:リラックス
・先端だけで小刻みに振る:興味があるものを観察中、考えごと中
・しっぽの毛を膨らませる:驚き、興奮
猫の姿勢やしっぽの位置によって、振り方が同じでも意味が異なる場合は多いです。猫の気持ちを細かく知りたい時は、しっぽ以外の要素も一緒に観察してみましょう。
また、子猫と触れ合う成猫がしっぽの先だけを動かして、じゃれつかせてあやすワザを披露することもあります。幼い子猫の子育てや見守りにも使われていることを思うと、しっぽは猫にとって、誰かと交流する時にとても活用しやすいアイテムなのでしょう。
◆保温性を高める
猫が丸まってしっぽを鼻先にくるりと巻きつけている光景を見たことがある人は多いでしょう。これは、吸い込む空気の冷たさを遮断して、保温性を高めているのだと言われています。
寒さ対策としてしっぽを有効活用してきた猫種と言えば、長い被毛で、寒い地域が原産とされるサイベリアンやノルウェージャンフォレストキャットなどです。これらの猫種を見ると、ふさふさで長いしっぽをしています。
こういった寒い地域原産の猫たちは、体の中でより多くの熱を生み出せるように、猫の中では比較的大きな骨格を持っているのと同時に、眠る時も熱が奪われないようふさふさのしっぽを上手に体に巻きつけて利用していたのではと考えられています。
猫のしっぽに骨はある?
猫のしっぽは外から見てみると、とても柔らかそうに見える部位です。そのため、内部に骨や神経が存在しているのかなど、その基本的な構造が気になることもよくあります。
また、猫ごとに違うしっぽの長さや、鍵しっぽなどに代表される変わった形のしっぽが持つ骨の仕組みなども併せて知ってみると、興味深いと感じるはず。猫のしっぽの骨や神経などのつくりをチェックし、ぜひ愛猫のしっぽと見比べてみてください。
◆猫のしっぽの構造
猫のしっぽの内部には、頸椎・胸椎・腰椎・仙椎に分かれて首から背中、腰からお尻まである脊椎(背骨)の流れに続き、尾椎(しっぽの骨)が存在します。
この尾椎は、しっぽの長さによって骨の数にばらつきがあり、長いしっぽの猫で20~24個、短いしっぽでは数個のみの場合もありさまざまです。
しっぽの骨の内部には先端まで神経が通っており、猫の思うままに動きをコントロールしています。痛みなどの感覚もしっかり検知しているため、手荒な扱いはしないであげましょう。
また、しっぽの骨の周囲は複数の筋肉が取り囲んでおり、上下左右に柔らかく動かせるようサポートしてくれているほか、しっぽの骨に沿うように血管も走っているため、ケガをすると出血につながることもあります。
◆しっぽの長さは何で決まる?
猫のしっぽの長さは、内部の骨(尾椎)の数の違いによって変化しますが、これは親猫からの遺伝によるものです。
ジャパニーズボブテイルという、しっぽの骨の数が極端に少ない短尾を特徴とする猫種を中心として調査された最近の研究で、しっぽが短い猫では「HES7」という遺伝子の変異が関連していることが発表されました。これは、しっぽの骨の数の減少に作用していることが判明しています。
ちなみに、これは不完全ながらも顕性(優性)遺伝であり、しっぽの長い猫と短い猫を交配させると、しっぽの骨の数が少ない中尾~短尾の子猫が多く生まれるそうです。
ただし、しっぽの骨がない「尾なし猫(ランピー)」として知られるマンクスは、このHES7ではなく「T-box」という遺伝子の変異が関連しています。しっぽがないその姿は、長いしっぽの猫とはまた違った魅力があるのは確かですが、このT-boxは致死遺伝でもあるため、繁殖には注意が必要です。
尾なし猫同士の交配で両親のどちらからもこの遺伝子を受け継ぐと、死産や生後すぐの子猫の死亡を招いたり、3代続けて尾なし猫を交配させると致死遺伝子が働いて子猫が生まれないなど、多くの問題を引き起こします。
また、「マンクス症候群」と呼ばれる脊髄の破裂や、背骨の間でクッションのような役割を果たす椎間板の異常、排尿・排便障害といった先天的な身体トラブルを抱える個体も少なくありません。
◆鍵しっぽの骨はどうなっている?
