シャム猫のような野良猫がいるのは何故?猫の柄を決める遺伝子とシャム猫

2021.07.12

シャム猫のような野良猫がいるのは何故?猫の柄を決める遺伝子とシャム猫

体はクリーム色で顔や足の先に色のついたシャム猫のような野良猫を見ることは、少なくありません。シャム猫は、以前の日本では純血種の代表格の一つでした。そのシャム猫のような野良猫がいるのは、何故なのでしょうか?そこには、猫の飼い方に対する意識も大きく関係しているようです。今回は、シャム猫のような野良猫がいる理由をご紹介するとともに、猫の柄を決める遺伝子やシャム猫の性格についてもお伝えします。

【目次】
1.シャム猫のような野良猫がいる理由
 1-1.シャム柄になる遺伝子を持っている
 1-2.純血種のシャム猫である
2.猫の柄はどうやって決まる?
 2-1.遺伝子の組み合わせによって決まる
 2-2.シャム柄にするのはc遺伝子
 2-3.「背中の上からソースを垂らしたように色がつく」?
 2-4.頭としっぽから柄がつく?
3.シャム猫の性格
 3-1.甘えん坊
 3-2.賢く気難しい
 3-3.活発
 3-4.気が強い
 3-5.声が大きい
4.シャム猫のかかりやすい病気
 4-1.眼球振盪
 4-2.角膜黒色壊死症
 4-3.進行性網膜変性症(進行性網膜萎縮症)
 4-4.慢性腎不全
 4-5.先天性難聴
5.シャム猫のような野良猫を家族に
6.まとめ

シャム猫のような野良猫がいる理由

シャム柄の野良猫

シャム猫は、以前の日本では、ペルシャと並び純血種の猫の代表格で人気の高い猫種でした。
しかし、現在、外を歩いていてシャム猫のような野良猫を見かけることもありますし、里親募集サイトでシャム猫のような保護猫が掲載されているのを見ることも少なくありません。
では、なぜ、シャム猫のような野良猫が存在するのでしょうか?

◆シャム柄になる遺伝子を持っている

かつての日本では、猫は放し飼いをするのが一般的でした。さらに、避妊・去勢手術が施されることはまれだったため、純血種も外で繁殖をし、日本に固有の「日本猫」との交配も進みました。現在見られる雑種猫は、日本猫と外来の「洋猫」の雑種がほとんどです。
そのため、シャム猫も外で繁殖することが少なくなく、シャム柄になる遺伝子を持った野良猫が多く見られるのです。また、シャム猫は非常に繫殖力が高いことも、シャム柄の野良猫が少なくない理由となっています。

◆純血種のシャム猫である

純血種のシャム猫は、本来ペットショップやブリーダーから迎えるもので、野良猫としては存在しないはずです。
しかし、悲しいことですが、飼い猫を様々な理由から遺棄してしまうケースも少なからずあります。こうして遺棄されたシャム猫が、野良猫として外で過酷な暮らしをしているケースもあるのです。


猫の柄はどうやって決まる?

猫には、たくさんの柄があります。また、同じ父猫と母猫から、まったく異なる柄の子猫が生まれることもよくあることです。
では、猫の柄はどうやって決まっているのでしょうか?

◆遺伝子の組み合わせによって決まる

遺伝子の染色体上の位置を表す地図のことを「染色体地図」と言い、この地図上における遺伝子の位置のことを「遺伝子座」と言います。
猫の毛色や柄は、以下の9種類の遺伝子座で決まっています。

W:ホワイト、白
O:オレンジ、茶
A:アグーチ、1本の毛に縞が入る
B:ブラック、黒
C:カラーポイント、顔や体の先の方に色が出る
T:タビー、縞
I:インヒビター、シルバーが出る
D:ダイリュート、色を薄くする
S:スポッティング、体の一部を白くする

