1.猫の子宮蓄膿症とは
1-1.子宮蓄膿症の原因
1-2.どんな猫がなりやすい?
2.猫の子宮蓄膿症の症状
2-1.膿が出る
2-2.元気がなくなる
2-3.嘔吐
3.猫の子宮蓄膿症の治療
4.猫の子宮蓄膿症の予防
5.まとめ
猫の子宮蓄膿症とは
猫の子宮蓄膿症と聞いてあまりピンとこない方も多いかとは思いますが、この病気は猫には発症率が比較的少ない病気と言われています。
しかし、発症率が低いからといって安心できる病気ではなく、どのような原因から発症する可能性があるのか、どのような症状が出てどんな予防法があるのかなどを知っておかなければ、発症した際に気付いてあげられないので、猫ちゃんと暮らしている方であれば知っておいて損はない病気と言えるでしょう。
猫の子宮蓄膿症とは簡単に言うと、子宮の内部に膿が溜まる病気となりますが、どのような原因によって、子宮内に膿が溜まってしまうのでしょうか?
◆子宮蓄膿症の原因
子宮蓄膿症を発症させる大きな原因として考えられているのが、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」と呼ばれるホルモンの分泌です。
猫は犬のように定期的な発情期が来て排卵を起こす「自然排卵動物」ではなく、交尾をした際の刺激によって排卵を起こす「交尾排卵動物」となります。
交尾排卵動物は哺乳類の中でも猫やウサギといった、ごく一部の動物に見られる妊娠形態となり、黄体ホルモンが分泌する黄体期の期間が短いことから、猫は犬よりも発症率が低いと言われているようです。
発情期や出産期には子宮の頚部が緩みやすく、免疫力が下がることにより細菌に対しての抵抗力も弱くなるため、子宮内は細菌が増殖しやすい環境となってしまいます。
通常であれば子宮内へ細菌が侵入することは生じにくいとされていますが、黄体期には黄体ホルモンが子宮の内膜を肥厚させるので、外陰部から何かしらの原因により細菌に感染してしまえば、猫の体は防御反応として子宮内膜に炎症を起こします。
その後「子宮内膜炎」といった病気を発症させ、症状が改善しないまま子宮内に膿が溜まっていき、子宮蓄膿症を引き起こすといった流れとなるようです。
原因菌となりやすい細菌は、「大腸菌」「ブドウ球菌」「サルモネラ菌」など様々ですので、猫が暮らす生活環境や体調なども考慮した上で、防いでいくべき病気と言えるのではないでしょうか。
◆どんな猫がなりやすい?
犬ほど発症率が高くない病気ではありますが、最近では自然排卵を起こす猫も居ると言われているので、排卵後の黄体期に子宮蓄膿症を発症する子が居ると考えられているようです。
基本的には避妊手術を行っていないメス猫が発症しやすい病気となりますので、1歳程度の若い猫ちゃんでも発症する確率は十分にあると言えるでしょう。
そして徐々に免疫が落ち始める、5歳以上の年齢に差し掛かってくると発症率はさらに上がり、年齢別の罹患率では高齢となる、8歳前後の発症が1番高いといった調査結果が出ているようです。
猫の子宮蓄膿症の症状
猫の子宮蓄膿症は初期症状が少なく、何かしらの症状が出始めたころには症状が悪化しているケースも少なくありません。
また、子宮蓄膿症は大きく分けて「開放型」と「閉鎖型」に分類されますが、これは子宮頸管が開いている場合と閉じている場合で判断されます。
主に以下のような症状が現れますので、避妊手術を行っていないメス猫と一緒に暮らしている方は、日常生活の中で異変がないをかしっかり観察してあげることも大切です。
◆膿が出る
子宮蓄膿症は細菌によって膿が溜まる病気と前述してある通り、開放性子宮蓄膿症の場合は膿が排出されますが、閉鎖性子宮蓄膿症は膿が子宮内にどんどん溜まっていきます。
そのため早期発見が難しく、膿によってお腹が膨れ出したり痛がったりする様子が現れることによって、飼い主さんが気付くというケースが多いようです。
このような症状を放置してしまえば、大量の貯留した膿によって子宮が破れ、その膿が腹腔内に漏れ出れば、ショック症状からの急性腎不全や多機能不全、腹膜炎や敗血症などを引き起こし、最悪の場合死に至るケースもあります。
◆元気がなくなる
開放性子宮蓄膿症の場合は膿が体外へ排出されるので、陰部が汚れていたり臭いが発生したりすることにより、猫自身が執拗に陰部付近を舐める機会が多くなるので、比較的異変に気付きやすいと言えますよね。
