【獣医師監修】猫のかさぶた、放っておいても大丈夫?病気の場合もあるため注意が必要

2021.12.15

【獣医師監修】猫のかさぶた、放っておいても大丈夫?病気の場合もあるため注意が必要

愛猫の体にかさぶたができていたら、心配ですね。かさぶたは、皮膚の傷から出た血液が、血小板と凝固因子の働きで凝固して、乾燥した状態の傷口にできるものです。かさぶたには血液の大部分を占める赤血球が多く含まれているため、赤、茶色系の色をしています。しかし、猫のかさぶたの原因は、外傷だけではありません。今回は、猫のかさぶたの原因や対処法をご紹介するとともに、予防法についてもお伝えします。

かさぶたとは?

はじめに、かさぶたとは何かについて、押さえておきましょう。
猫も含めて動物の皮膚には、体内の組織や血液を外界からの刺激から保護する役割があります。
何らかの原因で皮膚に傷ができると、保護機能が損なわれます。血液の中には血小板と凝固因子が含まれていて、出血すると、その働きにより血液は凝固し、さらなる出血を抑えます。
かさぶたは、皮膚の傷から出て血小板と凝固因子の働きで凝固した血液が、乾燥した状態の傷口にできたものです。かさぶたは、止血のほか、傷口の保護や、細菌・異物の侵入を防ぐ役割を果たしています。血液の大部分は赤血球であるため、通常、赤、茶色系の色をしています。
かさぶたは、多い少ないにかかわらず、傷口から出血した証拠と言えます。

◆黒いかさぶた「黒色痂皮」

通常、血液が固まったものであるかさぶたは、上述の通り、赤、茶色系です。
しかし、これとは異なり、黒色のかさぶたができることがあります。これは、表皮だけではなく皮膚組織の深いところまで損傷し、壊死を起こしたもので、「黒色痂皮(かひ)」または「黒色壊死」と呼ばれます。
黒色痂皮は、皮膚がんや悪化した皮膚炎などにより、見られることがあります。黒色痂皮は自然に治癒することはないため、化膿しやすいです。


猫のかさぶたの原因は?

ここでは、猫にかさぶたができる原因をご紹介します。

◆怪我をした

猫同士の喧嘩などで外傷が生じると、出血した部位にかさぶたができます。
細菌による二次感染などがなければ、自然治癒する場合が多いです。

◆アレルギー

アレルギーによりかゆみが生じて、猫自身が皮膚を搔きむしり、傷ができてかさぶたになる場合です。
原因となるアレルギーには、食物アレルギーやノミアレルギー、アトピー性皮膚炎、蚊刺過敏症(ぶんしかびんしょう)などがあります。

食物アレルギー

主に肉や魚などのタンパク質、小麦、トウモロコシなどを、体が有害な異物と見做すことで生じます。
猫は、強い痒みを感じます。発疹や脱毛が多く見られ、嘔吐や下痢などの消化器系の症状が出る猫もいるようです。

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ノミアレルギー

体表に寄生したノミは、血を吸うときに唾液を注入します。ノミアレルギーは、この唾液に対するアレルギー反応です。
症状は主に背中に出て、激しい痒みのほか、脱毛やかさぶた、赤く盛り上がったしこりのようなものができることもあります。

アトピー性皮膚炎

アレルゲン(アレルギーの原因物質)を吸い込んだり、アレルゲンが皮膚に付着したりすることで皮膚炎を発症します。アレルゲンはさまざまですが、主にホコリやダニ、花粉などです。
主な症状は、顔や足、内股、脇の下、下腹部などの皮膚の痒みと赤みです。痒みから、猫が舐め続けて、広範囲に脱毛が見られることもあります。

蚊刺過敏症

蚊に刺されて起きるアレルギー反応です。
刺された場所に痒みが出て、赤いブツブツができます。主に耳や鼻の周辺に症状が出るのが特徴です。

◆ストレス

ストレスに伴う過度の毛づくろいが原因の脱毛やかさぶたもあります。
この場合、痒みはありません。

◆皮膚病

ノミやダニなどの節足動物に寄生されたり、真菌(カビ)や細菌などの病原微生物に感染したりすることで引き起こされる皮膚病が原因で、かさぶたが見られることがあります。

ニキビダニ症

ニキビダニ症は、「毛包虫症」とも言われます。猫ニキビダニが原因で発症します。
症状は、顔の周辺や首周りに多く現れます。発症部位では、脱毛やフケが見られ、赤い炎症やかさぶたができることもあります。
通常、若齢の猫で見られ、成猫で発症した場合は猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症;FIV)など、他の基礎疾患があり、免疫力が低下していることが疑われます。

疥癬(かいせん)

ヒゼンダニの寄生により発症します。
発疹やフケ、かさぶたなどの症状が見られます。初期には主に耳や顔に症状が出ますが、進行すると全身に広がることがあります。痒みが強いと血が出るまで掻きむしることがあり、かさぶたが生じる原因となります。

皮膚糸状菌症

「白癬」とも言います。カビの一種である糸状菌の感染によるものです。
顔の周りや四肢に円形の脱毛が見られ、出血やかさぶたが見られることもあります。

粟粒性皮膚炎(ぞくりゅうせいひふえん)

