猫のできものって?

全身を被毛で覆われている猫は、皮膚にできものができていてもなかなか見つけづらく、見過ごしてしまう飼い主さんは多いことかと思います。
目に見えやすい部位であれば、日常生活の中でも気付いてあげられますが、被毛で隠れている部分にできものができてしまえば、触れることによって見つけられることがほとんどでしょう。
猫のできものの種類はさまざまではありますが、体表(身体の表面)が隆起したしこりを指すことが一般的です。
また、目に見えない臓器(腸や肝臓など)の内部や表面にできている、しこりのような塊のこともできものと表現します。
体内のできものに関しては目に見えず、素人では見つけにくくありますが、体表にできたできものは、普段から愛猫とたくさん触れ合っている方であれば、見つけてあげることは不可能ではありません。
被毛が少なく目につきやすい頭部や背中側は、目視でも比較的できものを見つけやすい反面、お腹周り、脇、足の付け根部分は陰になりやすく、できものに気付き難い部分と言えるでしょう。
皮膚のトラブルによるできものは、毛穴の詰まりによって生じるニキビのようなものや、細胞の増殖によって形成されるイボなどがありますが、形や大きさもさまざまとなります。
猫のイボは頭部や頚部、体幹に発生しやすいといった特徴があるため、まずはできやすい部位を目視し、できものがないかの確認をしていくことがおすすめです。
できものの色は白っぽいものからピンク色のもの、グレーっぽい色など原因によって異なりますが、様子を見ても良いもの、すぐに治療介入が必要なものなど、ケースバイケースとなるため素人判断が難しく、できものができていることが分かった時点で、一度動物病院を受診するようにしてください。
明らかに悪性度が高そうなできものの場合は、獣医師さんの長年の経験から予測可能となることもありますが、基本的に良性か悪性かの判断は見た目(大きさ)や硬さなどからでは難しいため、早期発見を心掛けて検査を行うことにより、できものの正体を知ることが可能となります。
猫のできものの考えられる病気
愛猫にできものができたら、早急に動物病院を受診するべきではありますが、できものができる原因が病気の場合もあります。
猫にできものができる病気で多いのは、以下のような疾患が挙げられます。
◆乳腺腫瘍
猫の乳がんと言われる「乳腺腫瘍(にゅうせんしゅよう)」は、未避妊メス猫や2歳を超えてから避妊手術を受けた猫が、発病しやすい病気となります。
メス猫にある乳腺に沿ってできものができるため、妊娠していないにも関わらずお乳が張っていたり、乳首のそばに硬いしこりのようなできものがあったりする場合は注意が必要です。
初期症状であっても約9割が悪性腫瘍の場合が多く、初期症状ではできものができる以外の目立った症状が出ることはないため、早期発見こそが生存率を上げる鍵と言えるでしょう。
悪性率が高いことからも、早期にリンパ節や肺などに転移することが多いため、1つでもしこりのようなものを見つけた場合は、ほかの乳首周りを触って異常がないかの確認をしてください。
できものが3cm以下のうちに摘出することにより、再発の可能性を低くできることからも、日常的にスキンシップを図って、できもののチェックを怠らないようにしましょう。
◆基底細胞種
猫の皮膚のできものでもっとも多くを占めている病気が、「基底細胞種(きていさいぼうしゅ)」です。
皮膚ガンの一種ではありますが、ほとんどの場合が良性となり、悪性率が低いといった特徴を持っています。
詳しい原因は分かっていませんが高齢の猫が発病することが多く、大きさは初期で1cm前後のものから、5cm以上を超えて大きくなる例もあるため、こぶのような腫瘤(しゅりゅう)を見つけたら、早急に動物病院を受診するようにしてください。
形もさまざまでドーム状に膨らんでいたり、クレーター状に真ん中がへこんだりしているものがあり、中身が詰まって硬い場合もあれば、液体が詰まっているような柔らかいものなどさまざまです。
できもの自体は猫ちゃんの皮膚色によりけりではありますが、色素沈着している場合や、表面が炎症を起こしてえぐれ、潰瘍になってしまう場合もあるようです。
頭部や首、肩などに発生することが多く、治療は外科的切除が一般的となり適切な予防法もないため、日常的に愛猫と触れ合うようにして早期発見に努めましょう。
◆肥満細胞腫
猫の皮膚にできるできものの中で2番目に多いと言われているのが、肥満細胞がガン化する「肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)」といった病気となります。
