猫の腎不全とは?
猫の腎不全とは、腎臓の機能が低下してうまく働かなくなり、体に様々な不調が起こる病気です。
◆急性腎不全と慢性腎不全
猫の腎不全には、急性腎不全と慢性腎不全があります。急性腎不全は、腎臓の働きが急激に低下するのに対し、慢性腎不全は徐々に腎臓が機能しなくなる病気です。
急性腎不全のほうは、早く手当てをして適切な治療をすれば命を失わず、回復する可能性が高くなります。
一方で、慢性腎不全は、一度発症してしまうと、徐々に病気が進行していき、腎臓の機能が回復することはありません。
慢性腎不全は発症すると、その後の治療はできるだけ進行を抑えることが目的となります。病態に応じた処方がされた食事療法や、点滴や症状に合わせた薬の投与などの内科的な治療が行われます。
◆慢性腎不全は予防法がない
慢性腎不全の原因として、猫免疫不全ウイルス感染症や猫伝染性腹膜炎などといった感染症や、腎盂炎などの腎疾患や、腎臓の腫瘍、また先天的な腎臓の異常などがあげられます。
慢性腎不全は、中年齢から高齢の猫がなることが多く、症状が出てきて飼い主さんが気づく時には、すでに病気が進行してしまっていることも多くある恐ろしい病気です。
慢性腎不全は予防法がないので、腎不全を引き起こすような病気を防ぐためにワクチンを受けさせること、病気の早期発見をしてすみやかに治療を受けることなどが大切になってきます。
猫の腎不全の症状は?
猫の腎不全(慢性腎不全)では、腎臓障害のレベルでステージがあり、それぞれに次のような症状が見られます。
◆猫の腎不全(ステージ1)の症状
・尿比重の低下
・タンパク尿
ステージ1では、目に見えるような症状はなく、血液検査をしても異常がないことがほとんどです。
尿検査では、尿中の水分とそれ以外の物質の割合を示した尿比重の低下や、タンパク尿が見られることがあります。
しかし、この時点で、腎臓の機能がすでに正常な時の3分の1程度にまで落ちていることがあります。
◆猫の腎不全(ステージ2)の症状
・脱水
腎臓の機能が低下してくると、尿の濃縮ができなくなり、薄いままの尿がたくさん出ることになります。このために水分不足になって、水をたくさん飲むようになります。
ただし、まだこの段階でも猫の行動には大きな症状が見られないこともあります。
しかし、腎臓の機能は、正常時の4分の1程度にまで落ちてきています。
◆猫の腎不全(ステージ3)の症状
・口内炎
・嘔吐
・食欲不振
・体重の減少
・脱水
・貧血
ステージ3になると、腎臓機能の低下が進んで、老廃物や有害物質が大外に排出できなくなり、尿毒症となります。
尿毒素が血液中をめぐるために、口や胃の粘膜が荒れるので、口内炎や胃炎などになります。
そのため嘔吐が見られ、食欲不振となり、体重も減り、元気がなくなってきます。飼い主さんもこの段階になると、猫の異常に気付きます。
また、血液検査では軽度から中度の窒素血症が見られるようになります。腎臓機能の指標となる数値の上昇が見られ、本来排出されるべき血清クレアチニンや血清尿素窒素の濃度が高まります。
さらに腎臓機能が低下すると、赤血球の成熟に必要なホルモンの産生が減少するので、貧血を起こすこともあります。
ステージ3では、腎臓機能の75%以上が機能しなくなっていると考えられます。
◆猫の腎不全(ステージ4)の症状
・嘔吐
・下痢
・重度の貧血
・痙攣
・昏睡状態
ステージ4では尿毒症が進み、治療を積極的に行わなければ猫の命に関わる段階になっています。
一日のうちに何度も吐いたり、下痢をしたりします。何度も吐くために消化器系が炎症を起こして血を吐くこともあります。
症状が進むと食欲もなく、水を飲むこともできなくなり、摂取カロリーが低下するために体温維持も難しくなり、低体温となって危険な状態になります。
尿毒症が重くなると、意識障害を起こすことがあり、呼びかけに応じず、痙攣したり昏睡状態に陥ったりすることもあります。
この段階では腎臓機能の90%以上が破壊されていると考えられます。
腎不全末期の猫の余命は?
猫の慢性腎不全の症状に気づいた頃にはすでにステージ3や4になっており、末期にさしかかっている場合が多いと言えます。
末期になると、猫の状態によりますが、数日で命を落とすこともあれば、数ヶ月は生きられたということもあります。
しかし、データによれば、末期状態になってしまうと余命は数日から半年以内ということです。
できるだけ早く腎不全に気づき、対処療法を始めることができれば、末期状態と言われた猫でも半年を超えて生きた例もあるようです。
失われた腎臓機能の回復は見込めず、末期には腎臓がほとんど機能していない状態となるため、治療なしでは生命を保つことは難しく、治療をしていても最終的には命を落としてしまうことになります。
腎不全末期の猫のためにできるケアとは?
