猫の目の色の仕組み
吸い込まれるような美しい目をした猫ではありますが、猫を見ているとそれぞれ目の色が異なるため、どのような仕組みによって異なった色をしているのかが気になるところですよね。
知っているようで知らない猫の目の色について、ひも解いていきましょう。
猫の目のどの部分に色がついているのかを見てみると、真ん中の黒目部分でなく、私たち人間でいう白目部分に色がついていることが分かります。
人間の目の白目部分は「強膜(きょうまく)」と呼ばれる部分となりますが、猫には白目がないため、色がついて見える部分は「虹彩(こうさい)」と呼ばれる、瞳の周りにある膜が目の色を決めています。
もともと猫には白目がありましたが、野生で生活していた時代には夜間に活動する夜行性だったため、暗い場所でもなるべくたくさんの光を目(瞳孔)に取り込むために、徐々に虹彩が大きくなっていったと考えられているようです。
猫の目の色は基本的にメラニン色素の量によって決まりますが、このメラニン色素の量は母猫と父猫から譲り受けた遺伝によって決まるようです。
生まれたばかりの子猫は虹彩にメラニン色素が定着しておらず、虹彩の表面の色は灰色がかった水色(青色)のような色合いをしています。
このような子猫特有の目の色を「キトンブルー」と呼びますが、徐々に成長するにつれてメラニン色素が体内に定着していくため、生後2ヶ月齢を過ぎる頃から徐々に目の色が変化していき、6ヶ月齢を過ぎる頃までは個体にもよりますが、正確な目の色は分からないと言えるでしょう。
虹彩から取り入れた光を網膜の裏にある反射板(タペタム)で屈折させ、虹彩に定着したメラニン色素の量によって、猫の目の色が決まるといった仕組みとなっています。
一説によると、遺伝によって決まるメラニン色素は、日光の少ない地域が原産となる猫は薄い目の色となり、日差しが強くて温暖な地域が原産となる猫は濃い目の色になる傾向が強いと言われているようです。
猫の目の色は大きく分けて5種類に分類されますが、色素細胞の少ない順から、ブルー→グリーン→ヘーゼル→アンバー→カッパーとなります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
・ブルー
子猫に見られる特有の目の色となるブルーは、メラニン色素をほぼ持っていない状態を指します。
虹彩に青色の色素があるわけではなく透明に近いため、「レイリー散乱」といった光の反射によって、私たちには目の色が青く見えるといった仕組みになります。
日本猫(雑種やミックス)にはほぼ見られることのない目の色となりますが、一部の純血種では遺伝によってほぼブルー系の目の色になるとも言われており、濃さによってはサファイヤブルー、アクアなどと呼ばれる場合もあるようです。
猫種ではシャム、ラグドール、ヒマラヤンなどに見られます。
・グリーン
グリーンもブルーと同じようにメラニン色素が薄く、レイリー散乱によって人の目から見るとグリーンに見えるようになっています。
寒い地域は日差しも少ないため、そのような地域で産まれた猫はたくさんの光を取り込む必要がなく、必然的に目の色が薄くなったとも言われているようです。
オリーブグリーンやエメラルドグリーンなどと呼ばれることもあり、ロシアンブルーやエジプシャンマウをはじめとした洋猫に多いとされていますが、比較的被毛の色が薄い日本猫にも見られる目の色となるため、日本でも見かける機会がある色合いの目と言えるでしょう。
・ヘーゼル
ヘーゼルはグリーンとイエロー系のグラデーションとなり、グラデーションにはさまざまな色調がありますが、基本は内側がグリーンで外側がイエローのグラデーションになっています。
色素細胞の量は個体によって異なりますが、グリーンの目をした猫よりもメラニン色素は少し多いと言われているようです。
日本土着の猫と洋猫のミックスに見られることが多く、頭数の多いキジトラもヘーゼルの色をした子が多いため、日本でも馴染み深い目の色とも言えます。
・アンバー
メラニン色素が強めの遺伝子となるのが、アンバーです。
イエローやゴールド、琥珀色などと表現されることが多いですが、暖かい地域が原産の猫に多い目の色と言えるでしょう。
