「うちの子は、人でいうと何歳くらいなのかな」と思うことはありませんか?
ワンちゃんの年齢は、私たち人と違って、見た目では分かりにくいものです。中には、小さな頃からちょっと「老け顔」に見える種類の子もいます。
そこで、今回は「ワンちゃんの老齢期」には、どんな変化が見られるのか、どんな病気に気を付けていけばよいのか、そしてどんな生活環境を作ってあげればよいのか……など、具体的にお話ししていきたいと思います。
何歳からが「老齢期」なの?
ワンちゃんは、私たち人よりも早いスピードで年齢を重ねていきます。ワンちゃんの場合は、だいたい7歳くらいから、人でいうところの「中年世代」に差しかかると考えられています。
「でも、うちの子はまだまだ若々しいですよ?」なんて声も聞こえてきそうですね。確かに、人でも40代で老齢期なんていわれたら、皆さん驚かれると思います。でも、私たちも40代あたりから、細かい字が見えにくくなったり、疲れがなかなか抜けなくなったり、太りやすくなったり、健康診断では生活習慣病を指摘されたり……と、色々と思い当たる節が出てくるものです。
それは、ワンちゃんでも同じこと。例えば、下記のような変化や衰えがみられます。
こんな病気に気を付けて
老齢期になると、カラダのあちこちに疲れが出てきて、さまざまな病気にかかるリスクが高まります。その中でも代表的な症状や病気をご紹介しますので、ペットオーナー様はぜひ心に留めておいてください。
◎目の主な病気
水晶体が濁って目が白く見える白内障や、さまざまな原因によって、目の中の圧力(眼圧)が上がって痛みを伴い、ひどくなると、失明にもつながる緑内障などの病気にかかることがあります。
◎口の病気
口臭の大きな原因となる歯周病も加齢とともに悪化。口臭が強くなったり、歯が抜けたりします。進行すると、呼吸器(肺)や循環器(心臓)の健康にも影響を及ぼすことがあります。
◎内臓の病気
心臓の中の血液を送り出す弁がうまく動かなくなることで起こる、弁膜症という病気にかかると、心不全のリスクが高まります。また、人でも死亡の原因の多くを占める悪性腫瘍、いわゆるガンにも注意が必要です。
◎腎臓の病気
血液中の老廃物をろ過する機能が低下すると、カラダに毒素が溜まっていく腎不全の危険性が高まります。
◎肝臓の病気
肥満や偏った食事の積み重ねなどで、栄養を蓄えたり、エネルギーを作ったり、毒物を無毒化したりするはたらきなどの機能が低下し、肝不全や肝硬変の危険が高まります。
◎骨の病気
軟骨といわれる部分がすり減ることで、関節炎を患うことがあります。
このほか、去勢手術をしていない男の子なら前立腺炎、避妊手術をしていない女の子なら、子宮に膿が溜まって生命の危機にさらされる可能性が高い、子宮蓄膿症にも注意する必要があります。
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老齢期の大切な3つのポイント
◎お散歩や環境について
ワンちゃんの場合、老齢になると「散歩は極力させない方がよい」と考えがちですが、ある程度の運動は、運動機能そのものの維持のためにも必要です。コースや時間を決めて、無理のない範囲で続けてあげましょう。
室内では滑りにくく、段差が少ない環境作りを。階段やお部屋の入口にある段差のほか、フローリングを走った時に滑って思わぬケガを招くこともあります。若い頃は飛び越えられた段差でも、視力などの低下によって、つまずいてしまう場合もありますので、カーペットを敷いたり、段差を和らげる工夫をするなど、ペット目線で配慮をしてあげましょう。
◎食事についての注意
若い頃と老齢期では、カロリーの消費量が変わります。いつまでも同じ食事を続けていると、カロリーや脂肪分が多くなり過ぎて、太りやすくなります。肥満は病気やケガのもとですので、体型維持には気を配る必要があります。
市販のドッグフードには、シニア専用のものがあります。老齢期に適した栄養バランスで作られているので、時期を見て切り替えてあげましょう。また、食器も台などで高さを調整し、楽な姿勢で食べられるよう配慮が必要です。
◎健康診断を忘れずに
ワンちゃんは、体調が悪くても声に出してくれません。特に老齢期には、色々な病気のリスクが高まるだけでなく、症状が悪化しやすい傾向にあります。病気は早期発見が基本となりますので、最低でも年に1度は定期健診を行い、カラダに異常がないか診てもらいましょう。
「ちょっと最近調子がおかしいかな?」と思った時には、すでに病気がかなり進行していることもあります。ワンちゃんが健康で、長く一緒に暮らすためにも、定期的な健診をおすすめします。
衰えが出やすい部分
こんな変化や衰えが見られます。
◎聴力
最近、声をかけてもあまり反応してくれない…と思ったら、実は耳が遠くなっていて、ほとんど聞こえていないという可能性があります。逆に、周囲の音に過敏になってしまうケースも見られます。
◎視力
徐々に物が見えにくくなります。ワンちゃんはもともと視力が弱いといわれていますが、さらに見えにくくなることで、不安になって活動量が低下したり、急に手を出した時に驚いて噛みついてしまうことも。
◎嗅覚
嗅覚は、動物にとっては特に重要な感覚。鼻は最後までしっかりとはたらくともいわれています。ここが衰えてしまうと、食事のニオイがしなくなり、食欲が落ちてしまう場合もあります。
◎味覚
食事の味を感じられず、嗅覚と同様に食欲が落ちてしまいます。逆に、食べ物ではないものでも食べてしまうことがあります。
◎関節(骨など)
筋肉や関節が衰え、足を踏み外したりして思わぬケガをすることがあります。
◎触覚
暑さや寒さ、手先や足先の感覚が鈍っていきます。体温調節がうまくいかなくなって、熱中症をはじめ、体調を崩しやすくなります。
日頃からの健康チェックが大切です。ワンちゃんの健康診断
ワンちゃんは具合が悪くても自分で病院にかかることはできません。だからこそワンちゃんには定期健康診断が必要といえるでしょう。では、動物病院ではどんな健康診断を行っているのでしょうか。
◎ワンちゃんの健康診断メニュー
※コジマ動物病院の場合
- 基本コース〈問診・身体検査・糞便検査・尿検査〉
5歳くらいまでの若い子に。オシッコの病気などは、若い頃からみられることもあるので、お早めに。
- 血液検査プラスコース〈基本コース+血液検査〉
すべての年齢の子に。血液検査を行って、カラダのより詳細な状態を知ってあげましょう。
- 血液&X線検査プラスコース〈基本コース+血液検査+X線検査〉
5歳を過ぎたあたりの子に。年を重ねると、心臓や呼吸器系疾患が増えるので、しっかりチェック。
- メタボリック検査コース〈基本コース+血液検査+脂質代謝検査〉
高齢、水をよく飲む、体重が減りにくい子は、ぜひこの検査を。人でいうメタボ検査と同じですね。
- アレルギー検査コース〈基本コース+血液検査+アレルギー検査〉
よくかゆがる子はアレルギーの傾向があるかも!?40項目のアレルギー原因検査を行います。