1.猫の火傷とは
1-1.一般的な火傷
1-2.低温やけど
2.猫の火傷の原因
2-1.ストーブなどの暖房器具
2-2.キッチンの火やお湯
2-3.お風呂のお湯
2-4.こたつやヒーターなどでの低温やけど
3.猫が火傷してしまったら
3-1.患部を冷やす
3-2.動物病院に相談する
4.猫が火傷をしないために
4-1.火傷の危険があるものに近付けないようにする
4-2.お湯やあったかグッズの取り扱いに気を付ける
5.まとめ
猫の火傷とは

◆一般的な火傷
火傷は基本軽度であっても、猫の体は毛で覆われているため飼い主さんでもなかなか発見しにくいです。発見し治療しても火傷の跡が残ったりする場合が多くきれいに治りにくいといわれています。
それでは、火傷の説明と猫の皮膚の構造と合わせて詳しく説明してきましょう。
猫の皮膚は3層からできているといわれていますが、表面から表皮、次が真皮、深層部を皮下組織といいます。深層部(皮下組織)に達する火傷ほど、火傷の重症度が高まります。
【表皮の火傷】
軽度の火傷に分類されますが、見た目で皮膚が赤く炎症を起こし、必要以上に患部を舐めるのでその部分だけ脱毛してしまうことがあります。
表皮はケラチンが豊富に含まれており、防水効果が高いと言われております。防水効果以外にも、体温調節、細菌感染や外傷などから大切な皮膚を保護しています。
この程度であれば動物病院に連れていく必要はないと思わず、動物たちの皮膚は我々人間が想像する以上にデリケートですので、獣医師に処置してもらいましょう!
ただし毛で覆われていますので、見つけにくいのがこの表皮の火傷です。猫自身は多少の痛みや不安感を覚えますので、猫がいつも以上に体を気にするしぐさがあれば要注意です。
【真皮の火傷】
次に中間層にまで達する火傷です。
繊維質が豊富なコラーゲンで形成されており表皮を支え、尚且つ血管やリンパ管、神経などが多く存在しています。真皮に達する火傷であれば、水ぶくれの症状も確認でき、痛みも感じやすいです。
患部に触れると痛みのためパニックで暴れる場合もありますので、飼い主さん自身もケガしないように注意が必要です。
【皮下組織に達する火傷】
深層部に達するここまでの熱傷を負ってしまうと神経系も壊されている場合が多いので、脱水症状や食欲不振といった症状が現れます。
また、痛みすら感じなくなっている場合も十分に考えられます。
さらにより深い骨や筋肉にまで達する大火傷の場合、もはや組織自体の再生は厳しく可動域ですら制限され、場合によっては介護が必要なほどです。
診断結果次第では皮膚移植も必要になってくるレベルといえます。
皮下組織には主に脂肪が蓄えられていますが、脂肪はクッションの役割から体温の保持といった重要な役割がありますので、緊急で動物病院に連れて行く必要があります。
◆低温やけど
「猫は寒がり」だと言われているのをご存じですか?よくこたつの中で寝たりする光景を目にした方も多いのではないでしょうか?
その理由は、猫たちの祖先に深く関係しています。
猫たちの祖先は、中東の砂漠で生息していたといわれる「リビアヤマネコ」だと近年証明されました。
毛のないスフィンクスをはじめ、原種に近いシャム猫やオシキャットはもちろん、比較的寒い国で自然発生したバーマン、ロシアンブルーですら祖先であるリビアヤマネコの生息地を考えると寒さに強いとは言い切れない面があります。
そんな猫たちに、冬場は暖かく過ごしてもらいたい!そう考える飼い主さんも多いのではないでしょうか?
そこで注意していただきたいのが「低温やけど」です。
猫の体温は(平熱)38度といわれており、フカフカの体毛で覆われているため、熱さに鈍い点があります。
触れた程度では火傷しない40~50度程度の比較的安全な保温グッズでも、長時間接触することで低温やけどをおこしてしまう場合があります。
特に高齢な猫、子猫、毛のないスフィンクスはより一層注意が必要となります。
低温やけどの症状は、熱傷のやけどと似ている点が多いです。しかし低温やけどの場合は、痛みが長期化し治りも熱傷の火傷以上にかなり遅いといわれています。
私たちが比較的安全につかっているホットカーペットやこたつでも、猫たちにすれば低温やけど原因に十分なります。また、この低温やけどは、ゆっくり進行しますので火傷以上に注意が必要です。
高齢の猫や子猫がホットカーペットやこたつ、ストーブの前で寝ていたら、定期的な寝返りや寝場所を移動させたり、体の下に一枚タオルを敷く、服を着せるといった対策が必要でしょう。
猫の火傷の原因

◆ストーブなどの暖房器具
どこの家庭でも冬は暖房器具を用意されると思います。そして、暖房器具をめぐって飼っている動物たちとストーブの争奪戦を繰り広げる方も多いのではないでしょうか?
