1.シラミってどんな虫?
2.猫にもシラミは付く?
2-1.猫に付くネコハジラミ
2-2.ネコハジラミに感染した時の症状
2-3.寄生されやすい猫は?
2-4.どうやって感染する?
2-5.回虫や条虫が寄生する恐れ
3.猫にシラミがついていたら
3-1.動物病院で相談
3-2.人に感染はする?
4.猫のシラミの予防法
4-1.猫を外に出さない
4-2.定期的なシャンプーと駆除薬の使用
4-3.感染した猫と他の猫を分ける
5.まとめ
シラミってどんな虫?
シラミと聞くだけで、なんとなく体が痒くなってきますよね。
シラミは、漢字では「虱」と書きます。咀顎目(そがくもく)シラミ亜目に属する昆虫の総称で、世界中で500種のシラミが知られています。すべての種が血液や体液を吸う寄生生物で、本来白い虫ですが、血液を吸うと赤く変化します。
血液を吸うときに、宿主(寄生する対象)の体内に微量の唾液が入り込み、痒みの原因となります。
ヒトに付くシラミは、アタマジラミ、ケジラミ、コロモジラミの3種です。これらは汎世界種(コスモポリタン)で、人類に寄生しているシラミは全世界共通です。
シラミは、生理的にも形態的にも特定の哺乳類に極めてよく適応していて、ある1種のシラミは特定の1種あるいは同属の数種の哺乳類を宿主とします。したがって、ヒトのシラミは人間だけに寄生し、イヌのシラミは犬にのみ寄生します。このことを「寄生特異性が強い」と言います。
咀顎目には、血液を吸うシラミ以外に「ハジラミ」(羽虱)がいます。ハジラミは、主に鳥の羽毛や哺乳類の被毛の間で生活していて、吸血はせず、被毛やフケ、分泌物を食べて生きています。
猫にもシラミは付く?
飼い主さんとしては、猫に付くシラミがいるのかどうか、心配ですよね。
ここでは、猫に付くシラミについて、解説していきます。
◆猫に付くネコハジラミ
猫に付くシラミは、ハジラミの一種で「ネコハジラミ」と言います。大きさが1~1.5mm程度の小さな寄生虫で、色は薄い茶色やクリーム色です。
成虫は一見気が付きにくいですが、被毛をかき分けると、毛の根元から数cmのところに付いた卵が確認できます。毛に白い粉が付いたように見えるのは、ネコハジラミの卵です。
ネコハジラミは、被毛に寄生して卵を産み、増えていきます。ハジラミなので、吸血はせず、猫の体表面を歩き回って被毛やフケ、皮膚のかけら、分泌物などを食べて生きています。成虫の寿命は2~3週間、卵は産卵から10~20日で孵化します。
主に、野良猫として外で生活していた猫を保護した時に見つけることが多い寄生虫ですが、外に出る猫ちゃんの場合、外で付けて帰ってくることがあります。
被毛に白い粒みたいなものが付いていたり、フケのようなものが動いていたりする時は、ネコハジラミが寄生しているかもしれません。
◆ネコハジラミに感染した時の症状
ネコハジラミは、吸血をしないため、激しく痒がることはありません。しかし、放っておくと皮膚炎を起こし、脱毛や痒みが生じます。
症状としては、
□被毛に白い粉のようなものが付いている
□フケのようなものが目立つ
□赤い発疹(紅斑)
などがあり、これらの症状から見つかることがほとんどです。
また、保護してからノミがいないかノミ取り櫛を使っているときに、白い粒が櫛に引っかかって見つかることもあります。
◆寄生されやすい猫は?
主に野良猫で見られるネコハジラミですが、健康な個体で見られることはあまりなく、室内飼いの猫にはまれな寄生虫です。
体力の弱い子猫やシニア猫、病気で健康状態がすぐれずグルーミングができない子、免疫不全のある子などが感染します。また不衛生な環境で飼育されている猫も、寄生されやすいです。
◆どうやって感染する?
