猫のシュウ酸カルシウムとは?
猫の疾患である「尿路結石」と聞くと、膀胱や尿道などに結晶や結石ができて、オシッコを出にくくする病気という認識が強いことかと思います。
愛猫が尿路結石を患ったことのある、飼い主さんであればご存知かと思いますが、尿路結石でできる結晶や結石は、猫の年齢や体質によって異なることがほとんどです。
尿路結石は別名「尿石症」とも呼ばれ、「猫下部尿路疾患(FLUTD)」の中でも代表的な病気となるので、尿路結石についてより詳しく学んでいきましょう。
◆尿路結石の種類のひとつ
猫の尿路結石には、代表的な2種類があります。ひとつが「シュウ酸カルシウム」であり、もうひとつが「ストルバイト」という結晶の成分に分けられます。
動物病院で「尿路結石」と診断を受けたとき、大体このどちらかが原因となっていることが多く、猫にとって普段から注意しておきたい病気であると言えるでしょう。
なぜこの2種類の結晶の成分に分類されるかというと、そこには尿のpH値が関係してきます。
尿pHはオシッコが酸性に傾いているか、アルカリ性に傾いているかの数値を示す指標となり、この尿pHの数値によって、結晶化が進んでいくかの判断が可能となるのです。
この尿pHがアルカリ性に傾き、マグネシウムやリンが結晶化して結石になったものを「ストルバイト」、酸性に傾きカルシウムが結晶化して結石になったものを「シュウ酸カルシウム」として診断されることがほとんどでしょう。
この2種類の結晶は、肉眼では判断することは難しいですが、尿検査をする際に顕微鏡で見ると、結晶の形から見分けることができます。
また、結石はストルバイトが乳白色、シュウ酸カルシウムが黄褐色となっているので、結石の色味で違いを判断することもできます。
◆シュウ酸カルシウムができる原因
ストラバイトは一般的に子猫から6歳ぐらいまでの比較的若い猫にできやすいとされていますが、シュウ酸カルシウムはその反対で、7歳以上の高齢期の猫にできやすいと言われています。
猫は元々水をあまり飲みませんし、そのため凝縮された濃いオシッコを出すために、腎臓をフルに活動しています。年齢に伴ってどんどん体の機能は低下していきますので、それらも何かしらの因果関係があるのかとも考えられますが、実際のところシュウ酸カルシウムができる原因は不明な点が多いようです。
もちろん不適切な食事(ミネラルバランスのとれていない食事)や、水をあまり飲まないなどの原因も考えられますが、これらはストルバイトができる原因にもなりますので、シュウ酸カルシウムができる原因としては言い切れないのかもしれません。
他にもトイレが汚れている場合や、ストレスが原因となって尿路結石を引き起こしてしまうこともあるので、愛猫のためにもストレスを抱えないような生活環境を整えることが必要となってきます。
◆シュウ酸カルシウムができやすい猫
ストルバイト同様、オス猫は尿道が細長くなっているので、やはりメス猫よりはシュウ酸カルシウムができやすいと言われています。
ただ、シュウ酸カルシウムはできる原因が明確でないことからも、必ずしも高齢の猫だけにできるわけではなく、どの尿pH値の猫でもできる可能性は高いようです。
そしてヒマラヤンやペルシャなどの長毛種は、シュウ酸カルシウムができやすいという報告もありますが、一方でアメリカンショートヘアやスコティッシュフォールドなどの短毛種もできやすいと言われています。
いずれにせよ注意が必要な病気であることは、間違いないのではないでしょうか。
猫のシュウ酸カルシウムの治療法
もし愛猫がシュウ酸カルシウムと動物病院で診断されたのなら、どんな治療法を行っていくのか、飼い主さんはとても気になってしまいますよね。
フードでの食事療法が可能なストルバイトに対し、シュウ酸カルシウムの治療はどのような療法が用いられるのでしょうか?
