イエネコとヤマネコの違いとは?猫の祖先と人間との歴史について

2021.06.18

イエネコとヤマネコの違いとは?猫の祖先と人間との歴史について

イエネコとは、昔から人間と一緒に暮らしてきた飼い猫のことをいいます。イエネコは草原の王者ライオンやトラと同じ、獰猛で最強の肉食獣のネコ科の動物です。かわいいイエネコの祖先は一体どのような動物だったのでしょう。イエネコの祖先といわれる小さな体のネコ科のヤマネコのことやヤマネコとのちがい、イエネコと人間の歴史についてもご紹介しましよう。

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イエネコとは?

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イエネコとは、家畜化され人間と暮らすようになった猫のことです。猫というとまず思い浮かべるのは、私達と暮らしているこのイエネコのことではないでしょうか。

イエネコの狭義は、domestic cat、学名Felis silvestris catus(またはFelis catus)。哺乳動物で、食肉目 ネコ亜目 ネコ科 ネコ属 ヨーロッパヤマネコ種 イエネコ亜種に分類されている猫のことです。
この中でも、ヨーロッパヤマネコが家畜化されたものを「イエネコ」と通称しています。

また、より広い範囲でとらえると、ヤマネコやネコ科動物全般を指すこともあります。


イエネコの祖先は?

◆イエネコの祖先はリビアヤマネコ?

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イエネコの祖先は、アフリカからインドにかけて分布しているリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)と考えられています。リビアヤマネコは、ヨーロッパヤマネコの亜種にあたります。

古くからイエネコの祖先は、5種のヤマネコのうちの1つだと考えられていました。人懐っこい性格と骨格などから、イエネコの祖先はリビアヤマネコだと推測されていたのです。

他のヤマネコは、子猫のときから人の手で育ててもなつきにくい特徴があります。しかし、リビアヤマネコだけは、人が育てると人に対して警戒心を持つことがなく一緒に暮らすことができました。

この点から、リビアヤマネコがイエネコの祖先といわれてきたのです。

◆イエネコの祖先が科学的に証明された

2007年には、ミトコンドリアDNA解析により、リビアヤマネコがイエネコの祖先である科学的裏付けがとれました。

この研究は、世界のイエネコ計979匹をサンプルにしてミトコンドリアDNAを解析したのもの。約13万1,000年前に中東の砂漠などで生息していたリビアヤマネコとイエネコのDNAの一致を確認したのです。

これにより、イエネコの祖先は、リビアヤマネコであることが科学的に証明されました(「サイエンス(2007/6/29電子版)」誌掲載、米英独等の国際チームによる発表)。


イエネコとヤマネコのちがいは?

イエネコの祖先とされるリビアヤマネコですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

まずはイエネコ、ヤマネコそれぞれの特徴について見てみましょう。

◆イエネコの特徴について

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イエネコというと人間の生活圏で暮らす猫をいいます。F.s.catus又はF.s. domesticusといわれ「domestic=飼いならされた」という意味があります。

イエネコは、人間と暮らしているドメスティックキャットになります。

ヤマネコとは別に分類されるイエネコ

私たちが普段接している猫は、食肉目 ネコ亜目 ネコ科 ネコ属 ヨーロッパヤマネコ種 イエネコ亜種に分類されるイエネコ。学名はFelis silvestris catus(フェリス・シルヴェストリス・カトゥス)、「felis=ネコ属」「silvestris=野生の」「catus=ネコ種」、という意味の単語で記述されています。

リビアヤマネコを祖先に持つイエネコは、種としてヤマネコに含まれていますが、ヤマネコとは異なる分類がされています。

イエネコは本来肉食性で、雑食の犬に比べるとはるかにタンパク質を必要とします。また、イエネコの寿命は15年前後といわれ、最長寿の記録はイギリスで34年という報告があります。

