猫が神様として崇められている?
日本でも世界でも、昔から猫にまつわる言い伝えや逸話は色々とあります。
例えば、日本で黒猫は福を招くとして招き猫にも起用されていたり、福を招くことが理由で「黒猫がこちらを見ずに通り過ぎてしまうと福が来ない」と言われたりしています。
また、家で飼われている猫が年老いると猫又になると言う話や、干支では猫も十二支にエントリーするつもりだったのに、ネズミに嘘の集合時刻を教えられ十二支に入れなかったりと、昔から伝わる話に猫は沢山登場します。
そうした言い伝えの中には、神様として猫を崇めているところもあるようです。
猫が神様として崇められる理由とは?
日本を始め、世界中で猫が神様として崇められる理由には、どんなものがあるのでしょうか。
◆理由①猫は家を守る存在だった
先ほど出て来た猫又は、猫が50歳になると尾が分かれて霊力を得ると言われていますが、この猫又を妖怪と考える言い伝えの他に、家を守る神様だと考える解釈もあるそうです。
◆理由②猫はネズミから蚕を守る存在だった
猫が神様として崇められている理由としては、江戸時代、蚕にとって害獣であったネズミの駆除を猫がしてくれていたことから、猫を神様として信仰していたのではないかと言われています。
日本では猫を神様として祀る神社が複数あり、中でも養蚕が盛んだった宮城県には「猫神社」なるものが10箇所ほど存在します。
◆理由③猫はネズミから穀物を守る存在だった
世界でも猫を神様として崇めるところがあります。沢山の神様が存在することで有名な古代エジプトでは、オス猫は太陽神ラーの象徴と言われ、メス猫は女神バステトの象徴と言われていたそうです。
古代エジプトで猫を崇めた理由の一つとして「豊穣のシンボル」というものがあります。日本で猫が神様として崇められた理由と同様、害獣であるネズミを駆除する役割を持っていたことがあげられます。
◆理由④猫は多産を司る存在だった
女神バステトは、多産を司る神様だったとも言われています。実際、バステトの姿を描いた絵には4匹の子猫を連れた姿のものもあります。
猫は一般的に一度にたくさんの子猫を産む動物であることで有名であり、そのことから不妊に悩む女性が神殿に猫の像や供物を奉納していたといいます。
◆理由⑤猫は毒蛇から人々を守る存在だった
古代エジプトでは、人々に危害を加える毒蛇を獲るという役割も、猫が神様として崇められる理由となったと考えられます。
エジプトでは猫を崇拝する文化から、猫を殺した人は死刑、猫が死んだ場合には眉毛を剃って追悼の意を示していたようです。
◆理由⑥猫は食料や積荷を守る存在だった
漁業が盛んな島では、大漁の守護神として猫を崇めているところもあるようです。
また、漁をしたり荷物の運搬をする船では、ネズミから食料や積荷を守る存在として猫が重宝されていました。
様々な猫の神様について【世界編】
上の項目でも世界の猫について触れましたが、ここではもう少し詳しく各世界の猫の神様をご紹介していきたいと思います。
◆世界にいる猫の神様4選
バステトはエジプト神話に出てくる女神で、名前の意味は「ブバスティスの女主」です。ブバスティスとは、古代エジプトの都市の一つです。
中古代エジプトの話で、オス猫は太陽神ラーの象徴とありますが、バステトはラーの娘、妹、あるいは妻とされています。
現在エジプトのバステト神は猫の女神として周知されていますが、その前はメスライオンの頭部がモチーフとなっていたそうです。そして、紀元前1000年頃に、今の猫のような姿や猫の頭に人間の体で表されるようになりました。
そのため、ライオンがモチーフとなっていた時は攻撃的な性格でしたが、猫の姿になってからは穏やかな神様となったそうです。
バステトを崇拝している中心地のエジプト・ブバスティスでは、猫をバステトの聖なる獣とし、ミイラ化した状態の複数の猫が地下墓地に埋葬されていたようです。
イングランドでは、猫の中でも黒猫が漁師の守り神として信仰されています。航海をするにあたり天敵となるネズミ退治が猫の役目で、留守になる家に猫を置くのも良いと言われています。
ブラジルでは神話にジャガーと人間のハーフのシアナと言う神が登場します。
北欧神話にも猫は登場します。猫が神様と言う訳ではないですが、女神フレイヤの車を牽引していたのが現在のノルウェージャンフォレストキャットであると言われているようです。
フレイヤの車を牽引していた2匹の猫は、結婚についての予知を行う能力があるとされ、結婚式に猫が姿を現せば吉兆となるという言い伝えもあります。
◆猫好きな預言者で知られるイスラム教
神様ではないですが、イスラム教において猫は敬愛される動物とされています。
イスラム教では、猫は七つの魂を持つと信じられており、預言者が猫好きだったことなどから猫が大切に扱われる存在となったようです。
さらに興味深いのはノアの方舟の話で、中世エジプトの動物学者のアル=ダミリの記述には、ノアの方舟に乗っていた動物がネズミに不平を持って、神様がライオンにくしゃみをさせた時に最初の猫が創造されたという話があるそうです。
◆世界には猫が十二支になっている国もある
日本では猫が十二支に入れなかった話があり、十二支には残念ながら猫はいないのですが、世界には十二支に猫がいる国もあるんです。
