お世話をしていた野良猫が出産!どうすればいい?餌やりと保護と不妊手術

2021.09.08

お世話をしていた野良猫が出産!どうすればいい?餌やりと保護と不妊手術

餌をあげていた野良猫や、庭に来ている野良猫が出産してしまったら、どうすればよいでしょうか?まず、考えなければならないのが、生まれた子猫をどうするかです。たとえ飼い主のいない野良猫が産んだ子猫であっても、捨てることは動物愛護管理法違反の犯罪です。また、母猫のことも考えてあげたいですね。今回は、野良猫が出産した時にどうすればよいかをお伝えするとともに、餌やりと不妊手術についてもご紹介します。

野良猫の出産はいつ?

野良猫の親子

まず、野良猫が出産する時期について、押さえておきましょう。

◆猫の繁殖期

猫は、季節によって発情期を迎える「季節繁殖動物」です。
メス猫は、日照が1日12時間以上になると発情し、年に2~3回、発情期を迎えます。日本では1~8月が該当し、ピークとなるのが春(2~4月)と夏(6~8月)です。
しかし、子育て中でない、栄養状態がよい、人工光の明るさなどの条件が揃えば、一年中いつでも交尾、出産することができます。このため、1日12時間以上照明をつけている環境で過ごす猫の場合、発情期は季節とは関係なくなってしまい、発情する回数も年3~4回に増える傾向があります。コンビニエンスストアや商店街など、夜間も明るい場所で暮らす野良猫も、1年中発情しやすい状態になります。
ちなみに、季節によって発情するのはメス猫だけで、オス猫は発情しているメス猫の鳴き声やフェロモンに影響されて、発情が誘発されます。

◆猫は繁殖力がとても強い

猫は、繁殖力が非常に強い動物です。環境省の試算では、計算上、1匹のメス猫から1年後には20匹以上、2年後には80匹以上、3年後には2,000匹以上に増えるとされています。
メス猫は、交尾した刺激によって排卵します。これを「交尾排卵」と言い、哺乳類の中でもウサギなどごく一部の動物だけに見られます。精子を迎えるように排卵が起こるので、交尾すればほぼ確実に妊娠します。
妊娠期間は約2ヶ月(60~80日)で、一度の出産で平均5匹(4~8匹)を産みます。繁殖サイクルが非常に短いことや多産であることも、繁殖力の強さにつながっています。

◆猫の性成熟

個体差がありますが、オス猫は生後5~10ヶ月、メス猫は生後4~6ヶ月で最初の発情期を迎えます。


野良猫が出産したらどうすればいい?

では、餌をあげていた野良猫が出産したり、庭で野良猫が出産したりした場合には、どうすればよいのでしょうか?

保護ができれば一番いいのですが、ペット不可の物件に住んでいたり、猫アレルギーのある家族がいたりすると、保護が難しいですね。
このように保護ができない場合には、地元の愛護センターに相談しましょう。
ただし、愛護センターでは、離乳前の幼齢の子猫を育てることは難しく、殺処分になる可能性が非常に高くなります。環境省のデータによると、2019年4月1日~2020年3月31日の幼齢の猫の引き取り数は35,777匹で、このうち32,310匹は所有者不明、つまり野良猫が出産したと考えられる子猫です。譲渡された幼齢の子猫は16,436匹、殺処分されたのは18,176匹で、約半数は殺処分されています。
しかし、近年はミルクボランティアと協力して離乳するまで育ててもらい、譲渡につなげている愛護センターも増えてきています。地元の愛護センターでそのような活動をしているか、一度確かめてみましょう。
また、猫の保護活動をしている保護団体に相談するのも、一つの方法です。しかし、どの保護団体でも保護依頼が多すぎて、保護できるキャパシティーを超えていることが多いため、受け入れてもらうことは難しいかもしれません。保護団体にお願いする場合には、幾らかの支援金を出すことをおすすめします。子猫1匹を譲渡できるまでに育てるには、少なくないお金が必要です。保護団体に「丸投げ」でお願いすることは、やめましょう。

◆保護が可能な場合

・子猫の保護・その前に

子猫を保護する前に、注意しておきたいことがあります。
子猫の免疫は、母猫の初乳(出産後36時間以内に分泌される母乳)を飲むことで、母猫の抗体を貰って成立します。
そのため、子猫の保護をするボランティアさんの中では、母猫がいれば最低でも初乳を飲ませてから保護した方が良いとされています。また、母猫が育児をするようなら、ある程度まで母猫に育ててもらう方が良いという意見も多いです。
一方で、母猫が何らかの感染症に感染していた場合、母乳を介して、あるいは母猫が舐めることにより、子猫が感染してしまうリスクがあります。特に、猫免疫不全ウイルス(FIV;猫エイズ)や猫白血病ウイルス(FeLV)の場合、感染してしまうとキャリア猫となります。FIVは発症せずに寿命を全うする子も少なくありませんが、FeLVの場合、発症のリスクは高く、長く生きられないことも多いです。
懐いている野良猫であれば、母猫ともども保護することも可能ですが、慣れていない場合には母猫が病気に感染しているかどうかを知ることはできません。
どう判断するかは、非常に難しい問題です。
ただし、母猫が育児放棄をして戻って来なくなった場合や、子猫を移動させていて一部の子猫が置き去りにされた場合には、早急に保護してあげてください。

