1.猫の心筋症とはなにか
1.肥大型心筋症
1.拡張型心筋症
1.拘束型心筋症
3.猫の心筋症の症状
3.食欲がない
3.心拍数が増える
3.運動を嫌がる、疲れやすい
3.血栓ができる
3.咳、呼吸の異常
3.後ろ足の麻痺
猫の心筋症とはなにか
猫の「心筋症(しんきんしょう)」とは、心筋と呼ばれる心臓の筋肉の異常により、心機能が低下してゆく病気の総称となります。
先天的ではなく後天的な病気となり、猫が患う心臓病のほとんどが、この心筋症であると言われています。
猫をはじめとした哺乳類の心臓は、2心房(左心房・右心房)2心室(左心室・右心房)といった4つの部屋に分かれています。
この部屋の周りを心筋が囲んでおり、この筋肉が伸び縮みを繰り返すことによって、全身から血液と肺で新鮮な酸素を取り込んだ後、再度全身へ正常な血液を循環させるといった仕組みです。
心筋は体の軸となるポンプ機能の役割を担っているので、この機能に何かしらの異常が生じてしまえば、生命線である血液の流れに異常をきたしてしまいますよね。
猫の心筋症は大きく分けて、3つに分類されています。
◆肥大型心筋症
心筋症の中でも大半を占める病気と言われているのが「肥大型心筋症」です。
その名の通り心筋が肥大化する病気となり、血液を溜めている部屋が狭くなるので、取り込む血液の量が減り、全身に血液を循環させことが難しくなるそうです。
ほとんどの場合が左心室の心筋が肥大すると言われていますので、左心房へ血液が逆流、または大動脈への流出路が狭くなり、酸素を含んだ血液をうまく循環させることができなくなります。
◆拡張型心筋症
肥大型心筋症に次いで、猫が発症しやすい心筋症と言われているのが、「拡張型心筋症」です。
心筋が薄く伸びて収縮力が弱まり、血液をうまく全身に送り出すことができなくなってしまう病気となります。
心筋が薄くなることによって、それぞれの心臓の部屋が広がったように見えることから、拡張型という名前で呼ばれているようです。
◆拘束型心筋症
心臓の内側の線維(長い細胞で構成された組織)が硬くなり、心臓がうまく動かなくなってしまう病気を「拘束型心筋症」と呼びます。
また、心臓の伸展と収縮力を同時に失うことから「中間型心筋症」と呼ばれることも。
特発性の病気となるので治療が難しく、肥大型や拡張型を併発することもあるので、心筋症の中でも最も厄介な病気と言えるでしょう。
猫の心筋症の原因
猫の心筋症は残念ながら、はっきりとした原因が分かっていないと言われている病気>
明確ではありませんが、肥大型心筋症は遺伝的素因が関係していると考えられており、心拍数を上げる甲状腺機能亢進症や、心臓に圧をかける高血圧の関与も指摘されているようです。
拡張型心筋症では、タウリン(必須アミノ酸)との因果関係が1980年代に発見されているので、タウリン欠乏が原因として考えられるようになりました。
拘束型心筋症に関しては感染症と関係があると考えられていますが、症例が少ないことからも、特発性の病気として扱われることがほとんどです。
猫の心筋症の症状
猫の心筋症は初期の段階では目立つような症状が出ないので、早期発見が難しい病気として知られています。
重症化してから病気が発覚してしまうと、心臓の機能が低下することから、様々な異常が体に現れるようになります。
こんな症状が現れたら、注意が必要です。
◆食欲がない
食欲が落ちてくるのも心筋症の特徴的な症状となりますが、初期の症状として見られることもある上に、ほかの病気でも症状が出ることがあるので、この症状だけで心筋症と判断するのは難しいです。
食欲低下や痩せるといった症状は病気だけでなく、精神面でも出ることがあるので、非常に分かりづらい症状とも言えますよね。
食欲がない上に、嘔吐を繰り返し、その嘔吐物に血が混じっているなどの症状が出ている場合は、緊急性が高い症状となりますので、心筋症を疑ってみましょう。
◆心拍数が増える
心筋症により心臓の機能が低下し始めると、一度の拍動で全身に送る血液量は減ってしまうので、心臓は臨機応変に心拍数を増やし、数で稼ごうと働きます。
猫の心拍数は1分間で150前後が正常だと言われているので、明らかに心拍数が増えているときは、心臓への負担を懸念した方が良いでしょう。
心拍数は猫が落ち着いている状態のときに、後ろ足の付け根の太い動脈で測るか、あごの下の頸動脈を軽く押さえて測定してみてください。
◆運動を嫌がる、疲れやすい
初期症状として、元気がない、じっとしている時間が増えたなどの症状がよく見られますが、遊ぶ時間が急激に減り、運動を嫌がるようになってきた場合は、心筋症が進行している可能性があります。
少し体を動かしただけで呼吸が荒くなることや、歩き方がおかしくなるなど、疲れている様子が頻繁に見られるようになってくるでしょう。
◆血栓ができる
心臓の動きが悪くなるということは、体の中に血液が上手に循環されていかないので、自然と血流が悪くなって血管や心臓などで血が固まってしまうことがあります。
この血の塊を「血栓」と呼びますが、この血栓が血管(動脈)を詰まらせてしまえば、のちに「血栓塞栓症」を引き起こすことがあるようです。
◆咳、呼吸の異常
心臓の機能が低下し、全身に血液が行き渡らないということは、当然酸素量も不足していますので、呼吸が苦しくなっていきます。
酸素が不足すると肺での機能(酸素と二酸化炭素の交換)が正常に行われないので、肺に水が溜まり、「肺水腫」と呼ばれる状態に陥ります。