基本的に単独行動をする動物

イエネコは本来単独で生活します。繁殖期と子育て中の親子以外は、お互いに鉢合わせすることを避けて生活します。生活圏は互いに重なり合うのですが、他の猫と行動する時間をずらして時間的に棲み分けを上手にしているのです。

ただし、猫は夜に集会を開くと言われ、ほとんどの場合和やかな雰囲気で集います。猫の集会は、生活圏を共有している猫たちの親睦・顔合わせではないかと考えられています。

人間とコミュニケーションを取る知能を持つ

猫の知能は、哺乳類の中でも高い部類に属しています。人間とのコミュニケーション能力がかなりあることが、飼われるようになった要因のひとつといえるでしょう。

根気よく繰り返して教えると、単純な言葉は聞き分け理解する猫もいます。

◆ヤマネコの特徴について

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ヤマネコとは、現在でも野生生物として生息している小型ネコ科動物を指します。

細分化を繰り返したヤマネコ

23万年前にまず「ハイイロネコ(F.s.bieti)」が生まれ、「スナネコ」から枝分かれしてその後「ヨーロッパヤマネコ(F.s.silvestris)」「ステップヤマネコ(F.s.ornata)」の順で分岐していったことが明らかになっています。

17万3000年前になると、ミナミアフリカヤマネコ(F.s.cafra)とリビアヤマネコが枝分かれし、それぞれに固有の生息領域をもつようになっています。

ヨーロッパヤマネコは、イエネコの祖先と考えられているリビアヤマネコを亜種として含んでいます。スカンジナビアやイングランド、ウェールズでは絶滅し、生息の確認はできていません。

現在でも野生で生活するヤマネコは、世界中に約29種が広く生息しています。

イエネコの祖先といわれる「リビアヤマネコ」

イエネコの祖先となったリビアヤマネコは、イエネコよりも手足尾が長く耳が大きいのが特徴です。毛色は様々ですが、狩りをするため、砂漠や砂地に隠れる色が多く、「デザートキャット」または「アフリカンキャット」とも呼ばれています。

リビアヤマネコは、体長45~80cm、体重3~8kg、尾長は30cmほどに成長します。

日本にいる2種類のヤマネコ

日本には2種類のヤマネコが生息しています。イエネコが野良ネコになったものではなく、ヤマネコとして分類されるのは対馬の「ツシマヤマネコ」と西表島の「イリオモテヤマネコ」の2種類のみです。

かつては一般的に「ヤマネコ」というと野猫を指すことがありました。国内の山林でも生息していたらしき「ヤマネコ注意」と看板が残されている猫は、ツシマヤマネコのことでした。ヤマネコ=ツシマヤマネコのとして用いられることもあったのです。

ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコの分類は諸説があります。最近は南〜東南アジアに分布するベンガルヤマネコ(Prionailurus bengalensisまたは Felis bengalensis)の亜種ではないかとされています。

イエネコに似た風貌の「ベンガルヤマネコ」

ベンガルヤマネコは一般的なイエネコによく似た風貌をしていますが、足やしっぽが長く縦に並んだ黒や褐色の斑点があります。生息範囲は広く、アジア各地域でもその亜種が多数確認されています。

ベンガルヤマネコの習性は、基本的に夜行性。日中は岩陰や木陰に隠れている事が多く、活動する時間は夕暮れから明け方までです。
イエネコと同じで基本的には、繁殖期以外は単独行動をしています。

ベンガルヤマネコは肉食で野生のネズミなどげっ歯類を主食にしています。その他カエルや昆虫、ヘビやトカゲ、魚やウサギ、コウモリなども捕食していると考えられています。

ベンガルヤマネコは木登りが得意で、シャンプーの嫌いなイエネコと違い泳ぐのも得意という特技があります。

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◆イエネコとヤマネコの大きな違い

イエネコとヤマネコの大きな違いは、行動様式にあります。

ヤマネコは人間になつくことはあまりなく、警戒心が強く攻撃してくることもあります。
一方、イエネコは人間になつきますし、日本では昔から「家につく」ともいわれています。イエネコはスキンシップや甘える仕草なども見られます。

