【獣医師監修】猫にも予防接種は必要?ワクチンで予防できる病気と費用について

2018.05.14

【獣医師監修】猫にも予防接種は必要?ワクチンで予防できる病気と費用について

子猫から猫を飼うと、予防接種を勧められることが多いと思います。それは、子猫の免疫力が低くなる時期に感染症などの病気になりやすいからです。しかし、大人になった猫にも感染症のリスクはもちろんあります。外を散歩する猫や喧嘩しやすい猫は、感染率も高くなります。 この記事では、猫への予防接種の必要性、ワクチンの種類と費用、予防接種で防げる病気の症状、予防接種による副作用などの注意点をご紹介していきます。

猫に予防接種は必要?

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飼い猫、特に完全に室内で飼っている猫ちゃんだと、予防接種はあまり必要性を感じないかもしれません。しかし、予防接種をすることで、感染症の悪化を防ぐ助けになります。

◆室内飼いでも予防接種は必要

外で暮らす野良猫に比べると、室内飼いの猫が感染症にかかる可能性は低いですが、飼い主がウイルスを持ち帰ったり、猫が脱走してしまった際に感染症にかかってしまうことがあります。

また、室内飼いと言っても、体調が悪くなれば動物病院に連れていくこともありますし、そういった際に外の空気に触れたり、待合室で他の猫や動物と一緒になることもあります。

◆子猫は感染症にかかりやすい

特に子猫の場合には、予防接種の必要性が高いと思われます。
子猫が生まれた時は、初乳や一部胎盤から母猫の免疫が移行する期間がありますが、生後2~3ヶ月がたちこの免疫がなくなってしまうと、病気にかかりやすくなってしまうのです。

犬の狂犬病予防とは違い、猫の予防接種は法律などで定められているわけではありません。
ただ、万が一のことに備えて予防接種をしておくことで、愛猫の健康はもちろん、飼い主さんも安心することができます。

特別な事情がない限り、なるべく予防接種をするようにしてあげましょう。


猫の予防接種の時期や頻度は?

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基本的に猫の予防接種は年に1回ですが、子猫の場合は年に2~3回接種が必要となります。

◆予防接種1回目:生後8~10週間頃

子猫にとっての初めてのワクチンは、生後8~10週頃が良いそうです。
これは、母猫から受け継ぐ移行抗体が低下する時期に、ワクチンを接種する必要があるためです。

◆予防接種2回目:1回目のワクチンの3~4週間後

2回目は、1回目の予防接種の3~4週間後にワクチンをします。
2回目のワクチンを打つことで完全な免疫を作り、抗体ができていることを確認することができます。

子猫の抗体の状況によっては、3回目の予防接種が必要なこともあります。

◆それ以降:1年に1回

子猫時期の予防接種が終了した後は、1年毎に定期的にワクチンをしましょう。

なお、これらの時期はあくまでも目安です。母猫からの移行抗体がどれほど残っているかは子猫によるので、必ず獣医さんと相談し、予防接種のスケジュールをたてるようにしましょう。

◆予防接種の証明書とお知らせハガキ

私の愛猫が通っている動物病院では、ワクチンを打つと「ワクチン接種証明書」をくださいます。接種した年月日と、何の種類のワクチンを打ったかがメモされており、使用したワクチンの種類やシールも貼ってあります。
また、ワクチンを打つ時期になると、ハガキでお知らせしてくれる場合もあります。

おそらく多くの動物病院では、このように証明書や通知をくれると思うので、証明書は大切に保管しておきましょう。

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猫のワクチンの種類・費用は?

