【獣医師監修】猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の症状・原因・治療法は?

2019.10.18

【獣医師監修】猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の症状・原因・治療法は?

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は、猫風邪を起こす病気のひとつといわれています。ウイルスの感染による病気で、接触感染や飛沫感染で猫同士に広がります。症状は、猫風邪といわれているように風邪に似た症状がでます。子猫や老猫が猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)を発症すると、重症化する可能性もあります。 今回は、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の症状や原因、治療法についてご紹介します。

【目次】

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)とは?

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猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)とは、ヘルペスウイルス科に属する猫ヘルペスウイルス(FHV)を原因とする上部呼吸器感染症です。

その症状から「猫風邪」「猫インフルエンザ」「猫コリーザ」ともよばれています。

◆冬の寒い・乾燥する時期に流行しやすい

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は、冬の寒く乾燥する時期に感染しやすい病気です。涼しい所を好むため、体温が低い目、鼻、口などに症状がでるのが特徴です。

また、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は、猫カリシウイルス感染症と混合感染することが多く、猫カリシウイルス感染症を併発した場合は「ウイルス性呼吸器感染症」とよぶこともあります。

◆免疫力の弱い子猫・老猫がかかりやすい

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は、成猫よりも免疫力の低い子猫にかかりやすい病気といわれています。症状が重い場合や子猫・老猫の場合は、衰弱がひどくなり、長引いたりすることが多いです。

また、重症化すると肺炎を引き起こしてしまうこともあり、最悪の場合は死亡することもあります。妊娠中の猫に感染した場合は、流産する危険性もあります。

◆多頭飼育の場では特に注意が必要

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は、症状が軽い場合は、発症から2~3週間程度で自然に回復することもあります。

気をつけたいのは、多頭飼いの家庭など、複数の猫が暮らしている環境の場合です。
猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に感染した後は、1~5日の潜伏期間があり、その後発症します。その間に他の猫に接触することで、ウイルスが広がる恐れがあるので、多頭飼育の場合は特に注意が必要です。

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猫風邪に関係する病気とは?

猫風邪(猫の上部気道感染症)とよばれている病気は他にもあり、その症状は、感染したウイルスの種類によって違ってきます。

◆猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)による猫風邪

母猫から移行抗体がなくなる生後2ヵ月~3ヵ月前後の子猫への感染が多く、鼻水やくしゃみ、咳や発熱、食欲低下、角膜炎や結膜炎などの症状がみられます。

◆猫カリシウイルス感染症による猫風邪

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)と同じように、生後2~3ヵ月前後の子猫に多く、鼻水やくしゃみ、発熱や食欲低下などの症状がみられます。

また、口の中や舌に潰瘍ができるため、よだれが多くなる、口臭がきつくなるなどの症状も現れます。さらには、軽度の肺炎や多発性の関節炎などの症状がみられることもあります。

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◆クラミジア感染症による猫風邪

クラミジアという細菌に感染した場合は、鼻水やくしゃみ、咳や結膜炎などの症状がみられます。

ウイルスや細菌に複合感染した場合は、より重い症状を引き起こすことがあります。

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猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の原因は?

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猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は、主に感染猫からの接触感染、飛沫感染によって起こります。

・感染猫のくしゃみ
・感染猫とのグルーミング
・感染猫の鼻水、目ヤニ、よだれ、排泄物に触れる
・感染猫に飼い主さんが直接触れる

◆グルーミングなどでの猫同士の接触

多頭飼いをしている場合、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に感染している猫とは隔離が必要です。感染猫が他の猫と接触することによって、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に感染します。

仲がいい猫の場合、お互いにグルーミングすることで感染してしまうことがあります。また、ご飯のお皿や水のお皿、トイレなどを感染猫と共有しないようにする必要もあります。

◆飼い主さんとの接触

飼い主さんは、感染猫との接触に注意が必要です。
飼い主さんが感染猫を触った手で他の猫に触るだけで、ウイルスが移ってしまう場合があります。また、飼い主さんの手だけでなく、飼い主さんの体にウイルスがついている場合もあります。

感染猫を触った後は、飼い主さんは他の猫を触る前に手洗いをし、着ていた服を着替えるように心がけましょう。

◆母猫から子猫への感染

母猫から子猫への母子感染なども原因になります。

母猫が猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)を発症していた場合や、ウイルスを保有している猫の場合、母猫から子猫へのグルーミングなどの接触感染で子猫に移ります。
また、子猫1匹が猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に感染した場合、他の子猫(兄弟姉妹)の間で感染することもあります。

子猫が最初に感染しやすい時期は、生後2~3ヵ月前頃です。


猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の症状は?

