【獣医師監修】猫の肉球が熱いのはなぜ?病気の可能性があるのかが知りたい!

2020.08.09

【獣医師監修】猫の肉球が熱いのはなぜ?病気の可能性があるのかが知りたい!

普段飼い主さんが猫とコミュニケーションをとる時間は、絆を深めるためだけの時間ではなく、猫の体に異常がないかの確認をするための、貴重な時間でもありますよね。 もしそんな貴重な時間の中で、愛猫の肉球が熱いと感じたら、飼い主さんは瞬時に異変を察知し、不安を感じてしまうことでしょう。 そもそも、猫の肉球が熱いのは、何かの病気が関係しているのでしょうか? そして猫の肉球には、どんな病気の危険性があるのかを、併せてご紹介させていただきます。

猫の肉球の役割

モフモフの猫の手の裏には、プニプニっとした可愛らしい肉球がついていますよね。

猫の部位でも好きな方が多いのも納得な肉球は、見た目の可愛さだけでなく、触れたときの独特の感触も良いので、魅了されてしまう気持ちも良く分かります。

私たちの体には備わっていない肉球ですが、猫の肉球はどのような役割を担っているのでしょうか?

白黒猫の手

◆肉球の役割

肉球とは動物(主にネコ目)の足裏部分に見られ、無毛の盛り上がった部分を指します。

正式には「蹠球(しょきゅう)」と呼び、足裏の中心に位置する大きな部分、その大きなものの外側に位置する小さな部分で構成されています。

猫の肉球には、前足と後ろ足のそれぞれの部分に名称があり、一言で肉球と片付けられないところも、なんとも神秘的な感じがしますよね。

前足の肉球の中心部を「掌球(しょうきゅう)」、外側に位置する5つの部分を「指球(しきゅう)」、その中の親指に位置する小さい部分を「狼爪(ろうそう)」、掌球から少し離れた部分にある「手根球(しゅこんきゅう)」の7つから構成されています。

一方後ろ足の肉球は前足の肉球よりも少なく、中心部を「足底球(そくていきゅう)」、外側の部分を「趾球(しきゅう)」と呼んでいます。

猫のプニプニの肉球は、狩りの際に獲物に気付かれないように、足音を消す働きがあります。

そのほかにも歩くときや、木から降りる際に衝撃を緩和するクッションのような役割を果たし、汗をかくことによって滑り止めの効果も果たしているのです。

その汗は匂い付け(マーキング)にも利用されるので、肉球は猫にとって必要不可欠な部位であると言えるのではないでしょうか。

◆猫の平均体温

猫の肉球は弾性繊維(脂肪)でできており、猫の皮膚が0.02~0.04mmと薄いのに対し、肉球の厚みは1mm程度あると言われています。

猫の体温は、平均で38~39度程度と言われていますが、皮の厚い肉球は体温の影響を直接受けないので、触れてみると熱くもなく、冷たくもなくといった温度を感じることでしょう。

私たちは38度も熱が出てしまうとフラフラになってしまいますが、猫はこの体温でも軽快に活動しているので、不思議に感じてしまいますよね。

このような体温の影響を受けにくい肉球ですが、触れたときに熱かったり、冷たかったりしたときは注意が必要となります。

猫の肉球は体の変化が出やすい部位でもありますので、異常に気付いてあげれることによって、病気の早期発見にも繋がると言えるでしょう。


猫の肉球が熱い理由と対処法

普段は熱くもなく冷たくもない肉球ですが、ふと触れたときに熱いと感じたのなら、飼い主さんはきっと心配になってしまうことでしょう。

猫の肉球が熱いときには、どんな理由が考えられるのでしょうか?

ホットドリンクのイラスト

◆肉球が熱い理由

もっとも単純な理由として挙げられるのが、猫は眠いときに体温が上昇するということです。

猫に限らず私たち人間を含めた哺乳類は、起きて活動している時間よりも、眠っている間に激しい代謝を行っています。

そのため眠いときや眠っているときには体温が上がり、全身を毛で覆われている猫の変化を感じ取るのなら、肉球や耳などに触れてみることが一番なのです。

また、猫も具合が悪くなったり、風邪を引いたりしたときにも、発熱することはよくあるので、じっとしたまま動かないときや、フードを食べてくれないなどの異変がある際は、肉球に触れてみるようにしましょう。

