【獣医師監修】猫が発症すると言われているアレルギー性皮膚炎ってどんな病気?

2023.08.13

【獣医師監修】猫が発症すると言われているアレルギー性皮膚炎ってどんな病気?

「アレルギー」という言葉をよく耳にしますが、アレルギーは免疫学的な機序(メカニズム)によって、身体に症状が引き起こされることを指しています。 特定の異物により免疫が過剰に反応し、皮膚に何かしらの炎症が起きることを「アレルギー性皮膚炎」と呼びますが、猫にもこのアレルギー性皮膚炎が発症することをご存知でしょうか。 猫が発症している場合、速やかに飼い主さんが気づいてあげる必要がありますが、どのような症状が出て、どのような原因や治療法があるのかなどを、まとめてご紹介していきます。

猫のアレルギー性皮膚炎の症状

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免疫が異物に対して過剰に反応し、身体に何かしらのアレルギー反応を起こし、その過剰反応が皮膚に強く現れることを「アレルギー性皮膚炎」と呼びます。

アレルギー性皮膚炎はアレルギーが根本原因となる、皮膚病疾患の総称となりますが、人間だけでなく猫でも発症しやすい疾患と言われており、猫が発症した場合には主に、以下のような症状が出やすいと言われているようです。

◆ブツブツしている

猫のアレルギー性皮膚炎の原因はさまざまではありますが、どの原因にも限らず初期にはブツブツとした赤い湿疹が出ることが多いようです。

このような症状が出る皮膚病変を「粟粒性(ぞくりゅうせい)皮膚炎」と呼びますが、猫に生じる皮膚炎の中でも多くを占めています。

時間が経過していくと痂疲(かひ=かさぶたのこと)となりますが、フケと勘違いしやすく、痒みを伴うことから発疹部分を執拗に掻くような仕草が見られるようです。

◆赤くなってる

ブツブツとした湿疹以外にも、皮膚が赤くなるといった症状が見られることもあります。

猫の皮膚は被毛で覆われているため、中々身体全体を目視で確認することは難しいですよね。

しかし、アレルギー性皮膚炎を猫が発症した場合、比較的被毛の薄い頭部や耳の裏が赤くなりやすいため、それらの部分が赤くなっている際には、アレルギー性皮膚炎を疑うようにしましょう。

◆掻いたり舐めたりしている

飼い主さんが皮膚炎を発症していることに気付かず、症状が進行していくと、強い痒みから患部を執拗に掻いたり舐めたりするようになります。

愛猫の辛そうな状態を見て初めて疾患に気付く飼い主さんは多く、一刻も早く強い痒みを取り除いてあげる必要がありますよね。

愛猫が皮膚の一部を掻いたり舐めたりする仕草が見られる場合には、早急に動物病院を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。


猫のアレルギー性皮膚炎の原因

猫のアレルギー性皮膚炎は原因別に、3つのタイプに分類されます。

人間ほど重篤な症状が出にくい猫のアレルギー性疾患ではありますが、どのような原因によって上記のような、症状が引き起こされるのかを見ていきましょう。

◆食物アレルギー

私たちと同じように日常的で注意しておきたいアレルギー性疾患が、食物アレルギーとなります。

食物アレルギーを発症した際には、皮膚に強い痒みを伴う発疹や脱毛が見られ、そのほかにも下痢、嘔吐などの症状が見られることもあるようです。

食物アレルギーは主にタンパク質に反応するため、肉食動物となる猫の場合は肉類や魚類に反応することが多いと言われています。

また、多様性の時代となり飼い主さんが良かれと思って作った、手作りご飯に入っている食材の特定成分に免疫システムが反応し、食物アレルギーを発症してしまうこともあります。

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◆ノミアレルギー

猫に多いアレルギー性皮膚炎として、ノミアレルギーが挙げられます。

身体にノミが寄生して発症するのではなく、ノミが猫に咬みついた際の唾液に含まれるタンパク質がアレルゲンとなり、アレルギー反応を起こして激しい痒みや炎症が引き起こされるようです。

ノミの咬傷が1箇所であったとしても、身体全体に強い痒みを誘発する恐れがあるため、さまざまな部位を噛んだり掻いたりすることによって、皮膚がただれて脱毛といった症状が見られるようになります。

たくさんのノミに寄生されていれば、ノミの糞や生体を見つけることにより、ノミアレルギーの判断が可能となりますが、ノミの姿などが確認できない場合は、素人ではノミアレルギーかどうかの判断が非常に難しく、厄介なアレルギー性疾患と言えるでしょう。

◆アトピー性皮膚炎

非食物・非ノミ誘発性の過敏性皮膚炎と呼ばれているのが、猫のアトピー性皮膚炎です。

猫の場合は正確にアトピー性皮膚炎という診断は下されないため、食べ物やノミの対策をしても症状が治まらない場合に、このような判断が下されます。

多くの場合はハウスダスト(ホコリ・カビ・ダニ・皮膚片など)や花粉などがアレルゲンとなり、季節によって原因物質が増えれば、痒みなどの症状が強く出るといった傾向があるようです。