しかし、閉鎖型の場合は体内での異変となるので、パッと見では分からず、猫自身は体の異変に蝕まれているので、元気が徐々になくなっていき、食欲の低下などが見られるようになります。
◆嘔吐
症状が重症化してくると多飲多尿といった症状や、嘔吐や下痢などの症状が現れることがあります。
自然排卵を起こす猫以外でこの病気を発症する場合は必ず、黄体期(発情後1~3ヶ月程度)に突入した猫となりますので、その時期に多飲多尿といった症状や嘔吐、下痢などが続くようであれば、子宮蓄膿症を疑ってみても良いかもしれません。
猫の子宮蓄膿症の治療
何かしらの異変に気付き、動物病院を受診した際には、血液検査を行い、レントゲンやエコー(超音波検査)などの検査を行って状況の判断をします。
血液検査では白血球の数値が上がることにより子宮蓄膿症が疑われますが、末期の場合は左方移動(未熟な白血球が骨髄から末梢血中に出てくる状態)が起こり、正常値や減少した数値が見られることもあるようです。
また、急性腎不全を発症している場合には、尿素窒素(BUN)の数値も高くなりますので、これらのデータや画像診断により治療方針が決まっていきます。
膿が子宮内に貯留している場合は外科的治療を行い、子宮と卵巣を摘出した後、抗生物質を用いた治療を行うことが一般的です。
手術前に脱水などの症状がある場合には点滴で補正し、手術を行う場合があります。
しかし、猫が高齢の場合やほかの疾患がある場合や、麻酔が難しいと獣医師が判断した場合には、内科的治療が行われることがほとんどです。
子宮頚管を開く働きをする薬剤を注射して、子宮内に貯留した膿を排出し、抗生剤や抗菌薬を用いて様子を見ますが、再発の可能性も高く、完治が難しいので延命的な治療となってしまうことも否めません。
子宮蓄膿症で行われる手術は基本的に避妊手術と同じ方法になりますが、単純に子宮と卵巣を摘出するだけの手術ではなく、細菌感染している状態での手術となるので、リスクはかなり高くなります。
摘出術中や術後にも全身に細菌が感染していないか、状態が悪化していないかなどの経過観察が必要となるので、単純な手術ではないことをしっかりと覚えておく必要があると言えるでしょう。
猫の子宮蓄膿症の予防
珍しい妊娠形態の猫にとって、子宮蓄膿症は発症しにくい病気と言われていますので、できることならしっかりと事前に対策をして、予防をしておきたいものですよね。
病気を発症すれば手術費用もかさみますし、入院した場合や継続的に薬を投与する場合にも、治療費は数万円程度ではきかないぐらい、高額になってしまうことでしょう。
最悪の場合死に至るケースもある以上、飼い主としてはできる限りの予防をしておきたいと思うのではないでしょうか。
猫の子宮蓄膿症の予防法はズバリ、避妊手術を行うということです。
性ホルモンが深く関係する病気である以上、避妊手術以外で有効な方法はないと言えるでしょう。
避妊手術を行うことによって、発情期を迎えなくなる上に黄体ホルモンの分泌も抑制できるので、愛猫に出産させる予定がないのであれば、1歳を迎える前に避妊手術を行うようにしてください。
避妊手術を行うことによって、子宮蓄膿症のみではなく乳腺腫瘍も予防でき、そのほかの感染症のリスクも軽減できるますで、猫と一緒に暮らす以上、避妊手術を行うかどうかの検討は必ずするべきではないでしょうか。
まとめ
猫が発症する確率の高い病気はたくさんありますが、オス猫特有の病気やメス猫特有の病気が存在するので、一緒に暮らす猫の性別によって把握しておくべき病気も変わってきますよね。
とくにメス猫が注意すべき病気である子宮蓄膿症は、猫では発症率が低い病気ではありますが、症状が悪化した場合は最悪死にも至ってしまう病気となりますので、知っておくに越したことはない病気とも言えるでしょう。
発症したとしても早めに動物病院を受診することによって、助かる確率の上がる病気でもありますので、避妊手術をしていない猫ちゃんと暮らす飼い主さんは、少しでも愛猫に異変を感じるようなことがあれば、早めに動物病院を受診し、獣医師さんにしっかりと相談するようにしてください。
早期発見に繋がれば猫ちゃんの苦痛も少なくて済みますし、治療にかかる費用も最低限に抑えられますので、日ごろから愛猫の様子をよく観察し、すぐに異変に気付けるような環境を整えておくことも大切です。
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