十二支に猫がいる国は、チベット・タイ・ベトナムなど。日本での兎の代わりに猫が十二支に入っています。
理由として、ベトナムなどでは絹製品の生産が盛んなため、昔の日本で養蚕をしていた時と同じような理由で猫が重宝されるからだと思われます。
猫好きで卯年の人は、自分は猫年でもあると思ってもいいかもしれないですね。
様々な猫の神様について【日本編】
世界では神話などによく登場する猫ですが、日本ではほっこりするエピソード、あるいはちょっと悲しいエピソードと共に猫を神様として崇めている神社やお寺があります。
◆日本にいる猫の神様9選
猫のお寺として有名な東京都新宿の自性院は、室町時代に道に迷ってしまった人を案内したと言われる黒猫がきっかけで猫地蔵が作られて奉納され、江戸時代になると猫のお面の地蔵が奉納されました。
秘仏のため、毎年2月3日の1日だけ公開しているそうです。
同じく東京都の赤坂には美喜井稲荷という場所があります。この美喜井稲荷に祀られているのは、火事から飼い主を救うために自らの命を賭した猫だそうです。
理由はわからないのですが、この猫神様を参拝するときはタコを食べてはいけないというルールがあるそうです。
豊臣秀吉がいた時代に島津氏第17代当主島津義弘が朝鮮に7匹の猫を連れていきました。その7匹のうちの2匹が生き残って日本に帰って来たことから、その2匹を祀ったのが仙巌園猫神神社です。
こちらの神社では、愛猫の長寿祈願や供養祭が行われています。
初めの項目でもご紹介した宮城県の猫神社。この地域ではネズミから養蚕を守っていた猫が重宝され、マグロ漁も行なっていたことから猫が集まるようになり、猫との縁が深い地域となりました。
猫神社は、昔に猫を誤って死なせてしまった網元が猫を大切に葬った後、漁業で大漁になったり海の事故が減ったことから、猫を神様として祀るようになったと言われています。
京都府京丹後市にある金毘羅神社内に、木島神社という神社があります。この神社も宮城県の猫神社同様、養蚕をネズミから守るものとして猫が崇められ祀られています。
狛犬の代わりにいる狛猫は「あ」の口を開けた狛猫の方が親子の猫になっており、とても可愛いです。
京都府左京区にあるのが、夜を守る神様が祀られている壇王法林寺です。その神様の使いと言われているのが黒猫なんだそうです。
なぜ黒猫が使いとなったかはベールに包まれた謎なようですが、日本で最初に黒い招き猫を発祥した地ではないかと言われており、今も黒い招き猫が売られているそうです。
東京都にある別名「ねこ返し神社」と言われる神社です。その由来は、昔有名なジャズピアニストが、この神社で家を出ていなくなった猫が帰ってくるようにとお願いをしたところ、いくら探しても見つからなかった猫が自ら帰ってきたことからこの「ねこ返し神社」の別名がついたそうです。
狛猫がいてジャズが流れる境内が個性的です。
山形県高畠町では、大蛇から飼い主を救った猫が祀られた社があります。こちらの猫の宮と対座して犬の宮もあるそうです。
ペットの健康祈願や供養のために訪れる方が多いようです。
招き猫発祥の地は諸説ありますが、こちらの神社も発祥の地として知られています。
この土地に住んでいたお婆さんが貧しいあまりに飼い猫を手放してしまったのですが、夢の中に愛猫が出てきて、愛猫の姿の人形を売ると幸せになれると告げたのです。
そのお告げから作られたのが猫の形の人形で、大繁盛となり、現在の招き猫の発祥の理由の一つとなったと言われています。
◆招き猫の種類と違い
ちょっと脱線しますが、招き猫の種類についても少し触れてみましょう。
日本で縁起物として祀る人も多い招き猫ですが、実は色々な種類があります。よく聞くのは右手を挙げていると金運を招き、左手を挙げていると人を招く、という手の話ではないでしょうか。
一般的に招き猫は、白に肘や頭の部分だけ茶色や黒の紋様がある三毛猫のイメージが強いですが、黒猫の招き猫もあります。黒猫の招き猫は、魔除けや厄除けの意味を持つものが多いようです。
他にも赤色の招き猫は病除け、近年はピンクや金色のものなどバリエーションが増えているようです。
まとめ
日本でよく見かける野生の生き物の一種が「猫」だと思います。それ故か、猫にまつわる逸話には猫に導かれるものも多く思えます。自性院で迷い人を案内した猫や、北欧神話で女神の車を牽引していたのも猫でした。
また、猫に導かれるストーリーのフィクションの物語もありますよね。有名なものだとスタジオジブリの「猫の恩返し」、世界的に有名な不思議の国のアリスに登場するチェシャ猫も、アリスに道を教えるキャラクターとして登場します。
実際に野良猫について行ったら目的地に行けた、みたことのない場所に行けた、と言った話も聞きます。
私も長崎に旅行に行った際に立ち寄った神社で、見たことのない不思議な模様の猫に出会ったのですが、その子にあってから神社をお参りする間、降っていた雨が止んで不思議な気持ちになったことがありました。
猫としてはいつも通りのルートを歩いているだけなのかもしれないですが、猫が導いてくれたのかなと思うと素敵な気持ちになりますね。
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