肥満細胞腫は「皮膚型」と「内蔵型」の2種類に分類され、内臓から発症することが多く、脾臓(ひぞう)や消化管に生じることが一般的となるようです。
内臓にできたものはほとんどの場合が悪性となりますが、皮膚型の場合は外科的切除を行えば経過が良いことも多いため、できものを1つでも見つけたら経過観察をするのではなく、早急に動物病院で検査をするようにしてください。
肥満細胞腫も基底細胞腫と同様、さまざまな形や色をしていることがあり、潰瘍になってしまうこともあるため、素人判断では原因追及が難しいできものと言えるでしょう。
◆扁平上皮癌
メラニン色素の少ない部位にできものができる、悪性度の高い病気が「扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)」です。
紫外線の影響が強いとも言われており、白猫をはじめとした淡色の猫に発症しやすく、皮膚の薄い耳や鼻、まぶた、唇、口腔内、足の指、肺など、発生部位もさまざまとなっています。
悪性度の高い扁平上皮癌のできものは、明らかに悪性だと分かるような見た目をしていて、初期症状は皮膚や粘膜のちょっとした異変からはじまり、時間の経過とともに赤くなる、かさぶたができる、ただれる、じゅくじゅくと化膿していく、カリフラワー状に増えるなどの変化が現れます。
痛みをともなうことからも患部を舐めて噛むなどの、自傷行為を起こすことがあるようです。
外科的手術や化学療法などを行うことが一般的ではありますが、治療を行っても延命が難しい病気とも言われているため、皮膚の異変に気付いた際には、症状が悪化しないうちに動物病院で治療を進めることが大切となります。
危険なできものは?
猫のできものは良性と悪性のものがあり、原因によって見た目や色もさまざまとなるため、危険度を見た目で判断することは大変難しいです。
一見、悪性度の高いできものは、色が黒っぽかったり、形がいびつだったり、短期間で大きくなったりするなど、悪性の事例が多いことも事実ではあります。
しかし、体表だけにできているのか、1部位だけにできているのか、ほかに転移はあるのかなどの確定判断は、細胞の組織を少量採取する針生検や、切除生検をしないと分からないことがほとんどです。
また、良性のできものであったとしても、できものができた部位によって、命に関わってしまうこともあります。
猫は口呼吸をしないため、鼻腔の中にできものができてしまえば、呼吸が難しくなって感染症や合併症を引き起こしかねません。
どのようなできものであっても、確定診断をするまでは危険度が分かりかねないため、放っておくようなことはせず、早めの検査を心掛けるようにしましょう。
できものを見つけたらどうしたらいい?

愛猫と触れ合っていた際にできものを見つけたら、やはり様子を見るようなことはせずに、動物病院を受診することが一番です。
特に痛がる様子がなかったり、大きくなっている様子がなかったりしても、皮膚下で細胞がどれぐらい増殖しているのかなどは、到底見当もつきませんよね。
また、飼い主さんができものを執拗に触ることにより、内部に体液や膿が溜まっている場合は、破裂してしまうこともあるため、二次被害を避けるためにもむやみやたらに触れないようにしてください。
どんなに小さいできものであっても、一度しっかりと獣医師さんに診ていただき、経過観察で問題なかった場合でも、定期的に健康診断を行うようにし、変化や異常がないかの確認をしてもらうようにしましょう。
まとめ
猫のできものは大きく分けて良性と悪性に分類されますが、見た目の判断がとても難しく、自宅で様子を見ているだけでいいのか、悩まれる飼い主さんは多いことかと思います。
一時的なできものとの解釈や、悪性度の低いイボだと自己完結してしまうと、良性であってもガン化することがありますし、ほかの部位にまで転移して、手遅れになってしまうこともあるため注意が必要です。
なるべくできものが小さいうちに、できものの正体を動物病院で検査してもらうことにより、適切な治療や再発の防止が期待できるため、猫ちゃんへの負担がぐっと軽減されます。
日頃から愛猫の体表を目視で観察し、陰になりやすい部分までたくさん触れることによって、できものの早期発見に繋がるため、健康維持の目的も兼ねて、愛猫との楽しいスキンシップの時間を増やしてあげてください。
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