猫はたけのこを食べても大丈夫?
「たけのこ(筍)」はイネ科の野菜となり、竹の地下茎から出てくる若い茎の部分が食用となっています。
産毛の生えた皮が何層にも重なっていて、すっぽりと身が包まれていますが、先端が地表に現れるころに掘り出して収穫されたものが、たけのことして販売されていますよね。
旬のたけのこは生でも食べられることから、お刺身にしても美味しいですし、ポピュラーな調理法としては土佐煮や天ぷら、炊き込みご飯などが親しまれています。
淡白な味わいでありながらしっかりとした歯ごたえがあるため、食べていても食感が楽しく、さまざまな料理にも使用される食材として知られていることでしょう。
この美味しいたけのこを愛猫にも食べさせたいと考えたことのある、飼い主さんは多いかと思いますが、実際に与えたとしても問題がないのかも気になるところですよね。
結論を言いますとたけのこは猫にとって、中毒症状を引き起こすような成分は含まれていないため、基本的には与えたとしても問題ありません。
猫ちゃんにも有益な栄養成分も含まれているため、少量であればキャットフードにトッピングするなどをして与えてみましょう。
たけのこにはさまざまな栄養成分が含まれていますが、注目しておきたい栄養素は「チロシン」「パントテン酸」「アスパラギン酸」「グルタミン酸」「亜鉛」「食物繊維」の6つとなります。
栄養価 | 猫への効果 | チロシン | 皮膚や被毛の色素となるメラニンの原材料 | パントテン酸 | エネルギーの代謝に関係する | アスパラギン酸 | 疲労物質となる乳酸をエネルギーに変える手助けをし、疲労回復につながる | グルタミン酸 | うま味成分。キャットフードの嗜好性を上げるほか、神経伝達物質として働く | 亜鉛 | 骨や筋肉、内臓などの身体を構成するために必要な細胞の生成と、新陳代謝に関係する | 食物繊維 | 腸内環境を整える。食べすぎは消化不良にも繋がる |
アミノ酸の1種となるチロシンは、皮膚や被毛の色素となるメラニンの原材料となるため、猫にも重要な栄養素と言われており、体内でも合成されますが、食事から積極的に摂ることがおすすめです。
パントテン酸はビタミンB群の1種(ビタミンB5)となり、エネルギーの代謝に欠かすことのできない栄養素となります。
利尿作用のあるアスパラギン酸は、疲労物質となる乳酸をエネルギーに変える手助けをし、疲労回復といった効果が期待できます。
うま味成分となるグルタミン酸は、キャットフードの嗜好性を上げてくれるだけでなく、神経伝達物質とも言われていて、身体にとって必要不可欠な栄養素と言えるでしょう。
必須ミネラルの1種となる亜鉛は、骨や筋肉、内臓などの身体を構成するために必要な細胞の生成と、新陳代謝に深く関係している重要な栄養素となっています。
たけのこの独特な食感のもとになっているのが食物繊維となり、言わずと知れた腸内環境を整える働きをしてくれますよね。
たくさんの食物繊維がたけのこには含まれているため、たくさんの量を猫が食べてしまえば、消化不良にも繋がるので注意が必要です。
猫にたけのこを与える際には前述してある通り、少量を意識して与えるようにしてください。
根本部分よりも穂先の方が柔らかいため、猫に与える際には穂先部分を中心に食べさせてあげましょう。
また、繊維質が多いことから一口量が大きいと噛みちぎれず、飲み込めなかったり歯に詰まったりするため、必ず細かく刻んでからフードなどにトッピングしてみてください。
生で食べられるほど新鮮なたけのこであっても、猫に食べさせる際には必ずアク抜きをして、柔らかく茹でてから与えなくてはいけません。
たけのこにはアレルギー物質に似た、天然の成分となるアセチルコリンが含まれており、胃痛や痒みといった症状を引き起こしますが、アク抜きだけでなく茹でこぼしをすることによって含有量を減らせるので安心です。
そして、必ず調味料などで味付けをしないようにし、素材そのものを楽しんでもらえるような与え方を心掛けておきましょう。
主な栄養素が食物繊維となるたけのこですが、腸内環境を整えて老廃物を排出している一方で、食べ過ぎてしまえば消化不良を起こしてしまうといったデメリットがあります。
そして、たけのこにはカルシウムとシュウ酸といったミネラル類も含まれており、この
2つの栄養素が結合してしまえば、「シュウ酸カルシウム」といった結石(結晶)を形成しやすくなるそうです。