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の主な症状は、以下のようなものがあります。

・鼻水
・流涙
・目ヤニ
・くしゃみ
・発熱
・結膜炎
・口内炎
・食欲低下

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に感染すると、このような風邪のような症状がでます。

◆目や口周りの症状

目の症状がひどいと、角膜炎になり、角膜炎から角膜潰瘍になることもあります。流涙や目ヤニが増えることによって、鼻や顔にヘルペス性皮膚炎を発症する場合もあります。

また、猫カリシウイルス感染症と混合感染を起こすと、口内炎の症状がひどくなることがあります。口内炎がひどくなると、よだれが出たり、口臭がきつくなったりします。

◆消化器に関する症状

食欲低下や下痢などの消化器に症状がでる猫もいます。ご飯を食べられなくなることで、急激な衰弱や脱水症状が起こります。

◆子猫の場合の症状

免疫力の弱い子猫や老猫の場合は、衰弱や脱水症状、重症化すると肺炎になることがあります。特に生後6ヵ月未満の子猫などは、病気の進行が早いため、死亡する危険性も高くなります。

◆成猫の場合の症状

成猫の場合は、感染後1~5日の潜伏期間があり、2~3週間ぐらいで自然に回復することがあります。
ただし、潜伏期間があるため、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の症状がでなくても、猫の身体の抵抗力が衰えた時に発症することがあります。


猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の治療法は?

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人のインフルエンザと同じように、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の明確な治療法はありません。そのため、症状を抑える対処療法で治療します。

◆猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の対処療法

鼻水や目ヤニの症状の悪化を防ぐために、抗生物質が処方されます。

最近では免疫力を高めるためにインターフェロンが処方されることがあり、インターフェロンで回復を早めることができます。
猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)を発症した場合でも、インターフェロンを1日おきに3回分の注射をすれば、症状はかなり改善されます。

目の症状がひどい場合は、インターフェロンを混合させた抗生剤の目薬も有効といわれており、ファムシクロビルという抗ウイルス作用の内服薬は角膜炎などの目の症状にも効果的であるといわれています。

鼻炎の症状がひどい場合は、ネブライザー処置(吸入治療)をしてもらうと症状が軽くなることがあります。

子猫や老猫の場合は、衰弱するのが早いので早めに動物病院で治療をしましょう。

◆猫自身の免疫力を高めることが大切

1度、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に感染してしまうと、完治することはないといわれています。
完治しないというのは、症状が治まらないという意味ではなく、症状が治まっても猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)のウイルスが猫の身体にずっといることになるということです。

猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の保菌猫(キャリア)となると、猫の体力が落ちた時や老猫になった時などに、また猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)が発症してしまう可能性が高いです。ただし、発症をしてしまっても症状は軽くなります。

敏感な猫は寒い冬の時期になると、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の症状を発症することが多くなるようです。飼い主さんは猫の体調に気をつけましょう。

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猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は混合ワクチンで予防できる!

◆猫の混合ワクチンとは?

猫も人と同じで、免疫力をつけるために無毒化・弱無毒化されたウイルスや菌を投与する「ワクチン接種」をします。
ワクチン接種することにより病気に対する抗体を作りだし、その病気にかかりにくくしたり、病気にかかったとしても軽い症状ですむことがあります。

猫の混合ワクチンには様々な種類があり、それぞれの病気によってカバーしてくれるワクチンが変わってきます。

◆猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に対する混合ワクチン

猫のワクチンのうち、3種混合ワクチンは「猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)」「猫カリシウイルス感染症」「猫パルボウイルス感染症」に対応したものです。ワクチン接種は、年に1回のペースで受けたほうがいいでしょう。

ただし、3種混合ワクチンを受けたからといって、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に感染しないわけではありません。3種混合ワクチンは予防ではなく、軽減するためのワクチンだということを覚えておきましょう。

◆予防のためにも年に1回のワクチン接種を!

健康な成猫なら、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)で死亡することはありません。しかし、ワクチンを接種していない猫が猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に感染した場合は、重症化することがあり、大変つらい症状になります。

飼い主さんは猫の体調が悪いと思った時は、早めに動物病院で治療してもらいましょう。症状もかなり軽減できます。

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まとめ

多頭飼いしている家庭の場合、1匹が猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)を発症してしまうと、他の猫にも感染してしまう可能性があります。そうなれば、猫の飼育環境を見直さなければいけません。他の猫との隔離を徹底しましょう。

また、他の猫からの感染を防ぐことも大切です。動物病院は病気やケガをしているペットたちが来るところです。飼っている猫を動物病院に連れて行った時は、感染しないように注意しましょう。

猫も人と同じようにワクチンがあります。病気になる前にワクチンを接種していれば、重い症状になることもありません。
猫の飼い主さんは猫のためにもワクチン接種を考え、猫の栄養管理や体調管理をしっかりとしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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猫を飼いはじめて20年。完全な猫派です。 今まで4匹の猫と過ごしてきました。現在は2匹の猫と楽しく過ごす毎日です。 ツンデレされて20年。猫の行動1つ1つが大好きで、ずっとツンデレにやられてしまっている人間です。

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