猫の感染症のワクチンで予防できる病気は、以下の6種類あります。

・猫ウイルス性鼻気管炎
・猫カリシウイルス感染症
・猫汎白血球減少症
・猫クラミジア感染症
・猫白血病ウイルス感染症
・猫免疫不全ウイルス感染症

猫のワクチンは、上記の猫免疫不全ウイルス感染症以外のワクチンを組み合わせたものが用意されており、3種混合ワクチン、4種混合ワクチン、5種混合ワクチン、7種混合ワクチンがあります。

動物病院にワクチンをお願いすると、「何種混合のワクチンにするか」を聞かれると思います。種類によって費用も変わってきますので、簡単に説明していきます。

3種 4種 5種 7種 単体
猫ウイルス性鼻気管炎
猫カリシウイルス感染症 3種
猫汎白血球減少症
猫クラミジア感染症
猫白血病ウイルス感染症
猫免疫不全ウイルス感染症

◆3種混合ワクチン

3種混合ワクチンは「猫ウイルス性鼻気管炎」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症」の3種混合で、空気感染することがあるため、室内飼いの猫にも勧められているワクチンです。

費用は3000円~5000円ほどです。我が家の猫も毎年この3種混合のワクチンを打ってもらっています。

◆4~7種混合ワクチン

4~7種混合ワクチンは、外にお散歩に行くような猫ちゃんを飼っている方にお勧めのワクチンです。

4種混合ワクチンは、3種混合ワクチンに「猫白血病ウイルス感染症」をプラスしたもの、5種混合ワクチンは、さらに「猫クラミジア感染症」を加えたもの、7種混合ワクチンでは複数タイプがある「猫カリシウイルス感染症」の2タイプをさらに加えたワクチンとなっています。

費用は7種混合だと5000円~7500円ほどです。

◆猫免疫不全ウイルス感染症の単独ワクチン

猫免疫不全ウイルス感染症、通称猫エイズは、混合ワクチンには含まれず、単独で接種する必要があります。
初回は2~3週間ペースで3回打ち、以降は年一度接種します。

費用は10000円~と高額ですが、一度猫エイズに感染すると完治できない病気と言われているため、外によく出る猫ちゃんは接種をお勧めします。

ワクチンの費用は少し高く思うかもしれませんが、もし感染症になってしまったら治療にかかる費用はもっと高くなります。成猫になったら年に一度のことなので、忘れずに摂取するようにしましょう。


猫の予防接種で予防できる病気は?

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簡単にワクチンの種類について説明しましたが、ここでは上記のワクチンで予防できる病気について説明していきます。

◆猫ウイルス性鼻気管炎

猫ウイルス性鼻気管炎は「猫ヘルペス」や「猫インフルエンザ」とも言われる病気です。

猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)が原因で起こる感染症で、くしゃみや発熱を起こしたり、下痢や食不信などの風邪のような症状が見られます。他にも、鼻孔付近にヘルペス性皮膚炎を起こしたり、口内炎や目やにが増える場合もあります。

悪化すると衰弱や肺炎、脱水症状を起こすこともあり、この病気からの死亡への原因ともなっています。子猫やシニア猫などの免疫力の弱い猫はこのような悪化の症状が見られやすいようです。

また、結膜炎を併発することもあり、悪化すると失明してしまうこともあります。

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◆猫カリシウイルス感染症

猫カリシウイルス感染症は、猫カリシウイルス(FCV)に感染して発症する感染症です。
こちらも「猫インフルエンザ」や「猫風邪」と呼ばれることがあります。

症状は口内炎や舌炎、発熱、鼻水や鼻の潰瘍、よだれや食欲不振などが見られます。同じように猫インフルエンザと呼ばれる猫ウイルス性鼻気管炎と比べると、猫カリシウイルス感染症は口周りに症状がよく見られる病気なようです。

母猫の免疫の以降期間が終わる頃の子猫が感染しやすいと言われています。

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◆猫汎白血球減少症

猫汎白血球減少症は、猫汎白血球減少症ウイルス(FPV)により起こる感染症です。別名では「猫ジステンパー」「猫伝染性腸炎」や、パルボウイルスの一種であることから「猫パルボ」とも言われます。

この病気は伝染性が高い胃腸炎で、食中毒のような嘔吐や下痢、食欲不振が症状に見られます。子猫の場合は重傷になることが多く死亡してしまうこともありますが、1歳以上の成猫では軽症で済むこともあるようです。

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◆猫クラミジア感染症

猫クラミジア感染症は、猫クラミジアという一種の細菌によって起こる感染症です。

目やにの出る結膜炎や鼻水やくしゃみなどの鼻炎、咳により気管支炎や肺炎になることもあり、呼吸器に一連の症状が見られます。ごく稀にですが猫から人間への感染も報告されています。

