ワンちゃんは、噛む動物!
まず皆さんに知っていただきたいのは、ワンちゃんの動物としての本能や習性です。
ワンちゃんという動物は、もともと噛む動物なんです。ご存じの方も多いと思いますが、ワンちゃんは捕食動物のため噛むことは、生きていくために必要な行為なのです。その他にも行動学的にいろいろな意味をもっています。
例えば、仲間を作るために遊びながら噛んだり、上位勢を示すために噛んだり、自分の身を守るために噛んだり、ストレス解消するときなどにも噛んだりします。噛むことは、ワンちゃんにとって普通のことであり、とても必要なことなのです。
しかし、これは犬社会でのルールであり、人間社会の中では変わってきます。
それは、噛んでよいものと悪いものが出てくるということ。特に噛んではいけないものは、人間です。そのほかには、家具や衣類などの日用品などもありますよね。
噛まなくするためにも、しっかりとしたトレーニングが必要になります。
では、なぜ人を噛むのかを考えてみましょう。
なぜワンちゃんは人を噛んでしまうのでしょうか?
噛みぐせにはいろいろな理由が考えられます。
①人に対して危険を感じ、自分の身を守ろうとするとき
②自分にとって大切なものを人から守ろうとするとき
③人間社会や犬社会の経験・勉強不足のため
④人が甘噛みを許可していたため(遊ぶときなど)
⑤飼い主に対して信頼・信用・安心を得られていないため(関係作り)
ワンちゃんは、どんなときに人を噛むのでしょうか?
実際に飼い主様から、よくお伺いするタイミング!
①ワンちゃんと遊んでいるとき
②ワンちゃんに首輪やリードをつけるとき
③ワンちゃんの食器をかたづけるとき
④食べている側を通ったとき
⑤ワンちゃんのおもちゃを取ろうとしたとき
そのほかにも、ワンちゃんが寝ているときになでようとしたり、
ペットオーナー様が抱っこしている状態で触ろうとしたときなど、さまざまなパターンがあります。
噛まれることが多い場所はどこでしょうか?
噛みぐせの予防
噛む理由や噛むタイミング、噛む場所がわかったことで、それではどのようにして噛みぐせの直したらいいのでしょうか?
それは、仔犬の頃からの予防のトレーニングにポイントがあります。
噛みぐせの予防①
どこを触られても気にしない、平気でいられるようにする
まずは、ボディーコントロールがおすすめです。
ワンちゃんの体のどこを触っても平気でいられる様に毎日触って練習をします。
顔、頭、耳、口(マズル)、歯、背中、お腹、尻尾、足、爪、肉球などの箇所全部です。
触っていって苦手なところがある場合は、触ると良いことがあるよと教えるため、
ご褒美を利用しながら、少しずつならしていきましょう。
「コミュニケーショントレーニング」その①~ボディコントロールト~でご紹介したコミュニケーショントレーニングがおすすめです。
噛みぐせの予防②
大切な物を守らないようにする
飼い主さんから提供しているにもかかわらず、盗られると勘違いしているワンちゃんが
多くいます。警戒心をつけないための方法です。
【飯の場合】
①フードを手であげます。
②食器に入れたフードをすくい手からあげます。
③食べている最中におやつ(少量)などを食器に入れてあげます。
④手を食器に入れながら食事をさせ、たまにおやつなどを入れてあげます。
人の手が近づくと取られるのでなく、良いことがあると教えていきます。
*1項目ずつちゃんとできたら次に移ること。
焦らず、無理せず行うこと。
【おもちゃの場合】
①おもちゃで引っ張りっこをして遊びます。
しばらく遊んでから、ワンちゃんが噛んでいる状態で、同じおもちゃを見せて交換します。
②ワンちゃんが放したときに「ちょうだい」などのコマンドをかけ、交換します。
③交換を繰り返しながら満足する前に遊び終わり、フードまたはおやつをあげて終了しましょう。
④そうすると、盗る人間ではなく、提供してくれる人間と思うことができます。また、コマンドを教えることによって、ちょうだいでおもちゃを放してくれるようになります。
まずこのような予防を仔犬の頃から行い、噛みぐせをつけないようにトレーニングしましょう。
噛みぐせの直し方
噛みぐせは、甘噛みから発生することが多くあります。甘噛みを放っておくと、強く噛んできたりと酷くなっていきます。噛みぐせがつかないよう、教えていきましょう。
①噛ませない
いちばん大切なのは、人を噛ませないこと。甘噛みだからといって、噛ませているとワンちゃんは噛んだ部分をおもちゃと同じように考えて、遊んでもらえたり、喜んでもらえると勘違いをしてしまいます。
