日本における多頭飼育届出制度とは?具体的な内容が知りたい!

2021.12.25

日本における多頭飼育届出制度とは?具体的な内容が知りたい!

「多頭飼育崩壊」という言葉を聞いたことはありませんか? 犬や猫などをペットとして無秩序に多数飼育し、異常繁殖した後に飼い主さんが飼育不能となることを指します。 多頭飼育は特別で珍しいことではなく、どこの地域でも起こりかねない現象とも言えるので、動物愛護の観点からも多頭飼育にまつわる問題が起きないようにと施行されたのが「多頭飼育届出制度」です。 今回の記事では多頭飼育届出制度について、詳しく説明していきたいと思います。

多頭飼育届出制度とは

寄り添う子猫

犬猫は私たち人間のとても身近なパートナーとして、ペットといった家族として迎え入れる動物となります。

現在の日本では動物を家族として迎え入れる際に、何かしらの制約や法律があるわけではないので、簡単に犬や猫などの動物を迎え入れることができますよね。

もちろんペットショップやブリーダーなどから購入する場合や、保護猫や保護犬を迎え入れる際には、ある程度の制約が設けられてはいますが、そのルールさえ守れば簡単に命を手に入れられるとも言えるでしょう。

命を預かる身としてそこに責任が生じますが、制約や法律がないとなると、無秩序な飼育をする方が居たとしても不思議ではありません。

とくに複数匹の犬猫を飼養する方の中には、生活環境が整っていないのにも関わらず、避妊や去勢手術を怠ることや、さらなる受け入れを続けてしまうことによって倍々的にペットが増えてしまうといった、悪循環に陥ってしまう方も多いことでしょう。

多頭飼育崩壊が起きてしまえば、十分に栄養のある食事がとれないだけでなく、病気になった際の治療費が出せないなどの経済的な問題も出てきますし、すべてのペットに愛情が注げなくなってしまいますよね。

このように最悪な事態を招かないためにも新たに施行されたものが「多頭飼育届出制度」です。

自治体によっては「多頭飼養届出制度」などと呼ばれていますが、主に動物の健康を守って安全に飼い主に保持してもらう目的や、動物による迷惑防止の観点から施行された制度となります。

具体的に多頭飼育届出制度とは、どんな制度となっているのでしょうか。

◆多頭飼育による動物・近隣住民への被害を防ぐための条例

人間とペットが調和のとれた共生生活を送るためには、双方が幸せを感じる必要がありますし、生きることにストレスを感じるといったことがあってはなりません。

それぐらい多頭飼育崩壊はお互いにとって、神経をすり減らすことに直結しかねませんので、極力そのような状況にならないような社会づくりが必要とも言えるはずです。

多頭飼育届出制度は飼い主の意に反してペットが増え、精神的や金銭的にお世話ができなくなることや、鳴き声や悪臭といった近隣住民への被害を防ぐ目的として施行されました。

充分なしつけやお世話ができなくなることは、結果的に動物虐待へ繋がってしまう可能性も否めません。

同じ地域に住む方々が安全に、そして安心して暮らしていくためにも必要な制度と言えますので、今後各自治体によって増えていく条例とも言えるでしょう。

◆届出が必要な人はどんな人?

多頭飼育届出制度には届出が必要となりますが、犬や猫を飼育する際に頭数が10頭以上になった場合に届出を提出します。

基本的に生後91日を過ぎた犬猫の頭数が、10頭以上に達した時点から30日以内に届出を出さなくてはいけません。

また、飼養の頭数が10頭未満であった場合でも、頭数が増えて10頭を越した際には変更の届出(変更があった時点から30日以内)が必要となります。


多頭飼育届出制度の内容

役所に届出

多頭飼育届出制度は国がつくった法律ではなく、地方公共団体がつくった条例となりますので、お住いの地域によって多少内容が異なることがあります。

基本的な制度の内容は、以下の通りとなります。

◆届出事項

①届出者(飼い主)の氏名及び住所(法人の場合は名称または代表者の氏名)
②複数の犬猫を飼育する建物の所在地
③多頭飼育する施設の構造や規模
④犬猫の頭数(種類や性別、避妊または去勢手術実施の有無など)
⑤飼育環境や飼育方法など

◆届出先

多頭飼育届出制度の届出先はお住いの地域によって異なりますが、基本的には保健所や動物愛護センター、生活衛生課や飼育場所を所管する保健福祉事務所などへの提出が義務づけられています。

届出をする場合には事前にそのような条例が施行されているかの確認し、届出先を把握しておくと安心です。

条例が施行されている各都道府県の公式ホームページから、多頭飼育届出制度の届出書(PDF・ワード形式)をダウンロードし、届出事項を記入してから提出するようにしましょう。

郵送でも受け付けてくれる場合もあるので、持参できないときは郵送ができるかの確認も事前に行っておくことをおすすめします。

◆導入している主な自治体

・札幌市 https://www.city.sapporo.jp/inuneko/main/aigojorei.html
・さいたま市 https://www.city.saitama.jp/008/004/003/006/005/p036439.html
・千葉県 https://www.pref.chiba.lg.jp/eishi/pet/inu-neko/tatousiyou.html
・神奈川県 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/e8z/ks01/tatosiikutodokede.html
・大阪府 https://www.pref.osaka.lg.jp/doaicenter/doaicenter/tatoushiiku.html
・福岡市 https://www.wannyan.city.fukuoka.lg.jp/yokanet/news/archives/292
など

上記に挙げた自治体以外でも、多頭飼育届出制度を導入している所はありますし、今後導入する自治体も増えることが予想されます。

多数の猫を飼っている場合は一度自分が住んでいる自治体の制度設計があるか確認してみましょう。


届出を行わないとどうなる?

