1.短足の猫「マンチカン」誕生の歴史
1-1.短足の子猫を生んだ「ブラックベリー」
1-2.キャットショーで有名となったマンチカン
1-3.マンチカンの名前の由来
2.マンチカンの体の特徴は?
2-1.マンチカンの短足について
2-2.マンチカンの体格について
2-3.マンチカンの毛色について
3.マンチカンの性格は?
3-1.好奇心旺盛な性格
3-2.社交的な性格
3-3.甘えん坊な性格
4.マンチカンのタイプについて
4-1.スタンダードな「純血種」
4-2.ゴージャスな雰囲気の「ミヌエット」
4-3.元気いっぱいで「キンカロー」
4-4.カールした被毛が特徴の「スクーカム」
5.マンチカンの飼い方は?
5-1.マンチカンに合った運動スペースを準備
5-2.おすすめ商品
5-3.食事と運動のバランスに気をつける
5-4.こまめなブラッシング
8.マンチカンの気をつけたい病気は?
8-1.椎間板ヘルニア
8-2.慢性腎不全
【掲載:2019.03.06 更新:2023.04.10】
短足の猫「マンチカン」誕生の歴史
1944年にイギリスのジョーンズ博士によって、初めて報告されたことがマンチカンの始まりだといわれています。突然変異でそのような姿になったとされていますが、第二次世界大戦の頃には姿を消してしまいました。
さらに1953年にロシアからも同じように足の短い猫の報告があり、1964年にはアメリカのニューヨーク、1970年にはニューイングランドでも短い足の猫の存在が報告されていました。
◆短足の子猫を生んだ「ブラックベリー」
各地で報告された短足猫の変異は、1983年にトレーラーの下で暮らしていた「ブラックベリー」と呼ばれる猫により、大きな一歩を踏み出すことになりました。
ブラックベリーは妊娠しており、生まれた子猫の半分は短足猫だったようです。そのうち、「トゥールーズ」と名付けられたオスの子猫が繁殖家に引き取られ、短足猫の育種が始められました。
近親交配による遺伝子疾患のリスクを減らすために、当初の交配相手は短足猫以外の猫たちと行われていましたといいます。
◆キャットショーで有名となったマンチカン
育種されたマンチカンは、ニューヨークで開かれた1991年のキャットショーで初めて展示されることになります。
しかし、短足で小さなマンチカンの姿は様々な立場からの論争を引き起こすことになりました。一方は遺伝子疾患や免疫力の弱さを懸念する人たち、一方はこの猫の愛くるしい姿に魅了されて健全性を信じようとする人たちで、両者の意見が食い違ったためです。
キャットショーの評判では「結局は単なる突然変異」と結論付けられて終わってしまいました。
のちにこの短足猫はアメリカのいろいろな場所で見つかり、育種のために飼われるようになりました。こうして近親交配による遺伝子疾患のリスクが低下することで、猫の国際的な血統登録団体であるTICAは、1995年にスタンダードを作成し、新しい猫の品種として認定することになりました。
ただ、マンチカンの育種について愛好家や遺伝学者の間で倫理的見解の違いがあります。国際的な猫血統登録団体であるCFA・GCCF・FIFeは未だにマンチカンを猫の品種として公認していません。
マンチカンの短足の原因はわかっていませんでしたが、最近では自然発生した遺伝子の常染色体突然変異によるもとのだと分かりました。特徴的な短い足が障害のようだと言われていた時期もありましたが、障害ではなく、体の機能には何の問題もないことも明らかになっています。
◆マンチカンの名前の由来
「マンチカン」の名前の由来は、英語で「小さい人・子供」を意味する「munchkin(マンチキン)」から名付けられたといわれています。また、小人の一族が「オズの魔法使い」に登場する名前にちなんで名付けられたともいわれています。
マンチカンの体の特徴は?
