1.猫の歯周病とは
1-1.猫の歯周病
1-2.猫は虫歯にはならない?
1-3.虫歯にならない変わりに歯周病になりやすい
2.猫の歯周病の症状は?
2-1.口臭がきつくなる
2-2.歯茎が腫れる
2-3.よだれが増える
2-4.歯がぐらつく・抜ける
2-5.歯茎から血が出る
3.猫の歯周病の治療方法
3-1.歯石の除去
3-2.抜歯
3-3.抗生剤の投与
猫の歯周病とは
私たち人間は食事をしたあとに歯ブラシを使って、歯垢(プラーク)を落としますが、この作業をしないと口臭や虫歯など、口腔内に様々なトラブルを抱えることになりますよね。
なので歯磨きは生活の中で、習慣づけなくてはいけない行動の一つとなります。
ですが猫は自分で歯ブラシを使って、歯磨きなどのケアをすることはありませんし、口腔内にトラブルが起きたとしても、飼い主さんに症状を訴えることはできません。
自分自身でケアができない猫にとって毎日の生活の中で、もっとも気を付けておかないといけない病気と言えば、まず「歯周病」が挙げられます。
まずは猫の歯の仕組みを知り、歯周病について学んでいきましょう。
◆猫の歯周病
猫の歯は人間と同じように3層構造になっており、内側から歯髄、象牙質、エナメル質といった層で構成されています。
この歯を支える部分を歯周と呼び、歯肉(歯茎)、歯槽骨、歯根膜、セメント質といった組織で、歯をしっかりと支えているのです。
歯肉に炎症が起こることを「歯肉炎」と呼び、歯肉の下の歯を支える溝(歯周ポケット)に炎症が起きた際には「歯周炎」と呼ばれます。
これらの症状の総称を「歯周病」と呼びますが、人間よりも猫は発症率が高く、愛猫の健康を気遣う上で、もっとも注意が必要な病気と言えるでしょう。
◆猫は虫歯にはならない?
私たちは歯磨きをしないと、虫歯リスクが一気に高まりますが、猫はどうでしょうか?
猫に虫歯ができたという話を耳にすることがないように、猫は虫歯になりません。
その理由として、口腔内のpHが関係していると言われています。
人間の口腔内のpHが弱酸性に傾いているのに対し、猫の口腔内のpHはアルカリ性に傾いています。
虫歯を作る細菌の総称を「虫歯菌」と呼びますが、虫歯菌の代表格である「ミュータンス菌」が、酸性の環境を好む傾向があるので、虫歯の元となる細菌が猫の口腔内で増殖しにくいと考えられているようです。
また、人間の唾液には「アミラーゼ」と呼ばれる酵素が含まれていますが、この酵素はでんぷんを糖に分解する働きを担っており、この糖は虫歯菌のエサとなります。
猫の唾液にはこの酵素がほとんど含まれていないので、猫が極端な食事を摂らない限り、糖が口腔内に蓄積することはほぼ無いに等しいと言えるのではないでしょうか。
◆虫歯にならない変わりに歯周病になりやすい
虫歯にならないからといって、お口の中は常に清潔というわけではありません。
猫の歯は鋭利に尖った形状をしている上に、食べ物をほとんど噛まずに飲み込む習性があることからも、虫歯にはならないといった利点がありますが、どうしても歯垢は蓄積されていきます。
その歯垢は約1週間で歯石に変わるとも言われていますので、歯磨きをしない猫の口腔内には虫歯菌以外の細菌が増殖しやすく、その菌が歯肉や歯周ポケットに入り込み、悪さをしてしまいます。
猫は3歳を過ぎたころから、歯周病のリスクがグッと上がると言われていますので、高齢になればなるほど症状は悪化し、異変に気付いたころには大掛かりな治療を要することもあるのです。
どの猫にも歯周病を発症するリスクがありますので、症状を進行させないためにも早期の発見、または歯周病にならないように日頃からケアをすることが大切です。
猫の歯周病の症状は?