この遺伝子座と優性(顕性)、劣性(潜性)の遺伝子の組み合わせで、どの遺伝子が強く出るかが異なり、猫の毛柄が決まります。
キジトラ、茶トラ、黒、白、黒白、三毛、サビなど、16通りの毛柄が存在しています。

◆シャム柄にするのはc遺伝子

シャム柄の特徴は、顔や耳、四肢の先、しっぽに色がついていることです。これを「ポインテッド」と言い、実はシャム猫以外にも、ポインテッドの猫は存在します。
前項の遺伝子座のうち、顔や体の先の方に色が出る遺伝子座「C遺伝子座」が、シャム柄に関する遺伝子座です。
C遺伝子座は、「チロシン」という物質を「メラニン」に変換する酵素「チロシナーゼ」の生成に関する遺伝子です。C(ラージシ―)遺伝子は、チロシナーゼを正常に作るため色がつきます。
c(スモールシー)遺伝子は、温度感受性のチロシナーゼを作ると考えられています。このチロシナーゼは、温度が高いと働かず、体温の低い体の末端部では働いてメラニンを作るため、シャム柄になります。
c遺伝子は潜性の遺伝子なので、シャム柄になるのは、「cc」の遺伝子を持つ個体です。
温度によって酵素の働きが変化するため、同じ猫でも冬場は濃くなり、夏場は淡くなるということもあります。また、子猫は体温が高いため真っ白で、シニア猫は体温が低くなるため色が少し濃くなります。シャム柄の猫を飼っている方は、写真などで見比べてみてはいかがでしょうか?

◆「背中の上からソースを垂らしたように色がつく」?

キジ白やサバ白、黒白のぶち猫などを思い浮かべてみてください。色がついているのは主に背中や頭などで、お腹側は白くなっています。
この法則があるため、「背中の上からソースを垂らしたように色がついていく」と言われているのです。

◆頭としっぽから柄がつく?

猫の柄は、頭としっぽから発生し、背中、お腹と順番に発生していくと言われています。体の両端から、柄が出てくるということですね。
そのため、頭に柄があると、しっぽにもほぼ確実に柄が出るそうです。
また、生まれたときは単色でも、頭に柄が出てきたら、柄のある猫になると考えてよさそうです。

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シャム猫の性格

シャム柄の野良猫

ここでは、シャム猫の性格についてご紹介します。
シャム猫の血を引く野良猫にも当てはまる部分があると考えられるので、そのような猫をお迎えする際の参考にしてみてください。

◆甘えん坊

南国タイ原産であり、また体型がほっそりとして短毛であることから、比較的寒がりの子が多いです。そのためか、人と触れ合うことが大好きで、ひざなどに乗って常に飼い主さんの体温を感じていたい甘えん坊の面があります。
また、寂しがり屋で、犬など他のペットや猫とも基本的にはうまくいきますが、いつでも自分が1番の猫です。

◆賢く気難しい

非常に賢いのも特徴です。
しつければ、きちんということを聞き、犬のようにリードをつけて散歩をすることも可能で、ボールを投げると取ってくる、名前を呼べばやってくるという、「犬っぽい」面を持っています。
しかし、賢い分、飼い主以外に懐くことは少なく、自己顕示欲が強いと言われます。
自分の気に入らないことがあれば、飼い主の言うことを聞かず逃げてしまうなど、わがままで気難しい部分もあります。

◆活発

非常に活発な一面を持っています。特に、若齢~中齢の子は活発です。
慣れると、飼い主さんにじゃれて、よく遊びます。また、高いところが大好きで、キャットタワーやキャットウォークがあると喜んで遊ぶでしょう。
もし上るところがなければ、カーテンをよじ登ってカーテンレールの上に上がったり、柱をよじ登って傷をつけたりすることもあります。また、降りられなくなって騒ぐこともあるので、注意が必要です。

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◆気が強い

気が強い一面もあります。性格が激しく、中には治療を嫌がって獣医師さんに襲いかかる子もいるようです。
猫らしい気位の高さや、自己中心的な面も見られます。甘えん坊な性格との二面性を持つ、猫らしい猫と言えるでしょう。

