愛犬を叩くしつけはNG!トレーニングの基本は褒めること。つい愛犬を叩きそうになった場合は?

2018.12.25

愛犬を叩くしつけはNG!トレーニングの基本は褒めること。つい愛犬を叩きそうになった場合は?

犬と生活をしていると、しつけの悩みは尽きません。犬が思うように行動してくれないと、つい犬を怒ったり叩きたくなってしまうこともあるかもしれません。しかし、叩くことで犬は間違いに気づくことはできるでしょうか?犬を叩くことで、問題が悪化してしまう事もあります。犬を叩くしつけがだめな理由と、叩かずにしつける方法をご紹介します。

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犬を叩くしつけがだめな理由

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日本はペットに関してはまだ後進国とされていて、つい最近まで犬を叩くしつけ方法が日常的に見られました。その他にも、犬や猫の殺処分の多さや、生体販売の在り方、ペットに対する考え方などが、ペット後進国と呼ばれる理由です。それに対し、ヨーロッパなどの動物先進国と言われる国々では、犬に関する法律や生活の中のルールが厳しく定められており、犬を飼うこと自体のハードルが高めに設定されています。アメリカやヨーロッパでは、犬を叩くのではなく褒めてしつける方法が推進されており、日本もそれに倣い叩くしつけは好ましくないという風潮にあります。

国内のドッグトレーナーや訓練士の中には、今も叩くしつけを容認する方も少なくはありません。叩くしつけが必ずしも間違っているのではなく、正しい方法やタイミングを見極めることが出来れば褒めるしつけと同等の効果をあげることが出来ます。ただ、一般的な飼い主がその技術を身に付けるのは難しく、多くの場合犬は叩かれた理由を理解することはできません。そのため、犬を叩くことでより状況を悪化させてしまう事があります。

例えば、留守番中に家具を齧ってしまう犬の場合、飼い主が帰宅した後に叱られたり叩かれたりしても問題行動はほとんど治りません。飼い主が家にいる間はいたずらをしなくなったとしても、留守になるとまた家具を齧り、飼い主が帰宅するとおどおどして機嫌を取るような行動をします。これを見た飼い主は、犬は家具を齧ることが悪いことだと分かっているはずだと判断します。しかしそうした犬の多くは、飼い主がそばにいる時に家具を齧ると身に危険が及ぶけれど、飼い主がいなくなれば安全だと考えているだけなのです。犬は群れで暮らす動物ですので、一人で家に残されると不安になります。家具を齧ることで少し気持ちが落ち着くこともあれば、また、それがただの暇つぶしの場合もあります。ただ、こういった場面では叱られることが多いので、飼い主が帰宅するとそれを察しておどおどしたり機嫌を取ったりします。飼い主が帰宅したという事と、飼い主の表情や言動などから、自分がこれから叱られるということは分かりますが、なぜ叱られるのかは理解していません。この場合に必要なのは、犬を叩いたり叱ったりすることではなく、留守中に家具を齧ることができないようにする物理的な対策や、犬が家具よりも気に入るような噛んでも良いおもちゃです。

また、飼い主が犬を叩く場面は、叱る目的よりも感情的になっていることが多い為、更に犬を怖がらせたり興奮させる原因になります。飼い主に叩かれた犬は、なかなかそれを忘れません。飼い主自身や人の手を怖がるようになったり、叩かれることを予想して反抗したりすることがあるため、叩くという行為はお勧めできません。


叩かずにしつける方法

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犬に何かを学習させるための基本は、オペラント条件付けと古典的条件付けと呼ばれる方法です。

オペラント条件付けとは、自発的な反応を条件づけることを言います。条件付けとはご褒美によるしつけ方法のことで、反応の起こる頻度を増やすための刺激としてご褒美を使います。ご褒美は褒めることだけでなく、オヤツやおもちゃ、一緒に遊ぶことなど様々で、犬や場面に合わせて喜ぶものを選びます。ある瞬間に犬がオスワリをしたなら、その反応(オスワリ)をオペラントと呼び、これを反復練習することでオスワリという行動は強化されていきます。オペラント条件付けとは、そのオペラントを強化して生起率や頻度を増やすことです。ただこれは、犬がオスワリの言葉の意味を理解しているのではありません。犬がある場面でオスワリの号令に反応しなかったとしても、それは犬が反抗しているわけではなく、オスワリをするという反応が強化されていないだけなのです。いぬのしつけとは、犬に知識を伝えるのではなく、犬の正しい反応の頻度を高めることなのです。

古典的条件付けとは、それ自体は何の意味も持たない刺激と、本能に働きかけてくる刺激をペアにして、その二つを連合させることを言います。その結果、以前は何の意味を持たなかった刺激に対しても、本来意味のある刺激を持つ刺激と同じ反応を示すようになります。例えば、食べ物は本能に直接働きかける刺激です。一方おやつの入った容器は、それ単体では何の意味も持たない物ですが、犬はこの容器からおやつが出てくるのを見るうちに、容器とおやつを結び付けて考えるようになります。他にも、飼い主がリードを持つと喜んだり、乗っている車が病院に向かうとがっかりするのは同じ現象です。

