1.猫が気をつけたい感染症①猫ウイルス性鼻気管炎
2.猫が気をつけたい感染症②猫伝染性腹膜炎(FIP)
3.猫が気をつけたい感染症③猫汎白血球減少症
4.猫が気をつけたい感染症④猫クラミジア感染症
5.猫が気をつけたい感染症⑤猫白血病ウイルス
6.猫が気をつけたい感染症⑥猫免疫不全ウイルス(FIV)
7.愛猫を感染症から守るためには
8.まとめ
猫が気をつけたい感染症①猫ウイルス性鼻気管炎
猫がもっともかかりやすい感染症として知られているのが、猫風邪とも呼ばれている「猫ウイルス性鼻気管炎」ではないでしょうか。
風邪はそこまで重症化しにくいと考えている飼い主さんも多いとは思いますが、重症化すれば死に至るケースもあるので注意が必要です。
猫ウイルス性鼻気管炎とは一体、どんな感染症なのでしょうか?
◆症状
まず、猫ウイルス性鼻気管炎に感染すると以下のような症状が現れます。
・くしゃみや鼻汁
・鼻詰まりによる開口呼吸
・よだれ
・眼の充血や目ヤニ(結膜炎のような症状)
・呼吸困難
症状としては私たち人間が感染する風邪と大差はありませんが、風邪の知識をまったくもたない猫にとっては、これらの症状は死に直結する症状と認識するはずです。
普段から鼻呼吸で生活をしているのに、鼻が詰まって呼吸できなくなることは、嗅覚の鋭い猫にとって相当なダメージを与えるに違いありません。
とくに免役がない子猫や抵抗力の落ちた老猫などは重症化しやすく、肺炎を引き起こしたり全身感染を起こしたりしやすくなるので、そのまま死亡してしまうことも。
◆感染経路
猫ウイルス性鼻気管炎は「猫ヘルペスウイルスⅠ型」と呼ばれるウイルスが猫の鼻から侵入し、数日間体内に潜伏した後に発症することがほとんどです。
母子感染のケースが非常に多く、そのほかにはこのウイルスを持った猫が感染源となり、眼や鼻の分泌物、口からの唾液などを介した飛沫感染や、猫同士の接触により感染を広げます。
◆治療法
抗体のある成猫が感染した場合、軽症であれば数週間程度で自然治癒が可能となりますが、重症化してしまった猫の場合は対症療法を行うことが一般的です。
猫に現れた症状に合わせて内科的治療を進めていき、症状を徐々に緩和してあげることが目的と言えるでしょう。
猫が気をつけたい感染症②猫伝染性腹膜炎(FIP)
多くの猫が保有しているウイルスが、時に突然変異を起こして発症する病気の中に「猫伝染性腹膜炎(FIP)」と呼ばれる感染症があります。
この感染症は、猫に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか?
◆症状
猫伝染性腹膜炎を発症した際に現れる症状は、大きく分けて2種類のタイプに分類されます。
1つめのタイプは「ウェットタイプ」となり、内臓を覆う膜に炎症が起こることにより腹水や胸水、心嚢水や陰嚢水が溜まるといった症状が現れます。
2つめのタイプは「ドライタイプ」となり、臓器(主に腎臓や肝臓)にしこり(肉腫)ができることや、眼球や脳などにも症状が現れることがあるようです。
このほかにどちらのタイプであっても、発熱、元気消失、食欲低下、体重減少などの症状が見られるので、これらの症状が持続的に起こっているのであれば、この感染症を疑う必要があると言えるでしょう。
◆感染経路
猫伝染性腹膜炎はほとんどの猫が保有する「猫コロナウイルス」が突然変異を起こす感染症です。
このウイルスは下痢を起こす程度で基本的に無害であり、とくに症状を現さないウイルスを「腸コロナウイルス」と呼んでいます。
もともと感染力の低い病原体ウイルスではありますが、体内で突然変異を起こして強毒化する(FIPウイルス)といった特徴性を持っています。
