1.猫の歯肉炎って?
1-1.猫の歯肉炎の症状
1-2.猫の歯肉炎の原因2.歯肉炎と歯周病の違い
4.猫の歯肉炎の治療法・治療費
4-1.歯肉炎の治療法
4-2.歯肉炎の治療費
猫の歯肉炎って?
猫の「歯肉炎(しにくえん)」とは歯肉(歯茎)に炎症を起こし、何かしらの症状が出る病気を指します。
日常的に愛猫の歯みがきを行っている飼い主さんであれば、口の中を普段から観察できる機会は多いことですが、歯みがきをしない、またはさせてくれない猫ちゃんの場合は、口の中の状況を確認できるのは、愛猫があくびをしたときぐらいではないでしょうか。
そのため、飼い主さん自身が歯肉炎に気付くことは難しいため、歯肉炎を患った際に何かしらの前兆を見逃さないようにするべきではありますが、一般的に猫が歯肉炎を発症した場合には、以下のような症状が見られると言われています。
◆猫の歯肉炎の症状
猫が歯肉炎を患っていた場合、猫自らが口の中に異常があることを飼い主さんに伝えることはできないため、飼い主さん自身が愛猫の異常を察しなければいけません。
一般的に猫が歯肉炎を患っていた場合には、「ご飯を食べない」「口からよだれ(血)を垂らしている」「口臭がきつくなった」「歯肉が赤く腫れている」
などの症状が見られます。
症状が進行していくと、「歯のぐらつき」「鼻水やくしゃみ」「顔の腫れ」といった症状が見られるため、できる限り初期症状のうちに異常に気付いてあげることが大切です。
◆猫の歯肉炎の原因
歯肉炎の原因は歯に付着する歯垢といったプラークや、歯垢や歯石の中にある細菌が原因と考えられています。
それらの細菌が出す毒素こそが歯肉炎の主な原因となりますが、猫自身の免疫が落ちている場合では、自身の歯などに対して作用してしまうこともあるようです。
免疫力は体に入ってくる異物に対して働くものではありますが、糖尿病などの慢性疾患や、猫カリシウィルス(FCV)、猫白血病ウィルス(FeLV)や猫免疫不全ウィルス(FIV)などによる、免疫抑制の関連性も疑われています。
歯肉炎を発症した場合、同時に口内炎を患うこともあるため、免疫が落ちやすくなる季節の変わり目などにも注意しておくべきと言えるでしょう。
歯肉炎を患っているのにそのまま放置してしまえば、炎症を起こした部分から細菌が侵入し、血流に乗って運ばれることにより心臓や腎臓、肝臓といった臓器に悪影響をもたらして別の病気を併発させる恐れもあるため、たかが歯肉炎と考えないことが一番です。
歯肉炎と歯周病の違い
猫の口腔トラブルで、歯周病という疾患の名前を聞きますが、歯肉炎とどのような違いがあるのかも気になるところですよね。
歯肉炎は歯肉に炎症が起きる軽度の病気となり、歯肉のみならず歯槽骨(しそうこつ)まで炎症が進んだ重度の病気を歯周炎と呼びます。
これらの病気の総称を「歯周病」と呼びますが、比較的軽度な歯肉炎のうちに治療を開始することこそが、猫への負担が少なく済むため、早期発見を心掛けてあげることが大切です。
どんな猫がかかりやすい?
約5割の猫は何かしらの口腔トラブルを抱えていると言われていますが、口腔内がアルカリ性に保たれている分虫歯にはなりにくく、その反面歯周病を患いやすくなっています。
歯肉炎は口腔内の衛生状態が、清潔に保たれていないことにより発症しやすいため、飼い主さんが歯みがきをせずに歯垢や歯石がたまったままの猫ちゃん、歯に吸着しやすいウェットタイプのフードが主食の猫ちゃん、人間の食べ物を好んで食べる猫ちゃんなどは、歯肉炎を患いやすい環境が整っていると言えるでしょう。
そして、病気やケガなどで免疫が一時的に落ちている猫ちゃんや、加齢によって免疫力が低下している高齢の猫ちゃんも、歯肉炎とは無縁と言い切れないため、口腔内のケアは飼い主さんがしっかりと日常的に行わなくてはいけません。
猫の歯肉炎の治療法・治療費
愛猫が歯肉炎を患わないことが一番ではありますが、何かしらの症状が現れた際に、動物病院を受診して歯肉炎と診断された場合は、どのような治療が行われるかも気になるところです。
猫の歯肉炎の治療とは、どのような治療法が用いられるのでしょうか。
◆歯肉炎の治療法
歯肉炎は歯に付着した歯垢や歯石が原因になっていることが多いため、それらの汚れを除去するといった治療法が一般的です。
歯石は歯垢が石灰化して硬くなったものとなり、歯みがきで取り除くことはできませんので、全身麻酔をかけて超音波を用いて歯石を削っていきます。
歯石がなかったとしても歯周ポケットに歯垢がたまっている場合や、炎症がある場合には免疫抑制剤の服用、歯がぐらつくぐらいに症状が悪化している場合には、抜歯といった治療が行われることがほとんどです。