鍵しっぽの猫はその名の通り、まっすぐなしっぽではなく、途中で曲がった形状になっていることから、「尾曲がり猫(ボブテイルやキンクドテイル)」と呼ばれています。
この尾曲がり猫のしっぽの長さには個体差がありますが、先ほどご紹介したしっぽの短い猫に関わるHES7遺伝子の変異がもたらす先天的なしっぽの骨の変形が、鍵しっぽ猫の誕生につながっています。
この遺伝子の変異が起こると、しっぽの骨の総数が少なくなるほかに、
・しっぽの骨同士がくっついて癒合する
などの作用も現れ、曲がったしっぽとなるのです。
日本では、妖怪伝承の1つである「猫又」への恐れや、鍵しっぽの猫は幸運を招いて縁起が良いという言い伝えなどから、しっぽが短く、曲がっている猫が好まれたという歴史もあり、血統的によく見かけることが多いです。
また、鍵しっぽになる理由には、外部から圧力が加わるケガによって引き起こされる後天的なものも存在します。これらは野良猫だけでなく、家庭で飼われている猫にも起こりうるトラブルです。
猫のしっぽの骨に関わるトラブル
猫と一緒に暮らす家庭では、しっぽにまつわるトラブルは意外と多いです。もしも猫がしっぽの骨や神経に関わるケガをしてしまった時には、適切に対処してあげましょう。
◆骨折
猫のしっぽは外部から圧力が加わると、比較的簡単に骨折してしまいやすい部位です。
ドアに挟む、人が踏むなど重いものに圧迫される、交通事故などでお尻周辺に強い衝撃が加わるなど、さまざまな理由で猫のしっぽの骨は折れることがあります。
骨折をすればもちろん痛みは強いですが、通称「猫ふんじゃった症候群」と呼ばれる深刻なダメージを引き起こす事態も招きかねません。
◆猫ふんじゃった症候群
猫ふんじゃった症候群に陥ると、猫のしっぽの骨だけでなく神経も損傷してしまうことで、脳からの指令が行き届かなくなってしっぽを動かせなくなることがあります。
また、重篤なケースでは、しっぽの神経とつながる足の動きや排尿・排便をコントロールしている神経にも損傷が及び、後ろ足の麻痺に伴う歩行障害や、自力での排尿・排便ができなくなるといった、介護が必要な猫になる危険性も十分にあるのです。
家庭内での対策としては、飼い主さん自身が移動したり、座ったりする際に足元をきちんと確認し、ドアを閉める時は近くに猫の姿がないかよく見てあげてください。そして、小さなお子さんがいる家庭では、猫のしっぽを引っ張ったり、付け根を強く叩かないように、大人がそばで見守ってあげることも重要です。
◆猫のしっぽの骨に異常を感じたら
猫のしっぽの形や動きがおかしいと感じた時には、まずはしっぽの内部にある骨や神経の損傷がないかなど、状態をしっかりと確認する必要があります。
こういったダメージの度合いを確認するには、レントゲンなどの画像検査も含めた獣医師による診察が必要になることがほとんどなので、必ず動物病院に行きましょう。
特に、時間が経つほど回復が遅延したり、適切な治療が施せなくなることもあるため、異変を感じたらすぐに受診するようにしてください。
まとめ
猫のしっぽは意外と知られていませんが、内部に骨も神経もあり、いろいろな役割をこなす繊細で大切な部位の1つです。
しっぽが短く、曲がっている猫に代表されるように、長尾の猫でないと生活上困るというわけではありませんが、骨や神経にも及ぶようなトラブルが起きると、痛みや身体的な障害によって、猫の生活の質が大きく下がる可能性もあります。
しっぽには優しく触れ、愛猫の気分や意思を確認するための重要なパーツとして大切にしてあげましょう。
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