多頭飼育届出制度は多頭飼育の管理状況を早期に把握し、適切なアドバイスや指導のもと、多頭飼育崩壊のような事態を未然に防ぐ目的で施行された条例です。

日本ではこの条例が法律として認められておらず、義務化している自治体も少ないので、この制度を知らない方も多いのではないでしょうか。

しかし、少なからず義務化を進めてきた行政が存在しているからこそ、ペットを飼う人間は把握しておくべき条例とも言えますよね。

まだまだ日本ではペットに対する文化が遅れている部分もあるので、これから先各自治体の条例として留まるだけでなく、国の法律として義務化されていってほしいものです。

「国の法律ではないから守らなくても良いのでは?」「多頭飼育崩壊しない自信がある」などの考え方をする飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、届出を行わなかった場合は、何かしらの罰則が科せられるのでしょうか?

◆罰則

お住いの地域で多頭飼育届出制度が義務付けられている場合には、届出をしないまま放置することや、虚偽の届出事項で提出してしまうと、義務違反と認められ過料が科されることがあるようです。

金額は自治体によって3~5万円程度の過料となりますが、届出をしているか、していないかによって、自信を持って多頭飼育ができますし、近隣住民の方の理解度も高まりますよね。

何かしらの理由によって飼育が困難になったときも、届出を出していれば行政からの指導や解決策などをアドバイスしてもらえますので、ペットを大切な家族として迎え入れるのであれば、迷わず届出を出すべき制度と言えるのではないでしょうか。

◆飼育頭数に変化があった場合

多頭飼育届出制度の届出を提出したのちに、飼育頭数に変化があった場合は、前述してある通り変更届の提出が必要となります。

新しくペットを迎え入れた場合や、出産によって頭数が増えた場合には、必ず変更届を提出するようにしましょう。

また、飼育頭数が10頭未満となった場合も、飼育廃止の届出が必要となる自治体もありますので、多頭飼育届出制度の届出提出の際に併せて確認しておくと安心です。


多頭飼いをする前に

飼い主に抱っこされる猫

私たち人間にとって、ペットはかけがえのない存在となります。

1頭でももちろん可愛いですし、複数になればなるほど可愛さも倍増していくことでしょう。

しかし、その頭数分の責任は全て飼い主さんが背負わなくてはいけないので、ただ可愛いといった気持ちだけで複数の動物を飼育しても良いものなのでしょうか?

多頭飼いをする前に、今一度以下のことをよく考えてみてください。

◆頭数が増えれば負担も増える

頭数が増えれば、その分飼い主さんの負担が増えるのは当然です。

ペットによって性格や体質も異なりますので、食べ物の嗜好やかかりやすい病気なども違ってくることでしょう。

毎日の生活費や病気の際の治療費など、飼ってみて想像を絶する金額に驚愕する飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。

言葉の通じない動物と気持ちを通わせることは、1頭に対してでも大変なことなのに、10頭以上ともなると充分な時間が確保できないままの対応となるので、精神的な負担も強くなってしまうはずです。

さまざまな負担が頭数分増えてしまうこととなりますので、安易な気持ちでの多頭飼育はしないようにしましょう。

◆動物は責任をもって飼いましょう

日頃からそれぞれの子たちへの配慮ができていなければ、天寿を全うすることは疎か、ストレスを強く抱え込んで協調性の持てない性格となり、無駄吠えや攻撃性が増してしまうことも否めません。

「楽しい」や「幸せ」と感じられないくらしは、果たしてその子のためになるのでしょうか?

命を預かるということは、必ずそこに責任が生じます。

生まれてきて意味のない動物が存在して良いはずがないですし、自分の傍に居て欲しいのであれば、精一杯責任を持ってお世話をする必要性がありますよね。

少しでも多頭飼育に不安が残るようであれば、飼ってみたいといった気持ちだけで行動はせず、しっかりと一生の責任を負えるかを考えた上で迎え入れるかの検討をしてみてはいかがでしょうか。


まとめ

多頭飼育届出制度は国で義務化されていないこともあり、まだまだ認知度の低い制度となります。

多頭飼育崩壊の抑止策として、この条例を義務化している自治体が増えてきているのは喜ばしいことではありますが、SNSやテレビなどでは連日多頭飼育崩壊のニュースが報道されているのも事実です。

このような痛ましい事件が全世界で起こらない日が来ることを、願わずにはいられませんよね。

そして動物たちが幸せと感じながら暮らせる環境づくりこそが、私たち人間にとって最大の課題とも言えますので、まずは「なんとかしたい!」といった気持ちを持って、できることから何かをはじめてみてはいかがでしょうか。



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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。


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