この曲知ってる?「犬のためのぶよぶよとした前奏曲」~犬とクラシック音楽

2015.09.11

この曲知ってる?「犬のためのぶよぶよとした前奏曲」~犬とクラシック音楽

クラシック音楽は犬をも癒す―という研究発表がありますが、その音楽を創り出した作曲家たちもまた、彼らの愛犬たちに癒されていたようです。アメリカでは8月26日のナショナル・ドッグデイの前後で、各メディアで犬を取上げた様々な特集や企画を発信。例えばラジオ音楽番組が「犬と作曲家」というテーマで、なんと12時間という長丁場の放送をしたりするほど、犬への関心は高いアメリカです。

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奥さんがダメっていうから…

「愛の挨拶」「威風堂々」などで有名な作曲家、エドワード・エルガー。彼は大の愛犬家だったことで有名です。ですが、とても残念なことに奥さんが亡くなるまでは大好きな犬と暮らすという夢は叶いませんでした。奥さんのアリスは犬が大嫌い、、、ということで結婚生活の間は犬は禁止!となっていたそうです。そして、1920年、奥さんのアリスが亡くなります。すると、すぐに2頭の犬を飼い始めたエルガー氏。生前は奥さんのきちんということをきいていた所も、亡くなってすぐに大好きな犬を飼い始めた所も、なんだか素直でエルガー氏も可愛らしいなと思います。二頭の犬は、スパニエルはマルコ、そしてテリアはミーナと名づけられました。

愛情深いエルガー氏

エルガー氏はマルコとミーナを自分の子供たちのように溺愛しました。その溺愛ぶりを語るエピソードが残っています。エルガー氏70歳のお誕生日を記念して、生ラジオ放送が行われたときのこと。彼はラジオの電波に乗せて、自宅で自分の声を聴いているであろう、愛犬ミーナに優しく愛情深く「グッドナイト」と呼びかけるのでした。ミーナは、主人であるエルガー氏の声を聴くと、いつでもとても喜んでいたと言われています。相思相愛ぶりがうかがえますね。
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そんなエルガー氏は、もちろん彼の作品にも犬に関する曲を残しています。そのうちの1つは、「エニグマ変奏曲」の第11主題。友人のオルガニスト、シンクレアの愛犬であるブルドッグのダンをモデルに作曲したものです。そして、彼の生涯最後の作品となった小品。1933年に完成したその曲のタイトルは、「ミーナ」でした。ご存知、彼の飼っていた数頭の犬のなかでも一番かわいがっていたと言われるテリアのミーナ。曲を聴くと、エルガー氏のミーナに向けられた温かい愛情を感じるとともに、美しいがゆえに切なく感じるメロディは犬との短くも儚い時間をも思い起こさせます。
生涯最後の作品が、奥さんではなく犬の名前だなんて、エルガー氏は犬の方が好きだったのかな?と勘繰られてしまうかもしれませんが、ご安心を。彼のもっとも有名な曲、冒頭でも書いた「愛の挨拶」は二人が婚約をした時に、記念として奥さんのアリスに捧げられたものです。
身分格差、周囲からの反対を乗り越えての結婚でした。彼の音楽を聴いていると、とても情が深く、温かい気持ちの人だったんだなあというのが伝わってきます。こうやって音楽家の人生を辿りながら曲を聴いてみると、また新しい発見があります。

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お次は「歌劇王」リヒャルト・ワーグナーの犬にまつわる話。
彼もまた大変な愛犬家でした。生涯を通じ何頭もの犬と暮らし、可愛がっていました。
愛犬、ラブラドールのポールが死んだときのこと。その時彼は家を留守にしていたため、お手伝いの人によってポールは庭にすぐさま埋葬されました。しかしそれが気に入らないワーグナーは、ポールを掘り返すことを要求。そして、ポールに最期にふさわしい首輪を身に着けさせ、棺桶にいれ、丁寧な葬儀のセレモニーを行う事を命じました。犬好きの人からすれば、そうだよね、うんうん。と共感できてしまいますが、これって犬と身近にいない人からすると、「ちょっと変な人。」と思うのでしょうか。

その他にも犬とクラシック音楽にまつわる逸話は沢山あります。タイトルにも書いた「犬のためのぶよぶよとした前奏曲」サティ作曲。日本語訳タイトルのインパクトが強すぎて、なんだか冗談みたいに聞こえるものの、これこそが作曲家の狙い。題名から音楽を判断する人たちを皮肉ってつけたそうです。こういう所からも性格が垣間見えるような気がしませんか?
そして、誰でも知ってるあの「子犬のワルツ」は、当時ショパンが溺愛していた女性、ジョルジュ・サンドが飼っていた犬が自分の尾っぽを追いかける様子からインスパイアされた曲だと語られています。好きな人の犬もまた愛らしくみえたのでしょう、ショパンはピアノの詩人といわれただけあります。叙情あふれる美しい音楽に、誰もが虜になりました。

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ロシアの作曲家、ショスタコーヴィチ氏はインタビューでこんな風に語っています。「犬の人生はとても短い。それは、彼らがどんなことでもとても真摯に、真心で受けとめてしまうからなんだよ。」
犬を飼っているあなたなら、この言葉が本当であると頷けることでしょう。いつでも1000%真剣に向き合ってくれる、これこそが犬が人間の最高のパートナーであるという1つの理由です。繊細な心と鋭い洞察力をもち、自分以外の物に感情移入して物事を見る・感じることが得意な芸術家にとって、同じく感受性豊かで敏感なハートを持つ犬たちは、最高のコンパニオンだったのでしょうね。

※参考サイト:Dog Day: Composers and Their Dogs By Margaret Fisher

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ラブレス 富士子

ラブレス 富士子

米国在住。ピアニスト、音楽家の通訳として活動しています。小さい頃から犬、猫、ひよこ、うさぎ…色々な動物と暮らしてきました。愛犬たちとの暮らしは、毎日が彩り豊かでほっこりシアワセ。趣味はハープ。動物と、文章を書くこと、絵を描くこと、音楽をこよなく愛する犬飼いです。


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