ジアルジア症の主な症状は下痢
まだ散歩に行けないというキャバリアくんに会いに行ったのは、ご近所さんが飼い始めて2週間ほどたった頃でした。「うちの子は、おとなしいの」と飼い主さんの言うとおりの、とてもおとなしい犬。でも、子犬にしては大人しすぎる、というか元気がありません。知らない人が来たのにほとんど動かず、呼んでも反応しません。私が知っている子犬はこんなじゃないと話すと、「実は10日ほど前から下痢が始まって、だんだんひどくなってきたみたい」と教えてくれました。そんな話をしていると、キャバリアくんがうんちをしました。子どもが小さい頃ひどい下痢をしたときに見たことがある粘液の混ざった水様便です。食欲がなくあまり食べていないため、半分は透明の粘液、残りのほとんどは水分、通常の下痢便がほんの少しという悪い状態です。よく見ると血が混ざっているようです。明らかに異常なので、そのまま近所の動物病院に行くことになりました。
ジアルジア症はうんちで診断
飼い主さんにとっては、初めての動物病院で、キャバリアくんも初診でした。診察室では、丁寧な問診と全身の触診等に続き、トイレシートのうんちを顕微鏡で見て、すぐに「ジアルジア症」と診断されました。顕微鏡の画像には、ラ・フランスの断面をとがらせて毛をはやしたような微生物がいました。その微生物こそが「ジアルジア」。1mmの100分の1に満たないサイズの小さな原虫です。
ジアルジア症の原因
ジアルジアが何らかの形で、口から10個以上入ると「ジアルジア症」に感染する可能性があるそうです。感染した犬の糞に含まれるジアルジアは、土・草・水たまりなどに付きます、それが直接口に入ったり、肉球や毛について家に持ち帰った後になめてしまったりして感染します。キャバリアくんは、まだお散歩ができないので、ブリーダーさんの所で感染していた可能性が高いようです。感染していても症状は出ていなかったのですが、生活環境が変わったことによるストレスで急激に悪化したのではないか、ということでした。
ジアルジア症の治療薬と対処法
キャバリアくんは、ジアルジアの原虫が見つかり、5日分の飲み薬(アスゾール錠という抗生物質)が処方されました。1日2回を飲み続け、途中心配になったらまた来院するようにという指示でした。ほかに犬や猫を飼っていれば、その子たちも薬を飲んだ方が良いそうです。
家に帰ったら、犬の寝床やトイレは、できれば熱湯消毒をして天日干しするように言われました。ジアルジアは感染している犬の便に含まれ、消毒薬では死なず、水さえあれば生きられるそうです。人にもうつるので、小さい子は特に気をつけるようにとのことでした。ただ、熱湯には弱く、元気な人や犬は、うつったとしても症状が出ないことがほとんどのようです。
ジアルジア症は、法律によって報告が義務付けられた感染症
ジラルジア症は、感染症法で第5類感染症に指定され、医師が保健所に届け出ることが義務付けられている動物由来感染症です。狂犬病やエキノコックス症ほど重症になる可能性は低いですが、場合によっては最悪の事態になることもあります。とくに子犬やストレスなどで弱っている犬は症状が出やすいです。
キャバリアくんの飼い主さんは、ブリーダーさんに連絡しました。ブリーダーさんの家にいるたくさんのキャバリアが、ジアルジア症にかかっていないか心配だったからです。ブリーダーさん宅の犬は、下痢などの症状は見られないとのことでホッとしたのですが、その場でワンちゃんの「交換」を提案されました。
飼い主さんの家には、まだ指しゃぶりをする2歳の子と幼稚園児がいます。キャバリアくんが大好きで、1日中そばにいるから、感染してしまうかもしれません。そうなったら、さらに大変なことになります。1日家族で話し合い、結局元気な2代目のキャバリアくんを迎え入れることに決まりました。
その後
2代目キャバリアくんと二人の子ども達は、ジアルジア症になることもなく、元気に育っています。2代目くんが来たとき、すぐに動物病院でジアルジア症の検査を受け、散歩のときは、便に鼻を近づけたりしないよう気をつけているそうです。
初代キャバリアくんは、どうなったか?気になったので電話してみたところ、ブリーダーさんが引き取った後も回復せず、1ヶ月ほどで死んでしまったとのことでした。下痢が始まってすぐに病院に行っていたら、あの子は今もここにいたかもしれない…いくら後悔しても泣いても戻ってきてはくれません。縁あって我が家に来てくれた犬が天寿をまっとうできるよう、大切に守っていこう、私もそう思いました。
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