詳しい原因は分かっていませんが、1歳前後の若い猫に好発することが多く、免役が低下している猫や、ストレスを溜めている猫にも発症することが分かっているようです。
感染猫による接触により感染(経口感染)しますので、どの猫にも注意が必要な感染症と言えるでしょう。
◆治療法
以前は致死率100%の病気として考えられていましたが、近年では完治させる特効薬はないにしろ、対症療法を用いて治療を進めていくことが一般的です。
症状に合わせて抗生物質や抗炎症剤の使用や、インターフェロンといった製剤が使用されることが多いようです。
猫が気をつけたい感染症③猫汎白血球減少症
猫が気をつけたい感染症の中でも、注意しておきたいのが非常に強い感染力を持つ病気ではないでしょうか。
「猫汎白血球減少症」は感染力だけでなく、死亡率も高いので、もっとも注意すべき感染症と言えるでしょう。
◆症状
主な症状は白血球減少による下痢や嘔吐となりますが、そのほかに初期症状では発熱や食欲不振といった、猫の病気ではありがちな症状が見られるので、別の病気と診断されてしまう場合があります。
症状が悪化していくと、下痢や嘔吐による脱水症状や、消化器に症状が認められた場合は、末期と診断されることが多いようです。
◆感染経路
猫汎白血球減少症は「猫パルボウイルス」に感染することにより発症する病気となるので、感染猫の糞便などが感染経路となり、経口的に摂取することによって感染します。
何よりもこのウイルスは強い感染力以外にも、消毒液や乾燥に対する強い抵抗性も持ち合わせています。
安定した環境では3年間も生存できるウイルスとなりますので、普段から意識して注意しておくべき感染症と言えるでしょう。
◆治療法
こちらの感染症も対症療法が一般的となりますが、リスクを最小限にするためにも生活環境の衛生管理の見直しが必要となってきます。
また、多頭飼育のご家庭ではワクチンの摂取が推奨され、摂取可能な個体にはワクチン接種を行い、感染拡大を予防します。
猫が気をつけたい感染症④猫クラミジア感染症
猫の感染症の中には、猫同士だけではなく人に感染する病気も存在します。
その感染症の名前を、「猫クラミジア感染症」と呼びます。
猫クラミジア感染症とは、どのような病気なのでしょうか?
◆症状
「クラミジア・フェリス」といった細菌から感染する猫クラミジア感染症ですが、ほとんどの場合は結膜炎を起こし、眼や眼周辺に症状が現れます。
症状が悪化していくと、元気消失や食欲が低下します。
鼻炎のような症状が現れることがあり、人間の風邪のような症状がでる感染症として知られているようです。
◆感染経路
クラミジアは別の生物の細胞内でしか増殖できないので、この細菌に感染されると全身の臓器で増殖していきます。
感染した猫の分泌物や糞便が感染経路となりますが、人にも感染するのでとても厄介な感染症であることが分かりますよね。
人に感染した場合、初期診断が大変難しいとされているので、飼い主さん自身が結膜炎のような症状が出て、なかなか完治しないときには、猫クラミジア感染症を疑ってみましょう。
◆治療法
猫クラミジア感染症の治療法は、クラミジアに有効なテトラサイクリンなどの抗生剤が2~3週間程度使用されます。
結膜炎の症状が出ているときは点眼薬や眼軟膏などを用いて治療し、鼻炎の症状があるときは点鼻薬などを用いて、症状を緩和していきます。
眼の悪化具合によっては、エリザベスカラーを使用して前足で引っ掻かないような工夫も必要です。
猫が気をつけたい感染症⑤猫白血病ウイルス
感染症の中には、完治ができない病気も存在しますので、いかに日頃の対策が重要とも言えますよね。
そんな恐ろしい感染症のひとつに、「猫白血病ウイルス」があります。
この感染症は、どのような症状や感染経路で発症するのでしょうか?
