【獣医師監修】猫も虫歯になる?猫の口腔内環境と気をつけたいお口のトラブル

2021.09.19

【獣医師監修】猫も虫歯になる?猫の口腔内環境と気をつけたいお口のトラブル

人の歯や口に関して気になるのは虫歯と歯周病ですが、猫も虫歯や歯周病になるのでしょうか?猫と人では、口腔内の環境が異なり、また食べているものが違うため、猫はほとんど虫歯になることがないと言われています。一方、猫は人より歯垢が歯石になりやすいため、3歳以上の猫の8割が歯周病であるとされます。今回は、猫が虫歯になりにくく歯周病になりやすい理由と、歯周病の予防についてご紹介します。

猫も虫歯になる?

羽根のおもちゃを噛む猫

人の場合、歯や口について問題になるのは主に虫歯や歯周病ですが、実は、猫はほとんど虫歯になることはありません。
では、なぜ猫は虫歯にならないのでしょうか?人との違いから、解説していきます。

◆猫の口腔内では虫歯菌が繁殖しにくい

口の中の細菌が作り出した酸によって歯が溶けて生じるのが、「虫歯」です。虫歯を作る細菌を総称して「虫歯菌」と言い、中でも代表的な細菌が「ミュータンス菌」(Streptococcus mutans)です。
ミュータンス菌は、酸性の環境を好みます。人間の口腔内は弱酸性(pH6.5~7.0)のためミュータンス菌が増殖しやすいですが、猫の口腔内はややアルカリ性(pH7.5~8.5)であるため、ミュータンス菌が繁殖しにくいと考えられています。
ただ、一説には猫の口腔内のpHは、人と同じくらいとも言われています。

◆人とは歯の形が異なる

人の奥歯は、臼のような形状で「臼歯」(きゅうし)と呼ばれます。これは、雑食である人間が、上下の歯で食べ物をすり潰すための形状です。このような歯を専門用語では、「すり鉢状咬合」と言います。
一方、肉食である猫の奥歯は「裂肉歯」と呼ばれ、肉を引き裂くために尖った形状をしています。上下の歯はギザギザの形に咬み合わさり、専門用語では「ハサミ状咬合」と呼ばれます。
人の虫歯は、奥歯で発生することが多いです。これは、歯垢(歯の表面に付着している細菌の塊)が一番溜まりやすいのが、歯と歯が咬み合わさる「咬合面」だからです。
他方、猫の奥歯はハサミのように働くため咬合面が少なく、また歯の亀裂やくぼみも少ないため、歯垢が溜まりにくいのです。

◆人間と食べているものが違う

虫歯菌は、食べ物の中の糖質を発酵させて、酸を作り出します。これが、「甘いものを食べ過ぎると虫歯になる」と言われる所以です。
猫の味覚は、主に酸味と苦味を感じ、甘味を感じる能力はあまりないと言われています。このため、猫は一般に甘いものを食べません。また、本来、完全肉食動物であるため、穀物などの炭水化物(糖質+食物繊維)も摂りません。つまり、虫歯菌が発酵させる糖質が口の中にほぼ無く、虫歯が発生しにくいのです。

◆ミュータンス菌がいない

猫の口の中には、虫歯菌の代表格であるミュータンス菌が存在しません。原因となる菌が、そもそも存在しないため、虫歯にならないのではないかと考えられています。
ちなみに、様々な動物の口の中の細菌を調べた研究によると、肉食動物には虫歯菌はいないのではないかと推察されるそうです。


