猫の運動神経は動物の中でも随一?優れた運動神経の秘密を紐解く

2021.05.12

猫の運動神経は動物の中でも随一?優れた運動神経の秘密を紐解く

猫を飼っていなくても、猫の優れた運動神経を目の当たりにすることは少なくありません。高い塀に飛び乗り、狭い塀の上でくつろいだり、驚くほどのスピードで走り去ったり。中でも高いところからの着地能力は、猫ならではの身体能力ですよね。では、猫の運動神経は、何故それほど優れているのでしょうか?今回は、猫の優れた運動神経について、紐解いていきましょう。

猫は動物の中でも特に運動神経が優れている

二大ペットとして、何かと比較される犬と猫ですが、どちらの運動神経が優れていると思いますか?
実は、犬と猫は、同じ「ミアキス」というイタチに似た動物を祖先としています。同じ祖先から生まれた犬と猫は、生きるのに選んだ場所が異なるために、全く違う運動能力を持つように進化していったと考えられています。
森で暮らすことを選んだ猫は、高い木に登ったり飛び降りたりと、上下運動を得意とするようになっていきました。一方、平原で暮らすことを選んだ犬は、そういう能力を必要としなかったため、高いところに登る能力を持たないのです。
犬と猫では、運動能力の方向性が異なるため、どちらの運動神経が優れているとは言い難いものがあります。
では、他の動物と比較した場合、猫の運動神経は優れていると言えるでしょうか?
猫の狩りは待ち伏せ型なので、俊敏で、瞬発力に優れ、森で暮らしていたことから跳躍力にも長けています。
猫の運動神経は、他の動物一般と比較すると、特に優れていると考えてよさそうです。


優れた猫の運動神経①ジャンプ力

ジャンプする猫

猫の運動の特徴ともいえるのが、高いところへ一気に飛びあがるジャンプではないでしょうか?ソファやテーブルはもちろん、高い本棚の上へも、ちょっとしたステップがあれば飛びあがってしまいます。
そんな猫のジャンプ力は、自分の体長の約5倍の高さ、1.5~2mほどまでジャンプできるとされています。これを人間に例えると、高さ7~8m、ビルの3~4階まで一気にジャンプするようなものです。猫のジャンプ力がいかに優れているか、分かりますね。
ネット上では、非常に高いところに吊るされたおもちゃめがけて、ダイナミックなジャンプをする猫ちゃんの動画もありますし、猫じゃらしで遊びながら、素晴らしい体勢でジャンプする猫ちゃんの写真も少なくありません。
では、猫の優れたジャンプ力は、どこから生まれているのでしょうか?

◆柔軟な背骨

猫の背骨は、7個の頚椎、13個の胸椎、7個の腰椎、3個の仙椎からなっています。
猫の全身の骨の数は244本で、これは人間より40本ほど多く、この多い分のほとんどは背骨としっぽを構成しています。
背骨の数が多いために、身体がしなやかに曲がり、弓のように弧を描くことも、まっすぐに伸ばすことも可能です。また、猫の背骨は骨同士のつながりが緩やかで、どの方向にも柔らかく曲がる構造をしています。
この柔軟な背骨をバネのように動かすことで、素晴らしいジャンプをすることができるのです。

◆発達した後ろ脚の筋肉

「速筋」と呼ばれる猫の後ろ脚の筋肉は非常に強く、瞬間的に非常に強い力を出すことができます。
この強い後ろ脚の筋肉が、高いところに飛びあがれるジャンプ力を生み出しています。


優れた猫の運動神経②瞬発力

猫じゃらしで遊ぶシンガプーラ

平原で群れをつくり、獲物を捕らえるためには10キロもの距離を走り続けることもザラといわれる犬とは異なり、猫の狩りは瞬発力に多くを頼っています。
野生の生活をしていたころの猫は、草むらの中を、物音を立てずに歩いて獲物に近づき、一瞬にして獲物を仕留めていたので、瞬発力が必要だったのです。このため、足音がしないように爪を引っ込めることができ、肉球が音を吸収するように進化しています。
猫の走るスピードは、時速50キロ程度/span>と言われています。これは、100mを約7秒で駆け抜ける速さです。一方で、持久力はないため、長距離を走ることは苦手です。
また、個体差はありますが、猫はわずか約0.009秒で「猫パンチ」を繰り出すと言われています。目にもとまらぬ早業という感じですね。
ちなみに、同じ猫科のチーターの爪は出っ放しです。これは、犬と同じく、獲物を走って追い詰める狩りの仕方をするからです。爪がしっかりと出ている方が、キック力が生まれ、速く走ることができます。


優れた猫の運動神経③バランス感覚

キャットウォークの上の猫

猫の特徴の一つが、バランス感覚の良さでしょう。狭い塀の上でも軽やかに歩き、時には寛いでいることもあります。
優れたバランス感覚を支えているのは、耳の内部にある「三半規管」です。渦巻のような形をした三半規管は、回転をつかさどっており、頭や顔の重力の方向を計算して正しい姿勢を保つ働きを持っています。
三半規管は人間や他の動物にも備わっていますが、猫は他の動物より三半規管が発達しているため、バランス感覚が優れているのです。
また、この優れた三半規管のおかげで、猫は車酔いをすることが少ないそうです。