猫の背中にかさぶたができる原因の一つです。
原因はアレルギーと考えられていますが、詳細な原因は分かっていません。

日光性皮膚炎

猫が日光(紫外線)を浴びすぎることにより生じる皮膚炎です。被毛が白い、白い部分が多い、または被毛が薄い猫に多く発症します。
初期には皮膚に赤い斑点が出て、重症化するとかさぶたになります。

好酸球性プラーク

何らかのアレルギーに関連して、皮膚に痒みや炎症が生じる猫に多い皮膚病です。好酸球(白血球の一種)という細胞が多く見られる肉芽腫ができるため、好酸球性肉芽腫(プラーク)と言われます。
首や腹部、脇の下、内股に平坦に盛り上がった病変ができ、皮膚の赤み(発疹)や脱毛、潰瘍が見られ、激しい痒みがあります。

◆腫瘍

腫瘍とは、体内にできた細胞の塊のことで、悪性腫瘍と良性腫瘍があります。悪性の場合を「がん」と言います。

扁平上皮癌

猫に多いがんとしては、「扁平上皮癌」(皮膚がん)がよく知られています。前述の日光性皮膚炎の悪化から、発症する場合があります。また、FIVなどによって免疫力が低下している猫でも、発症しやすいです。
扁平上皮癌は、耳や顔周りに発生しやすく、潰瘍ができたり、出血やかさぶたが見られたりします。特に、耳介、鼻、眼瞼(がんけん)で見られることが多いです。しかし、皮膚以外でも、扁平上皮組織がある部位(目、口腔、気管など)のどこでも生じる可能性があります。
皮膚以外では、どんな色の猫でも発生し、特に高齢の猫で発症が多いようです。

腫瘍

体内に腫瘍ができているとき、背中やお腹、脇などにかさぶたができる場合があります。
しかし、目に見えて症状が現れるころには、かなり進行していることが多いです。特に、内臓などに腫瘍ができているときには、外から見える症状は出にくくなります。
かさぶたになる前には、猫が体の一部を執拗に舐めていることがあります。


猫のかさぶたを見つけたら

では、猫の体にかさぶたを見つけた場合には、どうすればよいでしょうか?

◆軽い怪我によるものであれば問題なし

原因が軽いケガであることが分かっている場合は、自然に剥がれるのを待ちましょう。
無理にはがすと、細菌感染のリスクが高まったり、傷跡が残りやすくなったりします。

◆かさぶたの見分け方

心配のない場合と、獣医師の診察を受ける必要のある場合の見分け方をご紹介します。
通常、かさぶたの色は、赤や茶色系です。この場合、あまり心配はいりません。
かさぶたの色が黄色や緑色など異常であったり、ジュクジュクと湿ったままだったり、あるいは、できている部位が増えたり広がったりしている場合は、注意が必要です。早急に動物病院を受診してください。

◆心配な場合は動物病院へ

愛猫の体にかさぶたができている原因が分からない場合など、心配な場合には、早めに動物病院で診察を受けましょう。


猫のかさぶた予防

◆安全な環境づくり

まず、ケガをしないような生活環境を整えましょう。
室内飼育で多頭飼いの場合、猫同士の喧嘩で加減が分からず、ケガを負うことがあります。ケンカがエスカレートしないように、心配りをしてあげてください。
また、外へ行く子の場合、野良猫など他の猫とのケンカや接触により、ケガをしたり感染症をうつされたりするリスクがあります。脱走防止策を徹底して完全室内飼育を行うことが、何よりの予防法です。

◆家の中や猫の体を清潔に

アレルギー性皮膚炎の場合、アレルゲンに接触しないことが重要になります。感染性の皮膚病は、他の猫や犬などのペットや人間と接触することで広がります。
家の中をこまめに掃除し、ベッドなどの猫グッズを定期的に洗濯して、清潔な環境を保ちます。

◆外から持ち込まない

外出先で他の猫を触るなどして、飼い主さんが室内に菌などを持ち込んでしまうこともあります。
帰宅して愛猫に触る前には、着替えや手洗いを済ませることを習慣にしましょう。

◆こまめなブラッシングで早期発見

日頃から、こまめにブラッシングを行っていると、皮膚を清潔に保つことができ、皮膚病の予防になります。また、皮膚の状態をチェックできるので、寄生虫や皮膚病の早期発見につながります。

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まとめ

かさぶたは、何らかの原因により傷ができ、その傷口から出血した場合に、止血や傷口の保護のためにできるものです。血液が凝固したものなので、赤血球が多く含まれており、通常は赤や茶色系の色をしています。
軽い怪我が原因であることが分かっている場合、細菌などの二次感染がない限り、無理に剝がしたりせず、自然に治癒するのを待ちます。
色が、黄色や緑色、黒色の場合、皮膚炎や腫瘍などの病気が原因のことがあります。速やかに動物病院を受診してください。特に、体内の腫瘍の場合、かさぶたなどの症状が出るころには、進行していることが多いので、様子見は避けましょう。
腫瘍が原因の場合は予防が難しいですが、それ以外の場合は、外から菌などを持ち込まない、完全室内飼育を徹底する、家の中や猫グッズを清潔に保つなどで、予防することができます。
また、こまめにブラッシングをすることで、かさぶたを含む皮膚の異常を早期発見することができます。愛猫とのコミュニケーションを兼ねて、日頃からブラッシングをすることをおすすめします。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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