猫同士でグルーミングをしあうことで、簡単にうつります。
野良猫同士で仲良く暮らしているような場合や、外に猫を出している場合、多頭飼いをしている場合に、感染が広がりやすいです。
◆回虫や条虫が寄生する恐れ
グルーミングの際、舌のざらざらした突起で卵が取れて、口の中に入ることがあります。
卵には回虫や条虫が寄生しているため、猫のお腹に寄生する可能性が高いです。回虫や条虫は、猫でよく見られる蠕虫という寄生虫の一種です。
回虫は子猫の小腸に寄生し、そこでボールを形成して腸閉塞を引き起こす恐れがあります。回虫は、うんちの中や肛門部分に存在する卵によって調べることができます。うんちに含まれた回虫の卵は、5~10日程度で感染力を持つようになり、取り損ねたかけらからも繁殖してしまいます。
条虫は腸壁に付着し、膨満感や下痢、時には毛の損傷が生じます。条虫の見た目は米粒のようで、うんちの中から検出されます。
回虫や条虫に感染する最も一般的な経路は、感染した他の猫のウンチに接触することです。また、屋外では、げっ歯類を狩った場合に、獲物の組織内に生息する幼虫に感染することもあります。母猫が感染している場合、哺乳の際に幼虫が母乳を介して伝播して感染します。
回虫や条虫が寄生した際の症状としては、
☐体重減少
☐乾燥または被毛粗剛
☐嘔吐
☐血便
☐腹部膨満
☐無気力
☐ウンチの中や肛門の周囲に回虫が確認できる
などがあります。
回虫や条虫は人間にも感染してしまう人獣共通感染症(ズーノーシス)なので、飼い主さんやご家族が感染しないようにするためにも、猫トイレの徹底した掃除や消毒・除菌が必要です。
猫にシラミがついていたら
◆動物病院で相談
飼い猫や保護した猫が、体をよく掻くような仕草をする、被毛に白い粒が付いている、フケが多いなどに気づいたら、まず動物病院で相談しましょう。
白い粒やフケのようなものを、セロハンテープでペタペタして採取し、顕微鏡で観察する検査で診断できます。また、前項の通り、回虫がお腹に寄生している可能性が高いので、検便も行います。
治療は、シラミに効果のあるシャンプーを出してもらうか、ノミ・マダニ駆除薬を処方してもらうことになります。
ノミ・マダニ駆除薬は、シラミにも効果がありますが、1回だけでは効果がありません。これは、卵の状態では薬の効果がないからです。このため、卵から虫になった時点で治療することを繰り返す必要があり、獣医師さんの指示に合わせて薬を投与しなくてはなりません。薬浴や薬の塗布は、4~5週間行います。
駆除薬が効いてくると、ネコハジラミやその卵は猫の体から落ちます。そのため、毎日こまめに掃除をして飼育環境を清潔に保つ必要があります。
また、ネコハジラミの数が多すぎる場合には、剃毛する(毛を短くする)場合もあります。丸刈りのように、毛の長さを少し残した状態にカットする感じです。卵は粘着質で被毛から取れにくいため、特に、卵が多い場合に行います。
◆人に感染はする?
猫にシラミが付いていると、人にうつるのではないかと心配になりますね。
しかし、前述したとおり、シラミは寄生特異性が強いため、ヒトには人の、イヌには犬のシラミが付き、他の動物に寄生することはありません。
つまり、ネコハジラミは猫には寄生しますが、人や犬に寄生することはありません。
ただし、前述の通り、ネコハジラミに寄生している回虫や条虫は人獣共通感染症なので、注意が必要です。
猫のシラミの予防法
◆猫を外に出さない
お伝えしたとおり、ネコハジラミが寄生するのは、主に屋外で暮らす野良猫です。飼い猫を外に出すと、野良猫との接触からシラミに感染するリスクが生じます。
したがって、シラミに対する最大の予防法は、飼い猫を外に出さないことです。
もし、どうしても外に出たがる子であれば、月に一度、スポットタイプのノミ・マダニ駆除薬を滴下しておきましょう。
◆定期的なシャンプーと駆除薬の使用
飼育環境を清潔に保ち、定期的なシャンプーを行うことでも予防ができます。特に、成虫は水に弱いため、シャンプーは効果的です。
完全室内飼育であっても、飼い主さんが外から運び込んでしまうことや、住環境によって家の中に入ってくることもあります。室内飼育の猫にもノミ・マダニ駆除薬を定期的に使用することで、より確実な予防ができるでしょう。
◆感染した猫と他の猫を分ける
外へ出る愛猫が感染したり、保護した野良猫が感染していたりする場合には、感染していない他の猫と隔離して、シラミが移ることを防ぎます。
先住猫がいるご家庭で新たに猫を迎えるときには、皮膚にノミやシラミ、うんちに回虫や条虫などの寄生虫がいないかどうか、動物病院で検査してもらいましょう。寄生虫がいた場合には、駆除が終わるまで他の猫とは隔離します。
まとめ
猫に寄生するシラミは、ハジラミの仲間で、「ネコハジラミ」と言います。
ネコハジラミは、吸血をしないため激しい痒みを引き起こすことはありませんが、ネコハジラミに寄生する回虫や条虫が体内に入り、お腹に寄生することがあります。
シラミは「寄生特異性」が強く、猫に付くネコハジラミが人や犬に寄生することはありません。しかし、回虫や条虫は人獣共通感染症なので、猫にシラミが付いていた場合には駆除の必要があります。
もし、愛猫の被毛に白い粉のようなものが見られたり、フケが多くなったように感じたりした場合には、シラミに寄生されている可能性があります。動物病院を受診して、ノミ・マダニ駆除薬などを処方してもらいましょう。
ネコハジラミに寄生されやすいのは、主に外で暮らす野良猫です。外と自由に行き来する飼い猫の場合、野良猫からうつるリスクがあるので、一番の予防法は完全室内飼いをすることです。
様々なリスクから愛猫を守るためにも、室内飼育を徹底しましょう。
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