◆食事
慢性腎不全の末期には、猫は食べ物を受け付けなくなります。しかし、体力を保つためには口から栄養を摂ることがとても大切です。
動物病院で、猫の状態に合わせた慢性腎臓病用の療法食を処方、または指示してもらって、与えるのが良いでしょう。
療法食では、食事の中のタンパク質やリン、ナトリウムを制限しながら、必要なカロリーを効率的に補給できるようになっています。
療法食は猫の好みによりなかなか食べてくれない場合もありますが、種類や味付けなどが多く販売されているため、猫が食べてくれるものを探して与えます。
ドライタイプ、ウェットタイプがあり、老猫はウェットタイプの方が比較的食べやすいと言えるでしょう。
フードに猫が好むかつおぶしや鳥ささみなどを少量トッピングして、食べるように工夫することも大切です。
療法食を少しあたためることでも、匂いが出て風味も出るので食べてくれるようになることがあります。
いきなり食事を療法食に変えても食べてくれない場合が多いので、今まで食べていたフードと一緒に与えながら、徐々に療法食に切り替えていくようにしてください。
◆水分補給
腎不全の末期でも、水分を取って、体内の老廃物や毒素を体外に出すことはとても大切です。症状を悪化させないだけでなく、脱水を防ぐためにも水分補給は必要なことです。
なかなか水を飲まない末期の猫には、次のような工夫をして水を飲ませるようにします。
・猫が好きな水を与える
猫はもともとあまり水を飲むことが少ない生き物と言われますので、猫が好んで水に興味を持って飲むようにする工夫が必要です。猫の好みに合わせ、流れるタイプの水を与えたり、ぬるま湯にしたり、冷たい水にしたりしてみましょう。
また、飲みやすい場所に水を置いておくことも大切です。静かな場所や、猫がいつもいるところの近くに水を置いてみましょう。
水は一箇所ではなく、色々な場所に複数置いておくと、水を飲んでくれやすくなります。
・ウェットフードを与える
ウェットフードは食べるだけで水分補給もできるので、ウェットフードの療法食を与えるという方法もあります。
スープタイプのフードもあるので、そちらを与える方法もあります。ただし、高タンパクのものやナトリウムが多いものは腎臓によくないので、購入する時には成分をよく確認してください。与えても大丈夫かどうかわからない場合は、獣医さんに相談しましょう。
・シリンジで水を飲ませる
針のない注射器タイプのシリンジやスポイトを使って、水を飲ませるという方法もあります。
ただし、無理やり飲ませることのないように気をつけてください。正しい与え方や方法については、獣医さんに相談して教えてもらうようにしましょう。
・輸液
猫の状態によっては、猫に点滴によって水分補給をする方法もあります。
動物病院でしてもらう必要がありますし、少しずつ猫の静脈に輸液を投与するので、時間もかかり、入院の必要がある場合もあるため、猫がストレスを感じる可能性もあります。
腎不全末期の猫にとっては効果的な方法でもあるため、飼い主さんの都合や猫の性格などを考慮しながら、主治医の獣医さんとよく相談してみると良いでしょう。
◆排泄の補助
腎不全末期の猫によっては、筋肉量が落ちるためにうまく行動できず、トイレの縁をまたげないなどといった状況も出てきます。
猫がトイレに行く時には手助けをしてあげたり、トイレで体を支えてあげたりする必要が出てくることもあります。
◆介護
腎不全の末期になると、猫には様々な症状が現れます。排泄の補助もそうですが、食事の補助や水分補給の補助が必要なこともありますし、寝たきりになれば褥瘡(床ずれ)ができないようにする必要があります。
定期的な薬の投与が必要になることもあり、飼い主さんの介護が必須になると考えられます。
◆獣医さんとの連携
腎不全末期の猫は、急に具合が悪くなることも増えます。また、今までなかった症状が出ることもあります。
何かあった時に緊急連絡ができるようにしておいたり、事前に対処法を聞いておいたりするなどして、獣医さんに早めに診てもらえるような状態をつくっておくと飼い主さんも安心です。
猫の慢性腎不全まとめ
猫が慢性腎不全になった時には、失われた腎臓の機能は戻らないため、できるだけ初期のうちに治療を初めて、進行を遅らせることがとても大切です。
腎不全の末期になると、余命は短い場合が多いため、飼い主さんはよく獣医さんと相談して、少しでも猫が長く生きられるようにケアをしてあげるようにしましょう。
飼い主さんのケアにより、末期の腎不全でも長く生きていられる例もあります。猫に寄り添い、愛情を持ってお世話をすることが、腎不全の猫の寿命が延びることにつながることもあるでしょう。
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