猫のレントゲン検査から分かること
猫の健康診断を受ける際、すべての猫ちゃんにとってレントゲン検査が必要というわけではありません。
動物病院によって健康診断の項目はさまざまではありますが、レントゲン検査はオプションで考えている獣医師さんも多いため、猫ちゃんに検査が必要かどうかを、獣医師さんと相談の上決めることが多いようです。
もちろんレントゲン検査は健康診断時だけでなく、猫ちゃんの症状や病状によって個別に受けられるため、まずはレントゲン検査でどのようなことが分かるのかを見ていきましょう。
◆腫瘍の有無
愛猫とのコミュニケーション時に皮膚のできものや、しこりのようなものがあると飼い主さんが感じた場合、獣医師の触診検査が行われ、摂取した細胞や組織を病理検査にかけて、腫瘍の正体を知るといった検査が一般的となるようです。
しかし、体内の腫瘍の有無は触診では判断ができないため、レントゲンで体内の画像を撮影し、その画像を見ながら獣医師さんは腫瘍があるかどうかを診断していきます。
シニア期に突入した猫ちゃんであれば、病気の早期発見を目的としたレントゲン検査が行われることも多いため、健康診断の際にはレントゲン検査を行うかどうかを、獣医師さんと相談の上決めるようにしましょう。
◆誤飲や誤食をしていない
猫ちゃんの誤飲や誤食が疑われる場合にも、レントゲン検査が用いられます。
もともと猫はヒモやビニール材を好む傾向にあり、おもちゃと同様遊んでいる最中に飲み込んでしまうことも多いため、猫の飼い主さんは普段から愛猫が誤飲や誤食をしないような環境づくりも大切です。
しかし、レントゲン検査では金属や骨のように硬いものでなければ映し出されることは難しく、異物を確認するというよりは、腸閉塞や胃拡張などの所見を確認していきます。
誤飲や誤食した対象物が明確で時間が経過していない場合には、催吐処置を行うことや、内視鏡による摘出法が用いられることが多いようです。
◆肺炎が起こっていないか
愛猫が咳をしている場合や、呼吸することも苦しそうな様子が見られる場合には、聴診器によって肺の音を確認し、異常が感じられればレントゲン検査が用いられます。
正常であれば空気を含んだ肺は黒く映りますが、肺炎を起こしている肺は正常時よりも白っぽく映るといった特徴があるようです。
肺炎が起こると炎症細胞(膿)が存在するため、そこに空気が入り込めなくなり、炎症細胞は空気よりも白く映ることから、肺炎を見極めるためにはレントゲン検査が有効であることがうかがえます。
◆骨に異常がないか
歩き方がおかしい、じっとしていて元気がないといった症状が見られる際にも、骨折を疑ってレントゲン検査が行われることがあります。
レントゲンでは骨折した箇所や、どの程度骨がずれているかの判断に役立ちますが、レントゲン検査でも骨折した箇所が見つからなければ、CTやMRI検査での診断が有用となっているようです。
◆結石の有無
猫にも多い結石症は、基本的に尿検査で発覚することがほとんどですが、ある程度の大きさの結石であればレントゲンにも映るため、できている箇所や結石の種類といった判断が可能となります。
食事療法での改善が難しい場合や、サイズが大きく排出が難しいと判断された場合には、手術で取り除くこともあるようです。
◆子猫の頭数
猫は妊娠してから2ヶ月前後で出産をしますが、安全に出産ができるか、何頭の子猫がいて全員無事に産まれてこられるか、といった点を確認するために、レントゲンを用いることもあります。
その際はX線による影響も考慮して、出産予定日の1週間前ぐらい(55日以降)に1回のみ検査を行うことが可能となりますが、子猫はX線による感受性が高いため、レントゲンを行うか行わないかは、獣医師が必要だと判断した場合がほとんどです。
猫のレントゲン検査の撮り方
レントゲン検査を行う際にはX線を照射して撮影を行いますが、獣医師さんやスタッフの方が猫をしっかりと保定して撮影するため、とくに麻酔は必要ありません。
緊急時を除いた場合のみ検査当日の絶食が基本となりますが、レントゲン撮影に用いる時間は10分程度で済むため、猫ちゃんへの負担が少ないことがうかがえますよね。
レントゲン撮影は人間と同様、立体的な身体の内部を平面で抽出させるため、どの部位であっても垂直2方向の撮影が必要となります。