猫の歯周病は放置しておいても、自然に完治できるような病気ではありません。
まずは歯周病を発症するとどんな症状が出るのかを知り、愛猫の異変にすぐに気付いてあげられるようにしておきましょう。
◆口臭がきつくなる
歯周病の代表的な症状として、口臭のきつさが挙げられます。
歯周病は歯垢が石化し、そこに細菌が増殖することによって発症しますので、強いアンモニア臭のような、独特の香りがします。
猫があくびをしたときに、今までにないようなニオイを感じたり、猫に舐められた箇所がきつく感じたりした場合は、歯周病を疑ってみましょう。
◆歯茎が腫れる
正常な猫の歯茎はピンク色となりますが、歯周病を患うと歯茎が熱を持ち、赤く腫れあがります。
どんどん腫れが酷くなってしまえば、当然痛みを伴いますので食欲は落ち、猫の大好きなご飯を食べることもままならなくなってしまうことも。
急に食欲が落ちた際には、歯や歯肉の状態のチェックも忘れずに。
◆よだれが増える
猫は基本的によだれを垂らさない動物ですが、口角あたりから常によだれを垂らすようになったときは、歯周病が進行しているのかもしれません。
通常であれば口腔内の粘膜に、物理的な刺激が加わることによって唾液は分泌されますが、痛みや異物感(口内炎や腫瘍など)がある際にも、よだれを垂らすことがあるそうです。
正常な状態でないことは明白なので、すぐに動物病院に受診するようにしましょう。
◆歯がぐらつく・抜ける
歯を支える歯周組織の歯根膜や歯槽骨にまで症状が進行してくると、土台の損傷が大きくなったことにより、歯がグラグラとしてきます。
どんどん溝が深まればそこに歯垢は溜まり、細菌も増殖していくので歯肉は退縮し、歯の根元は露出して簡単に歯は抜け落ちていきます。
なんとか抜けずに踏みとどまったとしても、その状態で硬いドライフードを食べれば、歯が一緒に抜けてしまうことも否めません。
◆歯茎から血が出る
歯がグラグラした状態が続いて、キャットフードを食べると、その刺激で歯茎から出血することがあります。
もちろん歯が抜け落ちても血は出るので、猫の唾液に血が混じっていたら、かなり歯周病が進行していると思ってください。
歯周病が重度となれば、炎症が起きた箇所に穴が空き、そこから膿や出血を伴いますので、猫ちゃん自身もかなり辛いはずです。
さらに進行すれば鼻腔内にも炎症が広がり、くしゃみや鼻水が出だし、血液内に細菌が侵入してしまえば、心臓をはじめとした臓器に負担を与え、最悪の場合命にもかかわってくるので注意が必要です。
猫の歯周病の治療方法
なかなか口の中を抵抗なく見せてくれる猫ちゃんは多くはありませんが、歯周病が命に関わる病気なのであれば、患っていたとしても初期症状のうちに治療を始めたいものですよね。
猫の歯周病は、どんな方法で治療を進めていくのでしょうか。
◆歯石の除去
歯周病の治療には、病気の原因となる歯石の除去が一般的です。
歯石は歯ブラシで簡単に落とすことはできないので、動物病院で猫を預け、獣医師さんが歯石の除去を行います。
猫に口をずっと開かせていることは難しいので、歯石の除去は全身麻酔化で行われ、超音波スケーラーや研磨機を用いて、猫本来の歯を取り戻します。
◆抜歯
歯周病の治療には全身麻酔が必須となりますので、その過程でぐらついた歯や抜歯が必要な歯があるかの判断を行います。
目視で判断が難しい場合、動物病院によってはレントゲンを撮って判断することも。
歯槽骨が後退したような重度の歯周病の場合は、抜歯と診断されることがほとんどです。
また、ぐらついていた歯が病院に行く前に抜けた場合でも、放置して良いわけではなく、治療は必要です。
歯の根元が土台に残っていれば、その部分が新たな歯周病の感染源になり兼ねないので、その残った歯も必ず抜歯が必要となってきます。
◆抗生剤の投与
歯石や抜歯などの治療を行った際には、感染防止のために抗生剤の投与が行われます。
抗生剤は注射や、飲み薬として処方されることがほとんどです。
ほかにも歯茎の炎症を抑えるときや、痛みを伴っているときにも抗生剤を用いて治療はしてもらえますので、少しでも歯石が溜まっていると感じたら、動物病院に受診することをおすすめいたします。
猫の歯周病を予防するには
猫は年齢を重ねるにつれて歯周病のリスクは上がっていきますし、一度付着してしまった歯石は、簡単に取り除くことができません。
歯石を取るだけでも大掛かりな手術をさせることになってしまうので、猫ちゃんにかかる負担は相当のものとなります。
飼い主さんはどのような方法を用いて、歯周病を予防するべきなのでしょうか。
◆猫も歯磨きをしよう!
猫は虫歯にならないから歯磨きが必要ないのではなく、歯垢を付着させない目的で歯磨きをしてあげるべきですよね。
「なかなか猫が口元を触らせてくれない」
「猫に噛まれるのが怖い」
このような理由をつけて、歯磨きをすることを諦めていませんか?
歯磨きを怠ってしまえば、愛猫に辛い思いをさせる上に、高額な治療費を払わなくてはいけません。
全身麻酔も猫の年齢によってはリスクが高まりますし、麻酔ができないと判断されれば、その子は一生美味しいご飯をたべることができないのです。
大切な愛猫にそんな辛い思いをさせないためにも、日頃から口腔内のケアを心掛けてあげてみてはいかがでしょうか。
◆歯磨きが難しい子には歯磨きおやつを
どうしても歯磨きが難しい場合には、デンタルケアを目的とした「歯磨きおやつ」を利用してみましょう。
嗜好性の高いおやつであれば、猫ちゃんも喜んで食べてくれるはずですよね!
また、口腔内の健康を維持するサプリなども販売されていますので、まずは無理のない程度に猫ちゃんの性格に合わせて、口腔内ケアをスタートしていきましょう。
まとめ
美味しいご飯を食べるためには、歯の健康がなによりも大切です。
猫の病気の中でも、軽度に思われがちな歯周病ですが、体質や免疫によって左右されることも多く、とても厄介な病気と言えるのではないでしょうか。
できることなら子猫のときから歯磨き習慣をつけるのが一番ですが、この記事を読んだ方が、今から始めるとしても遅いなんてことはありません。
大切なのは愛猫の現状を知り、その状態よりも症状を悪化させないことです。
放置しても良いことは何一つない病気ですので、この機会に是非、猫ちゃんの口腔内ケアを始めてあげましょう。
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