◆症状
病名に白血病という名前がついていますが、猫白血病ウイルスは総称となり、白血病のみならず、免疫不全をはじめ、リンパ腫や貧血などの病気を併発します。
ほかには初期症状として、発熱や元気消失などが見られますが、これらの急性期となる症状が見られるのは、感染してから2~4週間程度となるようです。
感染してから血液検査に陽性の反応がでるのは、4週間を過ぎた頃となりますので、原因にたどりつくまで時間のかかる感染症と言えるでしょう。
◆感染経路
猫白血病ウイルスの感染経路は感染猫との経口感染となりますが、血液から感染することもあるので、猫同士のケンカには注意が必要です。
また、稀ではありますが母子感染の報告もありますし、感染力の高いウイルスでもありますので、感染猫との接触を避けることが重要となってきます。
◆治療法
猫白血病ウイルスに決定的な治療法は確立されておらず、症状に合わせた対症療法を用いて、寿命を伸ばすような治療が行われます。
猫の状態によっては輸液や抗生剤を用いることもあり、継続的な治療が続けられていきます。
もし多頭飼いのご家庭で、陽性の猫ちゃんが確認されたのなら、その子だけを隔離して治療を続けなくてはいけません。
猫が気をつけたい感染症⑥猫免疫不全ウイルス(FIV)
感染症の中には進行を遅らせられない病気があり、その代表とも言えるのが「猫免疫不全ウイルス」です。
別名「猫エイズ」とも呼ばれるこの感染症は、どのような影響を猫にもたらすのでしょうか?
◆症状
感染してから見られる初期症状としては、発熱や下痢などが見られ、次第にリンパ節腫大や白血球の減少などが見られます。
猫ちゃんの中には無症状の子も多く居ますが、症状が進行していくと、全身のリンパ節が腫脹していき、そのほかの慢性の病気(口内炎や呼吸器、消化管や皮膚疾患)が起きるようになります。
最終的には全身が免疫不全となり、急激な体重減少や血球減少のほかに、さまざまなウイルスや細菌に抗えなくなるので手の施しようがなく、余命も数か月程と言われています。
◆感染経路
猫免疫不全ウイルスの主な感染経路は、血液や脳脊髄液などが広く知られていますが、唾液にもウイルスは存在するので、ケンカなどの咬傷により感染することがあります。
発症率は家猫よりも外出が可能な猫ほど多く、感染している野良猫との接触が要因と考えられているようです。
また、メス猫よりもオス猫の方が発症率は高いことからも、去勢手術をして完全室内飼いが推奨されていることがよく分かりますよね。
◆治療法
猫免疫不全ウイルスは感染してしまうと、治療方法がないのでいかに寿命を延ばしてあげられるかが鍵となってきます。
日頃からストレス軽減を心掛けた環境を整え、猫ちゃんの負担にならないような生活を心掛けてあげてください。
何か症状が出ているようであれば、その症状に対しての治療を行うことしかできませんので、飼い主さんは辛くても愛猫の症状緩和を目標として、治療に専念してあげましょう。
愛猫を感染症から守るためには
常に猫の周りには感染症による危険が迫っていますが、飼い主さんは愛猫に健康で長生きしてもらうためにも、守るための対策を講じなければいけませんよね。
愛猫を感染症から守るためには、どんな方法が有効なのでしょうか?
◆ワクチンを接種する
感染症の中にはワクチン接種で予防が可能なものもあるので、ワクチンを接種しても問題のない個体であれば、定期的な摂取が望ましいです。
たとえ完全室内飼いであったとしても、ウイルスや細菌がどのような経路で侵入してくるかは分かりませんので、摂取しておくと安心ですよね。
すべての感染症を防げないとしても、感染する確率が下げられるのであれば、飼い主さん自身が安心できるはずですので、愛猫を守るためにもワクチンの接種を検討してみてはいかがでしょうか。
◆子猫を拾ったときには
もし子猫や野良猫を拾ったときには、そのまま家に連れ帰るのではなく、必ず動物病院に連れていき、血液検査やウイルス検査を行うようにしてください。
先住猫が居るのであれば尚更です。
もし感染症のキャリアがあるのであれば、ほかの猫との接触は避けなければいけませんので、健康診断を兼ねて動物病院を受診するようにしましょう。
まとめ
猫と暮らしている方であれば誰もが、愛猫には1分1秒でも長生きしてほしいと願っていることかと思いますが、どんなに願っても命がある以上、一生健康で居続けるのはとても難しいことです。
中でも猫の感染症は、ほんの少しの油断で感染してしまうこともあり、予防や対策を徹底していれば防げる可能性も高いので、発症した後に後悔の念に駆られてしまうことでしょう。
そうならないためにも、猫と暮らすときめた時から、その子の幸せを第一に考え、できる限りの対策をしてあげたいものですよね。
ワクチン接種も有効ではありますが、ストレスを軽減するための環境づくりなども重要になってきますので、この機会に生活の質を見直してみるのもおすすめです。
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