一般的な胸部や腹部のレントゲンであれば、左側と右側両方を下にして撮影したもの、仰向けかうつ伏せにして撮影したものといった、最低でも3枚の画像を撮影し、さまざまな角度から獣医師さんは異常がないかの確認をしていきます。
なお、仰向けのレントゲン撮影の際には、猫ちゃんに負担をかけないようにV字マットを利用する動物病院もあるため、レントゲン検査に不安がある場合には、事前にどのような手順で撮影をするのかを確認しておきましょう。
猫のレントゲン検査の費用
レントゲン検査の費用は自由診療のため動物病院によって異なりますが、画像1枚につき3000円前後といった価格設定がされていることが多いようです。
猫ちゃんの症状によって経口造影剤(バリウム)が必要となる場合には、レントゲン検査の費用プラス、造影料が加算されるため、最低でも10000円の費用がかかると思っておきましょう。
また、動物病院によっては猫ちゃんの体重(大型の猫など)により、基本料金が変わることもあるため、金額や撮影枚数に不安がある場合には、事前に動物病院に確認しておくことをおすすめします。
猫がレントゲン検査で暴れてしまう場合
レントゲンの検査をする際には、静止した画像を撮る必要があるため、動かないように獣医師さんやスタッフの方が、しっかりと保定してから撮影していきます。
しかし、猫からしてみれば知らない場所で、知らない人間に押さえつけられるといった行為は、極度の恐怖とストレスがかかってしまうため、パニック状態に陥って暴れてしまう子も少なくありません。
動物病院のスタッフでも抑制が難しく、噛みつかれる危険性がある場合には、エリザベスカラーを首に巻いて、レントゲンの撮影を進める場合も多いようです。
エリザベスカラーだけでは抑制が難しいようであれば、安全性の高い鎮静剤をうまく利用して猫にかかるストレスを減らし、短時間でレントゲン検査を終えることが可能となります。
鎮静剤と聞くと、少し抵抗を感じる飼い主さんもいらっしゃるとは思いますが、昨今では獣医学の進歩によって鎮静剤によるリスクはほとんどありませんし、すぐに目を覚まさせる薬もあるため、猫への負担を最小限に抑えることができるのです。
なによりも、怖い思いをしたままの状態で検査がどんどん長引いてしまえば、その恐怖心が拭えず今後の検査や診察も難しくなってしまうため、愛猫の性格をしっかりと考慮した上で、飼い主さん自身も最善の選択をしてあげるようにしましょう。
基本的にレントゲン検査で猫の身体に与える影響はない
レントゲンでの検査は基本的に保定される以外は撮影時間も短いため、猫ちゃんへの苦痛は少なく、身体への影響はほとんどないと言われています。
もちろん精神的な負担は少なからずありますが、猫に用いるレントゲン検査では放射線量も少なく、被ばくする心配もないですし、何よりもレントゲン検査を用いて、体内に異常がないかの確認をすることこそが大切です。
私たち人間の何倍もの速さで歳をとっていく猫だからこそ、毎年の健康診断は怠らないようにし、緊急性が高い場合にはすぐに動物病院を受診して、適切な検査と治療を進めるようにしていきましょう。
まとめ
ペットフードの品質や獣医療が向上してきたことにより、猫の平均寿命が年々伸びてきていることはとても喜ばしいですよね。
しかし、その反面さまざまな病気のリスクが増えることも事実であり、飼い主さんは日常的に愛猫の健康状態を観察し、病気の早期発見に繋げることが、長生きしてもらうコツとも言えるのではないでしょうか。
日々のコミュケーションで判断できるのはやはり、体外の異変のみとなってしまいますが、観察をしている中で普段と違う様子が見られるようであれば、動物病院を受診して、体内の見えない部分を診断してもらうことも大切です。
そのときに有用な検査となるのがレントゲンとなり、レントゲン検査では病気やケガだけでなく、猫に起きやすい誤飲などにも役立つため、緊急性が高い場合には迷わずレントゲン検査を希望してください。
昨今では獣医学の進歩により、身体の小さな猫であっても安全にレントゲン検査を受けられますし、シニア期に突入した猫ちゃんは健康診断の際に、オプションとして検査を検討してみてはいかがでしょうか。
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