抜歯後にできた穴は縫合し、歯の表面をキレイに磨いて、口腔内を徹底的に洗浄していきます。
痛みが出ている場合には、痛み止めといった内服薬が処方されるようです。
しかし、口腔内の治療は全身麻酔の使用が絶対のため、免役が落ちている猫ちゃんや高齢の猫ちゃんの場合、歯肉炎の治療の前に麻酔に耐えられるかどうかが問題となってきます。
歯肉炎自体が軽症であっても、治療法によっては確実に猫の体に負担をかけてしまうため、普段からの予防や早期発見こそが重要と言えるでしょう。
◆歯肉炎の治療費
歯肉炎の治療費は治療方法によって異なりますが、全身麻酔を使う場合は50,000円前後の費用がかかると言われています。
動物病院によって価格設定が異なるため、行きつけの動物病院がある場合は、事前にどれくらいの費用がかかるかを確認しておくと安心です。
猫の歯肉炎を予防するには
愛猫に痛い思いをさせないためにも、歯肉炎にならないような工夫を、日常生活の中に取り入れたいものですよね。
歯肉炎を愛猫に発症させないためには、どのような予防が効果的となるのでしょうか。
◆歯みがき
歯肉炎の予防は何よりも口腔環境を清潔にし、歯垢を放置しないで歯石化させないことが一番です。
そのため、ご自宅での飼い主さんによるケアが必要不可欠となるため、できることなら子猫時代から歯みがきへの抵抗をなくしておくことをおすすめします。
猫は無理矢理何かをされたり、体を拘束されたりが苦手なこともあり、まずは顔や口に触れることから始め、手前の歯に触れることや、口の中に指を入れるといった行動を自然にできるようになることが理想的です。
猫用の歯ブラシや歯みがき粉を準備しておき、最初は愛猫が好みそうなフレーバーを選んで、ペロペロと舐めさせてあげましょう。
歯ブラシなどに抵抗がなくなってきたら、前歯から優しく磨いていき、徐々に奥歯まで磨いていきます。
どうしても歯みがきが苦手な猫ちゃんや、成猫になってから歯みがきを始める場合には、無理矢理歯みがきをさせるために四苦八苦するよりは、どうしたら嫌がらないで歯みがきをさせてくれるかを考えてあげてください。
歯みがきシートを利用してみても良いですし、歯みがきのおやつやサプリメントなど、さまざまな商品の中から愛猫に一番抵抗の少ないものを選ぶようにしましょう。
◆健康診断
歯みがきを定期的に行っている飼い主さんであれば、愛猫の口腔内の異変にすぐ気付いてあげられますが、歯みがきをしていない飼い主さんのほとんどは、お口のチェックを怠っていることかと思います。
なかなかチェックが行き届かない場所だからこそ、自分で行うことが難しいと感じているようであれば、専門家にお任せすることが一番ですよね。
愛猫の健康状態を常に飼い主さんが把握しておくためにも、1年に最低1回は健康診断を行うようにし、動物病院で獣医師さんにお口の中もチェックしてもらうようにしてください。
猫は人間よりも歳をとるスピードが早いため、シニア期に突入した猫ちゃんの場合は、年に2回程度の健康診断をおすすめします。
◆ワクチン接種
歯肉炎の原因の一つと考えられている猫カリシウィルスは、混合ワクチンで予防が可能となるため、そのほかの感染症を防ぐ目的でもワクチンの接種は、選択肢の一つに入れてみるのも良いでしょう。
ワクチンに関しては100%副作用が出ないとは言い切れないことからも、飼い主さん自身が必要性を考え、獣医師さんと相談をしてから接種を決めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
愛猫の口臭が気になり始めたり、食欲不振でご飯を食べなかったりした場合、飼い主さんはその原因が分からない中、何かの病気を患っているのではないかと、不安な気持ちになってしまうはずです。
その原因が歯肉炎のような口腔内のトラブルだった場合、自然治癒が難しく、治療の際には全身麻酔のリスクが伴うため、できることならそのような症状が出る前に対処をしたいものですよね。
しかし、口の中という場所はとてもデリケートなため、飼い主さんに触られようものなら、必死に抵抗してくる猫ちゃんは少なくありません。
飼い主さんによる日常的な観察が難しい箇所だからこそ、歯みがきへの抵抗をなくしてあげる努力は必要ですし、定期的に健康診断を行うことによって、愛猫の現状の健康状態を把握できますよね。
愛猫に辛く痛い思いをさせないためにも、苦手な歯みがきを克服する努力は怠らないようにし、定期的な健康診断を心掛けて、常に元気で健康な生活ができるような手助けをしてあげましょう。
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