ヘーゼルとよく間違われるアンバーではありますが、ヘーゼルは複数の色がグラデーションとなっているため、しっかり猫の目を見ればすぐに見分けられます。
猫種ではバーミーズ、猫の祖先となるリビアヤマネコ、ネコ科のライオンやトラだけでなく、日本猫にも多く見られる目の色と言われています。
・カッパー
ゴールドよりも濃い銅色と言われているのが、カッパーといった目の色です。
茶色や赤っぽく見えることもありますが、猫の目の色の中で一番メラニン色素が多いとされています。
日本では日光の照射量が多く、瞳を傷つけないように紫外線から守るため、色の薄い目よりも影響を受けにくいといったカッパーの猫が多くなったと考えられているようです。
純血種ではボンベイ、シャルトリューなどが挙げられます。
・オッドアイやレッド
猫の目の色の中には、ブルーよりも珍しいオッドアイやレッドといった目の色の猫も存在します。
オッドアイは先天的(遺伝)と後天的(事故や病気)な理由によって、左右の目の色が異なりますが、正式には「虹彩異色症」と呼ばれています。
メラニン色素を生成できない「先天性色素欠乏症」と言われているアルビノ種の場合は、血管の色がそのまま浮き出ることにより、目の色が赤くなるようです。
日光の照射量が多い日本でも目の色が薄い猫ちゃんは存在するため、紫外線をたくさん浴び続けてしまえば目を傷つけてしまい、さまざまな病気(白内障や網膜色素変性症など)を引き起こしかねません。
また、被毛や目の色が薄くなる遺伝子を持ち合わせて生まれた子の中には、先天的に難聴などの聴覚異常を持っているケースもあるため、目の色が薄い猫ちゃんをお迎えした際には、耳がしっかりときこえているかどうかの確認も怠らないようにしましょう。
黒猫の目の色は何色?
今回は黒猫にスポットを当てているため、神秘的な黒猫の目は何色なのかが気になっている方も多いことかと思います。
黒猫は被毛の遺伝子が色濃く出ていることもあり、目の色はカッパーやアンバーの子が多く存在していると言われています。
とくにアンバーの割合は約90%と非常に高く、イエローやゴールド系の色味がさらに神秘性を引き立てているとも言えるでしょう。
まれに黒猫であってもブルーやグリーンなどの色素が薄い目をした子が誕生しますが、全体の1%未満とも言われており、非常に珍しいとされています。
猫の目の色は変わることはある?
6ヶ月齢頃までには定着する猫の目の色ですが、その後目の色が変わることがあるのかも気になりますよね。
目の色が定着したあとでも、色が変化していくことはあるのでしょうか。
7歳齢を過ぎた頃に猫はシニア期に突入しますが、運動能力やさまざまな臓器機能の低下といった変化が現れるようになります。
身体の衰えが少しずつ進行するにつれて、虹彩にも色素沈着(シミ)が目立つようになり、目にも老化現象が起こるようになるようです。
さらに年齢を重ねると視力の低下や瞳が白く濁ってきますが、白内障などの病気が疑われるため、異変に気付いた際には動物病院を受診するようにしてください。
そして最低でも1年に1回は定期検診を受けるようにし、目だけでなく身体に異常がないかの検査を行うようにしておくと安心です。
年齢に関係なく急に目の色が変化したように感じた際は、病気の可能性が高いため注意が必要です。
とくに本来の目の色から緑色や黒色に変色していったときは、目のガン、緑内障、肝臓病などを発症している可能性もあるため、早急に動物病院を受診するようにし、適切な治療を受けるようにしましょう。
まとめ
とても神秘的で吸い込まれそうになる猫の目ですが、遺伝によってメラニン色素の量が決まるため、持ち合わせている目の色にも歴史を感じることができますよね。
とくに黒い被毛が美しい黒猫の目の色は、アンバーといったゴールド系となるため、さらに美しさを引き立てる色合いになっています。
このようなことからも黒猫に魅了されている方はとても多いですが、とくに目はチャームポイントとしても目を引きますので、日常的なケアを怠らないようにしたいものですよね。
美しい黒猫の目を守ってあげられるのは飼い主さんだけとなるため、日頃から目に異常がないかの確認は怠らないようにし、何かしらの変化が見られた場合には適切な治療を行うためにも、早急に動物病院を受診するようにしましょう。