泌尿器系の疾患を持つ猫ちゃんの場合にはリスクが高すぎるため、たけのこをわざわざ食べさせるといった行為は、絶対しないようにしてください。
また、ミネラル類を過剰摂取してしまうと、腎臓に負担をかけてしまう確率も上がってしまうので、愛猫の健康面に対して不安要素が残る場合には、敢えてたけのこを与える必要はないと言えるでしょう。
猫にたけのこを与える際の注意点
猫にたけのこを与える際には、いくつか意識をしながら与える必要はありますが、改めて注意すべき点は何なのかを見ていきましょう。
たけのこにはたくさんの食物繊維が含まれているため、猫にも有益な食材となりますが、食べ過ぎてしまえば消化不良を起こし、便秘や嘔吐といった症状を引き起こすことがあります。
また、ミネラル類も豊富に含まれている通り、過剰摂取してしまえばさまざまな臓器に悪影響を及ぼすため、少量に留めて与える必要がありますよね。
極論を言ってしまえば、総合栄養食で必要な栄養素を摂取できている猫ちゃんの場合は、たけのこから栄養を摂取する必要はないため、興味を示してきた場合のみ、少量を与えるといった選択肢でもかまいません。
そして、はじめてたけのこを与える際には、食べたあとにも体調に異変がないかの観察を怠らないようにしてください。
少量を意識しつつ猫にたけのこを与えることも大切ですが、与え方にもいくつか注意すべき点が存在します。
たけのこの1片が大きすぎてしまえば、猫は食べ物を丸飲みしてしまう性質からも、喉に詰まらせてしまう危険性がありますし、たとえ噛みちぎって飲み込もうとしたとしても、歯にたけのこの繊維が詰まってしまえば、歯周病の原因になるだけでなく、違和感を覚えて嘔吐してしまう子も居るはずです。
このようなことからも、猫にたけのこを与える際には細かく刻み、分量はティースプーン1杯程度に留め、安全第一で食べさせてあげるようにしましょう。
たけのこはえぐみの強い野菜となるため、収穫してから時間が経ったたけのこは、必ずアク抜きをしてから調理をしなくてはいけません。
有効成分となるチロシンは酸化すると、えぐみ(アク)のもととなるホモゲンチジン酸に変化しますが、アクのもとにはシュウ酸といった成分も含まれています。
とくにシュウ酸は、猫にとって悪影響をもたらす成分であると分かっている以上、しっかりと下処理をして、安全な状態で愛猫に食べさせてあげたいところですよね。
また、下処理として茹でることによりアクが抜けるだけでなく、アレルギーの原因となるアセチルコリンも排出できるため、必ず茹でこぼしてから与えるようにしてください。
基本的には猫に人間の食べ物を食べさせる必要はありませんが、たけのこには猫にとって中毒を引き起こすような栄養素は含まれていないため、注意点を守りさえすれば猫に与えても問題ありません。
しかし、たけのこを食べたことにより体調を崩してしまった場合には、そのまま様子を見たりはせずに、すぐに動物病院を受診するようにしてください。
たけのこにはさまざまな病気を誘発する成分が含まれているため、免疫力の低い猫ちゃん(子猫・老猫・病気の猫など)などが口にすれば、何かしらの症状が出たとしても不思議ではありませんよね。
動物病院を受診する際には、どのような症状がいつ出始めたなのかを明確に伝え、適切な治療を受けて改善に向かわせてあげましょう。
まとめ
春に旬を迎えるたけのこは独特な食感がクセとなり、どんな料理にも主張し過ぎず馴染んでくれるため、重宝している方も多いのではないでしょうか。
さまざまな栄養が含まれていることからも、猫に食べさせたいと考えている飼い主さんは、少なからずいらっしゃるはずです。
とくに食物繊維が豊富な野菜となるため、便秘気味の猫ちゃんには嬉しい効果が期待できますが、食べ過ぎてしまえば消化不良を起こしやすくなるので注意が必要となります。
しかし、中毒症状を引き起こすリスクは少ない反面、さまざまな病気を発症させる可能性は多少なりとあるため、少しでも不安要素が残るような猫ちゃんの場合は、敢えてたけのこを与えない方が賢明と言えますよね。
猫に与える際には、この記事で紹介させていただいた注意点を必ず守るようにし、安全な状態でたけのこを食べさせてあげてください。
たけのこは上手に活用すれば猫ちゃんもきっと喜んでくれるはずなので、キャットフードのトッピングや、手作りごはんの材料として利用してみてはいかがでしょうか。