【獣医師監修】猫の療法食の与え方・食べない時にできる工夫8つ

2019.12.25

【獣医師監修】猫の療法食の与え方・食べない時にできる工夫8つ

猫の療法食ってどんなものかご存知ですか?ペットフードには適切な量と水があれば健康が維持される「総合栄養食」、おかずやおやつの位置にあり、与えすぎると栄養バランスが偏ってしまう「一般食」、そして病気になってしまった猫を管理するためのフードである「療法食」があります。この療法食、もし与えることになった時は必ず獣医師の指導の元与えるようにしましょう。療法食は猫の体調を改善する一方で、与え方次第では逆効果になってしまうこともあるのです。 猫の療法食の基礎知識や食べない時にできる工夫についてご紹介します。

猫の療法食とは?

キャットフード

猫が体調を崩して動物病院に診察に行った際、獣医師から薬と一緒に、特別な食事を与えるように指導を受けることがあります。

病気の治療で特別な食事による栄養管理を「食事療法」といい、実際に食事療法に用いるフードを「療法食」といいます。

◆療法食には獣医師の指導が必須

療法食は、栄養成分の量が調整されていて、特定の疾病または健康状態のペットの栄養学的サポートを目的に、獣医師の指導のもとで食事療法に利用する食事のことをいいます。病気の猫には食べることも治療の一環になるのです。

病状の変化によって薬の量や種類が変化していくのと同様に、療法食の内容も病状とともに変化していきます。

注意したいことは、「療法食=薬ではない」ということ。療法食を与えるだけで症状が改善すると考えることは危険です。

安全な食事療法を行うためには、以下の注意点があります。

1. 獣医師の診断をうけたうえで最適な療法食を選択する。
2. 家庭でしっかりとした食事管理を行う。
3. 定期的に獣医師の診断を受ける。
4. 病状の変化に伴い、獣医師の指導のもとで療法食の見直しを行う。
5. 獣医療法食評価センターが療法食基準への適合を認めた製品に対してつける専用のマークのついた療法食を選ぶ。

◆療法食のバリエーション

療法食には多くのバリエーションがあります。では、様々な病気に対し、どんな栄養素がどのように調整されているのでしょか?

現在、国内では療法食に関する法規制はありません。一方欧米では、1994年に特定の疾病に対する重要な栄養特性の法律が制定されています。

日本ではこの欧州の法律をもとにペット栄養学会の監修協力を得て、栄養特性の基準が定められた療法食のリストが作成されました。

このリストには以下の20種類の療法食について、特定の疾病または健康状態における重要な栄養特性が示されています。

・慢性腎機能低下
・ストルバイト結石(溶解時)
・ストルバイト結石(再発時)
・尿酸塩結石
・シュウ酸塩結石
・シスチン結石
・食物アレルギーまたは食物不耐性
・急性腸吸収障害
・大腸性下痢
・消化不良
・慢性新機能低下
・糖尿病
・慢性肝機能低下
・高脂血症
・甲状線機能亢進症
・肥満
・栄養回復
・皮膚疾患
・関節疾患
・口腔疾患

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猫に療法食を与える時に気をつけるポイントは?

器からキャットフードを食べる猫

◆適切な与え方をすることが大切

療法食は、総合栄養食と違い、健康な猫にとって必要な栄養がまんべんなく配合されているわけではありません。健康な猫に「予防のために」といった与え方はNGです。

多頭飼いの場合、健康な猫と病気の猫の食事が混同してしまわないように、別々の部屋で与える方が良いでしょう。

療法食の与え方は「必要な時に、必要なものを、獣医師に指示を仰いで与える」ことがポイントです。

◆こんな与え方はNG!

