【獣医師監修】猫の甲状腺機能亢進症は早期発見がポイント!最近猫の様子がおかしい・性格が変わったと思ったら疑う病気

2023.03.25

【獣医師監修】猫の甲状腺機能亢進症は早期発見がポイント!最近猫の様子がおかしい・性格が変わったと思ったら疑う病気

猫の「甲状腺機能亢進症」は、「糖尿病」と並んで高齢猫において最も多い内分泌疾患の一つです。高齢になった猫が、食欲もあり活動的で病気と考えにくい症状であること、また症状が多様であることから、見逃しやすい病気です。ただし、「早期発見」が長生きのポイントになります。症状の把握によって、ささいな変化で気付けるかもしれません。今回は、この甲状腺機能亢進症についてご紹介していきます。

【目次】
1.猫の甲状腺機能亢進症とは
 1-1.どんな病気?
 1-2.発症する年齢
 1-3.なりやすい猫種

2.猫の甲状腺機能亢進症の症状
 2-1.水をよく飲む、ご飯をよく食べる
 2-2.食欲はあるのに痩せてくる
 2-3.目が輝いている、らんらんとしている
 2-4.大声で鳴くようになった、夜泣きをするようになった
 2-5.年齢の割に運動量が多い気がする
 2-6.以前より攻撃的、または甘えん坊になった
 2-7.毛艶が悪くなった
 2-8.下痢や嘔吐をする

3.この病気に気付くきっかけは何が多いのか
 3-1.年齢と行動や見た目が伴わず、違和感を覚える
 3-2.急に性格が変わったように思える

4.甲状腺機能亢進症は治る病気?

5.甲状腺機能亢進症を治療しないとどうなる?
 5-1.他の重い疾患を併発する
 5-2.突然死のリスクがある

6.甲状腺機能亢進症になった猫の平均寿命は

7.ささいなことでも、おかしいと思ったら動物病院へ

5.まとめ

猫の甲状腺機能亢進症とは

猫の甲状腺機能亢進症は、高齢猫によくみられる病気の一つです。近年は、獣医療の進歩などにより猫の長寿化が進んでいますが、一方で飼い主さんはより一層この病気に気を付ける必要があるでしょう。

◆どんな病気?

猫の甲状腺機能亢進症とは、のど(喉頭部)の左右に位置する甲状腺が肥大して、「甲状腺ホルモン」が過剰に分泌されてしまう病気です。通常、肥大は良性ですが、悪性腫瘍(がん)の場合もあります。
甲状腺ホルモンの働きは、全身の代謝をよくすること。しかし、甲状腺ホルモンが異常に多く分泌されてしまうと、体のさまざまな臓器に負担をかけることになります。

◆発症する年齢

発症の平均年齢は12~13歳で、高齢の猫に多くみられます。
8歳以上の猫でみられるようになり、10歳以上の猫では10%以上が甲状腺機能亢進症であるという調査報告もあります。

◆なりやすい猫種

なりやすい猫種は特にありません。
すべての猫種でかかる可能性があるでしょう。


猫の甲状腺機能亢進症の症状

元気な猫

甲状腺ホルモンは、ほぼ全身の新陳代謝および働きを活発にする重要な役割があります。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、心臓は全身の細胞に多くの酸素を送り続けなければならず、疲弊してしまいます。また、細胞ではエネルギー消費量が増して、多くの臓器に障害が起こります。実際の症状としては、以下のようなものがみられます。

◆水をよく飲む、ご飯をよく食べる

水をよく飲み、ご飯をよく食べるという、一見病気とは思えない症状がみられます。さらに、水をよく飲むことで沢山おしっこをする「多飲多尿」という症状もみられるでしょう。
水やご飯の量を記録している飼い主さんは、なかなかいないのではないでしょうか?日頃から猫ちゃんの様子を観察して、普段よりも多いと感じるようであれば、記録して動物病院で診てもらいましょう。

◆食欲はあるのに痩せてくる

最も多い症状が「体重減少」。
食べていても痩せるため、食欲だけではなく体重も気にしてみましょう。高齢で痩せてきたと感じたら、一度動物病院で診てもらうことをお勧めします。

◆目が輝いている、らんらんとしている

甲状腺機能亢進症の症状は、目つきにも表れます。高齢にもかかわらず、目が輝き、らんらんとしている様子がみられる場合があります。

◆大声で鳴くようになった、夜泣きをするようになった

病気により行動の変化がみられる場合があります。脳の病気である可能性もありますが、まずは簡単にできる甲状腺ホルモンの検査を行ってみるといいでしょう。

◆年齢の割に運動量が多い気がする

通常、猫は高齢になると動きが遅くなったり眠る時間が長くなったりします。若い頃よりも活発になるということは基本的にありません。年齢の割に運動量が多いようであれば、甲状腺機能亢進症の影響である可能性があるでしょう。