強い痒みを伴うため、皮膚を舐めすぎて傷になることも多く、ところどころに脱毛が起きる場合もあります。

アトピー性皮膚炎やノミアレルギーを発症した場合には、二次的な急性湿疹となる「ホットスポット」を引き起こす可能性も否めません。


アレルギー性皮膚炎の治療法

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基本的にアレルギー性皮膚炎の治療法は、それぞれの原因を取り除くことこそが第一の治療となります。

食物アレルギーを発症している場合には、症状が出ていた際に与えていた食材を確認し、それらを含まない食事に一定期間切り替える「除去食試験」を行います。

過剰反応するタンパク質が含まれた食材を特定するまで、痒みなどが酷いときは抗アレルギー薬を使用し、低刺激性療法食を用いながら治療を進めていきます。

ノミアレルギーの治療をする際には、ノミの繁殖に対して駆除剤を使用することがほとんどです。

ただし、駆除剤にはさまざまな種類があるため、必ず駆除剤を使用する際には獣医師さんと相談するようにしてください。

痒みが強く出ている場合には、短期間でステロイド剤や抗ヒスタミン剤が使用することや、抗掻痒シャンプーの利用も効果的です。

そして原因物質がさまざまとなるアトピー性皮膚炎は、生涯続く症状であることから完治が難しく、長い目で付き合っていかなければいけません。

痒みが酷ければ抗アレルギー薬を使用し、並行して皮膚強化のための食事療法、生活環境からのアレルゲン除去や、抗掻痒シャンプーなどを用います。

また、患部を舐めないようにするため、どのアレルギー性皮膚炎を発症した場合でも、エリザベスカラーの使用が望ましく、愛猫に負担がかからないようなエリザベスカラーを準備しておきましょう。


アレルギー性皮膚炎の予防方法

猫のアレルギー性皮膚炎は強い痒みを伴うことが多いため、できることなら常日頃から予防を心掛け、発症しないように努めておきたいものですよね。

しかしながら、アレルギーは元々生まれ持った体質が大きく関係しているため、完璧な予防方法は残念ながらありません。

日常生活の中で飼い主さんが細心の注意を払い、それぞれのアレルギー性疾患に対する知識を習得し、発症させないように努めることこそが予防法となります。

これまで紹介してきた3つのアレルギー性疾患では、それぞれ日常生活の中で意識すべき点が若干異なるため、疾患別に見ていきましょう。

◆食物アレルギーの予防方法

愛猫がアレルギー症状を患う心配があるようであれば、毎日与えるキャットフードの見直しが一番です。

食物アレルギーは食材に含まれるタンパク質に反応するため、キャットフードを選ぶ際には低アレルゲンの総合栄養食商品を選ぶようにしましょう。

そして、万が一食物アレルギーを発症した際に、原因食材をいち早く特定するためにも、たんぱく源の種類が比較的少ない商品を選ぶことがベターです。

◆ノミアレルギーの予防方法

ノミアレルギーに関しては、ノミによる寄生を避けることが一番の予防法となるため、愛猫の完全室内飼いを徹底するようにしてください。

完全室内飼いは、猫の自由を奪っているように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、外の世界は事故や感染症などの危険が常に潜んでいるため、愛猫に幸せな猫生を全うして欲しいようであれば、家から出さないに越したことはありません。

また、日常的に駆除剤を使用することも効果的となるため、獣医師さんと相談して愛猫に合う駆除剤を使用するようにしましょう。

◆アトピー性皮膚炎の予防方法

アトピー性皮膚炎は原因の追究が難しいため、生活環境の中でアレルゲンが発生しそうな場所などは、徹底的に掃除をしておくようにしましょう。

室内のこまめな掃除はもちろん、日常的に空気清浄機を使用するなどをして、キレイな空気を保つような努力も必要となってきます。

また、皮膚のバリア機能を高める、必須脂肪酸が含まれているフードやサプリを取り入れることで、皮膚を健康的に保つことが可能となります。


まとめ

猫は皮膚疾患を患うことの多い動物ではありますが、もともと生まれ持った体質が大きく関係しているため、予防が難しい病気としても知られています。

特定のアレルゲンに過剰反応するアレルギー性皮膚炎を患った場合は、皮膚に強い痒みを患ったり、炎症や脱毛を起こしたりすることもあるため、できることであれば発症させないように、日頃から気を付けておきたいものですよね。

完璧な予防は無理であっても、飼い主さんの努力次第で発症させないことや、発症初期に気付いてあげることは可能となるため、アレルギー性皮膚炎に対しての知識を身につけておくことも大切です。

少しでも皮膚に異変を感じた際には様子を見るようなことはせず、動物病院を受診して適切な治療を受けさせてあげるようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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