療法食は病気によってその内容が変わってきます。そのため、療法食の特別な栄養特性は、すべての猫にとって最適な栄養成分ではありません。

飼い主さんの判断で猫の症状に合わない療法食を長期間与えていたり、別のフードを与えると症状が悪化する場合があります。

飼い主さんの不適切な療法食の与え方が原因で、症状の悪化や他の健康障害を引き起こした例があります。

・肥満気味の猫にずっと同じ療法食を与え続け、栄養失調になる。
・食物繊維中心の療法食は体重管理に向いているが、与えすぎることで下痢などの症状を引き起こしてしまう。
・心臓疾患用の療法食は、体重減少や食欲不振に対処しており、高栄養で高嗜好性なため、太りやすい。
・消化器に良い高消化性の療法食は、腸管の消化吸収力の減少も考慮して、少ししか吸収されなくても栄養が摂れるようになっていて、太りやすい。
・ストルバイト尿石溶解時用の療法食を与えていたが、結石溶解後にストルバイト尿石再発防止用の療法食ではなく、飼い主さんの判断により低マグネシウムと記載された一般のフードを与えていたところ、ストルバイト結石が再発。
・ストルバイト尿石溶解時用の療法食の給与を指導され、同じフードを通販で購入し給与。3年後に、血尿のため再来院した際、シュウ酸カルシウム結石と診断。ストルバイト尿石溶解時用の療法食の長期給与が逆にシュウ酸カルシウム結石の形成を助長した。
・獣医師に指導された療法食以外に一般のおやつを与えていたため、症状の改善が見られなかった。

これらは飼い主さんが定期的な通院と獣医師の指導を受けず、適切な療法食の与え方を怠ったことが原因で起こっています。猫の症状が改善したからと勝手に療法食をやめてしまったり、他のフードに切り替えることはやめましょう。

また、療法食の与え方で意外に見落としがちなのが与える量。多すぎても少なすぎてもよくありません。きちんと猫の体重や年齢にあった量を与えましょう。

◆療法食への切り替え方

いきなり全ての食事を療法食に切り替えてもなかなか食べないことが多いようです。そんな時は次のような与え方で徐々に療法食に切り替えていきます。

・今までのフードに新しいフードを徐々に混ぜていき、7~10日かけて切り替える。
・療法食を今までのフードの隣においておき、療法食を食べはじめた場合には徐々に今までのフードを減らして7~10日で切り替える。

その他、獣医師に切り替え方の指示を受けた場合は、必ずそれに従うようにしましょう。

フードを食べないことによる肝リピドーシスの発症を避けるために、必ずなんらかのフードが取れるようにしておくことが重要です。


猫に療法食を与え終わった後は?

◆決められた期間で与えましょう

療法食の中には継続して食べさせても大丈夫なものもありますが、多くの療法食で推奨使用期間が設けられています。

療法食は、かかりつけの獣医師がペットを診断した上で選び、飼い主さんに使い方を指導する食事です。疾病の治療を目的とし、栄養成分の種類や量が調整されています。そのため、療法食を与え続けていると必要な栄養素が十分に摂取出来ないことがあります。

しかし、メーカーが定める推奨使用期間はあくまでも目安です。通常は獣医師が診察し、療法食をやめる時期を判断します。

また、反対に、もう症状が出ないからといって勝手に療法食をやめてしまうとすぐに再発するということにもなりかねません。

療法食の使用期間は必ず獣医師の指示に従いましょう。

◆予防食に切り替える場合も

一般の総合栄養食の中にも、療法食を与えた後の病気の予防食として工夫されたフードがあります。治療後は、獣医師に相談の上、そのようなフードに切り替えるのも良いでしょう。


猫が療法食を食べない時の対策は?

獣医師に診察される猫

◆獣医師に確認するポイント

療法食と呼ばれるフードは、獣医師の適切なアドバイスがあってこそ役に立つ製品です。

動物病院では療法食が必要となった時、以下のような対応を取ってくれます。

・どうしてそのような食事が治療に必要なのか説明する。
・数種類の無料サンプルを渡して、猫が食べてくれるフードを選択する。
・療法食が十分の効果を発揮できているか確認する。
・食べない場合の対処法のアドバイスをする。
・与えて良いおやつの指導をする。
・一定量の療法食を食べ終わった後、継続するのか、別のフードに移行するのかを判断する。

メーカーによってフードの味や香りが異なってきます。猫が療法食を食べない場合、ドライフード・ウェットフードなど別タイプのフードがあるか、普段食べ慣れているフードメーカーから同じ効果の療法食があるかなどを確認してみましょう。

