【獣医師監修】猫の腎臓病(慢性腎臓病・急性腎臓病)の症状、原因、治療法は?

2017.11.20

【獣医師監修】猫の腎臓病(慢性腎臓病・急性腎臓病)の症状、原因、治療法は?

猫を飼っている飼い主さんは、常日頃飼っている猫ちゃんが病気にかからないように気を付けている事でしょう。猫がかかりやすい病気は色々ありますが、F.L.U.T.D(猫の下部尿路疾患)の次に発生頻度が高いのが腎臓病です。ただし、腎臓病が「どんな病気なのか」「どのような症状なのか」「どのような治療法があるのか」ご存知の方は少ないのではないでしょうか。そこで、ここでは猫の腎臓病についてご紹介したいと思います。

猫の腎臓病とは?

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猫は、他の動物よりも腎臓病にかかりやすいと言われています。腎臓病とは、どんな病気なのでしょうか?

◆猫の腎臓の働きとは?

腎臓病に大きく関係する「腎臓」は、どのような働きをしているのでしょうか?

血液中に老廃物が蓄積されると、生命活動に支障をきたし様々な病気の症状を引き起こします。この血液中の老廃物を体内から排泄し、血液を綺麗に保つ働きを担っているのが腎臓です。血液は腎臓でろ過され、有用な成分や必要なミネラルを体内に、老廃物は尿として体外へ排泄されます。

また、腎臓は老廃物を取り除くと共に、体内のミネラルや水分を調節する役割をもっています。

腎臓病は、このような腎臓の機能が50%以上失われた状態の事を指します。

◆慢性腎臓病と急性腎臓病

猫の腎臓病には2つの種類があります。1つは慢性腎臓病、2つめは急性腎臓病です。
慢性腎臓病は老化に伴う腎機能の低下が原因で起こり、急性腎臓病は急激な腎機能低下が原因で起こります。

この二つの内、猫がかかりやすいのは慢性腎臓病で、症状はゆっくりと進行していき、最終的には腎臓が正しく機能しなくなります。そして、慢性腎臓病から症状が進行すると、腎臓の機能が失われた状態、いわゆる「慢性腎不全」にまで悪化してしまいます。

慢性腎不全は、腎臓の機能が失われ、生存が困難になった状態を指します。


猫の腎臓病の原因は?

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◆慢性腎臓病の原因

腎臓病は高齢の猫に多く、10歳以上の猫の30~40%以上が、慢性腎臓病にかかっていると言われています。
その理由ははっきりしていませんが、血液中の老廃物をろ過し尿として排泄する「ネフロン」という組織が加齢とともに少しずつ壊れていく為と考えられます。

慢性腎臓病では、数か月~数年かけて腎臓の機能が低下していきます。症状は緩やかに進行する為、飼い主さんが初期の段階で気付くことが難しい病気です。また、猫は特に症状を隠す動物である為、ほとんどの場合が末期になった時点で判明します。

慢性腎臓病は、末期にならないと症状がでにくく、一度発症すると治る事はありません。治療については進行を緩やかにすることが目的となります。猫ちゃんの健康的な長生きの為にも、出来る限り初期の段階で症状に気付ける事が大切です。

◆急性腎臓病の原因

急性腎臓病は時間をかけずに何らかの原因(毒性のある食品や薬品の摂取、尿結石など)で、1日~短期間で急激に悪化します。

急性腎臓病は、点滴や人工透析などで原因となる毒性の物質を排泄できれば回復が期待できます。


猫の腎臓病の症状は?

もともと猫はあまり水分を取りません。「最近頻繁に水を飲む」「おしっこが多くなった」等感じる場合は、まずは腎臓の病気を疑ってみてください。腎臓の機能が衰えると、正常なおしっこが排出できず、薄いおしっこを大量にするようになり、水分を多く飲むようになります。

まずは下記の症状がないかチェックしてみましょう。

①食欲が減ってきた
②体重が減ってきた
③元気が無い
④毛ヅヤが悪くなった
⑤繰り返し吐いている
⑥便秘するようになった
⑦口臭が臭うようになった
⑧いつもよりおしっこが増え、頻繁に水をとるようになった

上記のような症状が見られたら、早めに獣医師さんに相談してください。

また、途中で触れた慢性腎不全は、上記の症状に加えて、脱水、夜尿、下痢などの症状が見られます。慢性腎不全は老廃物の排出が出来なくなる為、尿毒症などの死に至る症状に陥る事があります。猫ちゃんの異常に気付いたら迅速な対応を心がけましょう。


猫の腎臓病の治療法は?