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◆猫白血病ウイルス感染症

猫白血病ウイルス感染症は、猫白血病ウイルス(FeLV)により起こる感染症です。
このウイルスに感染すると1ヶ月をかけて、侵入した鼻や口を始め、血液、リンパ組織、骨髄などにウイルスが勢力を広げていきます。

猫から猫へ感染する原因が多く、母猫が感染して子猫を産むと、子猫にも感染することがあります。生まれてすぐの子猫に感染した場合は死亡率が極めて高いですが、生後4ヶ月を超えると約9割が治癒するようです。

人間や他の動物に伝染することはほぼないそうです。

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◆猫免疫不全ウイルス感染症

猫免疫不全ウイルス感染症は、猫免疫不全ウイルス(FIV)により起こる感染症で、通称「猫エイズ」と呼ばれています。

感染症が発症すると、免疫不全を起こして下痢や口内炎、発熱などの症状が起こります。猫同士のケンカで嚙み合ったりした際に感染ることが多く、外出する猫、喧嘩をしやすいオス猫がより感染する確率が高いようです。

感染してから発症が見られない猫も多く、感染してすぐに死亡してしまうこともありません。しかし、5段階に分かれる病期のステージでも、最終段階の後天性免疫不全症候群となると、余命1~2ヶ月と言われています。

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予防接種の注意点や副作用について

これらの病気を見ると、感染症の怖さや予防接種の必要性が感じられるかと思います。しかし、猫によってはワクチンで副作用を起こす子もいるので注意が必要です。

◆アレルギー反応

ワクチンの接種から20分以内に、痙攣や血圧の低下、呼吸困難などのアレルギー反応が出る猫もいます。
ワクチンを打つ際は、打った後に30分ほど病院で待機して、猫に異変がないか様子を見ましょう。

また、遅延型のアレルギー反応では、数時間~24時間以内にアレルギー反応が発症することもあります。この場合は顔の腫れや、接種した部分が熱くなっていたり、蕁麻疹や嘔吐、下痢を起こすこともあります。
このような症状が見られた場合は、すぐに動物病院に相談しましょう。

◆元気が無く感じる

アレルギー反応は無くとも、ワクチンの副作用で元気がなくなったり、食欲が落ちることもあります。
1日や2日で治るようであれば、自然と回復するので大丈夫なようです。もしこれらの症状が長く続く場合は、動物病院に相談しましょう。

◆ストレスを感じている

元気がない原因は、副作用だけでなく精神的ストレスが原因である場合もあります。慣れない外出や知らない人に触られる環境に、強いストレスを感じる猫もいます。
帰宅後は構い過ぎず、愛猫のお気に入りの場所で静かに休ませてあげましょう。

◆しこりが出来る

猫にワクチンを打った際、打った場所にしこりが出来る子もいます。

ほとんどは一時的で自然と消える小さなしこりですが、しこりが何ヶ月も残っていたり、大きくなっていたら腫瘍になってしまっている可能性があります。
これはワクチン反応性肉腫と呼ばれるもので、接種した場所が炎症を起こしてしこりになり、それが腫瘍になった場合をこのように呼びます。

これを防ぐために、毎回のワクチンを違う場所に打ってもらったり、万が一腫瘍になった時に切除しやすい場所にワクチンを打ってもらう方法があります。

発症はとても稀ですが、ワクチン接種をしたあとは接種した箇所が腫れていないか確認しましょう。


猫の予防接種まとめ

猫の予防接種は、感染症から愛猫を守る万が一の備えとしてとても大切です。費用はかかりますが、病気を防ぐためにも子猫のころからしっかりと準備し、一年に一度の予防接種を忘れないようにしましょう。

子猫を迎えたら、まずは接種するワクチンの種類や時期について獣医さんとよく相談してみてくださいね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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yurie

yurie

兵庫県出身。イラストレーター。猫のオリジナルキャラクター「ネコぱん」を描き、作家として活動しています。愛猫は6歳の雄猫プーアル。猫とは思えない直球な愛情表現で毎日べったり。お腹を上に向けてガニ股で寝る姿には毎度笑わされています。

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