猫のてんかんとは?症状は?
猫の脳神経に異常が起こって、体のコントロールが一時的に効かなくなる病気が「てんかん」です。
◆痙攣や硬直が起こる病気
脳が情報を伝達する時には、電気信号を使用しています。てんかんとは、色々な原因で脳内の神経細胞のいたる所が興奮状態になり、異常な電気信号が出ることで、痙攣や硬直が起こってしまう脳神経の病気です。
猫がてんかんになると、場合によっては命に関わることもあります。また、自然治癒はなかなか望めず、次第に悪化していくことが多いとされています。
◆猫がてんかんになった時の症状
・痙攣する
・手足が硬直する
・失禁する
・泡を吹く、よだれが出る
・意識がなくなる
猫がてんかんになると、体の様々な部分で痙攣や、筋肉のつっぱりといった発作が起きます。
痙攣は、意識がなくなって体や手足が大きくビクビクと動くものから、顔の一部や目のまわりなどがぴくぴくと小さく動くというものまで、猫によって個体差があります。痙攣に伴い、口から泡を吹いたり、失禁したりすることもあります。
また、手足が硬直して伸びた状態で倒れてしまうこともあります。
特に強直性の痙攣の場合には、猫の意識がなくなるため、全身の筋肉に力が入ることが多く、尿や便を漏らす可能性が高くなります。
◆てんかん発作は突然起こる
猫のてんかん発作は急に始まります。痙攣などの発作が起こる前に猫がいつもと違う行動を見せることもありますが、それが短いために、突然発作が起こったように見えるのです。
発作は、数秒から数分続き、突然終了して、その後の多くは何事もなかったように普通の状態に戻ります。
ただ、痙攣発作が何度も繰りかえして出ることがあり、長い時で10分を超えることもあります。その状態を「重責発作」といい、放置するとてんかんが悪化したり、猫の脳に障害が残ったりして命にかかわることもあります。
猫のてんかんの原因は?
てんかんには、「突発性てんかん」と「症候性てんかん」があります。
◆遺伝によるもの(突発性てんかん)
突発性てんかんは、病気などの原因を持たずに起こるてんかんです。
遺伝が原因とされてはいますが、現在のところは、起こる原因は不明とされています。
◆脳の異常によるもの(症候性てんかん)
猫のてんかんの主なものは、病気や怪我などによって、脳への障害が原因で起こる症候性てんかんだとされています。
症候性てんかんは、原因が脳にある「頭蓋内疾患」によるものと、内臓にある「代謝性疾患」によるものに分かれます。頭蓋内疾患は、脳に異常があることでおこる病気です。
頭蓋内疾患になる原因の病気は次があげられます。
・脳腫瘍
・脳炎
・脳梗塞
・脳の低酸素状態など
また頭の怪我などによる脳挫傷や脳出血が原因で、てんかんを起こすこともあります。
代謝性疾患は、内臓に異常があり、それが脳に影響を与えることで起こる病気です。次の病気が、代謝性疾患によるてんかんを起こす原因となります。
・腎不全
・肝不全
・低血糖
・なんらかの中毒
・悪性の腫瘍
どのような猫にてんかんが起こるか?
てんかんを起こしやすい猫の種類というものはなく、どのような猫でもてんかんを起こす可能性はあります。
原因不明の突発性てんかんの多くは、猫が3歳になるまでの間に発症すると言われています。
一方、症候性てんかんの多くは、脳や内臓の病気が増えてくる、7歳以降からの高齢の猫の発症が高くなります。
また、年齢と関係なく、交通事故にあったり、何かに頭をぶつけるなどの怪我をしたりすることによって脳にダメージを受けた場合、てんかんの発作が起きるようになる場合もあります。
猫のてんかん発作が起こった時の対処法は?
実際にてんかん発作が起こった時には、飼い主さんができることは、てんかん発作がおさまるまで見守るしかありません。
ただ、次のことに気をつけて見守りましょう。
・猫の安全を確保する
・猫が嘔吐した時に気道が詰まらないようにする
・猫がてんかんになった時の状況を記録しておく
◆猫を押さえつけたり揺すったりしない
てんかん発作を見ると、飼い主さんは驚きなんとかしようとしますが、猫を押さえつけたり、抱き上げて揺すったりしないようにしましょう。
猫があばれるため爪が引っかかるかもしれませんし、抱き上げても意識が戻ったり痙攣がおさまったりするわけではありません。
◆猫の安全を確保する
キャットタワーなど高いところに登っていて発作が起これば、そのまま落ちると安全に着地ができないので、気づいた時点ですぐに床やクッションの上などに下ろしてあげてください。
痙攣の動きが激しい場合には、タオルで包んで抱っこして下ろすと良いでしょう。
発作がおさまった後にも、猫が混乱した様子でとまどっていたり、目が見えにくそうにしていたりといったことがあります。猫の状態が落ち着くまで、周りにあぶないものがないようにして容態を見守り、怪我や再度の発作に注意してください。
◆猫が嘔吐した時に気道が詰まらないようにする
もし猫が吐いた場合、嘔吐したものが喉に詰まる可能性がありますので、吐いたものを取り除いたり、飲み込んだりしないように気をつけてあげてください。
◆猫がてんかんになった時の状況を記録しておく
見守っている間に、獣医さんに説明する時のために、猫の発作の状況をメモしておきましょう。以下のことをできればメモしておくと良いでしょう。
・発作になった時の猫の行動
・どのくらいの時間発作が続いたか
・猫の発作時の状態(意識があるか、嘔吐したか、など)
余裕があれば、スマートフォンなどで動画を撮っておくと、獣医さんにも伝わりやすくなります。
猫の発作がおさまったら、動物病院に連れていくか、もしすでに病院で診てもらっている場合には、獣医さんに連絡をするなどしてアドバイスを貰うと良いでしょう。
猫のてんかん発作の治療法は?