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腎臓は一度機能が失われると、元に戻すことはできません。腎機能が著しく低下した場合は、人間と同じように透析や移植をしなければ生きていけません。

その為、腎臓病を早期発見し、症状の進行を緩やかにする事が目的となります。

◆食事でできる治療法

腎臓病の治療の中で、最も効果が期待できるのが食事療法です。通常の食事から療法食に変更する事で、寿命が2倍以上伸びるという報告もあります。残っている健康な機能を維持する為にも、猫ちゃんの食事に気を付けてあげましょう。

ただし、食事療法は必ず獣医師の指導が必要となります。勝手に療法食を与えたりせず、まずは獣医さんの元へ行くようにしましょう。

1.タンパク質の制限
タンパク質が分解されると尿素が作られます。高タンパク質の食事は、体内の尿素を増やし腎臓病の症状を悪化させてしまう為、タンパク質の制限がされているフードを選ぶ事で腎臓への負担を軽減する事が期待できます。

2.リン・ナトリウムの制限
腎臓病では、リン・ナトリウムなどの排泄機能が低下する為、多飲多尿や高血圧になりやすいと言われています。特にリンの低減は延命効果がある事が高く期待されています。

上記食事療法以外にも、オメガ3脂肪酸、EPAやDHAなどの積極的な摂をする事が、症状緩和に効果があると言われています。最近では成分調整されたペットフードも多く販売されています。獣医師さんに相談して、症状に合わせたフードを選んであげてください。

また、腎臓病の症状が現れてからだけではなく、健康な子猫の頃から良質なフードを与える事も大切です。腎臓に負担をかけない食事を続ける事で腎臓病の予防になります。

◆動物病院での治療

腎臓病の猫も人間同様、透析を行う事で体内の老廃物や毒素の排泄を助け、生命活動の維持をする事ができます。透析の種類は「血管透析」と「腹膜透析」の2つがあります。

1.血管透析
血管透析は、猫の頸静脈から血液を取り出し、人口腎臓に送って毒素や水分を除去して綺麗になった血液を体内に戻す方法です。

ただし、血管透析の設備を持っている動物病院は少なく、費用も高額なため継続的な治療が困難な方法です。その為、多くの猫ちゃんは腹膜透析を行います。

2.腹膜透析
腹膜透析は一般的な動物病院でも治療が受けられ、血管透析と比べて費用は掛かりません。

しかし、腹部にチューブを刺して透析液を入れて浸透圧で老廃物の排泄を促す為、チューブを入れたまま生活をしなければならず、感染症のリスクがあります。また、挿入しているチューブを触らないようにエリザベスカラーをしなければならず、猫のストレスの原因にもなります。透析をする際、少しでもストレスを感じる事が無いよう、飼い主さんの献身的なケアが大切です。

3.猫の腎臓病治療薬
2017年1月に「ラプロス®」という新薬が、猫の腎臓病治療薬が承認されたと話題になりました。ラプロス®は、腎臓の血流を増やし、炎症を抑える事で腎臓病の進行を抑える効果が認められ、腎臓病の症状軽減が見られます。

ただ、何度もお伝えしていますが、腎臓は一度壊れてしまうと回復が難しい臓器です。この新薬であるラプロス®でも、失われた機能を戻す働きはありません。あくまでも、効果的に進行を抑える薬であるという事をしっかり理解してください。

上記の治療方法については、獣医師さんとよく相談をしてください。特に、ラプロス®については、まだ新しい薬なので慎重に投与する必要があります。

獣医師さんとの相談はもちろんですが、猫ちゃんの体の負担にも気を配りつつ治療を進めてくださいね。

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猫の腎臓病の予防法は?

腎臓病には、残念ながらこれといった予防方法がありません。いくら飼い主さんが健康的な食事、規則正しい生活に気を配っていても腎臓病になる猫ちゃんはいます。

それでも、出来る限りの良質な食事、新鮮な水分補給をする事。また、定期的な健康診断が、猫ちゃんの健康的な生活維持を続ける為、腎臓病を防ぐ為の予防の一歩となります。

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猫の健康診断の料金・項目は?受ける頻度や必要な理由について解説!

今は猫などの動物も健康診断を受けられる時代になりました。また、昔と比べてペットに対しての健康意識も高くなってきていて、人と同じような健康診断を受けることができます。健康診断によって愛猫の体調を把握したり、病気を早期発見できる場合もありますので、必ず受けておきたいものです。では、猫の健康診断にはどんな項目があり、どれぐらい料金がかかるのでしょうか。

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最後に

いかがでしたか?

腎臓病は治る事のない病気です。弱っている猫ちゃんを見るのは、飼い主さんにとってすごく辛い事でしょう。しかし、他の病気と比べると、病気が判明してからなくなるまでの期間が長い事もあり、今までの思い出を振り返り、感謝の気持ちを伝えるなど、治療以外でも出来る事はたくさんあります。

万が一、腎臓病と診断された際には、出来る限りの療法をしながら、ゆっくりと大切な時間を過ごしてあげてください。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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