猫の病状は千差万別です。疑問に思ったことはなんでも獣医師に相談し、飼い主さんの独断で療法食を切り替えたり、終了することはやめましょう。

◆家での与え方の工夫

長年慣れ親しんだ食事から療法食に急に切り替えると猫は戸惑います。切り替えたフードを食べないことは珍しくありません。

病気が重い場合、「食べるまでこんくらべする」のは適切でありません。食べないことによって身体を害してしまいます。

療法食を食べない時は、できるだけ猫の興味や食欲を引きつけるような工夫をしてみましょう。

1. いつもの食事と混ぜる
いつもの食事と混ぜる、もしくは同じお皿にいれて、好きな方を食べられるようにします。徐々に療法食の割合を増やして最終的に全部療法食にします。

2. 温度・湿度を整える
ドライフードの場合、少しお湯を足します。ウェットの場合はそのままレンジで温めると食べる場合があります。人肌程度に温めると香りが立って猫の食欲が刺激されます。

3. 質感や形を変える
フードの質感や形の変化で食欲が出る猫もいます。ドライ派からウェット派へ、またその逆もあるので、いままでとは違った質感のフードを試してみましょう。

4. 風味を加える
鶏肉の茹で汁(味付けなし)や、少量の鰹節をフードに加えると香りや風味が良くなって食べてくれることも。ただし鰹節は塩分やリンが多いため、慢性腎不全や尿石症の猫には注意が必要です。

5. 別のブランドのフードを探す
療法食はさまざまなメーカーが開発をしています。メーカーによってフードの味や香りは異なってきます。いろいろなバリエーションの中から気に入ってくれるものが見つかるかもしれません。

獣医師に相談すれば、大抵同じ効用のフードのサンプルを何種類か用意してくれます。

6. 食事中に「嫌なこと」をしない
例えば「ケージに入る=病院に行く」といったイメージが出来上がると、猫はケージに入らなくなります。同様に、病院から帰ってきてすぐ療法食を与えられれば、ご飯が嫌な印象になってしまう場合があります。

他にも薬を混ぜる、薬を飲ませるために食事中の猫を拘束するなど、猫が嫌がることと食事を関連して記憶されないようにしましょう。ますます食事を嫌がって食べないようになってしまいます。

7. いろんなフードに慣れさせておく
ひとつのメーカーや同じタイプの食事にこだわらずに、いろいろなフードに慣れさせましょう。療法食への切替えが必要なときに猫が食事を受け入れやすくなります。

8. 安心して食べられるようにする
猫の食事場所は、安心して食べられるように静かな場所にしましょう。飼い主さんの手から与えることも安心の材料になります。

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まとめ

家族の一員でもある愛猫が病気になってしまうことは飼い主さんにとって大変ショックなことです。早く良くなってもらうために色々考えて、良いと思うことはなんでもしてあげたくなる気持ちになりますね。食事も色々考えて与えていることでしょう。
けれど、療法食に切り替えるように指示された場合は、必ず獣医師さんの指示に従うようにしましょう。

療法食は高くて美味しくない、というイメージがあるかもしれませんが、メーカーさんの改良は進み、さらに飼い主さんの一工夫で美味しいご飯になるはずです。

どうしても食べない、という時は悩まずに獣医師さんに相談しましょう!

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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そらにゃん

そらにゃん

猫が大好きなおばさんです。猫、いいですね! 我が家には「そら♂」「すず♀」「りん♀」のニャンズがいます。 ずっと犬を飼っていて猫暦はまだ二年そこそこと短いのですが、長年の願いだった猫との暮らしに今もウハウハ状態です。ニャンズのおかげで仕事や家事や寄る年波の疲れも吹っ飛びます。 病気がちな「そら」のおかげで獣医さんと懇意になり、通院の度に先生から様々な猫情報を教えていただいてます。 いかにニャンズを満足させられるか、猫じゃらしの振り方を日々研究中。 得意技は猫に錠剤を飲ませること。←ただし「そら」限定!?

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