犬のしつけは、この二つの条件付けを把握しておくと格段に進めやすくなります。「犬は分かっているはずなのに」「この犬は頭が悪い」などと考えるのは間違いで、ただトレーニングが不足していることが多いのです。また犬を叩く行為は、犬を叩く原因となった反応(いたずらや人を咬む行為)の頻度を減少させる意味で使われることが多いですが、高度なテクニックが必要となります。やり方を間違えなければ大きな威力を発揮しますが、飼い主が未熟であれば犬を混乱させることが多くあります。

◆無駄吠えをしつける方法

犬の無駄吠えには、番犬吠えや要求吠え、威嚇吠え、退屈吠えなどがあります。

無駄吠えの原因には、侵入者の存在や自分の要求を伝えること、恐怖や不安の他、社会化不足や運動不足などもあげられ、原因を把握することが重要です。犬の無駄吠えに対し犬を叩く行為は、犬を更に興奮させたり怯えさせたりするため、あまり有効ではありません。「吠えろ」と「静かに」の二つの号令を覚えさせるのがひとつの手段です。吠えろの号令のあとに犬を吠えさせ、ご褒美を与えてよく褒めます。飼い主がわんわんと吠える真似をして誘導するか、吠えさせるのが難しければ、無駄吠えの原因となる玄関チャイムなどを使っても構いません。犬が何度か吠えたら、「静かに」などの号令をかけます。おやつやおもちゃを見せ、そちらに気を取られて吠えるのを止めたら、3~5秒ほど穏やかに褒め続け(よしよし、そうそう、など)、その後にご褒美を与えてよく褒めます。これを繰り返して二つの号令を理解させ、実際の生活の中の場面に応用していきます。この練習がしっかり定着していないうちは、犬にいくら言っても、もしくは叩いても、犬はなかなか吠えるのを止められません。

◆トイレをしつける方法

犬がなかなかトイレを覚えなかったり、覚えたはずのトイレを失敗したりすると、つい犬を叱ってしまうこともあるかもしれません。

トイレの失敗の多くは単なる練習不足が原因で、飼い主はできるはずだと思っていてもまだ犬には完全に定着してしない場合が多いです。犬がトイレ以外の場所で排泄をしているときに叱ってしまうと、犬は排泄行為を叱られたと認識し、飼い主から隠れて排泄をするようになってしまうことがあります。また、トイレの失敗を後から叱ることも無意味で、犬を混乱させる原因になります。犬がトイレを失敗したら、叱らずにトイレのしつけをやり直しましょう。

犬は本来、クレートなどの狭い空間では排泄を我慢する習性があります。犬が排泄をしそうなタイミングで頻繁にトイレに連れていき、排泄を始めたタイミングで褒め言葉をかけ、直後にご褒美を与えましょう。寝起きや食事の前後、就寝前などに排泄をする犬が多く、繰り返すうちにタイミングがつかめてきます。排泄のご褒美に散歩に連れ出すのも有効で、排泄後に散歩に行けることが分かれば、犬はすぐに排泄を済ませるようになります。

広めのサークルなどで生活をしている場合は、サークル内全体にペットシーツを広げて排泄をしたら褒め、だんだんとペットシーツを狭めていく方法もあります。犬の生活パターンに合わせて柔軟に対応しましょう。犬がトイレを完全に覚えていないうちは、室内でフリーにさせるのはお勧めできません。ポイントは、排泄のタイミングを見極め、成功したら必ず直後に褒めること、失敗を最小限に抑えることです。


つい犬を叩きそうになってしまったら?

犬を叩く原因となる事柄は人によって様々ですが、飼い主が感情的になっている場合がほとんどです。犬を叩く行為は、犬を傷つけたり関係を壊すことにつながります。犬を叩きそうになってしまったら、気持ちを落ち着けて冷静になることに集中しましょう。

人の怒りのピークは6秒間だと言われていますので、6秒間我慢することが出来れば、犬を叩かずに済むかもしれません。犬を叩くことが本当に正しいしつけなのかを考えてみましょう。犬を叩く行為を頻繁に繰り返してしまうのであれば、飼い主自身が大きなストレスを抱えていることも考えられます。犬との生活以外に原因があるのかもしれません。犬のしつけが上手くいかないことに悩んでいるのでれば、早めにしつけのプロに相談しましょう。

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子育て中の親がかかるという育児ノイローゼ。一般的に認知度も高く、経験したことのある方も結構いるのではないでしょうか。 このノイローゼ、犬を育てる上でも発症する可能性があるのです。 しつけに疲れたり、不安を感じたりして発症するこの症状を、育犬ノイローゼと呼びます。 今回は、育犬ノイローゼにかかりやすい人、実際の症状、かからないための対策方法を紹介していきます。

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そもそも飼い主が犬を叩くほど感情的になるのは、人が犬を理想化しすぎていることが原因のひとつです。現代社会では、犬は賢く忠実で、善悪を分かっており、いつも飼い主を喜ばせようとしている存在だと考えられています。しかし犬は人が思っているよりも保守的で、利己的で自己中心的な生き物です。犬の習性や考え方、学習の過程を把握することで、犬の問題行動と冷静に向き合うことができるのではないでしょうか。



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動物の専門学校で看護の資格を取得後、6年間動物病院に勤務しました。5歳のシェルティと4歳の猫、0歳の息子と毎日楽しく過ごしています。ペットと過ごすうえで役に立つ情報をお届けできるよう、日々勉強しております。よろしくお願いします。

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