マンチカンの特徴といえば短い足ですよね。短足で歩く姿マンチカンはとてもかわいく、日本ではとても人気があります。
一方で、マンチカンには短足だけでなく、足長(普通の猫くらい)タイプも多く存在しています。短足のマンチカンは意外と少なく全体の2~3割ぐらいといわれています。
◆マンチカンの短足について
短足のマンチカンは、立つとすぐに分かる短い足が最大の特徴です。この短足によって「猫界のダックスフント」ともいわれています。
短足ですが膝もちゃんとあり、膝から上と膝から下の長さがほぼ同じです。マンチカンは普通にジャンプもしますし、木登りなども大得意です。マンチカンはこの短足で不便な思いをしているということはないようです。
マンチカンの短足タイプの体高は猫の品種中で最も小さく、2014年3月にはカナダで繁殖された体高13.6cmのマンチカンが世界一小さな体高の猫としてギネスブックに登録されました。
◆マンチカンの体格について
マンチカンの体重は、オス猫が3kg~4kg、メス猫は2kg~3kgです。メス猫はオス猫より少し体の大きさは小さめです。
ボディタイプは小型のセミコビータイプで、体は丸みを帯びており、体長よりやや短めで長い尻尾を持っています。とてもよく引き締まった筋肉質な体で、骨格がしっかりしています。大きな耳と丸い頭で全体的にアンバランスなところがマンチカンの特徴です。
◆マンチカンの毛色について
マンチカンの目の色は、毛色に合わせて様々な色があります。
被毛は細くて密生しており、とてもシルキーです。マンチカンには長毛種と短毛種がおり、長毛種の被毛はペルシャなどと違ってからまる毛質ではないので、お手入れはそんなに難しくありません。短毛種は豊かに密生しています。普通の猫よりやや長めの被毛で、とても手触りがよくお手入れも簡単です。
毛色は、ホワイト、レッド、ブラック&ホワイト、ルーミンク、シルバーマッカレルタビー&ホワイトなど全ての毛色があります。
マンチカンの性格は?
マンチカンの性格は、短足タイプと足長タイプと違いは関係ありません。
◆好奇心旺盛な性格
マンチカンはとても明るく元気で、好奇心旺盛な性格の猫の品種です。探求心も強く、とても陽気で遊ぶことが大好きな性格です。
◆社交的な性格
マンチカンはとても社交的で多頭飼いに適している猫の品種といわれていて、人や他の動物とも上手に接します。また、留守番を上手にできる猫とも呼ばれており、とても飼いやすい猫の品種なので外出が多い方や初めて猫を飼う方におすすめです。
◆甘えん坊な性格
マンチカンは飼い主さんと遊ぶことが大好きな性格です。飼い主さんのことは心から信頼をするので、他の猫と比べると甘えてくる回数や時間は長いといわれています。ただ、臆病な一面もあるので、強く怒り過ぎると恐怖心を持ってしまうので注意が必要です。
マンチカンのタイプについて
マンチカンと言えば、頭に浮かぶ短足のほか、普通の足の長さの個体もいるマンチカン。大きく分けると「短足と足長」ですが、そのほかにマンチカンの特徴を受け継ぐミックスタイプも存在しています。
個性豊かなマンチカンのタイプについて見ていきましょう。
◆スタンダードな「純血種」
公式に認められているスタンダードなマンチカンです。マンチカン同士を交配させているので、今回紹介したような見た目の特徴や性格をそのまま受け継いでいます。
短足と足長と2パターンのほか、「長毛or短毛」「多彩な被毛カラー」と、かなりバラエティに富んでいるのが純血種。
ひとことで「純血種のマンチカン」といっても、同じパターンではなく、足や毛の長さ、カラーの違いなど個性的な特徴が表れるでしょう。
◆ゴージャスな雰囲気の「ミヌエット」
短足マンチカンに、長毛タイプの猫種である「ヒマラヤン・ペルシャ・エキゾチックショートヘア」などをミックスさせて誕生したのがミヌエットです。掛け合わせの相手の外見からも分かるように、ミヌエットは被毛がゴージャスなのが特徴です。
2015年に「ミヌエット」という呼び名で正式な猫種として認定されましたが、それよりも前には「ナポレオン」と呼ばれていました。
そもそもミヌエットの元祖となった猫が誕生したのが1996年と新しく、まだ世間にもそれほど浸透していないレアな猫ちゃんです。
◆元気いっぱいで「キンカロー」
「キンカロー」というちょっとユニークな名前が印象的ですね。マンチカンに、折れた耳が特徴の「アメリカンカール」という猫をミックスさせたのが「キンカロー」です。
“縮れている”という意味を持つ「キンキー」、短い足のことを指す「ローレッグ」をミックスさせて名づけられたキンカローですが、平均で3㎏~6㎏とマンチカンよりも若干大きめの個体が多いようです。
猫よりも犬っぽい性格で、とても元気いっぱいで人懐っこく、愛嬌のある猫ちゃんですよ。
◆カールした被毛が特徴の「スクーカム」
マンチカンは直毛ですが、それに被毛のカールが特徴的な「ラパーマ」をミックスさせたのが「スクーカム」。マンチカンの大きな特徴である「短足」も見事に表れていて、スクーカムは巻き毛で短い足がとても可愛らしいですよ。
ただ、まだまだ新しく珍しい猫なので、外見や体重のデータが少なく、「スクーカムと言えばコレ!」という特徴がしっかり定まっていないのが現状です。そのため、マンチカンよりもかなり小柄で3㎏未満の個体もいれば、一般的な猫よりも少し大きめの6㎏くらいに成長する個体もいます。
育ってみなければ分からない部分も多いですが、短足で巻き毛の可愛らしい外見に癒されそうですね。
マンチカンの飼い方は?