猫のてんかんの治療は、発作を抑える治療と、発作の原因となる病気を治す治療があります。
◆突発性てんかんの治療
突発性てんかんの場合には、発作の回数を減らしたり、発作の程度を抑えたりする目的で治療をします。まず注射で起きている発作を抑え、注射ではおさまらない場合には点滴をすることもあります。
発作がおさまってから、その原因によって治療の方針を決めていきます。多くは、発作をコントロールする目的で、抗てんかん薬を投与することになります。
てんかんの発作の頻度が少なく症状も軽い場合には、経過観察をして、特に注射などをしないで猫の様子を見守ることもあります。
◆症候性てんかんの治療
症候性てんかんの場合には、発作を起こす原因となる病気を治療して、てんかんが起こらないようにします。
頭蓋内疾患であれば、脳腫瘍の場合は脳の手術をしたり、投薬して脳の炎症や圧迫を抑えたりして、てんかんの症状を抑えるような治療をします。
代謝性疾患の場合には、内臓の疾患を治療することで、てんかん発作が大きく改善されることもあります。
例えば、低血糖が原因であるてんかんの場合には、糖分を補給することで発作がおさまります。
また、血液の異常を、薬の投与や点滴をすることによって改善させることでも、猫のてんかん発作の回数を減らしたり症状を軽くしたりといったことができます。
◆根気強い治療が必要
てんかんは、治療をしっかり続けていかないと、てんかん発作がまた発生してしまうことになるので、根気よく治していく必要があります。
投薬治療になった場合には、飼い主さんの自己判断で薬を中止すると、また発作が起きるだけでなく、症状が悪化してひどい発作になることもあります。
薬の飲ませ忘れや、自己判断で薬をやめるなどは、絶対にしないようにしましょう。
猫のてんかんの予防はできる?
◆薬を飲むことである程度予防できる
てんかんになってしまった猫の発作は、抗てんかん薬を飲ませることで予防できます。
抗てんかん薬を与えている時には、定期的に動物病院で検査してもらいましょう。薬の効き目が悪くなったり、猫の体質に合わなかったりすることや、副作用が出ることもあるからです。
◆てんかんが起こらない状況にする
てんかんの発作ができるだけ起らないようにして、発作の頻度を抑えるという方法もあります。
てんかんを起こす猫のうち、高齢の場合には、高い音が発作の引き金になっている可能性があるという調査があります。
具体的な音は猫によって異なりますが、コップをぶつけた時の音、鍵をジャラジャラと鳴らした時の音、雷や花火などの大きな音などがきっかけになることもあるようです。
◆てんかんが起きる前の状況に注意する
てんかんが起きる前の状態に注意して対処することで、てんかんの発生を減らしたり、症状を軽く抑えたりできる場合があります。
例えば、発作前に猫の体温が上がるとしたら、猫の体温が上がっていると気づいた時にはタオルで包んだ氷袋を当てるなどして猫の体温を下げる、という方法です。
猫によって症状が異なりますので、猫の状態に応じた方法を取る必要があります。
◆てんかんにかかっていない猫の場合
てんかんにかかっていない猫の場合、基本的に猫のてんかんの予防は難しいと言えます。
定期的に動物病院で健康診断を受けて、血液検査をしてもらうなどして、てんかんの原因となる病気の早期発見することが、予防につながります。
猫のてんかんについてのまとめ
猫のてんかん発作は、どのような猫でも発症する可能性があります。痙攣などの大きな症状が出る場合には飼い主さんも不安になりますが、治療を続けることで、うまく付き合って猫が長生きできることも多いと言えます。
ただし、高齢の猫に症状が出た時や、発作の回数が多い場合には、悪化していって猫の命にかかわることもありますので、早めに動物病院で診てもらうことが大切です。
また、症候性てんかんの場合にも、原因として命にかかわる病気になっている場合があります。
普段から猫の様子をよく見ておいて、異常があれば早めに動物病院で相談することが、てんかんの早期発見や予防につながるでしょう。
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