◆犬にとっての色って?
例えば2人の人間がいたとして「赤いもの」を見せて色を尋ねたら、恐らくどちらも赤と答えるでしょう。しかし、犬の目から見ると「赤いもの」は赤と認識することはできません。
また、赤と同様に緑も緑と識別することはできません。赤は灰色のように、緑は黄色のような色に見えているのです。そのため、私たちが赤や緑が混ざった色とりどりのクリスマスツリーを見ても、犬にはただの黄色と灰色の混ざった味気のない木に見えているのです。
なぜ人間の目に比べて犬の目は、色の識別が不得意なのでしょうか。
私たち人間の目には錐状体という色を感じる細胞があるのですが、犬の目にはその錐状体がほとんどないのです。そして、犬の目にあるわずかな錐状体も、青と黄色にしか反応しないため、赤や緑を識別することができないのです。
しかし、だからといって犬の目が人間の目に完全に劣っているわけではありません。犬の目の網膜の裏には、タペタム層という層があり、光の増幅に一役かっています。そのため、人間は暗い場所ではほとんどなにも見えないのに対し、犬は少ない光の量で物体を認識することができるのです。
◆犬は近視なの?
犬と人間の目の違いは、色の識別能力だけではありません。犬は人間に比べてとても近視であるため、私たちが物を判別する位置よりも近寄らないと判別することができません。
人の視力で表すと、0.2ほど!ですから、0.2ほどの視力の人なら、犬がおもちゃを見つけられない気持ちが分かるかもしれませんね。犬が近視であるのには理由があります。それは、水晶体がとても厚いからなのです。私たち人間が4㎜ほどの厚さであるのに対し、犬の水晶体は2倍の8㎜ほどあるといわれています。そのため、私たちがピントを合わせるよりも近い位置でなければピントを合わせることができないのですね。
ここまでを見ると、私たちが生きる世界においては人間の目のほうが優秀なのではないかと考えてしまいますが、実はそうでもないのかもしれません。私たちの視野というのは、両目合わせて約180度と言われていますが、犬の視野はなんと250度以上もあるのです。
視野がこれだけ広いのは、狩猟を得意としていた犬の祖先が側面の視野を必要としたからです。また、動体視力は非常によく、犬種にもよりますが、1㎞先の動く物体を見ることができる犬もいるそうです。
◆犬は私達人間をどう見ているの?
犬が見る景色は私たちが見るものよりも味気ないものであったり、それでいて暗い場所を見ることができたり、視野がとても広かったり、人間とは違った見え方をしていることが分かりました。
それでは、犬の目から見た私たち人間はどう写っているのでしょうか。例えば私たちがそうであるように、自分より大きな動物が自分を見下ろしてきたら少し恐怖を感じますよね。
それは犬にも言えることかもしれません。だから、犬と仲良くなるためには同じ高さにしゃがんで接するべき、というのも色々なところで言われていますよね。
そもそも犬と人間はパートナーでありながら全く違う生き物ですので、犬の本当の気持ちというのは分かりません。視界を共有することもできません。しかし、近視であるはずの犬が近くで自分の顔を見つめていたり、家に帰ると自分の姿は見えないはずなのに喜んだり、と視界に入らなくても家族と認識してくれていることは分かります。
犬が人間を見る時には、見えるものだけを見ているわけではなく、目に見えない「匂い」や「声のトーン」、そして感じることのできる少しの雰囲気の違いという小さな部分までを感じとりながら、私たちを見ているのかもしれませんね。
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