◆マンチカンに合った運動スペースを準備
マンチカンは小さい体ですが、短足タイプや足長タイプに関わらず、とても活発で運動が大好きな猫の品種です。とても陽気で遊ぶことが大好きな性格なので、マンチカンが遊ぶためにいろいろなおもちゃやキャットタワーなどスペースを用意してあげましょう。
また、普通の猫と比べて短足タイプは足が短い分だけ跳躍力が劣ります。短足タイプで体格の小さいマンチカンの場合は、キャットタワーの高さを低めに調整して遊びやすいようにしてあげましょう。
●おすすめ商品
生活シーンの変化に合わせ、ハイタイプとミドルタイプ、ロータイプを組み合わせるだけで、より大きなキャットタワーへとボリュームアップ。
◆食事と運動のバランスに気をつける
マンチカンはとても活発的で運動が大好きなので、高タンパク、高カロリーのご飯が必要になります。ただし、あたえ過ぎは肥満のもとになるので注意が必要です。食事量と運動量のバランスを取り、肥満にならないようにしましょう。
◆こまめなブラッシング
マンチカンの長毛種タイプは、できればブラッシングを1日に2回ぐらいしましょう。毛が長いために毛玉ができやすく、毛玉症という病気になる可能性が高いので、ブラッシングで毛玉症を防いであげましょう。
マンチカンの短毛種タイプは、1日に1回のブラッシングで問題ありません。普通の猫より毛の長さが長いので、丁寧にブラッシングをしてあげましょう。
マンチカンのしつけの仕方は?
マンチカンは、猫界のなかでも人間や他の動物たちと過ごすのが上手で社交的な性格。甘えん坊なところがあるので、たくさんコミュニケーションを取れる猫です。
また、マンチカンは、人懐っこさに加え、頭も良いです。上手にしつければ簡単なことなら覚えてくれるでしょう。
しかし、マンチカンは臆病な部分もあるので、しつけの仕方で注意したいのが「大きな声で怒らない」ということです。
基本的には、飼い主さんのことが好きで信頼を寄せてくれているマンチカンですが、それはあくまでも一緒に暮らす「パートナー」として。犬のように、飼い主さんを「リーダー」と思っているわけではないのです。
そのため、大声で怒られると「この人は敵だったのか」と勘違いすることもあるでしょう。
一度、信頼関係が崩れると、いつも怯えるようになってしまいます。「しつけを頑張りたい」と必要以上に怒ると逆効果となり、今後の同居にも支障をきたすかもしれません。
しつけをするうえでは、「怒る」よりも「褒める」に比重を置くことが大事です。怒らなければいけない状況がきたら、穏やかな声で短めに怒る程度が理想です。
マンチカンの寿命について
縁あって家族となったマンチカンとは、できるだけ長く「幸せな時間」を過ごしたいと思うでしょう。そこで気になるのが、マンチカンの寿命について。
一般的な猫は、だいたい15歳前後生きると言われていますが、マンチカンの寿命は少し短め。だいたい11~13歳程度までというデータがあります。実は、この寿命の短さは「足が短い」という特徴にも関係しています。
マンチカンは、“短い足”を生ませるために、「短足×短足」で繁殖させることになります。しかし、この組み合わせというのは遺伝子的な疾患を発生させてしまう確率が高め。それにより、生まれて間もなく亡くなるケースも多いです。
そして、この一方では平均年齢をかなり超えて生きる個体もいます。
平均寿命が短いデータになるのは、このように「早期に亡くなるマンチカン」と「長生きするマンチカン」の平均値を取っているからなのでしょう。マンチカンの平均寿命は、あくまでも参考程度と考えておくといいかもしれません。
また、飼い主さんの飼い方次第で寿命を延ばすことはもちろん可能。
屋外を自由に行き来できるようにすると、感染症のリスクが高まり短命傾向になります。完全に室内で飼うというスタイルにすると、少しでも長く生きることができます。
健やかな成長のためにバランスのよい食事を食べさせる、太り過ぎないように運動をさせるなどのように、日常的にも健康管理を行うことも寿命を長くするためには重要なポイントです。
マンチカンの気をつけたい病気は?