◆以前より攻撃的、または甘えん坊になった

急に性格が変わったように見えるというのも症状の一つにあります。高齢の猫で性格に違和感を覚えるようであれば、他にも変化がないか観察してみましょう。

◆毛艶が悪くなった

エネルギーが過剰に消費されてしまうため毛艶が悪くなることもあります。高齢猫では、若い頃に比べて毛艶が悪くなりますが、甲状腺機能亢進症の影響もあるかもしれません。

◆下痢や嘔吐をする

高齢で慢性的な嘔吐や下痢がみられる場合は、甲状腺機能亢進症の可能性があります。


この病気に気付くきっかけは何が多いのか

猫

猫の甲状腺機能亢進症は、明らかな病気のサインが症状に現れないため、気付きにくい病気です。飼い主さんが気付くきっかけとしては、以下のようなものがあります。

◆年齢と行動や見た目が伴わず、違和感を覚える

猫の甲状腺機能亢進症は、高齢の猫にみられますが、「高齢」らしからぬ行動や見た目に違和感を覚えることがあるかもしれません。例えば、10歳以上の高齢猫だとは思えない活動量に驚くことがあるでしょう。また、「目がぱっちりとしていて大きい」「痩せているのに食欲旺盛である」といった見た目の変化にも表れるため、違和感を覚えたら動物病院で相談してみましょう。

◆急に性格が変わったように思える

猫の甲状腺機能亢進症では、急に暴れん坊になったり、甘えん坊になったりするなど、突然の性格の変化がみられることがあります。我が家の猫の場合、以前は一人で寝ていたのに、突然膝の上に乗ってくるようになり、とても甘えん坊な性格になりました。飼い主として、甘えてくれるのは嬉しい限りですが、やはり違和感を覚えました。急に猫ちゃんの性格が変わって違和感があれば、他にも気になる点がないかチェックしてみましょう。


甲状腺機能亢進症は治る病気?

甲状腺機能亢進症は、外科手術のような根治的治療によって治すことも可能です。ただし、猫の年齢や健康状態、腎機能を評価しながら、猫に合った治療を選択します。場合によっては、猫に負担が少ない療法食や薬により、生涯にわたって治療が必要になることもあります。

甲状腺機能亢進症の治療は、主に3つあります。
一般的には、猫に負担の少ない①甲状腺ホルモン合成に必要な「ヨード」の量を低く制限する療法食、②抗甲状腺薬の投与、を行います。どちらの治療法も、甲状腺ホルモンの数値が安定しているかを定期的に検査しなければなりません。治療を始めたら、週に一度は定期的に体重を測って経過をみます。食欲があるのに、体重が増えていないようであれば、治療がうまくいっていないという可能性があるためです。

また、猫の状態と甲状腺肥大の評価によっては、③甲状腺を切除する外科手術という選択肢もあります。いずれの治療法も、それぞれメリットとデメリットがあるため、動物病院でよく相談しながら治療を進めていきましょう。
猫の甲状腺機能亢進症の予防法は特にありませんが、早期に適切な治療を始めることで、猫は長期にわたって元気に過ごすことができます。甲状腺ホルモン値を含む血液検査や血圧検査で健康状態を定期的にチェックすることも重要ですね。


甲状腺機能亢進症を治療しないとどうなる?

甲状腺機能亢進症は治療できる病気です。しかし、治療せずに放っておくと、猫にとっては大きなリスクにつながる場合もあります。

◆他の重い疾患を併発する

甲状腺は、全身の代謝に関与しています。この働きが異常を起こすことで、さまざまな不具合を引き起こします。よく見られる併発疾患として、「肥大型心筋症」「慢性腎臓病」「消化器疾患」が挙げられます。甲状腺機能亢進症は、血管拡張や血流増加を引き起こして、併発疾患の症状を隠してしまう可能性があります。
甲状腺機能亢進症を早めに発見して治療することで、併発する疾患の予防および早期発見をしましょう。

◆突然死のリスクがある

甲状腺ホルモンは、血圧や心拍数の上昇など、全身の臓器・血流に影響を与えます、
甲状腺機能亢進症では「高血圧症」や「肥大型心筋症」などの重い疾患を併発することがあり、高血圧に伴う網膜剥離による失明、不整脈による突然死などの末期症状がみられる場合があります。


甲状腺機能亢進症になった猫の平均寿命は

甲状腺機能亢進症になった猫は、どのくらいの期間生存できるのでしょうか。ある研究によると、中央生存期間は「417日」といわれています。致死的な病気ではありませんが、慢性腎不全を併発している場合では「178日」とさらに短くなります。いすれも早期発見が重要になります。


ささいなことでも、おかしいと思ったら動物病院へ

健康だと思っていた猫が、実は甲状腺機能亢進症だったという例は多々あります。
なぜなら、この病気の症状は「目がキラキラしている」「食欲が増す」「甘えん坊になる」「運動量が増える」など、一見とても元気そうに思えるものだからです。

特に、高齢の猫ちゃんと暮らす飼い主さんは、ささいなことでも違和感を覚えたら、早めに動物病院で検査してもらいましょう。
シニアにしてはおかしい、というような仕草や様子が見られたらこの病気のことを疑ってみましょう。


まとめ

甲状腺機能亢進症は、その症状からなかなか気付きにくい病気ではありますが、「早期発見」「早期治療」がポイントです。今回ご紹介した症状に心当たりがある場合は、一度動物病院で診てもらいましょう。人と同じように、猫も年齢とともに病気のリスクが高まります。定期的に検査してもらうとより安心ですね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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ゆき

ゆき

小さい頃から動物が好きで、特に猫が好きです。 実家の猫とは20年以上一緒に暮らしており、妹のような存在。 大学では獣医学を専攻し、動物行動学に興味をもって勉強しています。

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