【獣医師監修】猫のリンパ腫の原因、症状、治療法は?予防することはできる?

2019.03.15

【獣医師監修】猫のリンパ腫の原因、症状、治療法は?予防することはできる?

猫と暮らしていると、長生きして欲しいと願うのと同時に、病気の心配もしていかなくてはいけませんよね。高齢になればなるほど病気のリスクも高くなってしまいますが、中でも発症率が高いと言われているのが「リンパ腫」です。 猫のリンパ腫はどんな病気なのか、原因や症状、治療法などを細かく説明していきたいと思います。

猫のリンパ腫とは?

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◆リンパ球が腫瘍化してしまう病気

血液中の白血球の一つである「リンパ球」とは、ウイルスや細菌といった異物が体内に入ってきたときにその球体の中に異物を取り込み、消化分解する役割を果たす「免疫細胞」のことを言います。
リンパ球は、猫の全身を巡りながら、いくつかのポイントに集まって自分の役割である消化分解活動を行っています。

ちなみにこのリンパ球が集まっている場所を「リンパ節」と呼び、免疫機能を発動させる「関所」のような働きをしています。

この免疫の役割を担う重要な細胞であるリンパ球が腫瘍化してしまったものを「リンパ腫」と呼びます。いわゆる血液のガンの一種です。

◆リンパ腫の種類

リンパ腫は、リンパ球の集まる場所で発生することが多く、発生した箇所により解剖学的にいくつかの型に分類されていきます。その理由として、治療法が発生箇所により異なることが挙げられるでしょう。

主に、胸に腫瘍が出来る「縦隔型リンパ腫」、腸に腫瘍が出来る「消化器型リンパ腫」、リンパ節が腫れる「多中心型リンパ腫」、腎不全と同様の症状が見られる「腎臓型リンパ腫」、鼻の中に腫瘍が出来る「鼻腔内型リンパ腫」などに分類されます。

しかし、全身の至るところでリンパ球は活動しているので、極論を言ってしまえば体のどの部分でも発症するかもしれない、恐ろしい病気です。

◆リンパ腫は早期発見が大切

リンパ腫は、高齢の猫だと発症率が高いとされていますが、若い猫でも発症することがあるようです。
ガンのステージにより、腫瘍の数や治療方法も変化してゆくので、人間と同じく早期発見するに越したことはない病気と言えるでしょう。

ただし、猫の定期健診を日頃から行っている方は現状少ないので、何かしらの症状が出てしまい、動物病院に連れていった際にリンパ腫と告知される飼い主さんも少なくないようです。

成猫の場合は年に1回、高齢猫の場合は半年に1回を目安に、定期的に健康診断を受けるようにすると安心です。

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猫のリンパ腫の原因は?

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悪性のリンパ腫の原因として、以下が挙げられます。事前に予防出来る要因のものは、生活環境の中で取り除いておくことをお勧めします。

◆ウイルス感染

猫のリンパ腫には「猫白血病ウイルス」が関わっていると言われています。

しかし、その関係性や発症原因ははっきりとは分かっていませんが、「猫白血病ウイルスに感染している猫がリンパ腫を発症する確率は、ウイルスを保有している猫の62倍」との研究データが出ているのです。

原因となる猫白血病ウイルスに感染しないためにも、様々な予防法を用いて、感染経路を断つ努力が必要となってきます。

◆免疫力の低下やストレス

高齢の猫がリンパ腫を発症しやすい原因として、免疫力の低下も挙げられます。

年齢を重ねていく上で仕方のないようにも思えますが、これにプラスしてストレスも発ガンリスクを高めると言われているのです。猫も人間同様にストレスを溜めますし、体力が低下していくのは仕方のないことです。

なるべく猫に対して、ストレスを与えない環境作りを心掛けましょう。

◆発ガン性物質の摂取

発ガン性物質の摂取が直接的な原因となることはほぼありませんが、積み重なってガンのリスクが高まってしまうと考えられています。

身近な発ガン性物質として挙げられるのは、人間が吸っている「タバコ」です。この受動喫煙のリスクは、鼻が低い猫にとって鼻腔による空気の清浄化作用が弱まってしまうため、発症リスクが高まってしまうのです。

人間にとっても発ガンリスクの原因となりえるタバコですから、体の小さな猫にとって、その害は相当なものであることが考えられますよね。


猫のリンパ腫の症状は?