夏の暑い時期には、室内でも熱中症にかかってしまえば肉球が熱くなりますので、普段の肉球の温度を把握しておくことも大切です。

◆対処法

猫がいかにも眠たそうな雰囲気で、肉球が熱いのであれば、そのまま構うことはせずに、そっと眠らせてあげるようにしてあげてください。

猫風邪などが原因で発熱しているのであれば、すぐに動物病院に連れていくことをおすすめします。

そして熱中症で発熱してしまった場合は、保冷剤をタオルなどでくるんで体を冷やし、動物病院に連絡をとって、獣医師さんの指示に従ってください。

そのほかに家の中でできる対策として挙げられるのは、いつでも水分補給ができるように、新鮮な飲水を置いてあげることです。

猫は水を飲むことによって、体温を下げることができますので、具合が悪そうに感じられるのであれば、猫の傍に飲水を置いてあげるようにしましょう。


猫の肉球が冷たい理由と対処法

猫の肉球が熱いのとは反対に、冷たくなっているときは、以下のような理由が考えられます。

コールドドリンクのイラスト

◆猫の肉球が冷たい理由

肉球は触れたものの温度を感じやすいので、猫が冷たい地面や場所に手を置いていた場合には、一時的に肉球が冷たくなることがあります。

また、猫をお風呂に入れて手入れしたときなども、濡れた被毛がどんどん体温を奪い、体温が下がって肉球が冷たくなってしまうことも。

このような状況で肉球が冷たくなるのは、とくに心配は要りませんが、病気やケガなどでも肉球が冷たくなることがあります。

とくに肉球が冷たくなっているのと同時に、白っぽくなっているのであれば貧血を起こし、紫っぽく変色しているときは心臓病や血栓症などの病気を疑ってみましょう。

◆対処法

猫が冷たいものに触れて肉球が冷たくなっているのなら、冷たいものを避けて、場所を変えるなのどの対策をしてあげれば問題ありませんが、なかなか体温が戻らないのであれば、原因は別にあるのかもしれません。

そのような場合には、猫に変わった様子がないのかなどを観察し、少しでも異変を感じるようであれば、すぐに動物病院へ連れていくようにしましょう。

自宅でできる対策としては、体温を上げるために、室温が上がるようにエアコンを利用し、ほかにも湯たんぽや毛布などでくるむ方法なども有効です。


猫の肉球に多い病気と予防法

可愛らしい猫の肉球ですが、この猫特有の肉球に多く見られる病気があることをご存知でしょうか。

あのプニプニとした愛らしい肉球を守るためにも、肉球に見られる病気を知っておくことも大切です。

◆肉球皮膚炎

肉球に見られる病気で、なかなか気付き難いと言われているのが、「肉球皮膚炎」です。

肉球の表面に形質細胞が多数集まることから、「形質細胞性足皮膚炎」と呼ばれることもあります。

この病気は肉球がむくみ、赤く腫れあがったり、シワシワになったりすることによって、猫の歩行を妨げ痛みを伴う病気として知られています。

悪化してしまえば肉球の表面の潰瘍が破けて膿が出てしまうので、早急の治療が必要となってきます。

原因の多くは解明されず不明とされていますが、主にステロイドの投与で改善に向かうようなので、異変を感じたのならすぐに動物病院に連れて行ってあげましょう。

◆指間炎

猫がやたらと肉球付近を舐めていたり、やたらと手足をフルフルと振ったりした症状が見られるときは、「指間炎(趾間皮膚炎)」を患っているかもしれません。

猫には珍しく、犬に多い病気として知られていますが、細菌に感染して悪化することが多く、いくつかの原因が重なって発症してしまうとも言われています。

指間炎を患うと、肉球と指の間が細菌と反応して黒っぽくなり、痛みを伴うこともあるので、猫自身が気にして舐めることによって、悪化してしまうこともあるようです。

猫が気にして舐めてしまうことが一番良くないので、見つけた際には動物病院に連れて行き、治療をしてもらうようにしましょう。

治療方法は原因によって異なりますが、一般的には抗炎症剤の外用薬、または内服薬を用いることが多いようです。

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猫は毎日のように毛づくろいをしますね。猫の毛づくろいは人がお風呂に入るのと同じで、毛を舐めて体をキレイにしています。中でも猫が肉球を舐めている姿はとてもかわいらしい仕草ですが、あまりにも肉球を舐めていたら、指の間などに異常がある「指間炎」という皮膚病かもしれません。 指間炎とは、どのような症状の病気で、原因は何なのでしょうか。治療法や予防法についてもご紹介します。

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◆予防法

肉球を健やかに保つためには、代謝を上げて血液の流れを良くすることも大切ですよね。

肉球が体温をある程度保っていられるのは、血流のおかげでもあるのです。

ですので、普段から愛猫の血流を良くするためにマッサージをすることや、猫の体温に負担がかからないように、室内の温度を調節することも大切です。
また、体内のさまざまな新陳代謝を促す、「グルコン酸亜鉛」が含まれた、ペット用のサプリメントを利用してみてはいかがでしょうか。

猫の皮膚や被毛の健康にも役立つ働きをしてくれるので、おすすめですよ!


まとめ

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猫の肉球はその見た目の愛らしさから、魅了されている方が多い部位ではありますが、猫の健康状態が見え隠れしやすい部位であることが分かりました。

猫の体の中でも敏感な部分でも入念に手入れをして、つねにプニプニの状態を保ってあげたいものです。

もし肉球が熱い場合や冷たい場合は、体に異変が起きているサインです。

見逃すことなくすぐに気付いてあげることが大切ですので、普段からスキンシップをとりつつ、愛猫の健康状態をチェックしてあげるようにしましょう。

そして異変が現れていた場合には、すぐに動物病院に連れて行き、適切な処置をしてもらってくださいね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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