どれほど優れた器具でも100%安全なものは存在しません。ましてや相手が動物ならより一層の注意が必要です。
ストーブでの火傷の原因はやはり近付きすぎです。
特に石油ストーブは上の鉄板がかなりの高温になりますよね。猫同士遊んで追いかけっこしている時に、勢いあまって高温の鉄板の上に飛び乗ってしまって肉球を大火傷することも十分にあり得ます。
猫同士、ストーブの前を占領していてヒゲが焦げたりするレベルから、被毛が焦げて変色したり、最悪肉球を大火傷する原因にもつながりますので予防策は必須です。
◆キッチンの火やお湯
猫は一人が好きと言われていますが、猫を飼ったことのある方であれば、飼い主さんが大好きでそばについてくる子も多いことをご存じですよね。
そんな大好きな飼い主さんがキッチンに立てば、いつの間にか猫もキッチンに来るということを経験した方も多いと思います。
キッチンには大好きな飼い主さん以外に、猫の興味をそそる誘惑が他にもたくさんあります。
それは匂いであったり、袋を開ける音だったり…基本、猫は好奇心旺盛な動物です。
ヤカンや電子ケトルも表面がかなり高温です。立ち昇る湯気ですら、猫の火傷の原因になります。
ヤカンや電子ケトルから流れ落ちる水滴に興味を示す猫もいます。
沸騰したヤカンや電子ケトルの水滴を舐めてしまえば、舌を火傷することにもつながってしまう危険性も十分あります。
猫は、突飛な行動や飼い主さんの想像を超えた行動をすることがありますので、ガスコンロの火やお湯に近づけないように注意しましょう!
◆お風呂のお湯
古くから猫は狩りをして暮らしてきた名残りから、人肌程度の温度は大変好むといわれています。
冬場は寒く、より暖かい場所を求めて飼い主さんが浸かっているお風呂場にも来ることはありませんか?
お風呂場の淵に飛び乗り、歩いていたら足を滑らせて湯船に落ちることを経験した飼い主さんもいらっしゃると思います。
通常猫をお風呂に入れる場合のお湯の適正温度は、36度前後といわれております。
しかし湯船の温度はもっと高いです。火傷まではいかなくても、36度以上のお湯は、猫からすると乾燥肌の原因に繋がりますし、フケが出やすい体質になってしまいますので注意が必要です。
もちろん体の弱い子猫や高齢の猫であれば、湯船で火傷する原因にもつながりますので、より一層注意が必要です。
もし飼い主さんが浸かっているお風呂に入ってきたら、湯船に落ちないように注意してください。
◆こたつやヒーターなどでの低温やけど
表皮の火傷の項目でも述べましたが、猫の被毛は体温調節を含め外部の刺激から皮膚を保護する役割を持っています。
これが原因となって、皮膚にまで熱さが伝わりにくく、低温やけどを起こしてしまいます。
目安としては、44度程度の熱源がある暖房器具では5~6時間程度、これ以上の熱源の暖房器具では1時間ほどで、低温やけどを発症しやすいといわれています。
特に、猫のからだの毛の薄くなっている部分はより注意が必要です。
猫が火傷してしまったら
◆患部を冷やす
猫が火傷してしまった場合の処置は、人間と同様で冷水で冷やすのが一番です。
ですが、猫の多くは水を苦手としています。冷たい水で濡らしたガーゼやタオル、ビニール袋に氷を入れて患部を冷やすのも効果的ですので、これらを使って患部にあてます。
さて、ここで注意点です。
猫の皮膚は被毛にしっかりと覆われています。特にダブルコートや長毛の猫、ノルウェージャンフォレストキャットやペルシャなどは、しっかりと毛をかき分けて火傷した患部を探しましょう。
火傷している患部を見つけたら、猫が痛がらないように冷水で冷やしたガーゼやタオルで適切に冷やします。
痛がって暴れることもありますので、飼い主さんもケガしないように注意してください。
火傷を負ってしまってから約2時間以内に患部を冷やす処置を行うのが理想です。
また、薬品がかかってしまった火傷は、難しいかもしれませんが水で流す処置を行うようにして薬品を洗い流します。この場合、流すことと冷やすことを繰り返しおこないましょう。
◆動物病院に相談する
熱傷による火傷でも低温やけどでも、火傷は治りが悪いと言われていますので、患部を冷やしながら動物病院に相談することをお勧めします。
注意して頂きたいのが広範囲に広がる火傷です。
この場合、全身を濡らしたタオルで猫を覆い循環障害を防ぐためになるべく猫を動かさないように固定し、すぐに獣医師に診せるようにしてください。
猫が火傷をしないために
◆火傷の危険があるものに近付けないようにする
ストーブや火を使うキッチンにはあまり接近しないようにガード等を使って接近防止を試みましょう。
また、こたつの中で猫が気持ちよさそうに寝ていても、一度電源を切ったりすることもおすすめです。
ホットカーペットも設定温度は極力下げたり、それでも長時間同じ場所で寝ていれば移動させたりするとよいでしょう。
猫を多頭飼育している場合は猫同士の運動、追いかけっこするようになれば、ストーブ等の電源は早めに切るなどの対策が必要です。遊んでいるうちに、飛び乗ったりすることを想定しましょう!
◆お湯やあったかグッズの取り扱いに気を付ける
ペット用のヒーターもたくさんの種類が発売されていますが、フカフカの毛に覆われている猫は熱さに鈍感なところがあります。
特に子猫や高齢の猫や毛のないスフィンクスに使用する場合は、タオルを一枚巻いて使用するなり設定温度を低めに設定して猫を火傷や低温やけどから守ることが大切です。
これは湯たんぽでも同じことが言えます。私たちが温かいと感じる温度は、猫にとっては火傷の恐れがありますので注意が必要です。
電子ケトルやヤカンにも猫が触れないように、使い終わったらすぐ冷ましましょう。
まとめ
いかがでしたか?猫は毛で覆われているので火傷はもちろん低温やけどには気づきにくいということがわかりました。
火傷にもレベルがあり、深いやけど程痛みすら感じられなくなり命の危険性も高まります。
火傷に気づいた時には、すぐに患部を水で濡らしたガーゼ等で冷やして獣医さんに診せる必要があります。
一番は、猫がやけどしないように常に予防することが最適です。ガードや火を使うキッチンには入れない、ホットカーペットは設定温度を弱にして使用することが大切です。
火傷、低温やけどは大変治りが悪いと言われていますので、これから寒くなる季節は早め早めに予防することが大切になってくるのがポイントです。
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