猫がなりやすい「歯周病」

猫の場合、ほとんど虫歯になりませんが、気をつけたいのは歯周病です。3歳以上の猫の8割が、歯周病であると言われています

◆歯周病とは

歯周病とは、「歯肉炎」と「歯周炎」を合わせた病態です。
歯周病の初期症状は、歯肉炎です。歯肉炎では、歯の根元に炎症が起こって赤くなったり、腫れたりします。悪化すると、わずかな刺激でも出血することがあります。
歯肉炎を放置すると、歯肉の炎症は深い部分にまで進んで、強い痛みを感じるようになります。
さらに炎症が進むと、歯肉は歯を支えられなくなって、歯がグラグラと動くようになります。これが、歯周炎です。
炎症が歯の根元や骨にまで達すると、フードを食べられなくなるなど、日常生活に影響を及ぼすだけではなく、目や全身にも症状が出てきます。
歯肉炎が悪化すると、歯と歯茎の間に溝が生じます。これを「歯周ポケット」と言います。歯周ポケットが広がるにつれて、膿が溜まっていきます。また、歯と歯茎の間に大きな隙間が生まれるため、歯が抜ける場合もあります。これが、「歯槽膿漏」です。

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◆猫は歯垢が歯石になりやすい

歯周病の原因は、歯の根元に溜まった歯垢です。歯垢が残っていると細菌が繁殖し、放置すると歯肉炎になります。
歯垢は、「菌膜」が歯の表面に付着してから約24時間で形成されます。菌膜とは、歯の表面に形成される薄い膜で、唾液に含まれるたんぱく質や糖タンパク、歯肉からの分泌液などが構成成分です。菌膜には、口腔内を保護したり潤いを保ったりする役割がありますが、時間が経つにつれて細菌成分が加わり、この細菌のコロニーが歯垢の土台となります。
歯垢を長時間放置すると、石灰化が進んで歯石になります。猫の場合、一般的に1週間で歯垢が歯石になります。ちなみに、人の場合、2日で石灰化が始まり、その後、約14日間で歯石になります。猫は歯垢が歯石になりやすいということが、お分かりいただけるでしょう。
歯石の表面はデコボコしているため歯垢がつきやすく、歯石の表面にさらに歯垢が蓄積していくという悪循環を招きます。

◆歯周病の主な症状

下記のような症状が見られた場合、歯周病の可能性があります。

□歯茎の赤み
□口臭(腐敗臭)
□歯がぐらつく
□歯が長くなったように見える
□食べるのが遅い
□嘔吐(尿毒症による)
□副鼻腔炎の併発

さらに研究中ではありますが、歯周病が心臓、肝臓、腎臓、肺に悪影響を及ぼすとされています。

◆歯周病の主な原因

★口腔内の傷

猫が固いものや尖ったものを噛んだときに歯茎に傷がつくと、炎症が広がり、歯肉炎が発生します。この場合、傷が治れば歯肉炎も治まることがほとんどです。

★細菌の繁殖

口腔内の衛生状態が悪く、歯間に挟まった食べかすや、歯の表面に付着した汚れを栄養源として細菌が繁殖すると、歯垢になります。
歯垢は、周囲の組織に炎症を引き起こします。

★免疫の低下

免疫が衰えると、通常なら制御できる細菌がどんどん増殖して、許容範囲以上の毒素が生成される事態になります。


猫の歯周病を疑ったら

あくびをする猫

◆まずは獣医さんに相談を

前項でご紹介した症状が見られた場合、歯周病を疑い、獣医師さんに相談しましょう。適切な治療を受ける必要があります。

◆歯周病の治療

★歯石の除去

菌膜や歯垢は、歯みがき(ブラッシングなど)の物理的な力で取り除くことができますが、歯石になっている場合、歯磨きでは除去することができないので、動物病院での歯石除去(スケーリング)が必要になります。スケーリングは、通常、全身麻酔をしたうえで行います。全身麻酔には、猫をじっとさせるためだけではなく、痛みを抑える意味があります。
スケーリングは、

1.麻酔
2.超音波スケーラーで歯石や歯垢を除去
3.歯周ポケットの中の歯垢の除去
4.歯垢がつきにくくなるよう、歯の表面をツルツルに研磨

という手順で行われます。
無麻酔で処置を行う動物病院やペットサロンもありますが、無麻酔には無麻酔のデメリットもあるので、注意が必要です。

★食習慣の改善

ドライフードに比べ、ウェットフードは歯の間に残りやすいです。このため、ウェットフードばかりを与えていると、歯周病のリスクが高くなります。歯周病の子でウェットフードをメインで与えている場合には、もう少し固いものに切り替えます。これには、咀嚼回数を増やすことで唾液の量を増やし、菌膜を洗い流す効果が期待されます。