マンチカンは現在も雑種猫との交配が認められていることもあり、先天性・後天性いずれの疾患も少ない丈夫な傾向があります。ただし、その特徴的な短足からかかいやすい病気があるといわれています。
◆椎間板ヘルニア
マンチカンのような短足の猫は、椎間板ヘルニアになることがあります。これは腰や足に体重がかかり、体を支えきれないためです。ただし、ダックスフントのように極端に胴長ではないため、マンチカンが椎間板ヘルニアになりやすいかどうかに関しては賛否両論があるようです。
椎間板ヘルニアになると、歩き方がいつもと違っていたり、いきなり失禁してしまうといった症状がありますので、飼い主さんは日頃から様子を見ておきましょう。
◆慢性腎不全
一般的なマンチカンの寿命は10歳~13歳ぐらいといわれていて、10歳を越えた頃になると高齢期に入ります。老猫になると運動不足による肥満や糖尿病などの病気になりやすくなります。高齢になるとどうしても運動量は落ちてしまうので、バランスのいいご飯をあたえるように注意しましょう。
また、高齢の猫では慢性腎不全が起こりやすいことが知られています。水を多量に欲しがり、たくさんおしっこをする多飲多尿の症状があれば、腎不全の可能性があります。血液検査などでわかるので動物病院で獣医師さんに診てもらいましょう。
マンチカンの値段は?
マンチカンの1番の特徴である足の長さによって、マンチカンの値段は変わってきます。
基本的に足が短ければ短いほど値段が高くなります。キャットショーやチャンピオンの血統書付きのマンチカンが親猫の場合は、さらに高い値段が付くこともあります。
また、マンチカンが足長だったり、ある程度成長していたりすると値段が下がることが多いようです。
◆マンチカンの子猫の値段は?
マンチカンの子猫の値段は5万円~40万円が多いようです。マンチカンはとても人気があるため、他の猫と比べて相場よりもかなり高い値段です。
値段の幅が広いのは、マンチカンの特徴である短足を持っているか持っていないかが関係しているようです。マンチカンの短足タイプの値段は、15万円~40万円くらい、足長タイプの値段は、5万円~10万円くらいです。
◆マンチカンの子猫の選び方は?
マンチカンの健康状態を見る時は、必ず1度は抱っこをしましょう。子猫の場合は、小さくても骨格がしっかりとした体つきなのか、活発に動くのか確認しておきましょう。
気になることがあれば、店員さんやブリーダーに質問し、はっきりと答えられない場合は購入を避けた方がいいかもしれません。納得いく説明が受けられるところからマンチカンを購入したほうが安心できます。
また、マンチカンを選ぶ時は、短足の子か足長の子かで悩むことがあると思います。ただ、足の長さは異なっても、好奇心旺盛で甘えん坊な性格にはどちらにも変わりありません。
短足の子か足長の子かによって値段も変わりますので、被毛の色などの飼い主さんの好みや相性が合うマンチカンを選ぶといいでしょう。ちなみに、特に人気がある毛色はクリーム色やレッド&ホワイトです。
最後に…
マンチカンはとても人気がある猫の品種で、特徴の短い足が人気のある理由です。ですが、マンチカンの短足タイプが産まれてくる確率はとても低く、全体の2割です。足長タイプのほうが産まれてくる確率のほうが高く、値段も安い傾向にあります。
マンチカンの性格は好奇心旺盛で甘えん坊です。多頭飼いにも向いており、1匹で留守番ができる猫の品種です。とても飼いやすく初めて猫を飼う方にはおすすめ。さらに、様々な猫との交配がされているので、長毛種や短毛種、目の色や被毛の色も様々です。短足タイプや足長タイプをはじめ、色々なタイプのマンチカンがいるので、飼い主さんがお好みのマンチカンに出会えるでしょう。
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