肺水だけでなく胸水も溜まることがあるので、咳が出たり呼吸困難に陥ったりと、非常に苦しい状態が続いてしまうことに。
口を開けて呼吸する、舌が真っ青になる(チアミナーゼ)といった症状も見られますので、大変危険な状態と言えるでしょう。
◆後ろ足の麻痺
血栓ができて血栓塞栓症を引き起こした場合、左右の後ろ足に枝分かれして細くなった、根元の血管(大動脈から両足への分岐部)に血液が詰まりやすいと言われています。
この場所に血栓ができてしまえば、足先まで血液を送ることができないので、血液が遮断された足先は冷たくなり、肉球も青白くなっていることでしょう。
このとき血栓ができた方の足は麻痺を起こし、強い痛みを伴っているので、足を投げ出すような姿勢や、足を引きずって歩くなどの動作を見せるようになります。
全身の体温をどんどん奪っていくので、最悪の場合死に至るケースもあるそうです。
猫の心筋症の治療法
猫の心筋症は、完治が難しい病気と言われています。
なので、現状よりも状態を悪くしないような、心臓への負担を減らす治療方法が用いられることがほとんどです。
基本的には内服薬を中心とした、進行を緩やかにし、猫への負担を軽減するといった治療が行われます。
また、血栓塞栓症と診断された場合には、血液の流れを良くするために、血栓を溶かす薬を静脈投与、もしくは手術により除去など、猫ちゃんの状態によって治療法が異なります。
いずれにせよ心筋症が疑われる場合には、根治しない病気であるからこそ早期の治療が大切ですし、愛猫への負担を減らしてあげるためにも、早急に動物病院を受診するようにしましょう。
猫の心筋症の予防法
引き起こすはっきりとした原因が分かっていないことからも、心筋症は予防が難しい病気といえますよね。
だからこそ早期発見が重要にもなってきますので、どんな予防法を用いて、愛猫の寿命を延ばしてあげれば良いのでしょうか。
◆自宅でできること
どんな病気でもストレスは大敵となりますので、猫ちゃんが過ごしやすい生活環境をまずは整えてあげてください。
落ち着いて眠れる場所はあるか、心臓に負担がかかるような激しい運動をさせていないか、トイレは清潔か、室温は適しているか、年齢に合ったフードを与えているか、などです。
タウリン不足や塩分の摂りすぎ、肥満なども心臓に負担をかけてしまいますので、ご褒美として与えているおやつなども、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。
◆健康診断
定期的な健康診断も、心筋症の早期発見に繋がります。
最低でも1年に1回は全身をチェックできる、人間ドッグのような精密検査をすることが望ましいです。
シニア期に突入したあたりから、体に色々な症状が出てきやすくなりますので、愛猫のためにも毎年の恒例行事として、取り入れてあげるようにしましょう。
◆遺伝子検査
猫の心筋症は好発の素因があるとも言われており、猫種によっては発症する確率が上がると言われています。
遺伝子の関わりが無いとは言い切れないことからも、遺伝子検査を検討してみるのもおすすめです。
◆早期発見するために
愛猫の病気を早期発見するためにも、普段からコミュニケーションを図り、健康状態を探ることも大切ですよね。
心筋症は心拍数が増すなどの症状が出ることもあるので、健康な状態の心拍数や呼吸数などを測っておくことが予防へと繋がっていきます。
愛猫の異変に気付いてあげられるのは飼い主さんだけなので、普段から健康状態を把握しておくようにしましょう。
心筋症にかかりやすい猫の種類
心筋症は好発の素因があることからも、この病気にかかりやすい猫種が存在します。
好発品種として挙げられるのは、以下の猫種となります。
-
・アメリカンショートヘアー
・メインクーン
・ラグドール
・ペルシャ
・ヒマラヤン
・ブリティッシュショートヘアー
・スコティッシュフォールド
・バーミーズ
・アビシニアン
・シャム など
また、日本猫(雑種)もこれらの猫種が混ざっていることがあるので、心筋症を発症することがあるようです。
好発品種ではないからといって安心するのではなく、すべての猫が心筋症を発症するリスクがあることを理解しておくようにしましょう。
もしも老猫が心筋症になったら
心筋症は高齢になるほど発症率は高くなりますが、一度患ってしまうと一生付き合っていかなくてはいけない病気となります。
老猫の場合、心臓が弱るとどんどん衰弱していきますので、何もしてあげられないうちに、命が尽きてしまっても不思議ではありませんよね。
高齢では治療法も限られてしまうので、できる限り愛猫が安心して余生を過ごせるような、時間の過ごし方を提供してあげてください。
一緒に居られる貴重な時間を大切にし、精一杯不安な気持ちにさせないような努力をしてあげましょう。
まとめ
猫の心筋症は珍しい病気などではなく、どの猫にも発症のリスクがある病気です。
心臓が正常に動かなければ、猫は寿命まで生きることができませんので、いかに心臓に負担がかからないような生活を、普段から心掛けていくかが大切ですよね。
病気を患うことなく天寿を全うできれば言うことはありませんが、もし心筋症を発症したとしても、早期発見こそが鍵となりますので、愛猫の健康状態の把握は、普段から欠かさないようにしましょう。
そして一生付き合う病気だとしても、飼い主さんにできることはたくさんありますので、適切な治療を行い、猫ちゃんの不安や負担を取り除いてあげてくださいね。
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