日本でも最近は、ワンちゃんと一緒に食事やお茶を楽しめる「ドッグカフェ」が増えてきました。しかし、ペット先進国のドイツには、そもそも「ドッグカフェ」がありません。なぜなら、「犬が入れるのは当たり前」だからです。
さすがに衛生上、屋内のスーパーマーケットや青果店、人間の病院などにワンちゃんを連れて入ることはできませんが、ドイツでは「原則として犬も一緒に入れる」「例外として犬は入れない」のです。まず、電車やバス、タクシーなどの公共交通機関には、すべてワンちゃんがそのまま乗り込むことができます。日本のように、キャリーバッグなどに入れる必要はありません。レストランやカフェなども、ワンちゃんを連れて入ることができます。
ロットワイラーのような大型犬が電車に乗り込んでくるとさすがに最初は驚きますが、みんな飼い主の足下にきちっと伏せて静かにしています。吠えたり、粗相をしたりすることはありません。これがドイツ人にとっては「当たり前」の風景なので、電車の中で大型犬の存在を話題にしているのは観光客くらいのものです。また、ドイツでは、ワンちゃん1頭につき、一人分の「子ども料金」を支払う必要があります。
これに対して日本では、例えばJR東日本の場合、車内に「持ち込める」のは「小動物」のみ。しかも、長さ70cm以内で縦横高さの合計が90cm程度のキャリーバッグに入れなければならず、顔などがキャリーバッグから出てはいけません。さらに、「手回り品料金」として、「キャリーバッグ1個」につき280円が必要です。
ドイツではワンちゃんのしつけが徹底されています
まず、ドイツでは、9割以上が子犬をブリーダーさんから迎えます。ブリーダーさんも素性のよくわからない人には子犬を譲りたくないので、まずはブリーダーさんとの関係を築く必要があります。いきなりブリーダーさんのところへ行ってもワンちゃんは譲ってもらえないので、「ワンちゃんを衝動買いする」ことはほぼありません。
また、ドイツでは「8週齢以内の犬は母犬と離してはいけない」という法律があるため、ブリーダーさんから引き取る際には生後8週間過ぎるのを待たなければなりません。その際にブリーダーさんから、信頼しているドッグスクールや訓練士、動物病院などを紹介され、できるだけ早くから通うように促されるケースがほとんどです。
ブリーダーさんから子犬を譲り受けたペットオーナー様は、子犬を連れてブリーダーさんお薦めのドッグスクールで開催している「パピィパーティ」に通います。そこでワンちゃんは、徹底的に「社会化」を教え込まれます。
「社会化」とはなんでしょう?
生後3~15週齢のワンちゃんを「社会化期」といいます。
ワンちゃんはこの時期に、母犬や兄弟犬から犬社会のルールを学びます。また、ほかの動物や人の存在、生活音や騒音、家の中と外などの様々な刺激に触れ、慣れていきます。「ワンちゃんの社会化」とは、「社会化期」にワンちゃんにいろいろな体験をさせることで、ワンちゃんたちが暮らしていく人間社会のルールを学ばせることをいいます。
社会化期のワンちゃんに見せて慣れさせたいことを、以下にまとめました。
- 人間を見せて慣れさせる
男性、女性、赤ちゃん、子ども、高齢者、作業服を着た人、帽子やサングラス姿の人、自転車やバイクに乗った人、台車を押す人、宅配便の方など
- 場所に連れて行って慣れさせる
自動車やバイクが行き交う道路、遊歩道、電車の線路や踏み切りのそば、商店街、公園、工事現場など
- 乗り物を見せて慣れさせる
自家用車、トラック、バス、救急車、消防車、ゴミ収集車、清掃車、バイク、自転車、電車、飛行機、ヘリコプターなど
- 音を聞かせて慣れさせる
ドアベル、チャイム、バイク、バス、花火、雷、工事の作業音、布団を叩く音、カメラのシャッター音、掃除機、ドライヤー、ひげそり
- ほかの動物を見せて慣れさせる
自分の親兄弟、犬の吠え声、大きな犬、小さな犬、多頭飼育の犬、犬以外の動物、飼い猫、野良猫、ハト、スズメ、カラス、セミなどの鳴き声を出す大きな昆虫、ヤモリ、鯉など
どのように「社会化」を行えばいいでしょう。
屋外の刺激に慣れる社会化は、1回5~10分の「抱っこ散歩」で行います。ワクチン接種による免疫力がついていないうちは、決して地面におろしたり、ほかの犬との接触をしたりしないようにしてください。
子犬が怖がっていたら、無理はしないようにしましょう。子犬の様子を見ながら、ゆっくりと対象物に近づいてください。フードやおやつをあげながら近づけば、「自分にとって得だ」という思いと結びついて、苦手意識を持たなくなります。ペットオーナー様が声をかけたり、なでたりしながらワンちゃんを安心させてあげることも大切です。
忙しくてなかなか「社会化」ができないペットオーナー様、「社会化」ができないまま成犬になってしまったワンちゃんのペットオーナー様には「犬の幼稚園」「しつけ教室」がお薦めです。
最近は、子犬のペットオーナー様だけで集まって、ワンちゃん同士でお互いの関係づくりを学ばせる「パピィパーティ」や、子犬を預かって社会化などを教えてくれる「犬の幼稚園」を開催するところが増えています。
また、ワンちゃんは賢いですから、社会化期を逃しても、いつでも教えたことを覚えてくれます。もっとも、ワンちゃんと初めて暮らすペットオーナー様や、共働きなどでワンちゃんと過ごす時間が限られているペットオーナー様には難しい部分があるかもしれません。
そこでぜひ、「パピィパーティ」「犬の幼稚園」や、子犬や成犬に様々なことを教えてくれる「しつけ教室」を利用してください。最近は「初回のみ半額」「カウンセリング無料」などのサービスを取り入れるところも増えています。
では、どのようなお教室を選んだらいいでしょうか。何より、しつけは、続けることが大事ですから、「少なくとも3か月は通う」と考えてください。「通い続けられそうなところ」が、ペットオーナー様とワンちゃんにとってベストのお教室だと思います。
犬のしつけ方にはおやつを使う方法、クリッカーを使う方法などいろいろありますし、訓練士によってしつけに対する考え方や教え方はまちまちです。また、ワンちゃんの性格によっても合う、合わないがあります。
「絶対に正しいしつけ方」というものは存在しないので、訓練士さんと話したり、ワンちゃんとの接し方を観察したりして、「この人とは気が合いそうだな」とインスピレーションを感じるお教室を選んでください。ワンちゃんが訓練士さんによくなついているかも重要なポイントです。
私たちひとりひとりがワンちゃんをきちんとしつけることができれば、ワンちゃんが苦手な人もその存在を許してくれるようになるでしょう。そうすれば、日本が憧れのドイツになれる日も、そう遠くないかもしれません。
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