優れた猫の運動神経④着地

椅子の背もたれにしがみついている猫

猫は、高いところからの着地が得意です。たとえ、頭から落ちても、上手く体を回転させて、きちんと足から着地できることは、猫ならではですよね。
これは、優れた反射神経と平衡感覚のおかげです。
平衡感覚をつかさどるのは、内耳の「前庭」と「骨半規管」です。前庭にはリンパ液が詰まっていて、直線方向の動き・重力・遠心力を感知します。骨半規管の内部には三半規管があり、回転運動を感知しています。
猫が高いところから飛び降りたり落ちたりすると、前庭や三半規管で感知された体の傾きが、前庭神経という神経に伝わります。これと同時に、目の中の水晶体に加えられる刺激による情報をもとに、脳がバランスを保とうとするので、足から着地することができるのです。
また、猫は関節が非常に柔らかく、内臓も自由に動き、皮膚の伸縮性が高いという特質を持っています。このため、体を変な方向にねじったり、狭い場所を通ったりできるのです。この柔軟性のために、受け身の体勢を取ることも容易く、着地が上手くできる一因となっています。

◆着地能力には限界がある

高いところから落ちても大丈夫とはいえ、限界はあります。
およそ3~4階の高さであれば、問題なく着地できると言われています。
また、何階から落ちたかによって、ケガのしやすさには差があるようです。高さが低いために着地時に骨折する場合もあれば、7階以上の高さでも無傷な子もいるようです。
そうは言っても、高いところから猫が落ちてしまうことがないよう、特に高層階で飼っている場合には、ベランダに出さないなどの対策をするようにしましょう。


猫の運動神経は種類によって違う?

◆猫種による大きな差はない

猫種によって、活動的だったり大人しかったりという違いはありますが、運動神経そのものには大きな違いはないと言われています。

◆運動量は種類によって異なる

前項の通り、活動的な猫種はたくさんの運動量を必要とし、大人しい猫種はあまり運動量が必要ではないと言えます。猫種の特質に合わせて、十分な運動をさせてあげるとよいでしょう。


運動神経が悪い猫はいる?

隙間から覗く猫

◆運動神経にも個体差がある

様々な点で、猫にも個体差があり、もちろん運動神経にも個体差があります。
高いところへのジャンプが得意な猫がいる一方で、あまりジャンプが得意ではなく、小さな段差しか上がれない子もいます。インターネット上では、ジャンプの体勢を取ったのに、実際には数センチしか飛びあがれないという猫ちゃんも紹介されています。
そこまで極端ではなくても、跳躍力やバランス感覚などの運動神経も、「猫それぞれ」と言えるでしょう。

◆肥満の猫

肥満になっている猫は、体重の重さから運動神経を十分に発揮できないと考えられます。
また、重い体重が関節に負担をかけるため、運動自体を嫌がる傾向もあります。そのため、さらに肥満になるという悪循環に陥ってしまいがちです。
肥満を避けるためにも、たくさん遊んであげたり、キャットタワーやキャットウォークなど上下運動ができるような環境を整えたりしてあげましょう。
肥満になってしまった場合には、激しい運動は関節に負担をかけるため、無理のない範囲で適度な運動をさせて、肥満を解消するようにするとよいでしょう。

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◆年を取った猫

年を取ると、関節が硬くなったり、筋肉が衰えたりします。
そのため、ジャンプ力や着地能力、バランス感覚なども衰えてしまいます。
段差が小さいキャットタワーやステップを設置して、少しでも運動できる環境を整えることで、体の衰えの進行を遅らせてあげましょう。

◆子猫の運動神経

子猫は、心身共に発達途上であり、成猫ほど優れた運動能力を発揮できるわけではありません。
しかし、バランス感覚をつかさどる三半規管の能力は、生まれたばかりの子猫にもあります。ただ、目の機能が十分に発達していないため、大人の猫のようにうまく着地できないことが多いようです。


まとめ

猫は、様々な動物と比べて、運動神経が特に良いと考えられます。
ジャンプ力や瞬発力に優れ、優れたバランス感覚で狭い塀の上や木の枝の上を歩くこともできます。また、高いところから落ちても、上手く体勢を整えて足から着地することもできます。
これらは、猫が森の中で暮らすことを選んだことから獲得してきた能力です。
運動神経に優れた猫ですが、猫種によって運動神経のよしあしがあるわけではありません。しかし、個体差はあり、運動神経が悪い猫もいます。
また、肥満の猫やシニア猫は、関節に負担がかかったり、筋肉が衰えたりするため、運動神経を十分に発揮することができません。このような猫ちゃんには、段差の小さなキャットタワーやステップを用意してあげるなどして、適度な運動をさせてあげましょう。
猫の優れた運動神経を存分に発揮できるよう、たくさん遊んであげると、愛猫との絆も深まりますし、素敵な写真や動画を撮ることができるかもしれませんよ。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。


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