★基礎疾患の治療

歯周病が糖尿病など別の病気によって引き起こされている場合、まず、その基礎疾患の治療を行います。

★対症療法

歯周病が他の病気を併発している場合は、その症状を軽減する目的の治療が行われます。


猫のお口トラブル予防

人間とは異なり、猫の場合、一度発症した歯周病は完治することはありません。そのため、予防が非常に大切です。

◆歯磨きを行う

歯垢や菌膜は、歯みがきで取り除くことができます。歯石になる前に、日頃から飼い主さんが歯磨きをしてあげましょう。
できれば、様々なものに対して柔軟な子猫の頃から慣れさせておくとよいでしょう。
歯みがきの頻度は、いろいろな情報がありますが、可能であれば毎日行うのが理想です。猫の場合、歯垢が歯石になるまでに1週間しかありませんので、少なくとも週に1~2回は歯磨きを行いましょう。
歯みがきには、人間用の歯ブラシではなく、猫用の歯ブラシを使ってください。人間用の歯ブラシは大きすぎ、口腔内を傷つけてしまう恐れがあります。また、猫の歯は人の歯より弱いため、人間用の歯ブラシでは歯の表面に傷ができやすく、歯石がつきやすくなります。
特に歯周病になりやすいのは奥歯ですが、届きにくいため、慎重かつ丁寧に磨きましょう。
歯ブラシを嫌がる子には、濡らしたガーゼや歯磨きシートで行うとよいでしょう。ガーゼや歯磨きシートで、歯茎や歯の表面をそっと拭くだけで十分です。

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◆歯磨きが難しい場合

猫の歯みがきは非常に難しく、特に成猫になってから歯みがきに慣らすのは難しいです。そのような場合には、歯みがきオヤツなどを活用して、少しでも歯垢がつきにくくなるようにケアしましょう。
また、噛んで遊ぶことで歯垢を除去できるデンタルおもちゃも、多数市販されています。ロープ状のものやぬいぐるみなど、様々なおもちゃがあるので、愛猫の好みに合わせて与えるとよいでしょう。

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虫歯に似た猫に特有の病気

猫に特有の「破歯細胞性吸収病巣」(はしさいぼうせいきゅうしゅうびょうそう)という病気があります。これは、歯の組織が破壊吸収される病気で、原因は不明です。
多くの場合、口の横や前臼歯・後臼歯の付け根のあたりに、点のように小さな傷や穴ができ、進行すると徐々に歯が溶けていきます。
一見、虫歯に似ているように思われますが、破歯細胞性吸収病巣は、虫歯菌ではなく歯周組織に存在する破歯細胞が自身の歯を壊していく病気です。
この病気になると、歯の痛みから食欲が低下したり、元気を消失したりします。また、歯肉の赤みや腫れなど、歯肉炎の症状を伴うことが多いです。

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まとめ

猫は、人のような虫歯にはほとんどなりません。猫の口の中はややアルカリ性で虫歯の原因となる虫歯菌が繁殖しにくいこと、猫が甘味を感じないため糖質を摂らないこと、歯が尖っていてギザギザの咬み合わせであることが理由として挙げられます。また、そもそも虫歯菌が口の中に存在しないと推察する研究もあります。
しかし、猫は人に比べ、歯垢が歯石になるまでの期間が短く、約1週間です。このため、歯周病になりやすく、3歳以上の猫の8割は歯周病であると言われます。
歯石になってしまうと麻酔下でのスケーリングが必要となり、治療費は歯石除去だけでも5,000~12,500円程度かかります。歯石になる前の歯垢であれば、歯みがきで取り除くことができるので、日頃から歯みがきをしてあげて、歯周病予防に努めましょう。
どうしても歯磨きが難しい場合には、歯みがきオヤツやデンタルおもちゃを活用して、愛猫のお口のトラブルを防いであげてくださいね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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