リンパ腫の症状は、発生した箇所によって異なりますが、主な症状として挙げられるのは以下の通りです。

◆食欲不振

最初に猫自身が体に違和感を覚え、痛みを伴う場合に見られる症状として挙げられるのが、食欲不振です。

人間も体に不調があるときは、食欲が自然と落ちてしまうものですよね。これは猫も全く一緒です。

消化器系にリンパ腫が発生した場合をはじめ、体のどの部分に発生しても見られる症状でもあるので、普段からよく観察しておく必要があります。

◆下痢や嘔吐

原因不明の下痢や嘔吐もとても危険です。

体の中に異常が起きて吐く嘔吐や下痢は、はっきり言って病気かどうかの判断が難しいです。しかし、早食いや誤飲などではないと断言出来るのなら、まずは病気を疑うようにしましょう。

◆多飲多尿

元々水を沢山飲まない猫が、飲水量が増え、おしっこの量が増えていると腎臓型リンパ腫の可能性があります。

ただ、腎不全とも症状が似ているので、自己判断せず早急に動物病院へ受診し、検査をしてください。

◆鼻水やくしゃみ

慢性的に鼻水やくしゃみが出ている場合は、風邪ではなく鼻腔内型のリンパ腫を疑いましょう。

また、症状が悪化してしまうと顔の腫れや、鼻から出血することもあるので、風邪と混同させないようにしてくださいね。

◆呼吸困難

心臓付近の胸などに腫瘍が出来てしまうと、咳や呼吸困難の症状も出てきます。また、上手に息をすることが出来ないので、食べ物を飲み込みづらそうにすることも。

この症状が出ていると末期の可能性も高いので、すぐに動物病院へ受診してください。

◆リンパ節の腫れ

リンパ節は猫の体のいたるところに存在しているので、その部分にガンが発生してしまうと、少しずつ腫れたように皮膚が盛り上がってきます。

大きくなって腫れが目立ってくると、末期のリンパ腫であることも多いので、日頃から愛猫の体を隅々まで触り、異常がないかを確認しながら生活していくことをお勧めします。


猫のリンパ腫の治療法は?

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完治が難しいとされているリンパ腫ではありますが、主に化学療法にて治療を行っていきます。何も治療を行わない場合は、余命が1~2ヶ月程と言われています。

猫は命がある限り、精一杯生を全うしようとする生き物です。例え治療が辛かったとしても、頑張ろうとする姿勢を見せてくれる、それが猫であるとも思えます。

しっかりと獣医師の話を聞き、猫の症状に合った治療法を自ら選ぶ必要があると言えるでしょう。

◆抗がん剤治療

リンパ腫の治療で最も一般的と言えるのが、「抗がん剤治療」による化学療法です。

人間のガン治療に用いられる抗がん剤とは異なり、猫に用いる物は副作用が少ないと言われてはいますが、個体によっては嘔吐や下痢、食欲不振や血球の減少などの副作用が見られます。

寛解(かんかい)や再燃を繰り返すことが多いですが、化学療法を行う目的として第一に、ガン化したリンパ球を出来る限り壊し、猫の苦痛を和らげ、生活の質を上げることが挙げられるでしょう。

◆放射線治療

化学療法に腫瘍が反応しない場合や大きな腫瘍がある場合などには、放射線治療を行うことが多いです。

ただし、どこの動物病院でも放射線治療が出来るわけではなく、大学病院や限られた病院でしか治療を受けられないのが現状であります。

抗がん剤が効かなかった場合に、このような治療法があるということを覚えておきましょう。

◆対症治療

免疫が落ちて体力が低下している猫に対して、副作用などが懸念されている治療が行えない場合もあります。

何よりも治療で更に苦しむ姿を見るのが辛いという飼い主さんもいらっしゃるように、根治を目的とせず現在の症状を緩和することを優先とした治療法です。別名で「延命治療」とも呼ばれています。

QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の概念として選ぶ方もいるようですが、あくまで選ぶのは飼い主さんとなります。

愛猫の状態、飼い主さんの気持ち、獣医師のアドバイスなどを考慮して、後悔の残らない治療方法を選ぶようにしましょう。

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猫のリンパ腫の予防法は?

愛猫がリンパ腫を発症して、辛く苦しい思いをしないためにも、予防法を用いた対策が必要となってきます。

まず何よりも大事な予防法として挙げられるのが、「5種混合ワクチン接種」です。

「3種からあるはずなのに、なぜ5種なの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、5種混合ワクチンには猫白血病ウイルスに対する免疫を促す効果が期待出来ます。

リンパ腫と深い関わりがある猫白血病ウイルスへの感染を予防することによって、ガン化へのリスクを軽減するという予防法です。

他にも完全室内飼いにし、ストレスを軽減させる環境を作り、バランスの取れた食事や適度な運動など、健康状態を維持することこそが予防法になるとも言えるでしょう。

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まとめ

リンパ腫は完治の難しい病気であることに変わりはありません。しかし、リンパ腫の原因となる要因を排除し、事前から予防することによって防ぐことの出来る病気でもあります。

猫と生活をすることを望んだ以上、全ての責任は飼い主さんに委ねられます。猫を守ってあげるのも一日でも長く生きてもらうのも、全て飼い主さん次第なのです。

もしリンパ腫を発症してしまっても、一人で悩んで抱え込もうとせず、獣医師などと相談して治療法を考えることによって、後悔の少ない選択肢を選ぶことが出来るのではないでしょうか。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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