◆薬を投与する
猫のシュウ酸カルシウムは一度できてしまうと、体内で溶解することはできません。
シュウ酸カルシウムの結石は、ギザギザしているのでできてしまった箇所を傷付けてしまうことも多く、血尿が出てしまったり尿路感染を起こしてしまったりすることも。
そのような場合には、止血剤や抗生物質を用いて治療を行うことになります。
このような状態になっている場合は、痛みを伴っていることがほとんどですので、早期発見こそがシュウ酸カルシウムのカギとなってくるでしょう。
◆結石を手術で摘出する
シュウ酸カルシウムは食事療法で結石を溶解することができませんので、結石ができている場合は外科手術を行います。
手術の方法は動物病院によって異なりますが、一般的にはお腹を切って結石を摘出する手術を行うことがほとんどです。
設備が整っている動物病院では、腹腔鏡手術が行えることもあり、傷口も小さく長期の入院も不要となるので、最近では腹腔鏡手術を希望される飼い主さんも多いようです。
しかしどの動物病院でもその手術が行えるわけではありませんので、手術を行う際は飼い主さんの希望を伝えた上で、獣医師さんと相談しながら決めていくようにしましょう。
◆食事療法食を与える
シュウ酸カルシウムは体内で溶解することはできませんが、軽度であれば食事療法で結晶の排出を促すことが可能となる場合があります。
結石化してしまう前に、食事療法食や水分量を意識的に増やすことによって、オシッコを希釈し、コントロールすることが可能となっていくようです。
ミネラルと栄養面が計算された療法食を食べさせることによって、健康的なオシッコ量が出るようになれば、必然的に手術を行う必要がなくなっていきますよね。
この治療法が効果をもたらせれば、愛猫に辛い思いをさせることはなくなりますので、早期発見を心掛け、普段から予防法を用いて予防しておくと良いでしょう。
猫のシュウ酸カルシウムの予防法
猫のシュウ酸カルシウムは、ストルバイトよりも治療法が限られていますので、できることなら普段から予防をして、愛猫が病気にならないように心掛けておく必要がありますよね。
愛猫にいつまでも元気で長生きしてもらうためにも、飼い主さんがしっかりと配慮をして、体調管理を行ってあげるようにしましょう。
◆こまめに水分補給させる
シュウ酸カルシウムの予防法として一番重要なのは、とにかく水を多く飲ませて、たくさんオシッコを出すように促すことです。
シュウ酸カルシウムは何度もお伝えしている通り、一度でもできてしまうと溶解させる術がなく、結石を手術で取り除かなくてはいけません。手術は猫の体に負担をかけますし、全身麻酔のリスク、そして高額な医療費などの不安が次々に出て来てしまうものです。
普段から飼い主さんが意識して、水分をたくさん飲んでくれるような工夫をし、オシッコの回数を増やすように促すだけで、それらの不安から回避されるようにもなるでしょう。
たくさん水を飲んでオシッコの回数が増えることによって、シュウ酸カルシウムが結晶化する前に外部に出すことができますので、普段から水を多く飲むような工夫をしてみましょう。
◆結石に配慮したフードを与える
水分量を多く摂らせるために、ウェットのキャットフードもおすすめです。
ウェットフードは水分量が多い上に、嗜好性が高い商品が多いので、好んでくれる猫ちゃんも多いです。そして尿pHを正常値(6~6.5)にコントロールをしてくれる、キャットフードに切り替えるなどの配慮も必要となってきます。
ペットショップや量販店などでも色々な種類や味の商品が販売されていますが、飼い主さん自身で選ぶのが不安な場合は、獣医師さんに相談してみると良いでしょう。
また、結石に配慮されたフードだからといって、食べさせすぎには注意が必要です。
フードを食べ過ぎて肥満になってしまえば、尿道閉塞などの病気を併発してしまうこともありますし、体を動かすことが億劫となり、水を飲むことやオシッコをすることさえ面倒に感じるようになってしまいます。
肥満体の猫ちゃんの場合は、ダイエット目的で適度に運動をさせるように心掛けましょう。
◆定期的に検査を受ける
愛猫がシュウ酸カルシウムだけでなく、様々な病気にならないためにも、定期的に動物病院で定期検査を受けることはとても大切ですよね。
そしてどの猫にも尿路結石疾患にかかる可能性があると言えますので、高額な治療費などのことも考えてペット用の保険に入っておくのもおすすめです。
シュウ酸カルシウムと診断された場合、ほとんどの場合手術で結石を摘出しなくてはいけませんが、動物病院でかかる費用は手術費だけでなく、事前の検査で超音波検査やX線検査など、高額な検査費がかかってしまうことも多いです。
もし愛猫が高齢期の年齢に突入したのなら、フードの切り替えなどと一緒に、ペット保険の加入も検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
なかなか聞き慣れない名前のシュウ酸カルシウムですが、尿路結石疾患のうちのひとつとなり、結石ができてしまえば手術をして取り除かなければいけない、厄介な病気であることが分かりました。
ストルバイトと違って溶解できないので、できることならこの病気になる前に、しっかりとした日頃からの対策が重要となってくるでしょう。
シュウ酸カルシウムを作らないためには、水を飲む量を増やし、その分たくさんオシッコをしてもらう。これを飼い主さんが意識するだけで、リスクを軽減することが可能となってきます。
そして他の病気にかからないためにも、定期的な健康診断を行うようにしてください。そこでもし尿pHの数値が引っ掛かったのなら、獣医師さんと相談して尿pH値に配慮したフードに切り替えてみると良いでしょう。
これらのことを心掛けるだけで、愛猫の健康を保ってあげることができますので、日頃からしっかりとケアをして、常に健康体を目指してあげてくださいね。
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