また、ワンちゃんにおいて甘噛みも本気噛みも、噛むは
噛むです。どんな状況においても人は噛ませないように気をつけましょう。
②噛む欲求を満たす
噛みたい欲求は、ワンちゃんにとって自然なこと。
人を噛むのはいけないことですが、他に噛む物を与えて欲求を満たしてあげましょう。
噛みたい欲求を満たす2つの遊びポイント
ポイント①
おもちゃは、使い分けをしましょう。
使い分けとは、お留守番などワンちゃんだけで遊ばせるおもちゃと、
ペットオーナー様と一緒に遊ぶおもちゃの2種類の使い分けです。
ワンちゃんだけで遊ばせる場合は、壊れにくい物を使用しましょう。
例えばサークルやクレート内に知育トイのような天然ゴム(コングやビジーバディーなど)
でできていて、中にごはんやおやつを入れられるおもちゃです。
また牛革のガム、強度のあるプラスティックや木のおもちゃなどもよいでしょう。しかし、このようなおもちゃの場合は喉がつまるなどのトラブルがあるかもしれませんので、ペットオーナー様が在宅中でも遊ぶ時間は短時間(30分くらい)での使用をお願いします。
ペットオーナー様と一緒に遊ぶおもちゃは、ボールやぬいぐるみ、デンタルコットン、できればワンちゃんとの距離を保てるような長いおもちゃを選ぶとベストです。
このようなおもちゃを使い分けて、噛ませて遊ばせてあげましょう。噛みぐせが軽減できるはずです。
●おもちゃ使い分け一例
ワンちゃんだけで遊ぶ場合
●飼い主さんと遊ぶ場合
ポイント②
運動量を増やしましょう。
かじってもよいおもちゃで一緒に遊んであげましょう。投げたり、引っ張りっこなどなど。しかしいちばんの運動は、走ったり、ワンちゃん同士で遊ぶことです。
ワクチン接種の時期にもよりますが、このような遊びをすることによって運動量が増え、エネルギーを発散できます。
いくら注意してもワンちゃんに噛まれてしまう
いくら注意しても、予防していても、遊んであげても、噛まれてしまうことがあるでしょう。
では、ワンちゃんに噛まれてしまったときは、次のように対処しましょう。
【自分が噛まれてしまったら】
噛まれたら「痛い!」とはっきりと言いましょう。
①ワンちゃんを残してすぐに部屋を出ます。
そのときにワンちゃんが追いかけてきても「見ない、触らない、声をかけない」を守ります。この行為をしてしまうと、許してしまったと同じことになります。
また、部屋を出るときはおもちゃを部屋からもって出るか、ワンちゃんの届かないところへ置きましょう。
おもちゃがあると遊んでしまい、無視の効果がなくなってしまいます。
*お部屋にはワンちゃんを残して全員が一緒に出ていきます。
②部屋を出て1分ぐらいしてから戻ります。
戻ったときも「見ない、触らない、声をかけない」を守りましょう。
ここでアクションを起こしてしまうと、「噛むと誰もいなくなり、遊んでもらえない」という印象が薄れてしまいます。
気をつけましょう。
また遊びを再開するときは、数時間たってからにしましょう。
③これを繰り返し行うことにより、噛むと良いことがないと教えていきましょう。
【家具などを噛まれてしまったら】
家具などを噛まれないようにする方法の一例
①よく噛む場所にいかせないように物を置く。
②ビターアップルなどの苦味成分のスプレーやジェルを使用する。
しつけ・忌避商品一例
③よく噛む場所の近くに噛んでも良いおもちゃ(知育トイ)におやつやご飯を入れて置いておく。
噛みぐせを直すのに、なぜ叱ってはいけないのか?
いけないと言うよりも、叱るほうが難しいのです。
言葉がわからないワンちゃんを叱っても、意味が通じません。
確かに叱って直ったワンちゃんも知っていますが、これだけのたくさんのワンちゃん、たくさんの飼い主さんがいる中で、叱るだけの方法では直すことはできなくなりました。
また、叱ったからといって絶対に直るともいえません。
叱り方によっては違う結果を生む場合もあります。
①いきなり噛みつくようになった
②飼い主さんをいつでも避けるようになった
③叱った人には噛まないが、他の人に噛みつくようになった
④他の物に噛みつくようになった
⑤人に脅えるようになった
などが現実的に起きています。そうならないためにも、
犬の習性や行動を理解して、噛むと悪いことが起きる、
噛まないと良いことが起きると教えてあげたほうが、
これから十数年、一緒に暮らしていく家族には必要と考えます。
※噛みぐせについて、飼い主さんでは理解できない、直せないような特殊な例などが多くあります。
大怪我に繋がる場合があるので、基本的には、無理をせずプロのドッグトレーナーに相談をしましょう。