また、イエネコは人間だけではなく、一緒に暮らす他の種族にも友好的に接しすることがあります。子犬を育てたりひよこの面倒を見たりするイエネコもいるなど、ヤマネコにはありえない行動が見られます。

周囲への順応力というのか、イエネコには生活を一緒にする者に対して、種族を超えたお付き合いができる点がヤマネコとの大きな違いではないでしょうか。


世界でのイエネコの歴史とは?

壁画

◆最も古い記録に残るイエネコ

イエネコは、古代エジプト時代の紀元前1500~前1300年ごろには家畜化されていました。

猫を最初に家畜化したのは、古代エジプト人と言われています。古代エジプトの遺跡にも猫を模した神様やオブジェが数多く見られるほど、日常的に常にともにいた生き物だったのです。

紀元前3000年ごろの初期のエジプト王朝の墓では、墓の壁画などに猫の姿が描かれています。家畜化された猫が残されている最古のものは、紀元前1500~前1300年代の古代エジプト王朝の墓から出土した記念碑に描かれたものです。

◆密輸から世界中にイエネコが広まった

古代エジプト人は、猫を神聖な動物として神殿などに像を造り、国外持ち出しも禁止していました。ところが、フェニキアの商人たちが猫を小アジアへ密輸したことで、その後紀元後1世紀ごろまでにはヨーロッパに伝わっていきました。

古くから猫たちは、ネズミ対策のために飼われていましたが、今日ではペットとして、およそ100種の品種のイエネコが飼われています。

イエネコは大変人間になつく性質があり、古くから犬と並ぶペットの代表格として世界中で愛されています。


日本でのイエネコの歴史とは?

エジプトからヨーロッパに広がったイエネコ。日本での歴史はどうでしょうか。

◆中国から日本に持ち込まれた猫

日本では縄文時代の地層から猫の骨が出土しています。この猫はイエネコとして飼育していたのではなく、野生のネコと考えられています。

本格的に日本にイエネコが住み着いたのは、奈良時代の初期に、遣唐使たちが中国から仏教の教典を運ぶときに持ち込んだものといわれています。大事な経典をネズミのから守るために、猫を一緒に船に乗せたのが始まりでした。

◆天皇へ献上された猫

こうして仏教の経典と一緒に渡来した猫は、文献にも残っています。

最も古い文献では、平安初期の天皇の宇多(うだ)天皇が書いたとされる日記「寛平御記(かんぴょうぎょき)」に登場します。日記には884年(元慶8)に中国から光孝(こうこう)天皇に猫が献上されたことが記されていました。

天皇への献上品になるくらいですので、大変貴重な生き物だったのですね。


イエネコと祖先とヤマネコについてのまとめ

イエネコの祖先のリビアヤマネコには、遺伝的にも見た目にもほとんど違いがないヨーロッパヤマネコがいます。

1944年のPittによって報告された興味深い文献があります。
イエネコの祖先、リビアヤマネコとほとんど違わない遺伝子を持つヨーロッパヤマネコは、非常に警戒心が強く、子どものころから手なづけても人間と共同生活をすることは難しかったとあります。
さらにイエネコと掛け合わせた子どもの世代でも、親と同様人間になつく様子が見られませんでした。

ヨーロッパヤマネコが人間と共生するイエネコの祖先にならなかったのは、こうした警戒心の強い性質があったと考えられます。

一方イエネコの祖先になったリビアヤマネコは、本来もっていた人懐こさや順応力が翁要因だったと考えられますね。



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にゃんこ

にゃんこ

長年一緒に暮らした長女猫(17歳)と長男猫(11歳)を看取り、今は脱走癖のある次男猫とちょっとどんくさい次女猫と暮らしています。

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