◆声が大きい

特徴的なのが、声が大きく太いことです。このため、鳴き声はかなりうるさいです。
また、よくしゃべる(よく鳴く)猫としても知られ、飼い主さんに向かって話しかけるようにアピールすることも多いです。
飼い主さんが気をそらしてあげることのできない留守番中に鳴き続けることも少なくありませんし、在宅中でも不満なことがあれば、鳴き続けることがあります。
個体差はありますが、発情期のオスはうるさいほど鳴くので、早めの去勢手術を検討しましょう。

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シャム猫のかかりやすい病気

シャム猫は、もともと病気にかかりやすい猫種と言われており、特に目と腎臓の病気が多いと言われています。これは、シャム猫が持つ遺伝子に関係しているため、シャム猫をルーツに持つ猫も潜在的に持っている可能性があります。

◆眼球振盪

眼球が、自分の意思とは関係なく、小刻みに揺れる病気です。
遺伝的要因が強いと言われており、生まれつきの場合、日常生活に支障をきたすことはありません。
しかし、神経や筋肉の病気が原因の場合もあるので、少しでもおかしいと感じたら、獣医師さんに相談してみましょう。

◆角膜黒色壊死症

黒目の部分を覆っている角膜の中に、黒いかさぶたのようなものができてしまう猫特有の病気です。
ごく軽度であれば、抗生剤の点眼などで改善しますが、進行していくと痛みを伴い、手術が必要になる場合もあります。
外傷や猫ヘルペスウイルス感染が、原因の一つと言われています。ウイルス感染はワクチンで予防することができるので、検討してみるとよいでしょう。また、室内飼いの徹底も予防に有効です。

◆進行性網膜変性症(進行性網膜萎縮症)

目の内側にある網膜が変形して薄くなり、徐々に視力が落ちていく病気です。遺伝性と考えられており、最悪の場合は失明することもあります。
4~5歳で発症する例が多く、夜間見えづらくなるのが特徴です。
猫では非常にまれな病気ですが、遺伝性または後天的な原因で発症すると言われています。しかし、キャットフードの品質が向上した結果、現在では後天性のものはほぼ見られなくなっています。遺伝性の場合、遺伝子検査で調べることも可能になっています。

◆慢性腎不全

慢性腎不全は、加齢に伴って発症しやすく、猫には多い病気です。
しかし、シャム猫は他の猫種の2倍の発症率と言われており、十分注意する必要があります。

◆先天性難聴

毛色が白であったり、目が青色であったりする場合は、先天性難聴の確率が高いと言われています。
シャム猫は、目が青いことが特徴の一つであり、毛色も主に白いため、先天性難聴である可能性があります。


シャム猫のような野良猫を家族に

シャム猫みたいな野良猫には、シャム猫をルーツとする雑種猫と、遺棄された純血種のシャム猫がいると考えられます。
いずれにしても、野良猫の寿命は2~5年と言われており、過酷な環境で生きています。もし、シャム猫のような猫を家族に迎えたいと考えているなら、野良猫や保護猫を迎えるということを、ひとつの方法として検討してみてはいかがでしょうか?


まとめ

シャム猫のような野良猫が存在するのは、かつての日本でシャム猫の人気が高かったこと、猫は放し飼いをされていたこと、シャム猫の繫殖力が高いことなどが理由として挙げられます。
また、悲しいことですが、遺棄された純血種のシャム猫が野良猫として暮らしている場合もあります。
シャム柄になるのは、顔や体の先端に色をつける「c遺伝子」を持っている猫です。c遺伝子は潜性の遺伝子なので、「cc」の遺伝子を持つ個体だけがシャム柄になります。
シャム猫の性格をそのまま受け継ぐ雑種は多くないと言われていますが、部分的には名残のある子もいるでしょう。シャム猫のような野良猫を飼うなら、シャム猫の性格も参考にしてみるといいかもしれません。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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