・子猫の保護

子猫を保護したら、まず動物病院に連れていきましょう。
動物病院では、生まれた日の推定や健康診断をしてもらい、育て方を指導してもらいます。
この時に、ノミダニの駆除や、可能な月齢であれば予防接種もしてもらうとよいでしょう。感染症には、人にうつるものもあるので、注意が必要です。
子猫の目が開いてなければ、確実に離乳前です。また、個体差はありますが、体重が400g未満の場合も、まだミルクが必要です。体重がそれ以上であれば、固形フードでも大丈夫です。
離乳しているかどうかによらず、猫に牛乳を飲ませると下痢をする危険があります。下痢になると、脱水症状になるため注意が必要です。子猫の下痢、脱水症状は命とりなので、必ず猫用ミルクを与えてください。

・母猫の保護

さらに可能であれば、母猫も保護しましょう。母猫の保護には、捕獲器が必要になります。捕獲器は、愛護センターや保健所で貸し出している場合もありますし、保護団体に相談すれば貸し出してくれることが多いです。保護団体であれば、捕獲器の使い方を教えてもらえたり、立ち会ってもらえたりするので、一度相談してみましょう。
捕獲できたら、動物病院に連れていきます。健康状態を確認するとともに、マイクロチップの有無を調べてもらいましょう。野良猫だと思って保護して飼っていたら、実は迷子になっていた飼い猫だったという例もあります。
マイクロチップがなくても飼い猫である可能性があるため、最寄りの警察や保健所に迷子届が出ていないかを確認するようにしてください。

◆可能であれば里親探しを

可能であれば、親子ともども里親を探しましょう。少なくとも、子猫だけでも里親を探してあげてください。
里親探しは、知り合いなどに声をかけたり、ネットの里親募集サイトを利用したりするとよいでしょう。また、ポスターやチラシを作って、近くのペットショップや動物病院、可能であれば近所のスーパーやコンビニエンスストアに掲示してもらうのもおすすめです。
里親募集サイトに掲載する場合もポスターを作る場合も、写真をたくさん撮影しておきましょう。猫の魅力が伝わる写真があれば、里親希望者さんが現れやすいです。
また、保護団体が主催する譲渡会に参加してもよいでしょう。譲渡会に参加するには、費用が掛かる場合もあります。まずは、地元の保護団体を探して、相談してみましょう。

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無責任な野良猫への餌やりはやめましょう

◆餌をあげるなら保護を検討しよう

庭に野良猫が迷い込んできたりすると、かわいそうで餌をあげたくなりますね。
しかし、ただ餌を与えるだけでは、メス猫であれば出産して、オス猫であればメス猫を妊娠させて、野良猫を増やす結果につながります。上述の通り、猫は繁殖力が非常に強いため、あっという間に野良猫が増えてしまうでしょう。
増えてしまってからでは保護も不妊手術も、物理的に、あるいは金銭的に難しくなっていきます。そうなる前に、保護を検討してみましょう。

◆不妊手術は助成金が出る場合がある

保護ができない場合でも、不妊手術をすれば、それ以上、野良猫が増えることはありません。
不妊手術にかかる費用は、動物病院によって異なります。メスの避妊手術は、「卵巣切除」と「卵巣子宮切除」の2種類があり、卵巣切除で10,000円~25,000円程度、卵巣子宮切除で10,000円~30,000円程度です。オスの不妊手術は、「去勢」(精巣を取り除くこと)となり、5,000円~20,000円ほどです。
自治体によっては、野良猫の不妊手術に助成金を出しています。金額は自治体によって異なりますが、オスで数千円程度、メスで数千円~1万円が多いようです。
一般に、不妊手術の際に動物病院で証明書を発行してもらい、領収書を添付して申請し、後日還付を受ける形です。申請方法は、動物病院でも教えてもらえます。野良猫の不妊手術をする場合には、相談してみましょう。

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◆地域猫活動

「地域猫」という言葉を聞いたことがある人も、多いでしょう。
地域猫は、「その地域に生息する猫=野良猫」ではありません。地域で適切に飼育管理された猫のことです。
飼い主のいない野良猫たちを、地域の住民が適切な管理や飼育を行って、地域猫として位置づけ、その地域の野良猫たちを減らしていく活動を「地域猫活動」と呼びます。
適切な管理や飼育とは、不妊手術を行い、餌やりをして、排せつ物などの清掃を行うことです。
お世話をしている野良猫や、庭で出産した野良猫などがいる場合、地域の方と協力して、地域猫として飼育管理をしていくことも視野に入れるとよいでしょう。
周囲の住民の理解を得られれば、不妊手術をした野良猫に餌やりをすることは、無責任な餌やりではなくなります。


まとめ

野良猫の子猫

お世話をしていた野良猫や、庭に遊びに来ていた野良猫が出産をした場合には、保護することがベストです。
しかし、それぞれの事情により、保護できない場合も多々あります。その場合には、愛護センターや地元の保護団体に相談してみましょう。たとえ、飼い主のいない野良猫でも遺棄すれば、動物愛護管理法に違反する犯罪です。
野良猫を保護した場合には、まず動物病院を受診しましょう。母猫を保護した場合には、マイクロチップの有無も確認してもらってください。
保護した野良猫を飼うことができない場合には、ネットや譲渡会、ポスターなどを活用して、里親を探しましょう。
野良猫の生活は、大変過酷です。生まれた子猫が幸せな家猫になれるよう、是非お手伝いしてあげてください。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。


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