ワンちゃんがくしゃみを連発したら要注意! シニアドッグの歯周病(歯槽膿漏)

2016.02.05

ワンちゃんがくしゃみを連発したら要注意! シニアドッグの歯周病(歯槽膿漏)

2015年9月、我が家の愛犬キャンディス(当時12歳)が、やたらと咳やくしゃみをするようになりました。くしゃみの後は、黄色い鼻水が犬用のベッドやクッションなどに飛び散ります。「咳なんて、もしかしたら僧帽弁閉鎖不全症かしら?」と慌てて動物病院へ行った筆者が聞いたのは、意外な病名でした。

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犬がくしゃみを連発して黄色い鼻水(膿)を出したら、すぐ動物病院へ!

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くしょん! くしょん! くしょん! とくしゃみを連発した後、ガー!と痰が絡んだオヤジのような咳をして黄色い鼻水(膿)をまき散らす愛犬キャンディスの顔には、飼い主の私もさすがにドン引き。キャンディスも歳なのね、と最初の2日は悠長に構えていたのですが、やはり様子がおかしいと思うようになってきました。若いアニィが来てから競うように食べていたのに、目に見えて食欲が落ちはじめたのです。また、しきりに口元を足でひっかくようになりました。
愛犬家が「小型犬の咳」と聞いてまずピンとくるのは、「僧帽弁閉鎖不全症」でしょう。心臓にある僧帽弁という弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気です。血液中の水分が肺にたまるなどして、夜間に咳をするようになります。僧帽弁閉鎖不全症は特に早期発見・治療が重要となる病気なので、私はキャンディスがくしゃみをしてから3日後に、かかりつけの動物病院に駆け込みました。

付いた病名は「僧帽弁閉鎖不全症」ではなく「歯周病」

動物病院に到着し、症状を説明しつつ
「僧帽弁閉鎖不全症でしょうか、私も覚悟を決めないといけないでしょうか。長期の投薬が必要でしょうか」
とやたら興奮する私に対して、先生はとても冷静。
「いや、心臓の音はとっても調子がいいですし、心雑音もほとんどありませんよ。お達者な12歳です。これは口でしょうね」
と、キャンディスの口をぱかっと開けてのぞき込みました。
「あー。歯周病ですね」

歯のお手入れには細心の注意を払っていたのに大ショック!

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 犬の歯周病は、人間のそれとほぼ同じ。歯垢中の細菌が歯などに付着・繁殖することにより、歯のまわりにある歯肉やセメント質、歯根膜、歯槽骨などが炎症を起こす病気です。放置するとあごの骨に穴が空いたり、血中に入った細菌が全身に散らばって腎臓や心臓、肝臓などに多大なダメージを与えたりします。
私も長年、愛玩動物飼養管理士として活動をしております。犬の歯周病の怖さはよく知っていました。だからこそ、週に1度は歯磨きをしていたし、年に1度は無麻酔の歯石除去をしていたのに……。確かに最近はお口がちょっと臭うなとは思っていたけれど……。歯周病とは!
「トイ・プードルみたいにあごがシュっとしていて、よだれが口の中にたまりにくいワンちゃんは、気をつけていても歯周病になりやすいんですよ。また、子どもに虫歯になりにくい子となりやすい子がいるように、同じ犬種でも個体差があります。キャンディスちゃんは歯周病になりやすいワンちゃんだった、ということですね。あとは……うーん、この歳にしてはとてもきれいな歯なんですが……。歯の裏まではブラシが届いていなかったようですね」
「キャンさんは固いガムなどを食べたがらない子なので、年に1回くらいはほかの病院で、無麻酔の歯石除去をしてもらっていたんですが……」
「うーん、無麻酔だとキャンちゃんみたいに動かない子でも、やっぱり取り切れないことが多いんですよ。無麻酔というご要望が多いので、私たちも無麻酔で歯石を取ってはいますが、歯周病の予防になるかというと……。歯周病は歯と歯肉の間に細菌が繁殖するので、表面的な治療だとどうしても、難しい部分があるのは事実ですね」
「治療法は……」
「ここまで進んでいると、やはり麻酔をした上での抜歯などが必要になってきます」
 くしゃみと咳を連発していたのは、歯肉から出た膿が鼻やのどに回ったからとのことでした。

信頼関係がある動物病院なら、シニアドッグの麻酔も怖くない!

 12歳のキャンディスに麻酔と聞いて、抵抗感があったのは事実です。しかし、そこはさすが、長年キャンディスを見ていただいている獣医師さん。抜歯手術をする上では血液検査を含む十分な身体検査を行い、危険が少しでも感じられるときは手術をしないこと、開腹手術ではないので負担が少ない、いわゆる「軽い麻酔」を使うこと、それでも危険が生じたら直ちに抜歯手術を中止し、命の保持を最優先とすること、予算などについてじっくり説明してくださいました。
賛否両論あるかとは思いますが、「インフォームドコンセント」すなわち「飼い主が獣医師から診療内容について十分な説明を受け、理解した上で飼い主が治療につき同意し、最終的な治療方法を選択する」ことをしてくださる動物病院なら、12歳のキャンディスに麻酔をかけてもいいと私も、家族も納得しました。
 私からは、「口を閉じたときにベロが出ないようにしてほしい」つまり、上あごと下あごの犬歯をなるべく抜かないでほしいということを伝えました。

すっかり元気になりました

Before

無題

After

2

今回、かなり歯を抜きました。また、超音波で歯の表面や、歯と歯肉の間の清掃をしてもらいました。さらに、抗生物質を術後1週間飲ませ、傷口が膿まないよう細心の注意を払いました。
 その結果……。くしゃみがウソのように止まり、咳も出なくなりました。また、食欲も復活しました。お口の臭いもなくなりましたし、今はすっかり元気です。麻酔をした上での抜歯手術をして、本当によかったと思っています。
ただ、これなら無麻酔にこだわらず、もっと早く麻酔をかけた上で歯の大掃除をしていれば、歯を抜くこともなかったかもしれないという後悔は残ります。
皆様も、ワンちゃんの歯の健康についてはぜひ、かかりつけの動物病院の獣医師とじっくり相談をしてください。最近は歯を専門とする動物病院も多いので、診察を受けてみるのもおすすめです。
この記事が、シニアドッグと暮らす皆様のご参考になれば幸いです。

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石原 美紀子

石原 美紀子

青山学院大学卒業後、出版社勤務を経て独立。犬の訓練をドッグトレーニングサロンで学びながら、愛玩動物飼養管理士1級、ペット栄養管理士の資格を取得。著書に「ドッグ・セレクションベスト200」、「室内犬の気持ちがわかる本」(ともに日本文芸社)、「犬からの素敵な贈りもの」(出版社:インフォレスト) など。愛犬はトイ・プードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。

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